【感想・ネタバレ】生きる言葉(新潮新書)のレビュー

あらすじ

スマホとネットが日常の一部となり、顔の見えない人ともコミュニケーションできる現代社会は、便利な反面、やっかいでもある。言葉の力が生きる力とも言える時代に、日本語の足腰をどう鍛えるか、大切なことは何か――恋愛、子育て、ドラマ、歌会、SNS、AIなど、様々なシーンでの言葉のつかい方を、歌人ならではの視点で、実体験をふまえて考察する。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

初読。スマホがあり、ネットがあり、SNSがあり、AIがあり、言葉の力について揺らいでいる。短歌という限られた文字数を舞台に表現してきた俵万智さんならではの、言葉についての考え方が素直に染み込んでくる。ホストクラブの歌会に参加されているのには驚いたし、その歌の伝えてくる力にも驚いた。その世界にいないと詠めない歌の希少さよ。いろんな人のいろんな短歌を読みたくなった。

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2025年12月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

俵万智さんは、結婚せずに子どもを生み育てることを選んだ。まずそこ。俵万智さんが歌を詠みながら生きてきて、考えたことをつづったエッセイです。短歌を読んでいるのだから、日本の伝統を大事にしているだろうと思うのだが、AIが詠んだ短歌に共感したりとか、現代社会の激しい変化に対応し、アップデートして洗練されていく。本当に素敵だし、生き方そのものに感銘を受けました。
以下抜粋

耳を傾けるべきは外野ではなく、自分の心の中を流れる音楽なのだ

つかうほど増えていくもの かけるほど子が育つもの こたえは言葉

「どうだった? 私のいない人生は」聞けず飲み干すミントなんちゃら

【どうしてお母さんとハグすると安心する?】(小2女子からの質問)
抱きしめて確かめている子のかたち心は皮膚にあるという説

賢い人ってどういう人?
「笑顔である事。幸せである事。正直である事。誇りを持つ事。」

作品は副産物と思うまで詠むとは心掘り当てること

人生の予習復習 親といて子といて順に色づく紅葉

「かーかん」にいろんな意味のしっぽあり「かーかんやって」「かーかんちょうだい」

牛丼屋頑張っているきみがいてきみの頑張り時給以上だ 萩原慎一郎
(非正規雇用である自分について多くの歌を詠んだ歌人・この人の歌集を読んでみたいと思った)。

友に送つたメールの返事を待つ二時間 五日は待てた手紙の頃は 村田知子

また、俵万智さんは歌舞伎町のホストと歌を詠む会を催しており、中には歌集を出版するまでになったホストさんもいるとか。とても興味深いです。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

現代の言語文化に対して歌人ならではの分析を行っている点が非常に面白かった。一概に、頭ごなしに否定的ではなく、ほとんどにおいてその言葉を作り上げた意図を見抜き肯定的な意見を残していた点も大人の姿勢として見習いたい。
あれほど役に立たないと嫌煙していた古文にも興味が湧いた。「恋愛について学べる授業は古文だけなんですよ?」という謳い文句があるが、私は別に恋愛などどうでもよかった。だが、俵万智さんが相聞歌についてアツく語っている様子を見ると、果たして面白いのではないだろうか、いや、面白いに違いない、と思えた。
「勉強は大人になってもできるが、遊べるのは子供のうちだけ」という主張に共感した。確かに、子供のうちは他者と遊ぶことで衝突やいさかいが発生し、それによって少しずつ他者との関わり方を学習していったような気がする。もっとも、私は他者との衝突(レスバトルと言った方が正しいが)で勝つことしか考えていないクソガキだったが。自然の中でのびのびと自由に遊ばせるというのは大切なことなのだと、過去の苦い思い出も交えながら身に染みて感じた。俵万智さんが子育てを通して獲得した人生観には、今はまだ分からなくともこれから学ぶべきところが多くあるように思えた。成長してからも、読み返したい1冊。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ネット、子ども、芝居、ラップ、小説、AI、短歌や和歌など、あらゆる場所での言葉の使い方を考察し、俵さんの実体験と共に語られた一冊。

クソリプの分類からの、喋る家電のクソリプセンサーの話が面白い。「あと三分で洗濯が終わります」だと「洗濯が終わりますだと?この後干すのが大変なんだよ、干して乾かして畳むまでが洗濯なんだよ!」になってしまうリスクがあるので、「あと三分で洗濯ものが取り出せます」なのか。

子どもからの質問に答える章は子育て中の自分には大変勉強になった。特になぜ勉強しないといけないの?に対する答えは、石垣島に移住して子育てをしていたことがある俵さんだからこそ説得力がある。

歌舞伎町のホストたちとの歌会の話の中の「大げさに言えば、おのれの人生で歌うに値するものは何かを問うた。言葉にするということは、その体験をもう一度生き直すということである。」が印象に残った。

他にも、「も」警察、万智さんAIの話、川原繁人さんや谷川俊太郎さんとのやりとりなど、内容盛りだくさんである。

たまに読み返したい好きな文
「五七五七七という小箱に、自分なりの言葉を詰めながら、眺めたり、位置を変えたりしてみる。別の言葉のほうがいいかなと入れ替えたりする。そんなふうに時間をかけて言葉をつむぐ場面が、昨今どんどん少なくなっているのではないだろうか。秒で言葉を届けられる時代だが、だからといって、秒で言葉をつむがなければならないわけではない。」(p234)

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2025年11月29日

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