小説・文芸の高評価レビュー
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記憶をめぐる短編集。
現代ホラー小説を知るための100冊のうちの1冊だけどミステリ色も強い。終わりの二篇はとくに。「世にも奇妙な物語」や藤子・F・不二雄の短編を連想させる。
「緋い記憶」「言えない記憶」「遠い記憶」がよかった。少年時代に恐怖を体験し、その記憶を抑圧して何十年と生きてきたが、偶然のきっかけによりそれが蘇る。
収録作品が書かれたのが88年から91年。その時代に中年の語り手が少年時代を想起する短編ばかりでノスタルジックな風情が漂う。昔の住宅地図が重要なモチーフになる表題作はとくにそう。「オレの今暮らしている盛岡は、本当の盛岡じゃねえ。オレの町はこの地図の中にある。だから、どんなに -
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ネタバレまず、ありきたりな感想かもしれないが、生と死について非常に考えさせられる作品だった。
死後の世界は誰にも分からない(作中では死者当人も死んだことに気付いていない描写もあった)が、生者の時間は1分1秒変わらぬペースで進み続けるのが自然の理だ。
そんな生者にとって、「死者をどのように扱うか?」というのが本作の大枠のテーマだったように思う。
・自分とは遠い存在の有名人に会いたいと願った女性→故人の言葉により生きる意味を見つけられた(かもしれない)。
・母に会いたいと願った田舎の本家の50代長男
→母の真意を知り本家の長男としても人間としても多少丸くなった(かもしれない)。
・親友に会いたいと -
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駒子(こまこ)は肉体・現実・生命。駒子は嫉妬し、泣き、怒る。感情が濃い。身体感覚が強い。肌・酒・汗。具体的な温度。一方、葉子(ようこ)は精神・幻影・死。現実感が薄い。顔より先に声(悲しいほど美しい声)。しばしば遠くから見られ、光や反射の中にいる(鏡のような窓に映る娘の顔)。雪国の風景から生まれた幻のような存在。そんな葉子が火事の中、突然「重力」を持って落ちる。窓の反射や遠い声として存在していたものが肉体として落下する。幻が肉体に、観念が現実に、美が死によって物質化。島村の「美しい雪国」は揺らぐ。火事、悲鳴、墜落、死体。生々しい現実が侵入してくる。島村は夜空に浮かぶ天の河を見上げ、巨大な宇宙の感
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「表現したい欲」と「社会のルール」みたいな、相反するものをぶつけるのが本当にうまいなと思った。
特に朝井リョウって、どちらかを完全な悪や正義にしないから、自分の中にも両方ある感情として刺さってくる。
自分はどちらかというと、精度を高めるよりも、とにかくまず出してみるタイプだと思う。勢いで動ける反面、社会人としては「ちゃんと詰める」「丁寧に積み上げる」みたいな部分が足りないと感じることもある。
だからこそ、この作品を読んで、仕事に対してもっと熱量を持って向き合わないといけないなと思った。
今は育休中で、仕事から少し距離がある時期だからこそ、「自分はこれからどう働きたいのか」を逆に冷静に -
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ネタバレ産後だったこともあり育児の合間をみながら、約2ヶ月かけてゆっくりゆっくり読み進めた。
美しい景色と、美しいことばたちと一緒に旅が進んでいく。若年生アルツハイマーを患ったエミル、小柄ながらも過去の悲しみを背負いながら生きる意味を見つけるジョアンヌ。そんな2人は亡きジョアンヌの父ジョセフが天国から仕組んだ、出会うべくして出会った運命の相手だった。毎日が切なく、明日が来るのが怖くて、不安で仕方なかっただろうに、今この時を味わい、楽しみ、生と死を感じながら自然に戻っていく2人の様子に目が離せなかった。
p74のジョアンヌがエミルに瞑想を教える。大雨の中ふたりで大笑いする場面は本書上下の中でも読んでい -
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"居るのはつらいよ"を読んだ後に読んだ。自分も沖縄で数年過ごしたこともあり、東畑先生がどのような空気感の元で過ごしていたのか、情景を表現する文章力もあいまって、あまりにもイメージがついた。沖縄は良くも悪くも独特な街で、いわゆる内地の者からすると、拒否反応を起こしてしまうような文化の要素も多数ある。本書では、その要素のひとつでもある、"野の医者"達の活動について深く追求している。表面だけで判断すると拒絶してしまいそうになるものは世の中にはたくさんあるが、深く知ることで見方が変わることもあると、改めて思わされる内容だった。また、沖縄に行ってみたいと思う。
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離れて暮らしている娘から、小学校の頃お母さんが買ってくれた本を探してるんだけど覚えてない?と連絡があった。どんな本かと尋ねると、薄い本で和訳で、絵か写真があって、朝はいってらっしゃいと言おうみたいな、と、とりとめない返信。もしかして、最後だと分かっていたなら、じゃないかなと尋ねたら、それだ、ありがとうと返ってきた。私はその本を娘に渡した記憶はなかった。私はまともな子育てが出来なかったといつも思う。こどもが優先の、こどものために動くことが楽しいと思える母じゃない自分に後ろめたい思いがあった。でも、私はこの本を娘に渡していたのか、そして、娘が今、その本を記憶の中から探してまた手に取ろうとしているの
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チューリップのリーダー、財津和夫さんの自叙伝。財津さんは1948年生まれ、もう78歳だ。
この本は3部構成からなる。2025年11月に日経新聞朝刊に掲載された『私の履歴書』、2023年2月に読売新聞夕刊に掲載された『実るほど頭を垂れる稲穂かな』の全編の編集が第1部と第2部。第3部は撮り下ろし写真とエッセイによるオリジナルコンテンツらしい。これは永久保存版だ。
「心の旅」「青春の影」「虹とスニーカーの頃」「サボテンの花」……だいたい誰もが知っているチューリップの名曲。もし財津和夫(チューリップ)を知らない人がいても、松田聖子の「夏の扉」や「チェリーブラッサム」「白いパラソル」など楽曲提供で知 -
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ネタバレ肖像画家の主人公の放浪記のようなスタート
いきなり、村上春樹ワールド全開で、別世界へ連れてかれる。
主人公15歳妹12歳で死に別れる。妹にどことなく似ている元嫁。
放浪の末、画家の雨田の父、具彦の空家に住むことになる。
自分の画材一式を持ち込み、何か書こうとするが、何も浮かんでこない。
悶々とする中、屋根裏から一枚の絵を見つける。
「騎士団長殺し」構図にいくつか、引っ掛かる箇所があり、またもや悶々としている中、とある肖像画の高額依頼が飛び込んでくる。免色というのが彼の名前だ。
実際、肖像画を描き始めるが、中々構図が決まらない。こんな事は、初めてだ。
まったくデッサンが捗らないある夜、なぜかいつ