あらすじ
8つの物語の「軌跡」を奇跡の構成力で描き切った、『同志少女よ、敵を撃て』を超える最高傑作
自動車期間工の本田昴は、2年11カ月の寮生活最終日、同僚がSUVブレイクショットのボルトを車体内に落とすのを目撃するが。マネーゲームの狂騒、偽装修理に戸惑う板金工、悪徳不動産会社の陥穽――移り変わっていく所有者たちの多様性と不可解さのドラマ。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
おもれーっ(拍手)
色んな社会問題を描きながらも、重すぎずすっきり読める形にまとまっていて、エンタメとして面白く読めた
グレーゾーンな話題ばっかりだなって思ってたら、だんだん真っ黒になってきた笑
自動車メーカーの後藤パパ雇用のくだりは、恐らく美談とかじゃなくて企業責任なのかなとも思って、その辺も含めて世の中色々あるなと思った
あと、「名簿が割れる」という言葉を知らなかったので、勉強になった
カズ塾長には前にYouTubeとか書籍でお世話になったような気がするので、あんまり悪く言わないでください(?)ってなってる
Posted by ブクログ
壮大な人間ドラマを読み終えて、この作品に出会えて本当に良かったなと思いました。
ご都合主義と言われてしまう展開も、全く気にならないぐらい感情移入して一気読みでした。
途中、読むのが苦しくて苦しくて、どうしょうもない箇所があり、「もうやめてあげて」と思わずつぶやいていました。
ビリアードのブレイクショットのように、手球がぶつかって、お互いの球が干渉していくように、物語も数珠つなぎのように繋がっていくさまは、流石でした。
今年の読んだ中でもベスト3に入る小説でした。
・追伸
直木賞、獲って欲しかった。非常に残念でした。
ブレイクショットに関わった人たちが必ず不幸になるので、映像化する際の車選びに難航しそうなんですが、是非映像化も。
Posted by ブクログ
逢坂冬馬先生の本、2冊目です。面白かった!
他の方も書かれてますが、前に読んだ「同志少女よ、敵を撃て」とは全然違った話です。こういうものも書かれるんですね。そして私もこっちが好き。
500ページを超えるどっしりした書籍ですが通勤電車で抱えて読んでも全く苦になりませんでした。痛勤時間の楽しみをどうもありがとうでした。
1台の車が巻き起こすさまざまの悲劇。そしてアフリカの少年兵に自動車の期間工。バトンリレーをするようにシーンが入れ替わりドキドキしながら読みましたが、最後のエピローグでパズルのピースがキレイにはまってスッキリしました。ハルくんとエルヴェくんがお気に入りだったので、彼らのその後も垣間見れてよかったです。
話の筋とは別なのですが、わたしは車はオートメーション化されてて機械が作ってるものとお恥ずかしながら勝手に思い込んでいましたが、実際にはこうした期間工の方たちが一つ一つ組み立てしてくれているんですね。わたしたちの運転の安全が彼らの地道な努力に支えられてきたのかと思うと有難い限りです。
Posted by ブクログ
同志少女超えと聞いて信じられなかったけど、これはすごい。どうやったらこんな話が思いつくのだろうか。まるで世界地図を見ているようなストーリーの壮大さに驚いた。
どんどんバラバラになっている話がつながっていくところも面白いし、何よりもひとつひとつの話が濃くて良い。詐欺師の話も面白かったし、晴斗と修吾の話も良かった。期間工やアフリカの話もつながっていて面白いなと。
回復した友彦と晴斗が話しているところで涙が出た。たくさん時間を奪ってしまったから、これからは返していくんだ。ひとりでがんばるという簡単ではない選択なのに、家族思いなところは変わっていなくて感動した。
個人的に、子育ては自分が親から受けた愛情を返していく行為だという文章がささった。子供を欲しいと思ったことがなかったけれど、母にたくさん愛されて育った分、そのお礼をする方法が私が子供を産むことなのだとしたらそうしたいと思った。
Posted by ブクログ
読み終わって「うわー!」と言ってしまった。長編すぎて最初、入り込めなかったけど1/3あたりから話が繋がっていく感じがあって、「ブレイクショット」とつけた意味も腑に落ちる。よくこんな作品を書けるなぁ………
