あらすじ
9月19日映画公開決定!
大友啓史監督×妻夫木聡主演、『宝島』
第160回直木賞、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞3冠受賞の作品、待望の続編!
「戦争は終わった。わたしたちの戦いはまだ終わらない」
あの島の「英雄たち」は奪われたものを取り戻し、力の限り生き抜いた。
彼らの「戦果」はひとつじゃなかった。
沖縄の芸能の祖と終戦を描く「ブーテン」
コザのAサインを舞台に「25セント」
迷宮入りした現金強奪事件「五つ目の石」
文化の交差点の劇場で「アーニーパイルで逢いましょう」
家族にはいろんな形があるさ「家族の唄」
1978年、沖縄がひっくり返った大騒動「ナナサンマル」
時代も年齢も多種多様な「戦果アギヤー」の姿を描く6つの「宝」のはなし。
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Posted by ブクログ
少し読むだけで宝島の世界に戻れて、まさかの続編に感激。
宝島とリンクしてたりしてそれを探すのも面白かった。
特にアーニーパイルで逢いましょうと25セントが(他の話ももちろんだけど)あぁ、沖縄を生きた人の人生!って感じがよかった。
途中に出てくる気になる言葉とか場所とか調べたりするのも勉強になってよい。
Posted by ブクログ
宝島の続編
宝島も面白かったが、本作品も劣らず面白かった
沖縄は戦争の1番の犠牲者であり、日本本土、米兵とずっと戦ってきた
たくさんの命が犠牲になって、やっと今の平和を取り戻したが、大きな傷は残ったままだろう
本作品のように魅力的な小説書が存在することで、沖縄の誇りを多くの人が感じることができるのは素晴らしいことだと思う
Posted by ブクログ
沖縄の戦後を舞台にした物語で5つの短編と1つの中編から成る。宝島の続編と言われているが、これだけでも沖縄の戦後の非情なまでの様子がよくわかる。最後の中編が宝島の登場人物のその後を物語っている。私は「25セント」が映像として脳裏に浮かんで好きだった。
Posted by ブクログ
宝島のその後。米の横暴と圧政、追随する日本政府へのやるせない悲しみ、怒り。戦後80年経っても銃剣とブルドーザーで奪われた土地が返されていない現実。自然な方言も相まって真藤さん沖縄出身と思っていた。
Posted by ブクログ
「宝島」を読んでからだいぶ経つので、ちょっと忘れかけていたけど、映画を最近観たので、アナザーストーリー&続編は本当に嬉しかった!
テイストは「宝島」と同じで、語り部の口調がイイ。
ヤマコやグスクを通じて、知らなかった(知らされなかった)沖縄の怒りや悲しみ、諦観が伝わってくる。
Posted by ブクログ
前作に劣らぬ熱量を持つ物語だった。いろんな形をした「英雄」と「戦果」が、狂熱と混乱と悲痛が渦巻く沖縄の戦後史を背景に描かれる。どの作品もミステリ要素があってハラハラドキドキし、面白い。特に「ナナサンマル」は「宝島」の後日談で、ヤマコやグスクのその後を知ることが出来て嬉しかった。
奪われ、押し付けられ、何度希望を打ち砕かれても、それでもここで生きていくと叫ぶ不屈の命(魂)たちに、心が震えた。
それぞれがそれぞれの場所で戦い、誰かにとっての英雄になっていたんだな、と。その想いは今へ連綿と受け継がれている。
Posted by ブクログ
終戦後の沖縄から始まり、コザ暴動、沖縄返還を経て、ナナサンマルまで。
沖縄で生きぬく"基地の子"の六つの短編を収めた作品。かつて戦火アギヤーだったグスコやヤマコのその後も書かれてあり、『宝島』を読んだ時の高揚感がよみがえってきた。
〈目次〉
ブーテン
アーニーパイルで逢いましょう
五つ目の石
25セント
家族の唄
ナナサンマル
「アーニーパイルで逢いましょう」が特に良かった。
那覇に賑いが戻ってきた。劇場周辺ではヌギバイ(タダ見)が横行する。貧しい悪ガキらが、国際通りを一目散に駆けていく姿が印象に残った。沖縄映画興業界を背景に、ヌギバイ猿と女の子が再び出会うまでを心情豊かに描いてあり、一本の映画を観たようだった。
書き下ろし「ナナサンマル」で全てが繋がった。
教師になったヤマコにパートナーがいたとは驚き! しかも…
国会議事堂で大事件を起こしたかつての教え子、トウゴを探すヤマコ。その疾走ぶりにハラハラさせられた。
「沖縄の道が日本と同じになっても、空はアメリカの空のままだ。娘の亡骸が捨てられ、堕ちた飛行機が子どもたちを焼き、毒ガスが漏れ、流れ弾が孤児の胸をつらぬき、横断歩道を渡っていた小学生が車に跳ねとばされる」何も変わらない!と基地の金網の前でうずくまるヤマコの姿が痛々しかった。
「それでも私たちは沖縄を奪いかえす」と、ヤマコたちが行動を起こすラストで、やっとタイトルの意味がわかった。
Posted by ブクログ
「宝島」の続編。
時代も年齢も多種多様な「戦果アギヤー」の姿を描く6つの「宝」のはなし。
こちらも沖縄の史実がベースになっているので、短編なのに読み応えがすごい!
