あらすじ
日本では毎年2万人、世界では80万人近くが自殺する。死因としては戦争や殺人より多く、WHOが警告する世界的公衆衛生問題だ。安楽死を選択できる国が増える一方で、自殺者の約85~95%には精神疾患があるとも言われ、自ら死を選ぶことの意味が改めて問われている――。〈自殺ゼロ〉政策を掲げるスウェーデンで、自殺研究の第一人者として知られる精神科医が、文化、宗教、歴史など多方面から徹底探求する〈生の価値〉。
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Posted by ブクログ
重くデリケートなテーマの本ですが、翻訳もこなれていて読みやすかったです。
「自殺は誰にも予測できない」「なぜ人間だけが自殺するのか」「自殺予防には意味がある」など、改めて考えさせられる内容でした。
また、最近よくフーコー関連の本を読んでいたので、安楽死と福祉国家の関係についても思うところがありました。
ちなみに、書名の一部が「自分を殺す」となっていますが、これは自殺、自害、安楽死、尊厳死など色々なケースを考察しているためです。
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もともと自殺大国ですし、日本でも安楽死を望む声が高まっていると感じられます。
自殺を望む人が罪悪感をもって絶望死するより、その気持ちを汲んであげる方が結果として自殺も減るだろうと思うので、(逆説的ですが)自殺防止のための安楽死制度に僕も共感します…もちろん前提として、生権力分析や政治的他殺には敏感であるべきですが。
この本にあるとおり、自殺を止める行為は確かにパターナリズム(父権的温情主義)だと批判できます。
また、自死の善悪判断も原理的に不可能だと思います(実はウィトゲンシュタインも、自殺は罪であるといった直後にそう自問自答しています)。
だから、産む産まないが自由であるなら、自死するしないもまた認められるべきだと個人的には感じてしまいます。
(しかしその一方で、フーコーを思い出しながら、この考え方を越える思想はどうしたら可能か? とも夢想してしまいますが…)
Posted by ブクログ
自殺要因と、自殺予防についての本。スウェーデンの作者なのでスウェーデンの話がメインだがたまに日本が出てくる(切腹と長い時間をかけて何かやると言う例)
スイスの埋葬期間が25年と決まっている(お墓も壊してしまうような記述がある)のに驚いた。狭いからかな。
Posted by ブクログ
〈自殺ゼロ〉政策を掲げるスウェーデンでベストセラー&アウグスト賞受賞。ノーベル生理学・医学賞の選定機関である名門カロリンスカ研究所で長らく精神科教授を務め、自殺研究の第一人者として知られる著者が、最新研究を基に自殺の実相と対処法を徹底探求した一冊。自殺者の約85~95%には精神疾患があるとも言われる一方、一種の自殺と言える「積極的安楽死」(本人の意志で医師に致死薬を注射してもらうなどする)や医師に薬をもらうなどして自ら死を選ぶ「自殺幇助」、延命措置を受けないなどの消極的安楽死「尊厳死」など、「安楽死」を選択できる国も増えている。
「自分を殺す」ことについて事例を挙げ、専門家の話も聞いて幅広く検討している。著者は、様々な事例を引きながら、自殺については、予防対策を強化することにより減らすことができると述べている。そして著者の最も主張したいことは「生きているだけで意味がある」ということだと感じた。
【原題】
ETT LIV VART ATT LEVA
(生きるに値する人生)
【目次】
第1章 自殺とはなんだろう?
第2章 自殺に予兆はあるのか?
第3章 なぜ自殺は禁じられているのか?
第4章 自殺する人は精神疾患なのか?
第5章 自殺に進化上のメリットはあるのか?
第6章 なぜ安楽死する人がいるのか?
第7章 1人の死が及ぼす影響とは?
第8章 自殺予防対策は可能だろうか?
第9章 意味のある人生とはなんだろう?
第10章 どうすれば自殺を止められるのか?
第11章 自殺をどう受け止めればいいのか?
第12章 いかに難問だとしても
訳者あとがき
Posted by ブクログ
安楽死が決まってから精神が持ち直した人や、自殺をして命が助かったことで経験談を語るなど一度は心の底から自死を願った人が、前向きに生きている様をこういった内容の本で読むのは初めてでとても良かった。
こういう話をもっと聞きたい。
当初思っていたのと内容は違っていたけれど、読んでみて良かった。
生きる側に立ちたい、という純粋な命を救う医者としての立場をシンプルに追求する様が好ましいなと思いました。小難しく考えれば色々あるとは思うけれど、医者ってシンプルに本当はそうだよな、と。