上巻読んだ後1週間くらい下巻を楽しみに待って、手に入れてから1日でのめり込んで一気読みした。
さあ、いつ黄美子は豹変するのか?と今か今かと待ち構えるも、あれっ、おかしいな、下巻の黄美子は上巻の黄美子のまま。残りページ数が少なくなって、これからどうやって風呂敷を畳むんじゃーと思っていると、なんと黄美子、豹変しないまま終わってしまった。と言うより上巻の花の視点で見ていた得体の知れない存在感すらなくなっており物語の中心人物なのかと疑わしい程に影が薄い。出てきても横になってテレビ見てるか無駄に掃除してるからだし。花との会話シーンも少ない。
冒頭の記事は何だったのか?もう一度読み返してみるとまるで桃子が脱走を試みた時に言った事に似てる。つまりそう言うことか。桃子や蘭だって未成年だったとは言えある意味自分の意思でそこにいたのに行き詰まって先が見えなくなると都合の良いように勝手に解釈して何も無かったことにした。黄美子はそういう風にさせられたむしろある意味では被害者だったのかもしれない。善悪の判断や先の見通しをつけるのが難しかったり、豹変していく花の手下みたいに動く姿はヒトラーの下のアイヒマンのよう。成長過程での発達障害や知的障害などがあるのだろうか、と疑ってしまう。
黄美子は逮捕されて記事にされるが、実際の所の真実は密室であるが故に闇の中。ある意味言ったもん勝ちなところもあるよな。先日の某プロ野球監督の家庭内暴力の件だって擁護する声もあるけど、娘の事後の反省文の表明で本当は普段は何もないのです、というのが本当かどうかなんか他人には分からない。もしかしたら日常的に家庭内暴力がなされていたのかも知れないし、他人から見るととんでもないことをその家では大したことないと日常的なことだったりもする訳だし。
ビビさんのバカラをやるやつらは既にちょっとずつ死んでる、っていう所が印象的だった。何かが起こる時っていきなり起こるのではなくてそうなる要素が少しずつ積み重なって積み重なってそして最後に溢れてしまう、そんなイメージ。
花の猶予の話。そうか…と納得してしまった。金や時間や人間関係は貯蓄として最初にあればその分猶予がある。立ち止まったり、転んだり、たまには後退したって猶予があれば、またやり直せる。
でも最初から猶予がない場合、立ち止まることも転ぶこともましてや後退する事も許されず、後ろからどんどん崖が自分の方向に迫ってくる感じなのかな。
花のお母さんが、花にお金を返すためにひっそりと千円札を貯めていたのを死後に発見するシーン、花が母からの電話を無視した事を悔いて泣くシーンにもらい泣きした。
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68 金以上の何か。バカラをやるやつって最初からちょっとずつ死んでる、自分を殺してる。そう言うやつがバカラをやりにくる、金の奥に行こうとする。死にながら生きてるのは辛いからさっさと白黒つけたいのかもね。本気でバカラやるやつはちゃんと死ねるから。バカラやってもやらなくても、病気でも事故でもわたしらみんな死ぬからね。呼び方が違うだけでいくか何かに殺されてるのと同じだよ。
頭を使える奴が全部やることになってんだよ。でも苦労できない馬鹿よっかましでしょ。あいつら幸せかもしれないけど馬鹿だよ。あいつらは考えないから幸せなんだよ。
知恵絞って体使って自分で掴んだ金を持つとね、最初から何の苦労もなく金を持ってるやつの醜さがよく分かる。
89 ヤクザは実態があるからどんなにデカくても秩序があってブレーキがある。でも暴対ができて力が弱くなって暴走族上がりとか中国上がりとか守るものが何もないから何でもやる、顔が見えない、分からない。
106 生きててもしょうがないのかなって思っていたけど花ちゃんがいるから大丈夫だって思えるの。
(上巻の冒頭で蘭は久しぶりに再開した花にもう連絡しないで欲しいと言っていたのに)
113 「は」目の前のひらがなを発音するかのような感じで声を出した。何の感情もない無機質な音でしかないような声で、でもその視線にはわたしを向こう側まで射抜くような妙な威圧感があった。
130 これからのこと、お金のこと家賃のこと、話さなければならない事はたくさんあってどれも切羽詰まっていたけどそれを話した瞬間に、今こうして皆が黙っている事でかろうじて保っている全てがそこで本当に終わってしまうようなぎりぎりの感じがあった。
134 今日を生きて明日もその続きを生きる事ができる人はどうやって生活してるのだろう。私が分からなかったのはその人達がどうやってそのまともな世界でまともに生きていく資格のようなものを手に入れたのかと言う事だった。ねえお母さん、生きていくのって難しくない?お金を稼ぎ続ける事ってすごくすごく難しくない?ねえお母さん、私分からないんだよ、どうしていいか分からないんだよ。
200 三茶を歩いているとみんな顔からはみ出しそうな屈託のない笑顔を見せて幸せそうに見えた。その幸せは多分親なのか家族なのか彼氏なのかは知らないけれど自分より強い誰かに守ってもらえているという自信と安心感から滲み出る何かであるように思えた。そんな光景を見た後には胸の辺りにどす黒いものな渦巻くのを感じた。
201 金はいろんな猶予をくれる。考えるための猶予、眠るための猶予、病気になる猶予、何かを待つための猶予、世間の多くの人はその猶予を作り出す必要がないのかもしれない。ほとんどの人間にはその猶予がある程度与えられているのかもしれない。誰だってみんな金が必要で汗水垂らして働いている。誰の汗水がいい汗水で、誰の汗水が悪い汗水なのかを決める事ができるあなたは一体どこでその汗水をかいているんですか?多分とても素敵な場所なんでしょうね。
263 2165万9千円。紙の束でもあり両手で掴もうと思えば掴めるくらいの大きさしかなくただのものでもあった。私たちはこの数年目の前のこれを集めるのに必死だった。誰かが望むものに速やかに形を変えるもの。自分や大事な人を守り満たし時間と可能性そのものになるもの。未来、安心、強さ、怖さ、ちから。頭にやってくる言葉の全てが真実だと言う気もしたし全てが的外れだとも思えてきた。
291 全部黄美子さんがやった。いい?私たちの事実はこれだからね。この家のことなんか誰も知らないし私らは何にもしていない。全部やらされてただけ。利用されてただけ。歯向かったらなにされるかわからなかった。それが事実だからね。
全てはあそこにいた頭のおかしい大人達が自分達のためにしでかしたことであり、私たちは判断のつかない子供で酒を飲まされ働かされ生活を支配されてどうしようもなかった。
自分を自分に繋ぎ止めるためには2人の言う通りそう思うしかなかった。
私は黄美子さんが怖かった?
303 白い封筒に鉛筆の薄い小さな文字で花ちゃんにわたす用と書かれており中にはほとんどが皺のよった千円札で全部で7万3千円が入れてあった。私はきつく目を閉じた。最後に会ったのはいつだったか。最後に話したのはいつだったか。何度か着信があったのにわざと出ないこともあった。私に何か話したい事があったかもしれないのに。声を聞きたいと思ったかもしれないのに。笑顔ばかりが思い出されて私は膝を抱えて泣いた。
307 あの家を出た私たち3人が私たちのための事実を創り上げたように十数行の文字で書かれた事件の記事の後ろあるもの、あったかもしれないものと、20年前の私たちが過ごした日々の区別がつかなくなっていた。