あらすじ
スマホとネットが日常の一部となり、顔の見えない人ともコミュニケーションできる現代社会は、便利な反面、やっかいでもある。言葉の力が生きる力とも言える時代に、日本語の足腰をどう鍛えるか、大切なことは何か――恋愛、子育て、ドラマ、歌会、SNS、AIなど、様々なシーンでの言葉のつかい方を、歌人ならではの視点で、実体験をふまえて考察する。
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Posted by ブクログ
子育てをしていく中で大切にしたいと言葉
仕事をする上でAIを活用しながら、人として紡ぐ言葉
今まさに“生きる言葉”を身につけている最中の子どもの言葉に注目する新たな視点をいただきました!
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言葉についての新書です。
短歌に絡む話も多く面白かったです。
俵さんはお若いころから時々TV出演をされていたと思いますが、私は昨年度のNHK短歌で初めて拝見しました。
とても活溌にお話しされる方でいらっしゃいました。
この本でも
「まじかよ」「どんだけ~」「んなもん、でけるかーい」
などと本文中にあり、やっぱりとても活溌で流行り言葉なども使われる現代っ子でいらっしゃるのだと認識しました。
短歌のお話では句またがりの話は面白く参考になり、思い切り韻を踏んだ短歌を私も作ってみたくなりました。
河野裕子さんがお好きでいらしたそうで、私も河野さん、萩原慎一郎さんの『歌集 滑走路』は読みたいと思いました。
昨年度出演されていらしたNHK短歌のお話も面白かったです。
AIと短歌の関係。
谷川俊太郎さんとの思い出もよかったです。
『AIは短歌をどう詠むか』は読んでみたいです。
<この味がいいねと君が言ったから七月六日はサラダ記念日>
という最も有名な歌について、「今は「いいね」の数を競うような風潮があるけれど、これはたった一つの「いいね」で幸せなれるという歌です」とツイートしたらこれがバズッたそうです。
まだまだ、息子さんとラップのお話、ホスト歌会の話など盛りだくさんの愉しいお話がありました。
最後にこの本のテーマに最も近いと思われる俵さんの歌。
<つかうほど増えてゆくもの かけるほど子が育つもの 答えは言葉>
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タイトルは二つの意味にとれた。言葉というものは生きている。変化し成長し、あるものは滅びていく、という意味。もうひとつは、人にとって生きるために絶対的に必要なものとしての言葉、という意味。『サラダ記念日』の時代からの大きな違いはネット世界で飛び交う言葉の存在である。自分に向けられたクソリプさえも分析して提示してくれるところはさすが言葉の魔術師である。Twitterの青い鳥がいなくなった時の著者のつぶやきには感動したことを思い出した。難しいところは置いといて、本当に楽しい新書だ。
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クソリプの紐解きや息子さんとの会話での発見など、時代とともに少しずつ変わっていくまさに「生きる言葉」についてたっぷり贅沢に解説されている。
言葉は誰かを包んだり、刃物になったり。実に恐ろしい。同じ言葉でも相手のバックグラウンドによって意味合いが変わってしまう。
日々考えをアップデートするといった努力は必要だが「知らなかった!」という場面はどうしても避けられない。インターネットにより世界が拡がりすぎている弊害だといえる。
それでも私たちはお喋りをやめない。書くことをやめない。短歌をやめない。正解と不正解を確かめながら明日に向かって言葉を生かしていく。そういう生き物なのだ。
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日本語って綺麗。短歌は日常に優しく寄り添ってくれる存在なので、私も歌を詠む気持ちで、日常のふとした優しさとか美しさとかに気づいて暮らしていきたいです。
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俵万智さんの言葉、に対する考察。非常に優れた、鋭い視点と期待値を込めた柔らかな視点をお持ちであり、久しぶりにサラダ記念日を思い起こすきっかけにもなった。早稲田大学の授業で、ほとんど出席していない、またはする気が起きない、講義の中で、俵さんがゲストとして来られる佐々木幸綱さんの授業は、朝から出席したのを覚えている。言霊について、だったし、それで論文も書いたくらいだったから、記憶はおそらく比較的鮮明である。
