あらすじ
うる波は、事故死した夫「鹿野くん」の幽霊と一緒に暮らしている。彼の存在は秘密にしていたが、大学の後輩で恋人どうしの佐々と千花に知られてしまう。うる波が事実を打ち明けて程なく佐々は不審な死を遂げる。遺された千花が秘匿するある事情とは? 機械の親友を持つ少年、小さな子どもを一途に愛する青年など、密やかな愛情がこぼれ落ちる瞬間をとらえた四編の救済の物語。
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Posted by ブクログ
なんだか、凄く穏やかで優しい気持ちになれた。
人と違うところがあって、秘密がある。
幸せの形は人それぞれだし、そもそも形なんてないかもしれない。
そう受け入れて自分なりに生きていきたい。
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こんなにも脆くていびつで、それでも真剣に誰かを思う気持ちがある。世間の“正しさ”から外れていても、その人自身を支える形なら、それは立派な幸福になり得ると教えてくれる物語。誰にも言えない孤独や痛みを抱えた人たちが、触れ合うことで少しずつ救われていく――読後、静かに心が温まる。
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胸に響く言葉がたくさんありました。
私も鹿野くんに恋をしました笑
好きすぎて本買いました(^-^)
安曇くんも好きです
心に残った文章を記録しました
鹿野くんは好き嫌いがはっきりしている。苦手なものには向かい合わないし、克服できるようがんばることもしない。無駄な努力はしない。代わりに、好きなものには愛と力を注ぐ。わたしは、いいかげんで真面目な鹿野くんが大好きだ。(p23)
それが美しかろうが、醜かろうが、夢はひとりで見るものだ。(p75)
わたしも、みんな、自分が望む夢をまっとうできればいい。(p77)
人は自分が見たいものをその目に映す生き物だ。(p82)
鹿野くんはお気に入りを大事にし、気に入らないものを排除する。それがアンバランスであっても気にしない。それ変と指摘されてもマイペースを貫く。(p88)
とても平凡で、異常なわたしの夢。(p89)
鹿野くんはここにいる。(p114)
鹿野くんも無駄な努力をしない人だ。時間も体力も知力も有限なんだから、興味のないことに割く余裕なんてないと言っていた。代わりに、やりたいことに対しては力を尽くす。(p243)
わたしがなにに幸せを感じるかは、わたし自身ですら決められない。(p285)
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最初は「現実逃避の物語」や「過去との決別」がテーマなのかなと思った。
けれど、読み進めるうちにまったく違う顔を見せる。
それぞれの章があたたかくて、どこか救いがある。
でも、関わった誰かが必ず“現実”に傷を負う。
これが、生霊ってやつ?
「一緒にいたらいけないけど、一緒にいたい」
その自分勝手さを正義として肯定してくれる物語。
俺の近くには来ないでね。
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ヒリヒリした気持ちで読んでた。
私だったらどうするだろう?と絶えず振り返るような気持ちで。
うる波と鹿野くん、変わりなくて私は良かった。
結論なんて出るのかな。
出ないよね。
そんな簡単に決められない。
常識や人に何か言われたってそんな簡単に変えられるものじゃない。
なんで他人に言われなきゃならないんだろう。
なんで他人はとやかく言うんだろう。
貴方の為、と言う大義名分を振りかざして。
ほっといてくれ。私も貴方のことはほっておくから。
私も今、旦那と愛犬が幽霊となったらそのまま変わりなく一緒に暮らすかな。
もちろん、見えて会話できて少しでも体温が感じられたら…だけど。
Posted by ブクログ
大好きな一冊に。人それぞれの幸せを生きればいい。人にどう思われても自分が正解と思ったらそれが正解。四編の物語で全部よかったけど秋くんとロボットの春くんの話が特に好きだった。
主人公の否定から入らない性格がとても好きだった。自分が悩んでいることは、内容は違えど同じように他の人も悩んでいるかもしれないと思える一冊。
