あらすじ
廃止予定の宇宙停留所には家族の星へ帰るため長年出航を待つ老婆がいた……少数者に寄り添う心温まる未来を描く短篇集、文庫化!
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Posted by ブクログ
やはり日本文学ではないぶん初めは少し読みづらかった。ただ素晴らしい。孤独、悲しみ、そして愛。とても優しい愛に包まれた悲しみ、孤独の話。人間の弱さはきっと情報化、技術、AIなどの進歩があるこの世の中でこさ失ってはいけない愛しい特性の一つであると思う。どこでどなような時代を生きようとも、お互いを理解することを諦めたくない。そのような信念、優しさが溢れ出していた。
Posted by ブクログ
この短編集は一貫して
人間の知的好奇心が描かれているように思う
私たちは感情があるからこそ苦しんでいるのに
苦しみさえも取り上げられたくないという
矛盾した存在であること、
目に見えない物こそ物質としての所有欲があるのではないか…などとSFを超えた哲学的問いかけがかなり読書欲を刺激してくれた。
人と“何か”の善意によって、
あるいは善意とも言えない、
本能的な、偶発的な、何かによって起こる
“こうだったら世界って素敵”って思えるような
心温まるストーリーの連続。
こんなにも好き!って思えた短編集は初めて
【巡礼者たちはなぜ帰らない】
感情のない村。愛が存在しない村。
マイナスの感情を知らない子どもたち。
大人への儀式として地球へ旅立ち、
なぜか半数は帰ってこない。
そして誰も疑問を持たない。
その構造に主人公だけが何かがおかしいと気づく。
この筋書きはSF的なのに
「人は感情を持つからこそ美しい」
という、とても普遍的なテーマ。。
これは“地球と村の対比”の物語。
やっぱり、世界は愛でできている。
【館内紛失】
魂をデータ化し、死後もそこにいることが可能
になるという設定。
物語の中で強く響いたのは、
「人は絶えず変わっていく。変わらないままのデータはただの魂の剥製ではないのか」という指摘だった。
(以下すごく感想です↓)
私はふと、父がよく話していた死生観を思い出した。
「葬式は、死者のためではなく
“残された人のため”の儀式だ。」
でも、データとして死者が残る世界ではどうなるのだろう。儀式は役割を失い、むしろ遺された側を引き留めてしまう。
データとして残ることは、残された側の執着を逆に増幅し、残されたデータ側からしても、死後まで“消費され続ける自分”という呪縛が生まれる
だからこそ、この短編が刺した痛みは
未来のテクノロジーではなく
人は変わることでしか生きられないという
本能への肯定。
私たちは成長し続ける。何かを好きになったり、
急に嫌いになったりする。
肉体も絶えず細胞が入れ替わっている。
変化こそが生きている証なのだと思う。
Posted by ブクログ
間違いなく今年ベスト!
軽やかで日常的なSFの世界に簡単に入り込める。ミステリーの要素もあるけれど、終わり方がどれもスペクタルなものではないところが穏やかで優しい。
短い話なのに一生覚えていて、つい人に話したくなる話が何個もあった。キムチョヨプさんの本は全部読もう!
