あらすじ
8つの物語の「軌跡」を奇跡の構成力で描き切った、『同志少女よ、敵を撃て』を超える最高傑作
自動車期間工の本田昴は、2年11カ月の寮生活最終日、同僚がSUVブレイクショットのボルトを車体内に落とすのを目撃するが。マネーゲームの狂騒、偽装修理に戸惑う板金工、悪徳不動産会社の陥穽――移り変わっていく所有者たちの多様性と不可解さのドラマ。
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Posted by ブクログ
魂が震える作品。皆読んでほしい。
ブレイクショットの軌跡というタイトルも深い。
長編だからこそ、没入してそれぞれの人物の立場で深く考えることができ、最初から最後まで味わえた。
社会の一員である自分は、すでに世の中の出来事に関係していること。
人間ひとりひとり、問題のひとつひとつ、とても複雑なはずなのに、「まとめ」で知った気になってしまう現代社会のこと。
最後の彼女の言葉がとても良かった。
自分の打つボールが波及するという意識を持たない人間にはゲームに参加する資格はない。
だが、誰かがそれを打たなければならない。
Posted by ブクログ
同志少女よ敵を撃てがものすごく面白かったので、期待して読んだ。ブレイクショットという車が関係したバタフライエフェクト的な展開。それぞれの話がなんとも濃く深い内容で読み応えがあり、さらにお互いが繋がり、最後には混ざり合ってスッキリする展開となる。
おそらく見逃してるネタや伏線がたくさんあるだろうから、また時間をあけてぜひ読みたい作品。
Posted by ブクログ
経済格差、非正規雇用、LGBTQ、少年兵、特殊詐欺と、様々なテーマについて魅力的なキャラクターたちが悩み苦しみながらも前に進んでいく様子が気になって、読み進めるページが止まらなかった。身近なことから遠い国の想像も及ばない出来事まで全部繋がっていて、これだけ幅広いテーマを扱いながら、一つ一つが非常に濃く語られているのがすごい。
同作者の『同志少女よ、敵を撃て』でも思った通り、魅力的なキャラクターを描くのが圧倒的に上手だと思った。
インターネットやSNSで世界が繋がるということはどういうことなのか。世界中が繋がりすぎた現代社会のメタファーとしての車やビリヤードの描かれ方が素晴らしい。
「台の上のすべてを把握しようというのは傲慢だし、自分の打つボールが波及するという意識をもたない人間には、ゲームに参加する資格はない。だが、だれかがそれを打たなければならない」
作中のラッパーやアメフト選手のように有名じゃなくても、自分の言葉が無意識にだれかを排除していないか、考えないといけないと思った。
Posted by ブクログ
変なビジネス書を読むぐらいならこれを読んだ方が楽しめて、勉強になるぐらい面白いし、為になる。
著者の知識とそれを伝える力が凄い。
ブレイクショットがそれぞれの物語を繋ぎ、色んな人生を描いていく。
章の1つ1つが濃く、ここまで濃厚に書きながら、しかもテーマもそれぞれ違い、大事なことを語っていく。
家族、お金、時間など、生きる上で必要なものはここに書いてる気がした。
伏線も回収も見事。
読んでて最後まで楽しめたし、特に突っ込みどころもないのだが、必要以上に長く感じてしまったのが唯一の欠点だろうか。
読みやすさはあるがミステリーとは違い、膨大な量を読んだ後に得られるビックリ感がやはりミステリーのそれを超えれない。
ただ、知識として哲学としてなど幅広い分野で為になるのと、物語自体も別に退屈する訳ではないので、面白いには変わりない。
この著者の作品は好みだなと改めて思った。
Posted by ブクログ
該当作がなかった直木賞候補の中でイチバン面白い作品だった。
(「乱歩と千畝 RAMPOとSEMPO」と「嘘と隣人」は途中で挫折してるので、「Nの逸脱」「逃亡者は北へ向かう」「踊りつかれて」の3作品と比べてだが)
先入観無しに読み始めたが、プロローグの時点で、馳星周さんの直木賞受賞作「少年と犬」を思い出した。
今作では、車(ブレイクショット)を狂言回しにして、所有者が困難に見舞われることで現代社会の様々な共同体ーサッカー、町工場、IT企業、不動産業界、投資系Youtuberとセミナービジネス、アフリカの少年兵での闇の部分や絶望が描かれている。
「取り柄は善良さ」の章で描かれていた家族のエピソードは、自分自身の経験と重なる部分が多く、読んでいて胸を締め付けられる思いだった。
途中からミステリーの羅生門効果のようにひとつのエピソードが多面的に描かれるのも読み応えを加速させ、伏線を回収するようにバラバラに見えたすべてがつながり、一気読みだった。
Posted by ブクログ
会社役員のM&Aからヤクザの特殊詐欺まで多岐に渡ったトピックを扱いながら軸はブレイクショットという車という構成。
またブレイクショットにはビリヤードの1球目の意味もあるという、、
いや〜、重厚でした。疲れました。
そして個人的にはこれだけ多様な人を描けてるんだからわざわざLGBTQのトピックはいらないのでは?と思っちゃった。LGBTQは多様性を表現しやすいけど、そのせいで用いると逆にチープになってしまってる感(気にしすぎです)
Posted by ブクログ
ものすごく沢山のテーマが詰め込まれた壮大な小説でしたっっ!
