あらすじ
池井戸潤の最新長編の舞台は、
「東京箱根間往復大学駅伝競走」――通称・箱根駅伝。
青春をかけた挑戦、意地と意地のぶつかり合いが始まる。
ついに迎えた1月2日、箱根駅伝本選。
中継を担う大日テレビのスタッフは総勢千人。
東京~箱根間217.1kmを伝えるべく奔走する彼らの中枢にあって、
プロデューサー・徳重はいままさに、選択を迫られていた――。
テレビマンの矜持(きょうじ)を、「箱根」中継のスピリットを、徳重は守り切れるのか?
一方、明誠学院大学陸上競技部の青葉隼斗。
新監督の甲斐が掲げた「突拍子もない目標」の行方やいかに。
そして、煌(きら)めくようなスター選手たちを前に、彼らが選んだ戦い方とは。
全てを背負い、隼斗は走る。
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Posted by ブクログ
箱根駅伝が大好きなので名前に惚れて購入しちゃいました
この作品が好きで面白く感じるのか、箱根駅伝が好きで面白く感じるのかわからなくなるくらい、箱根駅伝の再現度がとにかく高いです。
箱根駅伝という青春の1ページ、箱根駅伝というテレビ作品へのリスペクトが感じられます。
Posted by ブクログ
今まで箱根駅伝に興味が無かったことを後悔してしまうほど素晴らしい作品でした。
選手、監督、ライバル、テレビ局など、それぞれの立場で作られる箱根駅伝。まさしくタイトル通りでした。
ドラマは誰がどの役を演じるのか楽しみです。1クールじゃ収まりきらないのでは、と思ってしまいます。
欲を言えば、上巻で1クール、下巻で1クールで制作してもらいたいものです。
Posted by ブクログ
上下700ページ超の単行本でなかなか手が出せていなかったがあっという間に読めてしまった。
下では1〜10区のレースがに描かれていて様々な情景が浮かんでくる。
確かに関東学生連合はオープン参加で参考記録しか残らない。順位もつかない。でも記録が全てではなく、みんながひとつの目標に向かって努力するということが大事なんだと再認識することができた。当たり前で出来そうなことだけれどかなり難しいことなんだと思った。
辛島アナの関東学生連合チームへの取材力が凄まじく、特に実況の場面では、いち視聴者の気持ちで読むことができた。
没入感もすごく、所々胸が熱くなって涙腺が緩んだ。
制作側の臨場感もとても伝わってきて制作現場の過酷さを少なからず知ることができたのかなと思った。
「俺たち」の箱根駅伝という意味が選手の仲間や監督、家族はもちろんのこと、制作側の人間もそこに含まれている。
星5じゃ足りない。
Posted by ブクログ
1区から10区まで走る選手たちで構成される。どの章を読んでも選手の魅力が描かれている。
全ての選手が最高の調子で走れるわけではない、調子悪くでもほかのメンバーが取り返してくれるという甲斐監督の言葉には感動してしまった。仲間っていい、チームっていい、久々に感じてしまった。
来年の駅伝はちょっと見ようかなという気持ちになった。
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いよいよ始まった本選。怒涛のレース展開に、ページをめくる手が止まらない。一人一人の思いが詰まった、俺たちの箱根駅伝!本当のテレビ実況を見ているような臨場感と感動が味わえた。メインアナ辛島の実況が泣ける。
Posted by ブクログ
下巻は一気読みだった。箱根駅伝の実況を見ているような臨場感、ランナー一人一人の背景の物語、全てが順調でなくハラハラさせる場面の演出もあり、ページをめくる手が止まらない。一方で読み終わってしまう事の寂しさも感じた。登場人物達のその後についても想像力をかきたれられる。目前に迫っている次の箱根駅伝が楽しみでしょうがない。
Posted by ブクログ
『俺たちの箱根駅伝』の下巻は、上巻に引き続き物語に呑まれるように一気に読んでしまった。とくに下巻は、いよいよレース本番ということもあって上巻以上に面白く、今年読んだ本の中でもトップレベルでページをめくる手が止まらなかった。
ハラハラするレース描写はもちろん魅力的だったが、それ以上に心に残ったのは、辛島アナの紹介を通して選手たち一人ひとりの背景が丁寧に描かれている点だ。走りの裏側にある努力や葛藤が自然と浮かび上がり、読んでいるうちに選手それぞれに強い共感と愛着が湧いていく。この「レースの臨場感」と「選手の背景描写」のバランスが絶妙で、飽きる瞬間が一切なく最後まで一気に読み切ってしまった。
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最高。
復路は涙涙で止まらなかった。
スポーツの素晴らしさに加え、各人エピソードが程よく散りばめられ、素晴らしい。
上下巻で600ページ以上あるが、数日で読破。
Posted by ブクログ
予想通り、とっても感動しました!
