あらすじ
廃止予定の宇宙停留所には家族の星へ帰るため長年出航を待つ老婆がいた……少数者に寄り添う心温まる未来を描く短篇集、文庫化!
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Posted by ブクログ
SF系の短編集の中で最高傑作かもしれない。
SF的な世界観と退廃的な雰囲気や少しディストピア的な要素の中に、愛や優しさというものがここぞとばかりに詰まっている。
この世界観とテーマの親和性が素敵で、読後に胸に温かさが残る素敵な物語ばかりだった。
Posted by ブクログ
「巡礼者たちはなぜ帰らない」の中での、出産に際してのリリーの葛藤、「自身の人生を呪っても自身の存在を呪うことはできなかった」という一文が印象に残った。
ありのままで存在すること肯定する、ということは大切だと理解できるが、現実では困難を伴う。それでもそれを乗り越えて成長したい、という主人公の強い決意に勇気づけられた。
Posted by ブクログ
初めてSF小説を読んだが、未来技術が多く登場し一見すると私たちとは別世界を描いているように思えた。しかし読み進めるうちに、それらは決して遠い世界の話ではなく、現代の人々が抱える問題について深く考えさせられる内容だと感じた。
「共生仮説」というテーマでは、人間性は他の惑星から来た存在が脳に共生し、働きかけた結果生まれたというアイデアや、7歳を境に幼少期の記憶を失うのは“彼ら”が脳を去るからだという発想に、科学を超えたSF的ロマンを強く感じた。
また、「物性」というテーマも印象に残った。電子書籍やデジタルデータが普及しても紙の本を欲しがる人、コンサートのチケットを捨てずに取っておく人。そうした行動は物が持つ存在感に惹きつけられるからだという指摘には共感した。私自身もアニメで推しキャラができたとき、理屈では不要と分かっていてもグッズを欲しくなる経験があり、物そのものの力に抗えない自分を再認識した。
全体を通して、キム・チョヨプさんの物語は「人間の悩みや葛藤は、舞台が地球であっても宇宙であっても本質的には変わらない」ことを教えてくれた。未来を描きながら、現代の私たち自身を映し出すSF小説の魅力を初めて実感できた一冊だった。
他の人がこの本を読んだとき、本から伝わる内容は私とは異なるかもしれないし、著者が伝えたい内容とも異なるかもしれない。しかし、読む人によってそれぞれ感じることが異なる点も、SF小説の大きな魅力であると感じた。