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19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画
商・林忠正は助手の重吉と共に流暢な仏語で
浮世絵を売り込んでいた。野心溢れる彼らの
前に現れたのは日本に憧れる無名画家ゴッホ
と、兄を献身的に支える画商のテオ。その奇
跡の出会いが〝世界を変える一枚〟を生んだ。
読み始めたら止まらない、孤高の男たちの矜
持と愛が深く胸を打つアート・フィクション。
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Posted by ブクログ
憧れは理解から最も遠い感情だよ
久保帯人.集英社.BLEACH・第20巻.藍染惣右介
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時代に認められなかった画家。フィンセント・ファン・ゴッホ。彼を支え、理解者として振る舞った弟のテオ。日本を愛し、日本に愛されなかった彼らに、もしも日本人の友人がいたら?………そんなおはなし。
フィンセント・ファン・ゴッホの人生には多くの空白が存在する。弟のテオとのやりとりや、友人であるゴーギャンとのエピソードはあまりにも有名であるが、詳細は語られない。本作はその隙間に入り込む形で展開される。事実と虚構が入り混じって物語が進み、虚構という名の希望が織り込まれる。これはある種、ポスト印象派的なエピソード作成ではないかと考える。印象派の作品はその瞬間が「どのように見えたか」と解釈を描く。ポスト印象派の作品は印象派の流れを汲んだ上で、「作者自身のオリジナルを加えた作品」であると私は考える。つまり本作は現実がどのようなものか解釈し、もしもこうだったら?という希望を加えた作品であり、作りとしてはポスト印象派の作品と同じなのだ。
テオは兄への憧れをどうしても捨てることのできない男である。過去への情景か、兄の才能故か。無垢な子供が父への憧れを抱くように、テオは兄への憧れを失うことはなかった。それが、どれだけ自身を苦しめる行為であってもだ。テオドルス・ファン・ゴッホはフィンセント・ファン・ゴッホの理解者であると語られるが、本作でもそうとは言えない。本当の理解者であれば、兄への感情に苛まれることもなく、妄執とも言える姿勢での支援を行うだろう。しかし本作では、テオの行う支援は苦しみ抜いた結果だ。憧れであり、愛であり、心身を削る妄執を糧として行われる。つまり、テオは自身の感情ですら理解できず、自身を定義できないという苦しみを背負って、兄と接しているのである。以上の点からテオは、兄と半身と言えるほど近いところにいながら、最も遠いところに心を置いていたことがわかる。この苦しみを乗り越え、心も二つで一つになる過程こそが本作の面白い点である。
たゆたえども沈まず。パリ市の紋章におけるモットーであり、元はラテン語を起源とする言葉である。氾濫を幾度も繰り返すセーヌ川に囲まれ、革命の渦中に置かれた都市・パリのように、どれだけ荒波に晒されようとも、決して沈むことのない。何があっても立ち上がるという不屈の言葉であり、時代の奔流を乗り越えてきたパリ市民たちの心に刻まれる言葉だ。さて、この物語におけるゴッホ兄弟は、この言葉に沿った人生を歩めたと言えるだろうか。「ゴッホ兄弟達だけでは出来なかった」と考える。フィンセントの絵は死後に評価され、テオもフィンセントの絵が認められる様を見る前にこの世を去った。つまり、この二人自体は夢に向かう道程で果てており、不沈とは言い難い。しかし、周囲の尽力があって、二人はこの言葉を体現した。テオの妻であったヨーの尽力はもちろん。フィンセントの絵を傑作と評した画商たち。社会全体で新しい創作が認められる土壌を築いた画家たち。「彼ら一人一人がゴッホの絵を不沈とした」……本作はゴッホの絵が不沈となる幻想の物語であり、神話である。
Posted by ブクログ
美術が大好きなので、それにフィクションを混ぜて面白いのか…?と思っていたけど、澄んでいて美しくて力強い瑞々しい文章が詰まっていて本当におもしろかった。手にとって良かった。
ゴッホとそれを世界に広めた一助を担ったとされる林忠正の物語。フィクションだけど、歴史を学んでいるような気分にさせてくれるリアリティがあって、解説まで読んで林忠正がゴッホと接触した事実は確認できていないこと、主人公の加納重吉は架空の人物であることに驚かされた。原田マハさんの凄さに感嘆すると共に、大好きな作家さんになった。解説で『歴史的検証をした上で、架空の人物や出来事を巧みに挿入し、物語としての「真実らしさ」を作り出している』とあって、なるほどと思った。それが原田マハの凄さなんだろうな。
実在する人と作品と時間軸に、架空の人物を織り交ぜながら人生を作り上げるって本当にすごい。不思議な本だった。歴史としてはわからない箇所も多いだろうけど、こうだったら良いのにと思わせられる美しくて切なくて力強い人生が詰まっていた。(とはいえ、テオの妻ヨーによってゴッホの作品が世界への一歩を踏み出したんだとしたらヨーが逞しすぎるけど。調べた感じヨーと息子フィンセントの功績は大きいみたいで義兄のためにそこまでやれるのすごいな)
たゆたえども沈まず。いいな。私もまたフランスに行きたい。
Posted by ブクログ
リボルバーの次に読んだ本。
ゴッホに関わる本を読むごとに彼らの解像度は上がっていき、今回またそれは増していった。
フィンセントとテオの関係性はなんとなくでしか知らなかったが、どの時期にどんなやり取りをしたか、フィクションではあるが知ることができた。
パリ時代、アルル時代、サン=レミ時代、オーヴェール時代という大きく分けて4つの時代の定着も自分の中でできてきた。
今作に出てきた林と重吉。浮世絵がどうフィンセントと結びついたのか疑問だったが、本当にこの本のやり取りがあったとするならば、スマートかつ面白い出会いだったと思う。実際にフィンセント達との関わりについてどんなものがあったかは史実にはないそうだが、本当にこの本に沿った出来事があったと疑わないできだった。
原田マハさんの、続きが気になるワードが出てきてすぐに場面転換という流れは、またかー。と思うが先が気になるページをめくる手が止まらない。
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小説・文芸
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