Posted by ブクログ
ブレイクショットという車が人から人へ渡っていく。そこには様々な人間の人生のドラマがあった。
車の所有者がことごとくろくな目に遭わないのが気の毒でもあるが、それでも健気に、善良に行きていくさまに涙を誘われそうになる。何より一つ一つのエピソードがスリリングで先が気になるため気づけば没頭して読んでいる。
ラストにかけて、今までの登場人物がいろいろな形で活躍していることが描かれうれしくなった。
Posted by ブクログ
おもしろい!間違いなく今年のベストテンに入る。逢坂冬馬さんの小説はスケールがでかくて、想像の斜め上をいくつながり方をして、そして学びがある。投資、特殊詐欺、SNSなど、他分野の知識をもちそれを惜しみなく、共有してくれる。またいつか再読したい。
Posted by ブクログ
国産SUV車「ブレイクショット」を軸に話が展開されていく現代版の青い壺のような小説。伏線の張り方と回収が見事で、ナインボールのようにブレイクショットが手球となって個々の話を繋げひとつの物語となっていく。
それぞれの話はSNSの炎上やそれによる私刑ともいえる断罪、集団詐欺、グレーなマルチ商法的サロン、過剰なノルマ主義など世相を反映した話題が取り上げられる。そしていずれも天国か地獄かを決めるのは紙一重で、善良さを保つか忘れるかによることが描かれる。匿名性が高いときやグレーゾーンなときは言動や行動が過激になりがちで自分を見失ってしまう。
善良な人たちがすべてハッピーエンドを迎えるエピローグは圧巻だった。
Posted by ブクログ
いやー、もう最高!騙されるのって気持ち良い!
でもまぁ、騙されるって表現は語弊があるかも。
勝手に物語に熱中しすぎて、勘違いしてただけだから。
架空の車、ブレイクショットの因縁が多方位にわたり、人生を繋げて行くストーリー。
いやー、エピローグは本当、微笑みながら、これもあれも?という感じだった。
ページ数も多く、途中暗い話だし、しんどいなぁと思うところもあったかもしれないが、読後の爽快感が半端ない。伏線とかって、不自然だったり、見え見えだったりすると冷めるけど、これは全くなかったなぁ。
作中にでてきた、門崎と後藤のやりとり。
「ダチ公」、、、
これを目指すべきだったんだよなぁ。
鈴木世玲奈、本田昴、この2人も最高!!
Posted by ブクログ
車には疎く、タイトルのブレイクショットというのはナインボールのことだけだと思ってました。
弾けた球が捉えられない動きで互いに関与していくように、様々な出来事と場面、人物が関わっていく様は見事でした。登場人物も魅力的でよかったです。
Posted by ブクログ
【短評】
二冊目となる逢坂冬馬は、早川書房創立80周年記念作品にして山本周五郎賞及び直木賞候補作に選出された意欲作だ。先日読んだ『同志少女よ、敵を撃て』の印象が強く、戦記物を主戦場とする作家という先入観を抱いていたが、現代物もイケることを証明してくれた。相応のボリュームのある作品だが、かなり早めに読み終わったのが、その証左であろう。
架空のSUV車「ブレイクショット」を巡る8つの物語。
それは「ブレイクショット」の生産工場に勤める期間工の物語であり、マネーゲームに興じるヘッジファンド役員の物語であり、地球の裏側で銃把を握る少年兵の物語である。物語は複雑に交差し、混迷を深め、思いも寄らない形で結実していく。
正直に言えば、プロローグは少々苦手だった。村上春樹めいたシニカルな透明感が鼻についたというか、どうにも乗り切れなかった。しかしながら、続くマネーゲーム編から物語が動き出し、連動し始めるにつれ、一気に物語に没入させられた。
同一の「事件」が別の視点から見ると全く違った意味合いを得る。絶えず静かな衝撃が連続し、「次はどう繋がっていくのだろう」と読み手を飽きさせない。混迷を深め、悪化し、負のスパイラルに陥っていくのを眺めるのは胸が締め付けられるようだった。
白眉はラスト。これを大団円とするか、ご都合主義とするかが本作の評価の分かれ目だろう。私は前者だ。登場人物には何かを掴み、何処かに到達して欲しいと思う。