Posted by ブクログ
誰もが秘密を抱えている…些細なことでも大きいことでも。私自身も多分何もなさそうに見えて秘密はあるし、世間も多かれ少なかれそうなんだろう。
暖かく見守ることも大切だし、自分はこれで良いと信じることも大切だな
Posted by ブクログ
凪良ゆう先生の描く、普通でなくていいと覚悟を決めたひとたちの放つ強さや美しさは唯一無二で、最高。そしてなにより、うる波が鹿野くんの幽霊とお別れするのではなく、一緒に生きていくことを決意するまでのはなしだったのが、もう亡くなった人や会えない人と「区切りをつけないといけない」という普通にとらわれていた自分にあたらしい世界を見せてくれてうれしかったです。
Posted by ブクログ
人の心、超えてはいけない境界、自由であること、秘密
人が人を好きでいることは自由であるはずなのに、【常識】【普通】にわたしたちは左右される。大人になるとその視点からより抜け出せなくなる。でもその視点は、【自由】を守るためにも大事なのだと思う。それが、うる波と千花の違いだったのかも。(そもそも前提が違うけど)
好きな人がこの世から去ったつらさは計り知れない。私も幻想を描くかもしれない。砂糖で作られたお城を守るかもしれないなと思った。
とっても現代に即している
凪良先生の作品はどんな人も否定しないところが素敵だと思います、ロリコンでも狂ってても、人に迷惑かけてなければいいではないかと
共感などは求めない、もしくは押し付けるべきではない、という感覚は、最近の20代の子たちに非常に共感できるのではないかと勝手に思っています
あと、同著作品である「おやすみなさいまた明日」の作中に出てくる主人公の書いてる作品ってタイトルこそ違えどこれじゃない?って勝手に思ってます。
凪良先生の本だ〜表紙可愛い〜アハハ〜って読み始めたら……
もう一気になんて読めなくて。
苦しくて切なくてふとしたワンフレーズに心を抉られつつ時々本を置いて考えて………。
ゆっくりゆっくり読みました。
何だろう、
とにかく、
何か色々つまってました(語彙不足
間違いなく買って損はないです。
多様性
人の生き方、幸せの多様性を考えさせられるお話でした。自分の中の非常識な部分との折り合いのつけ方、他人と自分の考え方の違いを理解した上で、相手との距離の取り方にとても共感できました。凪良先生のお話は、考えたことないような内容のお話でも、最後にはきっちりお話を納得して楽しめるので大好きです。鹿野くんがはじめ苦手に感じたけど、最後にはすごく好きになれました。
Posted by ブクログ
亡くなった旦那の幽霊と生活をするという非現実的な設定で、誰でも楽しめそうな感じがして、物語の入り口は広い。
一方でそこにある人間関係や心情はドロドロとした描写も多く、現実味があるからこそ、自分の生活や現実社会を考える場面も多くあった。
自分は自分のままでももしかしたらいいかもしれない。
誰もが様々な事情や秘密を抱える中で、自分らしく生きることの大切さを再確認できました。
Posted by ブクログ
亡くなった夫の幽霊と暮らす女性が主人公。
ロボットと人間の友情、いとこ同士惹かれあってる高校生、未成熟に惹かれる男の子、などいろんな愛の形が出てくる。
一般的ではない形の愛を選ぶと、周りから変な目で見られたりする。「普通の」人には無条件に認められるものが、努力しないと手に入らない。
悲壮感漂う感じではなく、「私はこれで生きていく」という主人公の強い決意を感じた。
面白かった。
Posted by ブクログ
自分の当たり前という価値観が、他人にとっての当たり前ではない。
自分の当たり前を人にぶつけることがよくないということを知れた物語。
短編集のような形式になっていたので、読みやすかったです。
Posted by ブクログ
いつこの状況が終わってしまうのかなとどきどきしながら読んでいたけれど、ハッピーエンドな感じでよかった
とくにロボットの秋くん春くんの話が刺さった
私も同じ状況になってしまうことがもしあるとしたら、壊れてると思われてもいいから大好きな人が幽霊になってずっとずっと一緒に生活してくれたら良いなと思ってしまったな〜〜
もっとこのおふたりの静かで優しいおだやかな日常がみていたいと願ってしまうな?