どのお話にも、ちょっとしたミステリーのような要素があって面白いし、希望が見える終わり方で読後感がとてもいい◎。
「宝島」を読んで、私は米兵や米軍に怒りを抱いたのですが(本書でも、そう思う場面はあった)、悪い人ばっかりだったわけではないんですよね。
本書を通して「宝島」だけでは知り得なかった史実を知れたのがよかったし、当時の沖縄の文化に触れられたのもよかった。
作中に出てきた唄も全部YouTubeで聞いてみたのですが、イメージが膨らんでよかった。
戦中戦後を生きていた沖縄の方たちは、きっと、それぞれがそれぞれなりに戦っていて、みんな誰かの「英雄」だったのだろうな。
︎✿ブーテン
太平洋戦争、敗戦直後の沖縄が舞台。
誰に何を言われようとも、自らの矜恃を貫き通した男の生き様に胸を打たれた。
︎✿アーニーパイルで逢いましょう
劇場で出逢った映画が好きな男女。
男の子は女の子との再会を心待ちにするがー…。切ないけれど、ジーンとする作品。
︎✿五つ目の石
1953年に起きた、ある事件についてのお話。
一件の事件からこんな人間ドラマが繰り広げられるなんて…!すごい。
︎✿25セント
ある男の死についてのお話。
西洋音楽と沖縄の音楽の違いが興味深かった。
これは思わずニヤッとしてしまう!
︎︎✿家族の唄
ある任務のために集められた、まがいものの家族のお話。
詳しくは言えないけれど、いろんな意味でテンションが上がる!
読後はとんでもなく切ない気分になった。
♥ナナサンマル
タイトル通りナナサンマルについてのお話。
本書が「宝島」の続編とされているのは、きっとこのお話があるから。
語り部たちに、再び会えた彼らの姿に胸が熱くなったし、「宝島」を読んだからこその驚き、高揚があった。
彼らがある謎を追う場面は、ハラハラして手に汗握ってー…最後はここまでのお話が走馬灯のように蘇り、泣いた。
きっと実際に、あの場所に彼らはいたのだろうな。
✎︎____________
われら沖縄人はこのカンカラ三線におなじ。今日ただいまは〝かぎやで風節〟におなじ。ここからまた幕が開くんです。(p.45)
三線や唄は、漫談は、あらゆる芸はうたかたの気晴らしでも、死出のはなむけでもない。
この世界で、おれたちが命を明日につなぐためのものだ。
生きていける場所を、魂の糧を、取り戻すためのものだ。(p.51)
これからの沖縄でどこに石を置くべきかを、ぼくたちが決める番ですから(p.151)
たったいま、沖縄じゅうが音楽に熱狂している。ベトナム戦の終結も、本土復帰もそれほど遠くないだろうが、この島の郷土芸能は、興行の力はとっておきの武器になるはずさ。たぐいまれな逸材を発掘し、手厚く支援して、本土へも羽ばたかせることができれば、沖縄はそれこそ芸能の島として隅にも置かれなくなる。そのためには歌い手を金づると考えてはならん。儲けや搾取の誘惑に惑わされず、おんぶにだっこの相互依存にもおちいらずに、われわれのような後見人が歌い手に寄り添わなくてはならん(p.234)
おなじ血でも、流れかたがちがうことはある。
ちがう血でも、おなじ向きに流れることもある。(p.238)
のど自慢の真価は、家族のだれかが家族のだれかに聞かせるところにある。だからこんなにも広く、深く、お茶の間へと浸透していったんだって。(p.243)
生まれる姿や場所は決められなくても、一緒に生きるだれかは選べるんだよな。本物だろうとまがいものだろうと、うまくおなじ曲を唄えれば家族になれる。気がつくとこの島ではあっというまに大家族だ。(pp.245~246)
地上のルールがたとえ変わっても、空のルールは変わらない。
沖縄の道が日本とおなじになっても、空はアメリカの空のままだ。
世界は変わらない。航空機は飛びつづけ、ときどき墜落する。地元に基地が残されるかぎり復帰処理を終えたところで〝本土なみ〟にはならない。(p.356)
あたしたちの世界は、あたしたちの内側にある。あたしたちの故郷は、あたしたちが手をつないだその輪の中にあるんだよ(p.394)
Posted by ブクログ
『宝島』の続編とあるが、それぞれに違う主人公による6つの短編集。
『宝島』を読んで結構衝撃を受けたので、それに比べるとあっさり読めてしまった。
それでも、戦後の沖縄の様子やそこで生きた人々の人生を、小説という形ででも触れられたのはすごく自分にとっては良かった。
まだまだ知らないことだらけだった。
「ナナサンマル」という言葉も初めて聞いたし、交通事情(沖縄には右側通行の時代があったんだ…)なんかも考えたこともなく、それが沖縄の人々にとってはすごく大きな意味合いがあったこととか、色々考えさせられた。
決して過去の話ではなく、今も沖縄には多くの基地がある。
知ることがまず大事、そこから自分に何ができるのか…。
Posted by ブクログ
直木賞とった「宝島」の続編。続編といっても「戦後沖縄」という舞台を同じくしたスピンオフ短編集っぽい感じ。最後の書き下ろし中編だけは宝島の主要登場人物がでてきてその後を知れたりもします。
正直「宝島」の話が半分くらいしか覚えてなかったのでざっとあらすじだけ確認してから読んだんですが、最後の話以外は別に読んでなくても問題なく楽しめる。最後のも知ってればより楽しめるくらいの位置づけかな。
個人的にはむしろ最後の以外のお話のほうがしみじみと面白かったです。ほんのりとあたたかな人情噺っぽくて。「これからの沖縄がどうあるべきか」みたいな硬い話よりもエンタメ強めのこっちのほうが好み。