ドラマ化を聞き、ドラマの前に慌てて読みました!
池井戸さんには珍しい!?青春爆発の中にも、池井戸さんらしい!?人間ドラマや組織内界隈が含まれており、読後感もさながら、続編まで期待したくなる作品です。
「上巻」は登場人物の多さに困惑し、4週間かかりましたが、「下巻」は1週間で完読しました^ ^
Posted by ブクログ
走る選手にはそれぞれの背景がある。
学生連合は正式な記録にはならないし、やる意味もない。いや、違う。
「世の中には身を結ばない努力もあるだろう。だが、何にも生まない努力なんかない。」
「勝者は一握りで、多くの者は敗者だ。だけど、敗者にだって人生はあるし、敗者だからこそ得るものがある。敗者は負けを認めることで勝者にもなる。」
これは戦う者、努力する者、挑戦する者へ向けた力強いメッセージだ。
Posted by ブクログ
池井戸作品なので、結果はなんとなく、いい方にいくんだろうなと思っていながらの下巻。
想像の上を行った。
各選手の走るまでのストーリー、報道側の後悔と挽回、何よりも、主役級の隼人くんが頑張った。チームのためでなくて自分のため。
9区の浩太くんと10区の給水係は予想できたけれど、、、泣けた。
2区と8区のあまり目立たなかった2人のストーリーも泣けた。
5区と6区の頑張りと不屈の精神に泣けた。
何よりも甲斐監督と友達になりたい!と思った。
Posted by ブクログ
感動...何か所か本当に泣けるのですが後半の辛島アナの『...歴史に残らない歴史が生まれようとしています』って発言が本当に心に刺さる!
未読の人は直ぐに上巻から読むべき。
Posted by ブクログ
私は箱根駅伝を毎年楽しみにしている。
選手達の大人の事情に挟まれ葛藤している姿、箱根駅伝で走ることを夢みて努力し仲間達と励ましあったり時にぶつかるシーンはドキュメンタリーを観ているかのようだ
わかりあえない人がいても相手の背景を理解しようとしコミュニケーションを重ねワンチームになっていく過程は自分も大切にしなきゃな、と考えさせられた
テレビ局サイドの学生達の努力を逃さず伝えられるように先人達の努力があったこと、特に辛島アナウンサーの徹底した取材ぶりには仕事は準備が1番大切だと再認識させられた
一番好きなシーンは浩太の給水シーン
まさか水野監督が併走してくれるとは思わず浩太の頑張りや努力が報われたなぁ、と感じた
Posted by ブクログ
監督、凄すぎるよ。こんなふうに人の本質をきちんと見て、必要な時に、必要な言葉をかけてあげられたらいいな。どうしたらそんなふうになれるんだろう。わからないけど、その人をよく観察して、考えて、記録して、、、そうなるためにできそうな努力があると思った。走り終えた後の「ありがとう」は痺れる。ありがとうを言葉にするってすごく心に来るんだなと感じた。
Posted by ブクログ
ページをめくる手が止まらず、完全に引きこまれた。
選手の描写が巧みで彼らが見ている景色や息遣いまで追体験できた。何度も読み返したが、特に監督の声かけと給水ポイントの部分に心が動いた。
Posted by ブクログ
上下わかれていて、分厚い本だけど、章が細かく上手に分かれていて、読みやすかったです!