Posted by ブクログ
韓国作家さんのSF短編集。スペクトラムが1番好き。どの作品も共通して孤独にそっと寄り添うような静かな優しさがある。切ないけれど温かさもあって、とても好きな文章でした。他の作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
SF系の短編集の中で最高傑作かもしれない。
SF的な世界観と退廃的な雰囲気や少しディストピア的な要素の中に、愛や優しさというものがここぞとばかりに詰まっている。
この世界観とテーマの親和性が素敵で、読後に胸に温かさが残る素敵な物語ばかりだった。
Posted by ブクログ
「巡礼者たちはなぜ帰らない」の中での、出産に際してのリリーの葛藤、「自身の人生を呪っても自身の存在を呪うことはできなかった」という一文が印象に残った。
ありのままで存在すること肯定する、ということは大切だと理解できるが、現実では困難を伴う。それでもそれを乗り越えて成長したい、という主人公の強い決意に勇気づけられた。
Posted by ブクログ
7つの短編SF小説
読んでいる間は
広い宇宙の中で
ひとりぼっちに見える地球を俯瞰しながら
忘却や断絶
分離主義などの
ここ 地球上にある宿命や憂いの
根っこのようなものを
ずっと望遠鏡で拡大して見ているような感覚でした
すべての物語に希望があり
心が暖かくなる気づきがあったのに
なぜか少し泣きたくなった
これからもこの場所は
困難な問題を抱えながらも
変化していくんだ
すべての物語を読み終えて
その困難さに立ち向かっていく
静かな覚悟が芽生えた
Posted by ブクログ
素晴らしかった。全ての作品がとても濃密で味わい深く、寂しく愛おしい。大切に抱きしめながら読んだ。誰もが抱える寂しさと、それでも誰かに手を伸ばしたいという切実な想いが詰まっていた。どれだけ技術が進んでも、理解しようという姿勢、誰ひとり取り残されない未来を信じたい。
特にお気に入りは「巡礼者たちはなぜ帰らない」「わたしたちが光の速さで進めないなら」の2篇。
あとがきも素敵。SFっていいな。
Posted by ブクログ
韓国の新進気鋭のSF作家 キム・チョヨプの初短編集。
ほとんどの作品がマイノリティを主人公にしている。特に女性科学者が多い。これらの主人公はマイノリティである一方で、社会的には成功者達である気がするので、その辺をどう捉えたらいいんでしょうか。フェミニズム文学?マイノリティ文学?(そもそも間違っているかも?)についての理解不足が露呈している。
この短編集は地球滅亡などの大きな危機に立ち向かうものではなく、科学技術の発展した近未来での人間の心理を題材にしたものになっている。ハードの進化によるソフトの変化を考えるうえで非常に面白い作品群だった。
ハード面については、サイボーグ化といった身体改造が多かった気がする。身体にメスを入れることへの抵抗が少ないのかな、と感じた。もちろんSFなのでありがちな設定ではあるのですが。
Posted by ブクログ
もっと読みたい
あぁ 終わっちゃった…
という気持ちにさせてくれた
どの短編も やわらかい雰囲気がした
不思議な読み心地
空想の世界にとっぷりと浸かったような
こんな軽やかなSFもあるんだなぁ。。。と
この本を読んで 何だか無性に
宇宙について調べたくなった
宇宙図鑑が欲しい 笑
どの作品も味わい深い。
スペクトラム というお話では
ちょっと泣きそうになった
あとから じわじわくる
すごく よい読書時間だった
この著者の本は
全部読みたい
味わいつくしたい
Posted by ブクログ
ここではないどこか、まだ見も知らない誰か。
無力で孤独で未来が見えない頃の方が、遠くが見えていたのかもしれない。
寂しさが温度をもって心に寄り添うSF短編集。
Posted by ブクログ
韓国SFを読むのはおそらく初めて。
クローン技術やコールドスリープなんかのSF要素満載で未来的なのに、なぜか懐かしいような不思議な感覚を感じながら読んだ。舞台は未来的SFでも、出てくる人間の孤独や後悔、誰かを思う気持ちは今と変わらないからかな。
個人的に「スペクトラム」「感情の物性」「わたしのスペースヒーローについて」あたりがとても好きだった。ありそうでなさそうで、でも完全に否定もできない不思議な世界で大切な人との別離を経験し、喪失感を感じながらも日々を生きる人達の人生の機微。その描かれ方がさみしくもあり、やさしくもあり。
