【感想・ネタバレ】わたしたちが光の速さで進めないならのレビュー

あらすじ

廃止予定の宇宙停留所には家族の星へ帰るため長年出航を待つ老婆がいた……少数者に寄り添う心温まる未来を描く短篇集、文庫化!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

 地球にはわたしたちとはかけ離れた、驚くほど異なる存在がうじゃうじゃいるはずよね。今なら想像できるわ。地球へ向かったわたしたちは彼らと出会い、多くは誰かと恋に落ちる。そしてわたしたちはやがて知ることになる。その愛する存在が相対している世界を。その世界がどれほどの痛みと悲しみに覆われているかを。愛する彼らが抑圧されている事実を。
 オリーブは、愛とはその人と共に世界に立ち向かうことでもあるってことを知ってたのよ。
 この話をすべて信じられる?

0
2026年03月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

SFでありながら、読み終えた後に胸に残ったのは不思議な「ノスタルジー」だった。
技術が光の速さで発展しても、誰かを思う人間心理や、ままならない人間関係そのものは変わらない。著者のその丁寧な眼差しが、未来の物語に温かさを与えているのだと感じた。
​特に印象に残ったのは、表題作『わたしたちが光の速さで進めないなら』。
新しい技術の発見によって、家族との関係が引き裂かれてしまう理不尽さ。それが宇宙レベルにまで広がる「怖さ」と、それでもそこで待ち続ける「静けさ」に胸を打たれた。
​また『スペクトラム』では、色彩言語や個体の入れ替わりといった、自分の想像の範疇にはない異星人の生態に最初は不気味さすら感じた。しかし、主人公が最後まで彼らの居場所を明かさなかった結末に、相手の世界を壊したくないという深い「愛」を感じた。
​『館内紛失』や『共生仮説』など、私たちが常識だと思っている母性や記憶のあり方を問い直す視点も面白く、静かに熱く心に残る一冊だった。

0
2026年01月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初めてSF小説を読んだが、未来技術が多く登場するため想像するのが難しかった。別世界を描いているように思えた。しかし読み進めるうちに、それらは決して遠い世界の話ではなく、現代の人々が抱える問題について深く考えさせられた。

「共生仮説」というテーマでは、人間性は他の惑星から来た存在が脳に共生し、働きかけた結果生まれ、7歳を境に幼少期の記憶を失うのは“彼ら”が脳を去るからだという発想には驚き、本当にそうなのかもしれないと思った。

また、「物性」というテーマも印象に残った。電子書籍やデジタルデータが普及しても紙の本を欲しがる人、コンサートのチケットを捨てずに取っておく人、そうした行動は物が持つ存在感に惹きつけられるからだという指摘には共感した。自分もアニメで推しキャラができたとき、理屈では不要と分かっていてもグッズを欲しくなる経験があり、物そのものの力に抗えない自分を再認識した。

全体を通して、キム・チョヨプさんの物語は「人間の悩みや葛藤は、舞台が地球であっても宇宙であっても本質的には変わらない」ことを教えてくれた。未来を描きながら、現代の私たち自身を映し出すSF小説の魅力を初めて実感できた。次の作品も楽しみ。

0
2026年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

youtubeチャンネル出版区でおすすめされていたので購入。

特に好きだったのは共生仮説と館内紛失。

共生仮説について:
大半の人間が生育過程で得る倫理性・利他性、幼少期頃の記憶を忘れてしまう理由、知らない景色にデジャヴを感じ感動や郷愁を抱く瞬間など、自分だけでは説明できない身の回りのことに絡めた内容で、しかも辻褄が合うように話がつくられている部分に、研究者たちと同じように気味悪く思い大発見したかのように興奮した。秘密裏に行われていた交流のあたたかさ、別れの寂しさが心に染み入り、最後にリュドミラの裏の連作についての伏線もしっかり回収され大変美しい話だった。

館内紛失について:
「それでも母は紛失しただろうか」、というあり得ない文法表現は何回読んでも慣れず変な気持ちになる。それはそれとして、最後の一言を読んで私も泣いた。その一言は生前のキム・ウナが欲しかった言葉かはわからないが、第三者である読者の私からはジミンが母に歩み寄るための大きな一歩に見える。私自身、母に向かって酷い言葉を使ってしまった経験があり、すでに謝罪済みなものの未だに悔いているのもあって、それを思い浮かべたし自分の母に会いたくなった。母キム・ウナがもう死者であることは悲劇に思えるが、生きていたら歩み寄りの機会はない、あるいはもっと先だったに違いない。
キム・ウナが苦しんでいた鬱病というものは脳の病気で、あらゆる物事への認識や考え方が歪み、言動もおかしくなってしまう。彼女の言動は病気で歪んでしまった可能性が高く、狂ってしまった人生に同情する。彼女が静かに安らかに眠れるように、彼女のマインドが穏やかに過ごせるように祈る。

0
2026年02月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

SFの中では読みやすく、フェミニズムな要素もあり、韓国文学って感じだった。けどやっぱりSFは得意じゃないなぁ。完全なる好みの問題。

巡礼者たちはなぜ帰らない
成年の儀式にまつわる謎について。
話は分かったけど、別にわざわざ周りに迷惑かけて一人で先に旅立つ必要なくない…?みんなと一緒に行ったらダメなの…?と思ってしまった。情緒のなさ。

スペクトラム
言葉の通じない見えている世界も違う地球外知的生命体との交流の話。生命体に情が芽生えていく過程がすてきだった。

共生仮説
ニューロンパターンの解析により被験者が考えていることを解析する研究が進んでいる世界。大人やペットなどでは解析の精度が上がってきたが、赤ちゃんを対象とした解析では思うような結果が出ない。なぜなのか。
この短編、かなり好きでした。SF的な世界観だけでなく、謎を解き明かしていく展開も面白かった。郷愁、のようなものを一緒に感じた。

わたしたちが光の速さで進めないから
会話劇。こちらも会話のなかでどんどん情報が開示されていく展開が面白かった。老人の想い、作中の現代人との感覚の乖離、物悲しい。

感情の物性
感情そのものを造形化した製品『感情の物性』にまつわる話。なぜマイナスな感情の製品も売れるのか?人々はこの製品で現実逃避しているってことなのか?分かったような分からないような……

館内紛失
こじれた母娘の関係。大人になって妊娠して母の軌跡を追うことで初めて母の立場や気持ちを想像できるようになった娘。
娘は妊娠してマインドが変わったが父と弟は引き続き母を理解しようとせず、結局自分が似た立場にならないと歩み寄りは起きないんだな…とやるせない気持ちになった。

わたしのスペースヒーローについて
マイノリティの女性の生き様とそれに屈しない強さ、が描かれたSFだった。

0
2026年03月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何が言いたいのかよくわからない、的な作品もありつつ、全体的には技術と心の摩擦にクローズアップされていて、そこは面白かった。特に『共生仮説』の未知の生命体が赤ん坊に入り込むことによって人間の赤ん坊は他者性を獲得する、みたいなのはSFらしい斬新さがあって面白かった

0
2026年01月03日

「小説」ランキング