どんどん惹き込まれる感じ。
何度も涙しました〜、みんなステキ!
Posted by ブクログ
箱根駅伝、スタート!スタート前から、いよいよだって、なんか泣きそうになった。
10人の走りなので、それぞれは短いのだけど、上巻がすごくいきてる。
テレビの実況のごとく、それぞれの生い立ちが語られ、給水ポイントでは、縁の人物による短くぎゅっとつまった声かけ、甲斐監督のそれぞれのゴール間際の神のごとく見通したアドバイス、辛島アナの温かい解説。
熱い涙が出る。満足の一冊だった。
Posted by ブクログ
箱根駅伝本番。
10人のタスキリレーだけど、箱根駅伝にかける大学、家族、テレビ関係者、様々な思いがある。辛島アナウンサーは、気難しい人でなんだかなぁと思っていだが、選手へのリスペクトによる行動が素晴らしく、大好きになっていた。
次の箱根駅伝の見方が変わる気がする。
また絶対、再読するであろう本。
Posted by ブクログ
下巻、箱根駅伝スタートから始まる。
10章の構成で、学生連合の10人の選手にスポットライトを当ててレースが展開されていく。
記録に残らないが、それぞれの思いを背に10人の魂の走りは文字なのに映像が流れているように鮮明に浮かびあがる。
涙が止まらない、感動の 1冊でした。
Posted by ブクログ
下巻は第2部『東京箱根間往復大学駅伝競走』。主な登場人物は上巻から引き続き。構成は11章からなる。箱根駅伝10区間とどのように構成が重なるのだろうか、楽しみ。
第1章『大手町スタートライン』。スタートラインに立つ緊張感と、1区のランナーならではの心境が伝わってくる。面白いなと感じたのは、テレビ局スタッフや解説者たちのやりとり。テレビ放送では見えない部分の想像が膨らむ。人が関わる仕事では、その人間関係が大きく影響する。それは、どの仕事でも起こりうることだろうな。みんなが同じ考えではないから。テレビ局の中心人物は、チーフ•プロデューサーの徳重亮とチーフ•ディレクターの宮本菜月。チームスタッフは1000人。私が知らない世界であることも重なり、とりまとめる苦労にイメージが追いつかない感覚がある。
優勝候補の大学は、青山学院、東西、関東の3校。実在する大学も含まれていて、リアルと想像が混在する作品世界の面白さを感じる。
上巻から続いて、物語の中心となる大学チームは関東学生連合。1区は諫山天馬、所属大学は品川工業大学。率いる監督は甲斐真人。甲斐の指導はどのような結果を生み出すのか、その顛末も楽しみになる。そんな甲斐のことを面白くないと思っているのは、東西大学の平野監督。かつての関係も加わって、平野監督にとっては相容れない感情が表に出ている。反対に甲斐は冷静。そこが対照的で面白い。平野が熱くなればなるほど甲斐は冷静になっている。達観している感じで、かっこいい。
天馬のレースは苦しいものが伝わってくるが、走っている最中に浮かぶのは家族のこと。支えてくれて応援してくれて、箱根で走ることを楽しみにしてくれている父親のこと。そんなものを背負って走っている天馬。この章の最後は感動的なシーン、そこでは順位やタイムは明らかにならない。このあたりは池井戸さんの表現なのだろうな。楽しみになる。
第2章『立ちはだかる壁』。この章の冒頭で1区の順位が明らかになる。私の想像とは違ったが、そこも含めてこの先の展開が楽しみになる。こうした構成に池井戸さんの作品の面白さがあると思う。