読後泣けるほど悲しいわけじゃないけど、胸がひんやりするような寂しさが残った。嫌な感じの寂しさではなく、少し温度のあるひとりで抱えられるくらいの寂しさ。それも含めてすごく好きな一冊だなぁと。
Posted by ブクログ
韓国の作家さんによるSF短編小説。
孤独や寂しさといった、どちらかと言うと陰の感情を織り交ぜながら優しく綴られた小説。
SFなので、異星人との初邂逅!とか、ワープホール通過!とか、壮大な舞台設定があるのだけれど、描かれているのは心情を主軸としたよりミクロなドラマ。なんというか、このギャップの完成度が高くて圧倒されました。作者さんの他の本も読みたいと思わせる作品でした。
Posted by ブクログ
初の韓国SF。
名前だけだと性別判断ができず、読んでるいる途中でわかることが多い。思い込みがあることを実感。
プロジェクトヘイルメアリーや三体を読んだ後だと物足りなく感じるかと思いきや、身近で想像力をかきたてられるよい作品集だった。
Posted by ブクログ
私はSF音痴なのだけど、これは同世代の女性の作家さんが書かれた優しくて繊細な世界観でじんわりと浸ることができた。
韓国は若いSFの書き手が豊富で、というのも日本よりももっと女性やマイノリティに対する古い考えが強く、抑圧されていると感じる人が多いようで、SFという非日常を課すことでそれを表現する作家が多いと聞いた。
この作品を読むと女性への風当たりの強さや人間ならではの不自由さがよく伝わってくるし、それでも、今この世界で生きていく美しさというものを感じることができる。
「共生仮説」「館内紛失」が特に好きだった。
Posted by ブクログ
SFは普段ほとんど読まないから新鮮だった。どの短編にも宇宙や科学にまつわる非現実的な(かつリアルな)できごとが描かれているけど、そのなかには手のひらで触れそうな愛情だったり、私もよく知っている寂しさだったりが含まれていた。私の住む場所とはかけ離れた、想像もつかない世界の話なのに、そこにある感情は想像がつく、その感覚が心地よかった。
【読んだ目的・理由】読書会で紹介されて気になったから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.2
【一番好きな表現】何より、時折ルイがヒジンに向かって口を横に広げながら顔をゆがめるとき、それはヒジンの真似をして微笑んでいるということなのか知りたかった。それがわかれば、微笑み返すこともできるのに。(本文から引用)
Posted by ブクログ
キム・チョヨプさん初読です。93年生まれ、韓国SF界新進気鋭の作家は、バリバリのリケジョでした。でも、全く堅苦しさのない、むしろ優しさが感じられる筆致でした。在学中の文学賞受賞作を含む著者のデビュー作で、 7篇の短編集です。
どこか遠い場所や未知な存在への憧れがあるという著者は、豊富な理系知識とそのアイディアを駆使し未来世界を描きます。巧みなのは、明るいはずの未来世界で、こぼれ落ち孤独な人に目を向けた構成で、希望を示している点だろうと思います。
私たちが今暮らす社会の差別や抑圧・孤独が、未来でも見られるのは悲しいですが、著者は人間の本質に迫り、私たち個々の価値を認識して人との距離を大切にする描写が、読み手に訴えてくるようです。この愛情ある表現が魅力なのでしょう。
現在と未来との差異が際立つほど、何気ない他者とのコミュニケーションの温かさが恋しく、人は温もりや絆を求めるものなのかもしれません。
著者の「宇宙の開拓が進むほど、宇宙に存在する孤独の総量を増やしていくだけ」「どの時代を生きようとも、お互いを理解しようとすることを諦めたくない」という言葉が、全編に共通する想いなのかもしれません。
恐ろしいほどのスピードでAIが進歩している昨今ですが、人の不完全さが大切にされる世の中がなくならないでほしいものです。
Posted by ブクログ
SFとしての要素もかなり楽しめますし、人としての「感情」とか「存在意義」、「愛とは何か」「家族とは何か」など大切なことを教えてくれているような優しくて切なくなる短編集でした。
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どの話も個人の選択を大切なものとして扱っているようだった。選択した結果をとても優しく丁寧に描写している。人の本心を直接的に言葉にするのではなく、ひとつの風景として心に残る形で描いている。
