小説・文芸の高評価レビュー
-
Posted by ブクログ
子供が頼るべき先は親じゃなくてもいい。
本当にそうだなと思う。
美空の周りの人々の押し付けがましくない優しさが清々しくて、私もそういうことができるおばちゃんになりたいと思った。
美空の母親には胃の底が冷たくなるような嫌悪感があったけど、確かに美空を18歳まで育ててくれた人ではある。
この人とその他の登場人物の愛情や優しさのコントラストが悲しかった。
始まりは弱々しい母親に思えた美空がどんどん逞しく周りの人々にも支えられつつ成長していく物語にとても温かい気持ちになりました。
ひかりちゃんはとってもかわいい。
周りの大人たちをどんどん幸せにしてくれる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ噂に違わぬど傑作。
ミステリ作品の技法として、当時の読者からすると、かなり先進的、なんなら反則スレスレぐらいに感じたんだろうなと思う。しかし、そのグレーなラインこそが当時の読者を魅了し、よりクリスティー作品に引き込んでいったんだと考えられる。
そんな擦られまくった技法の作品を今読んでも面白いと感じれるのは、やはり、「ポアロの魅力」と「圧倒的構成力」だと感じた。
過去に数作『ポアロ』シリーズを読んだが、最初の頃は「理屈っぽいウザいオジサン」的な印象が強かったが、このシリーズを読めば読むほどポアロの理屈っぽさが論理的な推理を生み出し、その度に脳に強い刺激を受けていることに気付いた。今作も終盤の推理 -
Posted by ブクログ
プロローグがどのような場面であったのか、彼らがどのような関係で、なぜこのようなことになってしまったのか。主人公のみちるが事実に近づき、いろいろなことが一つに繋がっていく流れが読みやすく、ページを繰る手が止められなくなった。
同時に、この事件に関わった人物たちの心が明かされるにつれ、なんとも言えない気持ちにもなった。
その人の特性などによる生きづらさ、家庭環境などによって得られ難かった愛を求める心、無自覚に人を傷つける残酷さなど、おそらく誰しもが持つ弱さや脆さに繋がるところを突きつけられて、胸が苦しくなりながら読み進めるところもあったが、最後はある種の救いも感じられる結末で、読後感はすっきり。
-
Posted by ブクログ
25年前に出版された作品。
その頃に読んでいたかったなー。
今時の若い世代の結婚観の見当がつかないけど、今でも全然通用するであろう山本先生の結婚観、と私は思う。この作品には結婚観を通して見える人生観も綴られている、というかそっちの方がメインなのかも?
私自身も『世界中のほとんどの人が結婚している』と言う理由で結婚せねばと焦っていた20代を思い出す。でも30歳を超えたら結婚というより私は結婚式がしたかったんだってことに気づいてそこから本気でどうでもよくなった。現在は結婚しているけれど、それもビザの関係で結婚という形をとったまでで、相手も結婚なんて絶対しないと思ってた、なんていう人なので、あの機 -
Posted by ブクログ
ネタバレ世界99 下
2025.11.24
「それにしても、差別されるっていいですよね。一種類の差別をされてるだけで、まるで自分が他の種類の差別を全くしてないような気持ちになれませんか?そんなわけないのに。差別者じゃない人間なんていないのに、あたかもそうであるような気分になれるのが、差別される唯一のメリットですよねー。」
「でも、かわいそうなことは素晴らしいですよね。僕、たぶん、将来。それって娯楽になると思うんですよね」
そんな見方があるのかーと何度も驚かされる、どんな生き方をしたらそんな視点を持つのだろう…と何度も疑問に思うくらい斬新。
誰かをかわいそうと思うことが娯楽になるという言葉は、 -
Posted by ブクログ
ネタバレミステリーとして非常に面白く、専門的な用語についても分かりやすい説明があるため、読みやすい。誰が嘘をついているのか、というようなミステリー小説を読む時には当然の疑問や、障害がある人の生活について考えながら読み進めていた。
怪しい人物はみえているものの、どう結末を迎えるのか予想がつかないまま残り少ないページ数になり、ようやく真相に辿り着いた。その途端、信じられないほどに驚愕した。今まで読んだ小説で様々などんでん返しの結末を見てきたが、私の中では本作が一番である。
実際に起きたら前代未聞な事件だが、色々と考えさせられる小説だった。表現が難しいが、本当に読んでよかった。
現代における裁判員制度は