構成も秀逸で、呆けた私は見事に騙された。「違ったのか…」と思わず声が出た。パチパチとパズルが組み上がるようにフィナーレに至る流れには喝采を送りたい。嗚呼。こういうので良い。こういうのが良い。
【気に入った点】
●後藤春斗(ごとうはると)が素敵だった。作中の表現を借用するのならば、ブレイクショットを放ったのは彼だ。彼の一撃が全てを動かしたのだと思う。私はその勇気と決断を称えたい。
●鋭く輝く多面体或いは織物のような世界構築が素晴らしい。各話の時系列を部分的に重ねることによって、視点転換による味変をしつつも、物語を牽引していく構成に惹かれた。無軌道に運動する要素が、チグハグで悪趣味な落着ではなく、ピタッと収まるべきところに収まる心地よさは素敵の一言。
●タイトル。この言葉が何を意味するのか思索するのが、本作最大の妙味だと思う。
【気になった点】
●SUVの「ブレイクショット」が添え物程度にしか機能おらず、冷静に考えると、近傍をぐるぐるしていたように思う。それ自体がある種のミスリードであるのは百も承知だが、自動車物語のような、違ったお話を期待してしまうリスクはあるように思う。
●プロローグの独特の空気感は好みではなかった。が、エピローグには悪印象を抱かなかったので、帳消しだろう。
タイトルから想像していたのと、全く違った角度から殴り飛ばされた作品。
絶えず連続する「意外性」を浸るように愉しむことが出来た。善哉善哉。
Posted by ブクログ
魂が震える作品。皆読んでほしい。
ブレイクショットの軌跡というタイトルも深い。
長編だからこそ、没入してそれぞれの人物の立場で深く考えることができ、最初から最後まで味わえた。
社会の一員である自分は、すでに世の中の出来事に関係していること。
人間ひとりひとり、問題のひとつひとつ、とても複雑なはずなのに、「まとめ」で知った気になってしまう現代社会のこと。
最後の彼女の言葉がとても良かった。
自分の打つボールが波及するという意識を持たない人間にはゲームに参加する資格はない。
だが、誰かがそれを打たなければならない。
Posted by ブクログ
ビリヤードの最初のひと突き「ブレイクショット」の名を持つSUV乗用車を、自動車工場で、ある期間工の手で作られた。
この車は、東京のタワーマンション最上階に住むエリート金融マンが手にした。しかし、あるトラブルにより手放す。
次に、善良な町の板金工・後藤友彦の手に渡り、家族の夢を乗せる中古車となる。しかし、その幸せは、路上で跳ねた一本のボルトが原因の事故によって、無残にも奪われる。車は再度、手放される。
このブレイクショットは、次に悪徳不動産会社の社用車となるが、窃盗団の手に渡たる。
盗難車は海外遠く、中央アフリカ共和国に売却され、少年兵が運転する軍用車両「ホワイトハウス」へと改造される。
Posted by ブクログ
SNSをはじめとした現代社会の複雑な闇や絶望感を描きつつも、登場人物たちはみんな底に落ち切ることはなく、最後は善良や愛が強い行動原理となって立ち上がって生きていく様が書かれていると思った。誰かにとっての悪い人が、誰かにとっての愛する人だったり、その価値観もどんどん入れ替わったり、誰かを応援したり支えるためのお金が誰かを騙すことによって稼がれていたり。世の中はいろんなことが波及しあっていて、人それぞれの人生は複雑だしそれぞれにストーリーがある。その複雑さに思いをはせて生きていかなければいけないと思った。最後の方で、こうしたいろんな主体の背景や複雑さを捨象してしまうSNSの短文論戦に嫌気がさす主人公が書かれているが、そこまでの流れで世の中が複雑であることを思い知らされた我々読者にとって非常に示唆的であると感じた。
Posted by ブクログ
さまざまな状況の人物が出てきて
最初はなかなか入り込めなかった。
サッカー少年2人の目標が尊い。
その1人の父親のつらい事故あたりから
夢中になって読んだ。
貧困、ブラック企業、特殊詐欺、投資YouTuber
インサイダー取引、LGBT、アセクシャル
現代の様々な問題点がわかりやすく
勉強にもなりました。
最後、全てがつながって
その手腕はお見事!
