あらすじ
8つの物語の「軌跡」を奇跡の構成力で描き切った、『同志少女よ、敵を撃て』を超える最高傑作
自動車期間工の本田昴は、2年11カ月の寮生活最終日、同僚がSUVブレイクショットのボルトを車体内に落とすのを目撃するが。マネーゲームの狂騒、偽装修理に戸惑う板金工、悪徳不動産会社の陥穽――移り変わっていく所有者たちの多様性と不可解さのドラマ。
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Posted by ブクログ
なんと巧みな物語!感心せずにはいられない。
「ブレイクショット」という一台の車の周りでさまざまな人間模様が繰り広げられる。
そしてブレイクショットはビリヤードにもかかっている。
主人公が入れ替わり立ち替わりで物語が進む様子は、まさにビリヤードのゲームが進んでいくようだったりする。
そんな中、明らかに現実世界にモデルがいる存在がいくつかいたりして、それらにど直球の批判的な眼差しが向けられることもある。
人にはそれぞれの複雑な事情があることを気にも留めず、憶測で判断し思慮なく表明する人々に対しては、特に批判的な表現がされている。
登場人物の苦悩や苦境が多い物語のため、ダークな面が多いが、最後には前向きになれる物語。
Posted by ブクログ
ふーん、タイトルから想像するにビリヤードのプロ選手の話なのかな?専門用語も多そうだし、ビリヤード自体なんとなくしか知らないし、読んでも大丈夫かな?
と思っていた時期が私にもありました。まず言えることは、もしビリヤードわかんない!っていう理由でこの本を読んでいないとしたらそれはまったくの取り越し苦労だということだ。ビリヤードという遊戯がこの世に存在するということだけわかっていればOK。
ちなみにタイトルにある「ブレイクショット」は劇中に登場する自動車のことです。
この「ブレイクショット」が様々な人物の手にわたり、そこで繰り広げられる人生模様を私たちはウォッチングすることになる。まさに『ブレイクショットの軌跡』。このタイトルを考えたひと天才では?
しかもすべての物語がどこかしらで交差して、それぞれの人生に影響を与えているというのもこういう群像劇みたいな作品では定番かもしれないけど、それが明かされたときのアハ体験的快感は、ミステリーで感じるカタルシスの解放に似たものがあって好きなんだよなぁ。
全体を通して、インサイダー取引やら株式投資やらTOBやらFIREやら、日本の働くおじさんたちが大好きな要素がいっぱい詰まっていて、なんだか日曜ドラマっぽい設定だし、本当に実写化したら流行るんでないの?
と言っても、この作品の本質はそういう経済学的なことではなく、もっと深いところにあると(私は勝手に)思っているのだけど、それをこの場で明かすわけにはいかない。真実は君の自身の目で確かめてみてくれ!
……前もこんな感じで感想を締めたような気もする。ワンパターンでお約束的な展開しか思いつかない私の脳みそはすでに固定観念で凝り固まりすぎている。でも柔軟な発想を持っていたとしたら、あらゆる展開を想像できると思うので、こういう本が楽しく読めるのも私の錆つきかちかち脳みそのおかげでもあるのかもしれない。
本の内容とは全然関係ないけど、私の頭の固さに感謝です(-人-)
Posted by ブクログ
晴斗が、悪い道入ってなくてよかった。そしてちゃんと幸せになってよかった。本当に最後までハラハラしてしまった。
人を投資に駆り立てて儲けようとする人たちは、人が安心して納得したいたら儲からない。あなたはこのままではだめだ。日本もこのままではだめだ。将来は不安だ。あなたはもっと稼いで投資しなければいけない。
不安を煽りたてられ、少し勉強して分かった気になってしまう自分のことだと思ったら。詐欺にひっかかるのは、自分だけが得をしたい、自分だけが賢い、と思ってしまうからだなと反省した。
晴斗の、聖書の話が心に残った。
自分が持つ能力を自覚して他者を助けるために使う、そのために、自分にあるものは何かを探すことが必要だ。
初めて知った内容だが、これが心に刺さった。「誰かを助けたい」と思うだけではなく、そのために自分にできることは何かを考える大切さに、今気づくことができてよかったと思う。
Posted by ブクログ
ある自動車メーカーの期間工が目撃した製造工程での商品への異物混入の瞬間。その小さな事件がビリヤードのブレイクショットのように、1台の車を巡り様々な登場人物の人生が動いていく…というストーリーと思っていたが、実はプロローグだと思っていたこのエピソードがエピローグだったというオチには驚いた。
読み始めの1章、2章は登場人物が魅力的で、特に宮苑社長のいう「根拠のない自信は無敵」という持論は、自分を鼓舞するために見習いたい考え方であった。
3章からは2人の少年の成長がメインとなってくるが、ここで唐突に挟まれるLGBT要素に、必要性を感じられず、安易なキャラ設定と正直辟易してしまった点もあるが、最後まで読み進めていくと、こういう自分の捉え方があまりに短絡的であったと自省させられた。
物事はもっと複雑で、グラデーションのあるもので、まさにブレイクショットのボールの動きのように全てを把握できるものではないということが作者の言いたかったことなんだろう。SNS時代において、1つの投稿が大きな反響を呼ぶこともあり、その影響力がたびたびクローズアップされるが、この「ブレイクショット」という車のように、誰かの仕事、物質的なものが様々な人に影響を与えるというのは当たり前のようではあるが、逆に今の時代では新鮮に感じられる。
途中、とても暗いストーリーとなっていくが、それでも続きを読ませられる文章と構成力で、最後には爽やかな気持ちで本を閉じることができた。本のボリュームからなかなか手を出しづらかったが、読んで良かったと感じられる一冊となった。
Posted by ブクログ
過去2作とも外国を舞台にした話だったので、登場人物の心情描写だけでなく、異国の描写にも心を惹かれていたので、今回の日本を舞台にした話はどうなんだろうとワクワクしていた。
今回も期待通り面白かった。
普段関わりのない層の人々が描かれておりその知見に驚きを感じた。
また、舞台が現代日本ということで登場人物の心情描写や思考について、深い理解が感じられた。
登場人物に喋らせる言葉は、基本作者も考えていることが多いと思うのだが、自分は作者と近い思想を持っているのかもなと感じた。
過去2作もそうだが、登場人物の行動や感情、思想について違和感がなく、私も同じことを思ってた、と、自分のふわっとした考えが言語化されて嬉しくなる場面も多かった。
この作者の次回作が楽しみだ。
Posted by ブクログ
待ちに待ってよーやく読めた。噂にたがわぬ面白さ。タイトルの「ブレイクショット」とは、小説に出てくる自動車の名前なのだが、ビリヤードの第一打ともかけている。
多種多様な色の球が干渉しあい影響しあってあちこちに転がり落し処に収まっていく…ナインボールだから、順番に当てさえすれば落ちるのはどのナンバーボールでもいいが、9番だけは最後に落したい(でないと小説が短くなってしまう)…ということで、プロローグの本田昴君の話が9番(車のブレイクショットが1番ボールなんだろうな)ってことだったのね。
なんのこと書いてるか分からないだろうけど、読めば分かってもらえると思う。ブレイクショットで広がった話が次々に収束する展開は、特に後半怒涛のポケットインラッシュでページ繰る手が止まらなくなること受けあいである。
後藤晴斗君のお父さん、不幸すぎるトラブルに巻き込まれるが、物語上の展開とはいえあまりに可哀そうすぎて読むの止めようかと思った。全ての善良で真面目な人々に幸せあれ!