世の中の目で見ると彼らがした選択は悪いものに見える。でも実際は良い悪いという単純な話ではなくて。
それは人間味のある選択で、どこか共感できてしまう。
Posted by ブクログ
どんなに時代が進んでも、科学が発達した世界でも、人間の心の柔らかい部分は変わらずにあればいいなと思う。SFでこんなに優しい物語……
「感情の物性」がおもしろかった。物性はいかにして人の心を捉えるのか。
Posted by ブクログ
韓国の作家さんのSF短編集。
SFならではの高度な技術進歩が、人間の不完全さをかえって愛すべきものにしているような矛盾を感じた。
人間って本当によく分からんところがいいよねっとなる一つ一つが優しく素敵な話。
Posted by ブクログ
1つひとつの短編に余韻があって、しばらくひたっていたくなる。
SFだから、未知で私たちの知らない世界のはずなのに、どこか懐かしい郷愁のような感覚がずっとあって、そこにひきつけられたのかもしれない。
読んでいて優しさと哀しみという絵の具をパレットで混ぜ合わせて、新しい名もない感情を胸に抱いた気持ちになった。
色があるとしたら、きっと、すごく澄んだ人を育んでくれるような色だ。
「スペクタル」「わたしたちが光の速さで進めないなら」が好き。
Posted by ブクログ
「巡礼者たちはなぜ帰らない」の感想。
なぜ巡礼者たちは帰ってこないのか?その疑問を追うSFストーリー。物語の構成とSF設定、心理描写が面白い。
序盤から中盤にかけて謎と情報が点のように散らばり、終盤でその点が繋がっていき線になる。語り手の視点を追うような構成。これにミステリーで謎を解いていくような面白さがある。話の中で、資料を見るという形で視点が切り替わる多重構造も面白い。
SF設定と心理描写については、「科学技術」と「人の思い、葛藤」が関係付けて描かれておりリアリティがある。若者の見えない未来への不安、好奇心、希望がリアルに描かれている。
追記:
短編「わたしたちが光の速さで進めないなら」の感想。
ある老人の人生から見える「科学技術」の進歩と「個人」が描かれている。シンプルな構成で読みやすい。「巡礼者たち…」とまた違った空気感、ストーリーテリングだが、SFの技術と人の感情をリアルに描くという点では共通している。宇宙とか科学技術とかどこか冷たいようなものと、人の感情の温かみ、その共存、バランスが魅力的。SFだからこそ描ける人の心理。それがこの本の魅力の本質なのかも。
「共生仮説」の感想。SF設定がずば抜けて面白い。
Posted by ブクログ
最近あまりSFを読んでなかったが、
とある動画で紹介されてるのをみて
タイトルに惹かれて購入してみた。
調べてみると、同世代の韓国女性の作家さん。
まずとても読みやすい文体と短編で長過ぎず、短過ぎずな点が、久々にSFに触れるということもあるが素晴しかった。
取り扱ってるテーマは感情などの普遍的なもので、
舞台装置としてSF世界に置かれることで、
その普遍性や特性をさらに炙りだし、
読者にも考えさせたり、感じさせたりする構造になっていると思った。
SF世界のようにAIなどのテクノロジーが外界を目まぐるしく変化させていく半ばSF的な今世において、人間性を考えるきっかけにもなったかな。
また機会あれば手にとってみようと思う。
Posted by ブクログ
人に対する寂しさや愛おしさを丁寧に丸めて宇宙に放ったような作品だった。
どんなに科学が進歩しようが、人が人の心を理解するのには時間がかかるし、理解できないまま終わることだってある。それでも、最後まで理解できなかったけどあなたといた時間は忘れないと思うよと、そんなふうに最期に人と別れられたら孤独じゃなくなるのかな。
どの作品も好きだけど表題の『わたしたちが光の速さで進めないなら』『館内喪失』が特に好き。
Posted by ブクログ
今までに海外作家さんの本はいくつか読んだことがありますが、韓国小説は今回が初めて。ライトめなSF短編集で、SFにそこまで馴染みがない方でも気軽に読めると思います。
中でも「スペクトラム」が好き。人外(ここでは地球外生命体)×女の子の組み合わせが好きなオタク心にぶっ刺さった。
Posted by ブクログ
普段SFを読むことがないので、なかなかスーッと入っていかない部分もあったけど、思いもよらない世界の話しで面白かった。
短編集だけど、一つ一つの内容に深みがあり読み応えがあったと感じる。