落ちた車のネジを見過ごすのか、
見過ごさないか、
いずれの登場人物も
最後に綻びを見過ごさず
自分の意思で決めて
自分の人生を、大切なものを掴んでいく。
だから読後感がスッキリ!良い本でした。
Posted by ブクログ
シナリオもプロットもすごい。
「ブレイクショット」には2つの意味があり、一つはそのままビリヤード。ストーリーの中に効果的に使われている。
そして「ブレイクショット」という名前の自動車。この車にまつわる物語だが、持ち主が変わりながらその持ち主の人生を描き、そして数奇な運命を伴いながら収斂するのだ。
驚きの展開。そして細かい部分まで丁寧に描かれている。
読み応えは十二分にある。
Posted by ブクログ
変なビジネス書を読むぐらいならこれを読んだ方が楽しめて、勉強になるぐらい面白いし、為になる。
著者の知識とそれを伝える力が凄い。
ブレイクショットがそれぞれの物語を繋ぎ、色んな人生を描いていく。
章の1つ1つが濃く、ここまで濃厚に書きながら、しかもテーマもそれぞれ違い、大事なことを語っていく。
家族、お金、時間など、生きる上で必要なものはここに書いてる気がした。
伏線も回収も見事。
読んでて最後まで楽しめたし、特に突っ込みどころもないのだが、必要以上に長く感じてしまったのが唯一の欠点だろうか。
読みやすさはあるがミステリーとは違い、膨大な量を読んだ後に得られるビックリ感がやはりミステリーのそれを超えれない。
ただ、知識として哲学としてなど幅広い分野で為になるのと、物語自体も別に退屈する訳ではないので、面白いには変わりない。
この著者の作品は好みだなと改めて思った。
Posted by ブクログ
★★★★これだけ様々なバックグラウンドを持つ人物の心情や背景をよくこんなに書き分けられるなと、大半の人物に感情移入しながら読んだ。読み終えるにつれ、ここがここと繋がるという網の目が徐々に明らかになっていくのが面白い。最初は、一体なんの話?戸惑わされる。世の中の有様がビリヤードに見えてくる。
色々と考えさせられながら読んだ。文章量の数倍、思考した。
濃かった。
Posted by ブクログ
全てのストーリーが繋がっていて、「あ、この人か」となる場面が多く、日曜劇場を見ているようにあっという間に読み終えた感覚である。
期間工で働く期間終了日直近の本田昴が、ボルトを落とした同僚を見かけてからのストーリーが圧感。
一台の車、ブレイクショット
ビリヤードの最初に打つのもブレイクショット
ブレイクショットというタイトルからストーリーがどんどん出るのは、凄いなっと思った。
あまり考えさせられる部分のある小説ではないが、
今後ミスをしたら正直に言おうと思う。
Posted by ブクログ
車生産工場の期間工員 本田昴の話から始まる
昴はブレイクショットとゆう車種の製造ラインで
ボルトをひたすらはめていく作業をしている
期間最終日に同僚がブレイクショットの車体内に、
ボルトを一つ落としてしまうのを見た
落とした本人も周りも気づいていない
ミスを報告しなくては・・・
シーンが変わり中央アフリカの戦闘地帯の
少年兵たち
更にシーンが変わり、
サッカーのユースチームで
年齢は3つ違うが親友の霧山修吾と後藤晴斗、
その両親達
と、大きく3つのエピソードが
展開していく
そのどれにもブレイクショットが出てくる
そして、どの話も不穏な出来事が起こる
修吾と晴斗、この2人には幸せになってもらいたい
のに、どーしてこんなにも障害が立ちはだかるのか、
もどかしくてならなかった
その中で、後藤晴斗の父、後藤友彦の話が
とても泣けた
家族を愛していて、
仕事にも誠実な後藤友彦が