Posted by ブクログ
〝愛という名のもとに平等はないの〟
くうううー!さすがわたしの大好きな、凪良先生の書く台詞だなあと、感嘆
〝あなたはあなたのままで良い〟〝色々な形があって良い〟〝自分の中の正解を信じれば良い〟というような、物語を通してわたしを肯定してもらえる、凪良先生の作品がやっぱり大好きだと、再認識させてもらいました
Posted by ブクログ
事故で死んだはずの夫が当たり前のように縁側にいて、妻のうるはに話しかけてきた。
当たり前だがうるは以外の人間に夫の鹿野は見えていない。しかしそこから始まる奇妙な夫婦生活。
うるはと幽霊である鹿野くんの日常を主軸に、うるはの周りにいる人物たちの物語が描かれている。
鹿野くんの後輩の男の子とその彼女
うるはが家庭教師を頼まれた家の男の子とロボット
ロリコン男と小4の女の子
学校内一美少女と美大を目指すストーカー青年
ご近所に住む素敵な老夫婦
どれも普通とは違う形の愛情が描かれている。
それはときに歪んでいて、誰からも受け入れられないものだったり。
神さまのビオトープというタイトルと表紙から穏やかなな物語を想像していたが、序盤から不穏な流れとなり、さすがは凪良ゆうと思った。
穏やかな空気の中にほんの少しのぞく痛みや苦しみのある文章が私は好きだ。
特に春くんと秋くんの話はこちらにも大きな問題を問いかけてくる内容だった。
ロボットは感情や理屈では語れないものを排除した、合理的な存在だと決めつけていたけど、そうでないなら、ロボットと友達でいてはいけない理由ってなんだろう
うるはでいう夫の鹿野くんのように、春くんには秋くん、秋くんには春くんじゃないといけない、唯一無二の存在。替えが利かないものだ。
所詮ロボットじゃないかと周りはいうかもしれないけど、人が一生の中で、この人じゃないといけないと思えるほど大事な存在ってきっと片手で数えるほどしかいない。
もしかしたら一生かけても見つからない人もいるかもしれない。
そんな中で、一生をかけても守っていきたい存在として春くんがいたなら、
やはり理屈云々じゃなく、秋くんのかけがえのないものなんだと思った。
通奏低音のように絶えず流れる不安を聞きながら、今夜も、明日も、明後日も、わたしも、みんなも、秘密と決意に満ちた暮らしを守っていけますように。
うるはの願い、祈りにこの本の全てが込められている。
Posted by ブクログ
とても素敵な物語だった。
語り手のうる波さんが心根の穏やかな人なので、読んでいても無理に共感を求められたり、感情的に消耗してしまうことはなかったが、それぞれの慈しみの形を静かにそっと覗かせてもらえたようで、温かな気持ちが胸に残った。
一見この作品中の人々や出来事が特別なように感じられてしまうところがあるが、身の回りの人たちも案外すごくドラマチックな歴史を作り続けているのかもしれない。
Posted by ブクログ
久々の凪良さんの作品、優しくて儚い物語だと感じた。すごく良かった。事故で夫の鹿野くんを亡くしたうる波を自分に重ねて想像すると絶対に同じことをしてるだろうな、と。何度も「普通」や「常識」に揺さぶられながらも、鹿野くんへの愛だけが確かなものだとしてなんとか自分の幸せ、今の生活を保とうとするうる波が健気で、強くて、でもギリギリのところで倒れそうで、見ていて切なかった。章ごとに、人には言えない秘密をかかえる人たちが登場するけど、特に佐々くんと千花ちゃんのお話が絶望すぎて、衝撃だった。さすが凪良さんという感じ。
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亡くなった夫の霊と暮らすうる波。
どの話も自分の答えを見つけるまで時間がかかりそうなテーマを扱っていた。
一話目の千花ちゃん、きっと彼が亡くならずに自分から別れを切り出していたらこんな気持ちにはならなかったよ。
ロボットをだいすきになってはいけないのか。これも難題。一般的に人間ができうるとされる行動よりも多くの影響力があるからこそ、人間とは違う制限をかけられてるんだと思う。
小4しか愛せない金沢くん。私たちが歳の差を受け入れ難いのは本能なのか、そんな文化で育ってきたからなのかと最近読んだ他の本でも思ったことを再び思い出す。
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これは確かに「流浪の月」の原形かも 「常識」から外れた生活に自分の居場所を見つけている人たち。小学4年生の女子しか愛せない誠実な大学生は「流浪の月」の文の原形かも。
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いつ、この状況が終わるのだろう。とハラハラした気持ちで読んだ。
鹿野くんが、うる波の幻想なのかと思ったけれど、うる波の知らない事を鹿野くんが知っていたり、本当に存在してるんだ…と思えば思うほど鹿野くんが消えてしまうのが怖かった。
でも、ずっとずっとこのままで居られるなら…
これほど心強いことってないなと思う。
そりゃ鹿野くんさえ居ればそれでいい。
そう思うよね。