さて、「生きる」言葉と定義された俵さんの意図は、言葉は変わっていくということだ。例えば、話し言葉が、インターネット上の書き言葉に限りなく近づいていく。歴史上最も一般市民が世の中に言葉を発表していく、シェアしていく時代。
俵さんの子育ての気づきも、本当にレベルの違う視野だ。言葉を絵本を通じて覚えるという話ではなくて、想像力を働かせて、一緒に読み聞かせながら、その子供の気がついている世界を一緒に体験する。石垣島に移住されて、ゲームをやらなくなった子供が、俺が今マリオなんだよ、という言葉。言葉を意識して、その使い方に最新の注意を払うことで、正確に、意味のある伝え方をしていく。
言葉、を大事に、韻を踏むことを生業とするラッパー、マミーDとの対談も、おそらく早稲田つながりかなと思うけれど、とにかく秀逸。言葉の音、伝わり方、空気の振動をおそらく見ながら作っていく短歌は、ラップにも似ているところがあるのだろう。この二人がシンクロする部分があるとは、という衝撃。見た目も含めて。。そして、慶應幼稚舎、ジブラさんに続く。なんだろうね、この昭和な感覚は。
ツイッター、Xでのクソリプの考察も本当に面白い。拡散されていく過程で、言葉が勝手に意味を持ち始め、一概には言えない型、これは一概には言えないというリプライが来るのだが、当たり前のことを言っているに過ぎず、無意味、無視するに限る。自分のことを言っているパターン、私はこうですよという聞いてもいないテメーのことを言ってるだけ、主語決めつけ型、国民の相違みたいに言わないでほしいという反応には、私はそう思います、などの個人的主観である点を追記することがうまい手とされているが、などの反応がある。本当にそうだよね、と思うし、いかに無意味かがわかるので、一読して、またいつか見直したい。また、自分自身のコメントが、まさにそうなっていないだろうか、という点も気をつけないといけない。現実社会、ビジネス、家庭でもそうなっているリスクはある。
外国で働いてみると、染み入るものも多いなというか、そういうことを客観的にも捉えられていて素晴らしい。、、、をお祈り申し上げますは、祈ってないし、とか、、、の方で、、、であったり、、、界隈などの曖昧な表現はある意味で外国人には全く通じない。先日KYについて説明させてもらったが、本当に難しい。いい説明だったと外国人のみんなから言われたが、KYという言葉はすごく気になっていたそうだ。Reading the Air。なんだろう。空気は見えないよね、だから見えないものを見ているのがそもそも日本のカルチャーにはあり、見えないところに価値を見出してきた歴史がある。鳥居もフェイスバリューではなくそこに宿る神があってのプライスレスなものになる。
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
この歌が、彼女を押し上げた。しかし、いいねは、いわゆる一般的にいいねをもらうFBとは違う。一人の向き合っている人からもらういいね、なんだよ。削りに削った文章の、本質的な部分はSNS的なものから対極にある。幸せを感じて、歩みを少しだけ、優しさを纏うような形で。本当に、言葉とは、人生とは、こうも素敵で儚いものか。そんな、俵さんの生きている言葉に頷き、やられた、と思いながら最後のページを閉じる幸せ。
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本の感想を伝える。好きな人の好きなところを言葉にする。そういうことができる人になりたいのに、なかなかアウトプットできないところがあった。伝えるという点で和歌はすごい。私が言葉にできないもやもやの輪郭を縁取ったり、たった三十一文字で物語の世界に連れて行ったりしてくれる。その和歌の達人・俵万智さんが日本語とどう向き合っているのか、教えてもらいたい気持ちでこの本を選んだ。
内容はラッパーや育児など多岐にわたる。一貫して感じたことは「言葉を発する時にはその先に誰かがいるんですよ」ということ。壁あてでもいいけど、やっぱりキャッチボールが面白い。そして今まで気づいていなかったボールをキャッチすること、受け取る誰かを想像して投げることが俵さんのような表現者への道なんだと思った。