ちょっと私が思いつく限りの、小説に出てきたテーマを箇条書きにしたい。
・同性愛
・アセクシュアル
・投資ファンド
・経済塾
・投資マンション
・不動産業界
・パワハラ
・サッカーのゲーム知識
・ビリヤードの知識
・スポーツ業界の抱える問題
・中央アフリカの武装勢力
・国産車の行方
・人種差別
・イスラム教とジハーディスト
・ヤングケアラー
・SNS発信
・暴力団
・特殊詐欺
・悪徳商法
・期間工の実態
てんこ盛りっ!!
分厚い本には、沢山の知識や問題定義を求める読者の方も多いのかなぁ〜!
私は分厚い本で、地下鉄サリン事件のみについて書いてあるものを読んで満足しているタイプなので、この『ブレイクショットの軌跡』ではもうお腹がいっぱい、はち切れそうでした!
でもこんだけのことに対して豊富な知識を持っていて、これをパズルのピースを合わせるように上手くはめていき一つの作品に書き上げられる著者の逢坂冬馬さんはすごいなぁ、と本当に驚き。
しばらくはこの壮大なスケールと内容のものを読む元気は生まれなさそうだけど、もしかしたらまた逢坂冬馬さんの本がめちゃくちゃ読みたくなる時も来るかもしれないっ!
その時はまた違う作品も手にしてみます!!
感動系にして、読書を泣かせようと書いていていない、ハードボイルドな書き方(使い方合ってるか??)はすごく好きな感じでした!!
Posted by ブクログ
『同志少女よ敵を撃て』は、独ソ戦というある程度限定されたテーマについて書かれたのに対し、本作は若干テーマがぼやけてたように感じる。
ブレイクショットという車が多くの人の手に渡っていく中で、関わる人々の物語や考え方に触れていくという構成である。日本からアフリカまで、犯罪者から富裕層まで、不動産屋から期間工まで、幅広い層の人物が登場し、かつ、経済系YouTuberのエセから Twitterにおける誹謗中傷・インサイダー取引・LGBTQなど題材もこれまた幅広い。幅広過ぎる。
読後感が浮ついたものになるのは必然と言える。個々の物語の濃度を上げるため、どうしても登場人物の主張が強くなる。つまり、非現実的になる。重厚感に欠けるのはそのせいだろう。
エンタメとして上手く纒められているのは、前作同様である。伏線の回収も上手いと感じた。著者の技量の高さはわかるし、別の作品も探して読んでみたいと思う。
Posted by ブクログ
うーん、中程までは面白く読んでいったのだが、次々と辛い出来事が起きてきて、おまけに「ユースチーム」の記述がどうも違っていて、そこから気持ちが離れてしまった。”ユース”は「年少から」ではなくほぼ15~18歳の年代のことを指すはずで、たとえ飛び級したとしても10歳かそこらで(ましてやサッカーを始たばかりで)入れるところではないので、このユースチームとは何のことを言っているのか?と。いい人に起きる辛い出来事もしんどかった。
まあフィクションだからねと言ってしえばそれまでで、それを楽しめばいいのだろうけど。
同志少女も海賊も面白かったので期待して読んだのだが、やや残念。