「大層な人間じゃない 〜中略〜
でも、そんな俺にも、
なくしようがない取り柄はある。
それは、善良さだと思っている」
自他ともに認めるいい人なのだが、
ある事故にあい、脳障害のため
一時的に人格が変わってしまう
不運としか言えないし、そんな自分が嫌になるが、家族は友彦を支え続ける
後藤家の結束力は素晴らしいです
それはきっと友彦がずっと家族を大切に
愛してきたから
社会問題が多々盛り込まれていて、
所々文字を追っているだけで、
意味がわからない箇所もあった
(特にマネーセミナーのあたりとか)
最終章「エピソード」で全ての事が繋がり
登場人物大集合になる
(私はそーゆー展開が個人的に好きです)
しかもあれだけ不安になりながら
読んでいたのに、
最後安心した気持ちで読み終えられた
・・・にしても、
全577ページは私にとってかなり長かった~
Posted by ブクログ
あらゆる事柄の中心に、あるいは脇役に、ブレイクショットはいつもあって、多くの人たちの悲喜交交を見ていた。
投資、格差、LGBTQ、特殊詐欺、貧困、家族、アセクシャル、反社…
現代社会のホットトピックを凝縮したような社会派サスペンスでした。
エピローグの伏線回収はマジで凄かったなー。
これが直木賞取れなかった理由…わからん。テーマ広げすぎて、ちょっと説明っぽいところが長かったとか?いや、それを差し引いてもめちゃくちゃ面白かったよ。
ある程度社会人経験を積んだ人の方が、用語がスッと入ってくるので読みやすいかも。
Posted by ブクログ
人生の軸となる3つの指標って何だろう?冬至は勤勉、家族、平穏。企業を打診されたときに聞かされた軸、マネー、ライフ、ゲーム。妻からあなたは変わってしまったのねと言われそれに対して理論的に説明する冬至が印象的だった。どちらの価値観が良いとかではないけど、自分がどのように生きていきたいか、どのように生きれば満足のいく、納得のいく人生を歩めるか。後藤は初めからそれが分かっていた。不慮の事故さえ無ければ。
いろいろなテーマから深掘りしていて面白かったが500ページ近くあって読むのに苦労した。
Posted by ブクログ
該当作がなかった直木賞候補の中でイチバン面白い作品だった。
(「乱歩と千畝 RAMPOとSEMPO」と「嘘と隣人」は途中で挫折してるので、「Nの逸脱」「逃亡者は北へ向かう」「踊りつかれて」の3作品と比べてだが)
先入観無しに読み始めたが、プロローグの時点で、馳星周さんの直木賞受賞作「少年と犬」を思い出した。
今作では、車(ブレイクショット)を狂言回しにして、所有者が困難に見舞われることで現代社会の様々な共同体ーサッカー、町工場、IT企業、不動産業界、投資系Youtuberとセミナービジネス、アフリカの少年兵での闇の部分や絶望が描かれている。
「取り柄は善良さ」の章で描かれていた家族のエピソードは、自分自身の経験と重なる部分が多く、読んでいて胸を締め付けられる思いだった。
途中からミステリーの羅生門効果のようにひとつのエピソードが多面的に描かれるのも読み応えを加速させ、伏線を回収するようにバラバラに見えたすべてがつながり、一気読みだった。
Posted by ブクログ
一台の車にまつわる群像劇 オーディブルにて
これまでの逢坂作品とはガラリと変わって、複数の登場人物が少しずつ絡む群像劇
色々な角度から社会問題を描いて考えさせられる
非正規雇用、偽装修理、LGBTQ、前頭葉障害、格差、貧困、少年兵、特殊詐欺など、、
前頭葉障害の症状やAsexualなど知らない事柄も沢山出てきた。
明るさと暗さの交錯具合が面白かった。
Posted by ブクログ