昔の人が和歌で恋愛をしたように、色や匂いや感触や、そういうものを発するような言葉で、こういうところが好き!を言えるようになりたい。言葉との向き合い方が分からなくなったら、またこの本に戻ってきてヒントをもらおうと思う。
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きっかけはXの俵万智さんの投稿だった。
「こちらの本の「クソリプ」について書かれた箇所を授業で扱ったところ、大爆笑で、授業後に10人ほどが『今日帰りに買って帰ります!』と言ってくれました。」(長野の国語の先生)
これを読んだ瞬間に、電子書籍をダウンロードしていた。
この本を読むと言葉を愛する俵万智さんが身近に感じる。SNSやAIについてもかなり言及しているから、同じ日常の中で言葉を紡いでいる人なんだなと思える。
作品は副産物と思うまで詠むとは心掘り当てること(俵万智)
書いている過程を楽しみながら自分をよく知ること、それが主産物でありAIとの違い。
マルハラや界隈をはじめとする曖昧でクッションを好む若者言葉について、私もはてなを感じていたけど、
優しさにひとつ気がつく ×でなく○でかならず終わる日本語(俵万智)
の一首を置いていくさりげなさが素敵だ。
『愛の不時着』のユン・セリの「私のことを忘れないでね」にリ・ジョンヒョクが「空から落ちてきた女を忘れられるか」のセリフ。私もなぜか覚えていた。
論点をずらした返事は、はにかみと思いやりとユーモアにあふれていると万智さんは語る。
まさに!万智さんの感受性アンテナが欲しくなる。
万智さんが私にくださった言葉
「クソリプを知る者はクソリプに勝つ」
これは全てに通じそう。
子どもが本を読まずにゲームに夢中だったら、親がスマホよりも本が楽しくて仕方ない姿を見せればいい。本を読むことや勉強することは、自分を知り、世界を広げることにつながることを子どもに教えていけばいい。自分の言葉で自分の背中で。
最後に一番心に残った歌を
最後とは知らぬ最後が過ぎてゆく
その連続と思う子育て (俵万智)
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丁寧な言葉で書かれていて、とても読みやすかった。現代に蔓延る言葉にまつわる問題について、分かりやすく説明・解説がされており、なんとなく気になっていたことが解消された気がする。
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読みたかった本!楽しかった!
濁音を気持ち悪いと思うこと、美学だなと思った。演劇好きなので、演劇のところも楽しかったし、クソリプのも面白かった!
俵万智さん愛の不時着めっちゃ見てるな……私もまた見たくなりました。
短歌を作る時のように沢山考えて、投稿すればSNSが素敵になるだろうな。
感想を短歌にしたかったけど、なかなか思いつきませんでした!残念!
Posted by ブクログ
歌人の俵万智さんが言葉について考えた本。というと、美しい単語や豊かな感情表現の話がたくさん出てくるのかなと思ったけど、テーマは予想以上に多岐にわたっていた。ドラマのセリフとか、日本語ラップとか、AIとか。言葉を扱うプロフェッショナルが「クソリプ」や「風呂キャンセル界隈」について語ってくれるなんて、おもしろすぎる!
もちろん短歌の話もたくさん書かれていて、俵さん自身の作品だけでなく他の方の作品もたくさん引用されている。掲載された短歌を読んで、こういう歌かな、とぼんやり想像してから俵さんの解説を読むと、世界がぐんと広がる感じがした。そうそう、そうだよね〜と思う解説もあれば、そんな読み方もあるのか! という解説もあり、短歌の奥深さに改めて気付く。
あの俵万智さんですら、あの超有名な「サラダ記念日」の歌について「気に入らない」と言う部分があるくらいなんだから、私が自分の過去作を読み返して頭を抱えたくなるのも全然変じゃないよね(もちろんそのときどきのベストは尽くしたうえで、ね!)。
【読んだ目的・理由】俵万智さんの短歌が好きだから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.6
【一番好きな表現】氷山の一角というのは悪いことの描写に用いられるが、絵面としてはあの感じだ。世界に顔を出している短歌は小さいものだが、その水面下には人生の元手が隠れている。隠れているものが大きいほど、氷は輝く。(本文から引用)
