Posted by ブクログ
2019年05月29日
19世紀末のヨーロッパを舞台に、鳥籠使いの男、真打津軽と怪物事件専門の探偵、輪胴鴉夜が遭遇する異形異様の犯罪を描いたライト文芸ミステリ。まず冒頭からその雰囲気にすっかり呑まれてしまった。とにかく雰囲気を作るための描写力が卓越しており、伝わってくる空気はかび臭くもおどろおどろしい。19世紀はロマンの塊...続きを読むで、まだ世界が解明されていないような、未知の部分への強い憧れと恐れを感じる時代で、そんな時代の雰囲気がよく出ている。また探偵役とワトソン役である二人のキャラクターも奇妙で、その設定は非常に面白い。この怪しい世界を闊歩するに相応しい異能の人間たちである。今までの作品とは毛色も雰囲気も違う本作ではあるが、掛け合いとなると著者らしい軽妙洒脱な会話劇となっており、このあたりのノリの良さはラノベ方面にも強烈なアプローチをかけている。加えて話の骨子となる本格ミステリの部分は少しも衰えておらず、吸血鬼や人造人間といった異形異様の怪物の特性を条件に加えているため、単なる普通の事件に留まらない、怪奇事件としてのインパクトがある。バトル要素もあるが、そこへの繋がりがシームレスで、クライマックスを彩るに相応しい流れであるため、蛇足には感じず、むしろラノベとミステリの奇跡的な融合を見てしまったた。エンタメ性が非常に高く、ライトノベル方面にももっと広まってほしい最高のミステリでした。2巻も楽しみです。