自動車工場の期間工として働いてきた本田昴は、期間満了を間近に控えた日、同僚がSUV“ブレイクショット”車内にボルトを落下させる作業ミスを目撃する。正社員登用や遠距離に暮らす彼女のことが脳裏にゆらぎ、昴は上司に報告するタイミングを逃してしまう。
場面変わって中央アフリカ共和国。貧しい家に生まれ、牛一頭の代わりに兵士となったエルヴェ。市販SUVを改造して機関銃を据え付けた通称「ホワイトハウス」に乗り込んで、要人護衛をすることになったが…
自動車工場の期間工、アフリカの若き兵士、投資ファンド役員、貧しくも善良な心を持つ板金工、サッカーで夢を追う少年たち、成績不振の不動産営業マンなど、多様な人物が織りなす人間ドラマ。
視点人物を中心とした一つ一つの物語が非常に高密度で読み応え充分。一方で、紛争、LGBTQ、格差社会、マネーゲーム、特殊詐欺、SNS炎上…とテーマが多岐に渡り過ぎて、焦点がぼやけてしまった印象もある。個人的には、特殊詐欺のコンゲームを最も面白く読んだ。“カモを育てる”という発想の妙。昨今YouTubeで蔓延る各種解説系のチャンネル。ボーッと観ていると足元をすくわれる日が来るかもしれないなと思わされた。
各章は“ブレイクショット“をキーに有機的に繋がっており、“ブレイクショット“を軸にした人物相関図を描いてみたくなる。ある章では悪人に見えていた人物が別の章ではまるで印象が変わってしまう…といったあんばいに、視点が変遷する群像劇形式を有効活用した意外性の演出が良かった。「ホワイトハウス」の由来はさすがに気づかなかったなー(笑)
週刊文春ミステリーベスト10 5位
このミステリーがすごい! 6位
ミステリが読みたい! 10位
Posted by ブクログ
ブグログの皆さんの口コミが高くて期待して拝聴。
ブレイクショットという人気のSUV車を作る基幹工達、その父、不動産屋の営業マン、サッカーのユースで活躍する男子2人、アフリカのとある国でゲリラに身を置かざるを得ない少年達。
と、それぞれの視点がぐるぐると回りながら、各登場人物がヤクザ、反社勢力、犯罪、障害、多様性、アフリカの貧しい暮らし、差別などの社会問題に対して必死にもがいていく姿が描かれる。
ブレイクショット自体は各話で基本的には不幸を運ぶ物として描かれる。
読み応えたっぷりで高評価も納得の一冊。
ただ、全体を通して苦しい展開が多く、読んでいてスッキリしない感じが疲れます。
Posted by ブクログ
車、戦闘、サッカー、社会問題。
男性が好きそうなもの(一般的にそう言われている)を、詰め込んである感じ。
いろいろてんこ盛りすぎて、私にとっては消化不良、、、。
単純に、サッカー少年2人の、成長の物語でよかったんじゃないかな?
Posted by ブクログ
『同志少女よ敵を撃て』は、独ソ戦というある程度限定されたテーマについて書かれたのに対し、本作は若干テーマがぼやけてたように感じる。
ブレイクショットという車が多くの人の手に渡っていく中で、関わる人々の物語や考え方に触れていくという構成である。日本からアフリカまで、犯罪者から富裕層まで、不動産屋から期間工まで、幅広い層の人物が登場し、かつ、経済系YouTuberのエセから Twitterにおける誹謗中傷・インサイダー取引・LGBTQなど題材もこれまた幅広い。幅広過ぎる。
読後感が浮ついたものになるのは必然と言える。個々の物語の濃度を上げるため、どうしても登場人物の主張が強くなる。つまり、非現実的になる。重厚感に欠けるのはそのせいだろう。
エンタメとして上手く纒められているのは、前作同様である。伏線の回収も上手いと感じた。著者の技量の高さはわかるし、別の作品も探して読んでみたいと思う。