周りから見えてる事が全てではない。
佐々くんと千花ちゃんは、途中でヤバいなと思ってたけど、彼女が直接 佐々くんの命を奪ったわけではなかったところはホッとした。まぁ、命を奪ったも同然だと思う気持ちもわかるけど。
私も自分の感覚で、人のことを決めつけるのは辞めないといけないなと思う。その人の幸せなんて、人からはわからない形かもしれない。
Posted by ブクログ
★★★☆☆星3【幽霊になった夫】物語のスタートからいきなり夫が交通事故に遭い死んでしまう。そして生きていたころと変わらない雰囲気のまま幽霊となって主人公うる波の前に現れる。みんな秘密を抱えていて、生きている。本人が幸せなら周りがとやかく言う筋合いはない。エピペンを隠した千花ちゃん、親友のロボットよりロボットっぽい秋くん、小四を愛する金沢くん、身内に恋する立花さん。誰もが危うい。千花ちゃんと金沢くんはちょっと受け入れられないかな。
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今を時めく人気作家、凪良ゆうさんが最近気になってきたので、まずこの本から読んでみました。
主人公は〈わたし〉、鹿野うる波28歳、週5日私立高校で美術の非常勤講師をしている。結婚して2年になる夫鹿野くんが、交通事故で亡くなった。葬儀後、祭壇には遺骨があるのに、鹿野くんが縁側に現れた。
これは連作短編集ですね。「プロローグ 秘密I」と「エピローグ 秘密II」の間に、「アイシングシュガー」、「マタ会オウネ」、「植物性ロミオ」、「彼女の謝肉祭」が収録されています。
この本丸ごと一冊、一見しただけではわからない、当事者の心の中だけにある真実(本作においては「秘密」)について、周囲にいる人たちが意識するしないに関わらず抱いてしまう偏見と誤解と無理解、またそこから生じる差別を、あきらめとともに受け入れながら、揺るがない信念を持って生きる人たちの物語になっています。こういう人たちは、自分の好きなもの、大切なものを守るために、世間の風を正面から受ける覚悟を持っているだけあって、潔くてすごく強い。なんかもう無敵です。
2017年の書き下ろし作品ということもあって、感性が若いなぁと感じました。自分も昔はそうだったからわかる、若さゆえの熱さを感じたと言いますか、今オバサンになった私からすると、うーんそう言いたくなる気持ちはわかるけど、そこはちょっと違うんじゃないかなぁと思うところがいくつかありまして。
例えば、〈苦痛に意味なんかない〉、〈なくても幸せに生きていく人は大勢いる〉と書かれていると、いや苦痛には必ず意味があるし、苦痛のない人生なんてないでしょう、とオバサンは思ったりするわけです。ぱっと見苦痛なく幸せに生きているように見える人だって、必ずいつかどこかで苦痛は味わっているはずだし、これから味わうこともあるかもしれないしね。そういういろいろがあってこその幸せな人生だと思うのです。
星は2つかな、と思っていましたが、エピローグが良かったので3つにしておきます。
Posted by ブクログ
夫の幽霊と暮らすというなんとも不思議な展開。
この構成力こそが作家の力なんだろうなぁ。すごい、のひと言。短編作になっているけど、それぞれ楽しめます!!
Posted by ブクログ
全体的にはまぁおもしろかった。でも、正直「んん?」ってなる部分もあって、100%物語に没入できたかというとそうでもない感じ。
このお話、4つのエピソードからなるオムニバス形式で、一人の女性が全ての物語に関わっていくスタイル。
主人公の女性は幽霊になった旦那と一緒に暮らしてます。
まずこの設定、小説だしフィクションだし別にいい。むしろ、この物語の核になる部分だから「現実離れしてる」なんてツッコミをいれるつもりもない。
でも、個人的にちょっと冷めちゃったのがロボットと少年のエピソード。
物語の舞台は現代の日本。それなのにAIを搭載した人型のロボットが普通に街を歩いて、人間と会話してる。
あれ、この世界って現代日本の話だよね…? なんでここだけ急にSFになったの!?
2025年の今でこそAIの進化がすごいから「そんな未来もあるかも」って思えるけど、この本が出たのって2017年。ChatGPTもない時代にこの設定は、当時読んだ人からしたらかなりトンデモ設定に感じたんじゃないかな。
と、こんな感じで一部受け入れられない部分はあったけど、お話全体としては読みやすくて楽しい作品でした。
ただ、同じ凪良ゆうさんの作品なら、個人的には『私の美しい庭』の方が傑作だったかな。あれもオムニバス形式だけど、物語全体の一貫性とか構成がもっと巧みだった気がする。
なんだか批判っぽくなっちゃったけど、良かったところももちろんありました。
それはキャラクター作り。この作者さんが描くキャラ、すごく好感が持てるんだよね。特に男性キャラは、まだ2作品しか読んでないけど共通点がある気がする。
線が細くて、ちょっと省エネタイプ。でも、どこか子供っぽいところがありつつ、いざという時にはスッと手を差し伸べてくれる…。少女マンガから出てきた理想のキャラみたいで、そこは女性にウケるポイントなのかな?