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単価というフォーマットから無限の想像力を育み続ける作家が、言葉の魅力を易しく解き明かす一冊。
コピーライティングの参考書としての側面はもちろん、人間観察の深さに学ばされてばかり。
とくに『愛の不時着』の考察が深すぎて、これだけでも買った価値あり!そうか。大ヒット韓流ドラマのあの独特の清々しい読後感は、凄まじく気の利く名台詞たちによるところが大きかったのか。
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俵万智さんの言葉にまつわるエッセイ
新書って難しめのイメージだったけど、エッセイ的な新書もあるのですね
さすが俵万智さん、選ぶ言葉、文章が生き生きとしていて、読むのが楽しかったです。
「背景抜きの言葉を使いこなす力は、非常に重要だ。それは、生きる力と言ってもいい。」
ネットやSNSで、相手のバックグラウンドもわからない人の言葉をどう受け止めるか、どう受け止められるか
それは本当に難しい。
韓国ドラマ『愛の不時着』のセリフにまつわる考察も深く、
俵万智さんのおかげで、あのドラマはそういう言葉の選び方をしてるから、あんなにもキュンキュンするんだ、という発見。
言葉の力ってすごい。
そして、言葉の選び方大事。
「つかうほど増えてゆくもの
かけるほど子が育つもの
答えは言葉」
この短歌には心がずきっとしました。
息子たちが小さい頃、忙しいって言っては、かける手間を惜しんでしまった言葉。
もっと言葉をかけていたら、もっともっと息子たちは育ったのかもしれない。
「たった一文字でもニュアンスは大きく変わる。」
「限られた文字数だからこそ感じられる贅沢。」
三十一文字の短歌の世界だからこそ、感じられる言葉の力です。
「400字詰め原稿用紙一枚で書けること、三分間のスピーチで言えること、半日のデートで伝えられること。それぞれの器に対する濃さの程のよさが、もしかしたら具体的な文言以上に結果に影響する。」
一言加えるだけで、一瞬をスローモーションのように感じられる一首の短歌。
そんな言葉を選ぶことのできる俵万智さんの「生きる言葉」を巡る旅。
言葉を大切に使いたいなと思う素敵な作品でした。
Posted by ブクログ
俵万智さんは歌人としてのイメージしかなかったけど、こんなに柔軟で新しいものにも敏感な方だったとは。色々な角度から「言葉」を見ていく、その切り口が面白くて一気読みしてしまった。
息子さんのスマホなしの寮生活、ラップの韻踏み、AI短歌、ホスト歌集…
ほんとに色々なネタをお持ちだなと、クスッと笑いながら、でもちゃんと腑に落ちる内容で大満足。
スマホやネット社会になって、言葉が軽んじられているように思っていたけど、逆に顔の見えない相手とたくさんコミュニケーションをとるという意味では、確かに言葉の重要性が増しているのかも。
タイトルは、言葉は生きているし、私たちは言葉を使って生きているの両方の意味なのかな。
Posted by ブクログ
俵万智の文章は、どこかの教科書で読んだ記憶がある気がするのだけど、記憶違いかもしれない。面白く感じたのを覚えているんだけど、他の人の文章だったかもしれない。(「狐につつまれる」とか「濡れ手で泡」なんかを例示していた文章、思い出せない…)
言葉は誰でも使えるけれど完璧なものではない、という視点は、いつまでも忘れずに覚えておきたい。
表層に見える(伝えられる)言葉が気持ちや感情を完璧に表せないから、そこに思慮深さが求められる。
私はレスポンスが遅い。返信間隔は短いが、言葉で表すのにじっくり時間をかけてしまう。それは、手持ちの中で可能な限りしっくりくる言葉を伝えたいと思うからである。
言葉に迷うときはある。言葉に詰まったとき、その「何か」を自分の中に落とし込む、または相手に伝達するための、言葉の力を鍛えたいと思う。
せわしい時代で流されず、立ち止まって考える、心を掘り下げる時間を大切にしたいと思った。
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基本、言葉は、世界と一対一で対応しているのではなくて、ざっくりした目印だと知っておくといいと思う。
言葉は、この世界のモノや人の心を捕らえるのに完璧ではない。完璧ではないけれど、何とか私たちは日々言葉を用いて生きている。誤差が小さくなるよう心がけたり、受け取る時にもズレがあることを意識したり、背景を想像したり。その際に大事なのは、言葉とはそもそもそういうものだということを、どこかで覚えておくことだろう。