2区は村井大地、東邦経済大学3年生。2区は箱根駅伝のエース区間と呼ばれている。各大学のエースが競い合う。その様子が伝わってくるような表現が続く。今まさにレースが行われているかのよう。大地の前を行く東西大学は、同学年の青木が走っている。同学年がゆえに、大地にはこれまでの陸上大会の結果から負けたくない気持ちと、勝てないという気持ちが交錯しているよう。何度戦っても勝てない相手がいたら、どんな気持ちで臨むことができるのだろう。難しい心境が窺える。それでも、駅伝となると個人の戦いを超えたものがあるから、ペース配分も難しいだろうな。無理をしすぎるとペースダウンにつながるだろうし、無理をしないと自己ベストは出ないだろうし。戸塚の中継所へ向かう描写は、大地の力走が伝わってくる。
大地から襷を受け取った3区は富岡周人、目黒教育大学4年生。周人が目指していた大学は東西大学。それは父が進んだ道で、父への憧れもあったからだった。近づきたいのに敵わない存在が父だったら、それは苦しいだろうな。しかも、父からの諦めの言葉をかけられたら、耐えきれくもなるだろう。それでも周人は箱根を走るところまで努力した。そこに凄さを感じる。父とは違う道、理想の道とは違う道、それでも夢を諦めずに努力した周人が箱根を走っている。その姿を想像すると込み上げてくるものがある。次の走者、内藤星也に襷が渡る。
第3章『人間機関車』。星也は関東文化大学2年生。スタート前から体の異常を感じていた星也。星也の走りを見て異変に気づく甲斐監督。その上、空からは雨が。過酷な状況が伝わってくる4区。星也は後続に抜かれ順位を下げていく。苦しい展開が続く。それでも、襷をつなぐことが走る力になる。それが箱根駅伝なのだろうな。
第4章『点と線』。5区は箱根駅伝の勝負を分けると言われている山登り。往路のゴールである箱根を目指す。粉雪が降る過酷な状況が、白熱したレースの描写が想像世界を広げていく。関東学生連合チームの第5区は倉科弾。快走で順位を上げていく。実況中継の描写も興奮を掻き立てる感じ。給水ポイントで給水役を担った、弾の大学のキャプテン。弾にかける言葉が胸を打つ。自身は叶わなかった箱根駅伝の舞台を後輩の弾が走っている。複雑な心境の中で、魂の言葉が響く。美しいなと思う。弾の快走は、関東学生連合チーム全体に勇気を与えるものとなった。心地よい読後感。復路の激走が楽しみ。
第5章『ハーフタイム』。往路を終えた後のテレビ等の監督インタビューや監督同士のやりとりの場面。1位は平川監督率いる東西大学。5区のランナーが区間1位となり逆転した。しかし、表情は冴えない。その原因は関東学生連合チームの躍進にあった。平川監督は甲斐監督の学生時代からのライバルであり、甲斐監督が急遽監督として関東学生連合チームを率いて箱根駅伝に参加していることが面白くなかったのだ。全くの個人的感情。そのような感情に囚われていると、冷静な判断はできなくなるだろうな。それを、甲斐監督は冷静に見抜いているようにも感じる。いずれにしても復路の展開が楽しみでたまらない。いよいよ決戦の復路へ。
第6章『天国と地獄』。6区のランナーは猪又丈。6番目にスタートする。箱根の山下りを順調に飛ばす丈。しかし、雪がちらつく難しいコンディションの中での走りとなった。それでも、快調に飛ばし順位を上げていく丈。ところが、思わぬアクシデントにより転倒してしまう。読みながらハッとなるほどの衝撃を受ける。大丈夫ではなさそうな状態で走る丈。その様子を見事に伝えるメインアナウンサーの辛島。その実況は映像が浮かんでくるほどに、私の心を熱くする。涙がこぼれそうになる。読みながら、頑張れと祈る。順位を下げながらも、なんとか襷をつなぐ丈。心の底からよかったと思う。
第7章『才能と尺度』。7区のランナーは佐和田晴。当日のエントリー変更で晴が抜擢された。そこには、甲斐監督の選手を見定める独特の眼力があった。その期待に応える晴の激走が描かれる。雨の中の飛沫が感じられるほどに。晴のここまでの道程は、平坦ではなかった。ただ、粘り強く自分を信じて、自分の特徴を活かすために努力を積み重ねていた。愚直に。そんなエピソードが胸を打つ。応援したくなる。晴の激走はチームの順位をさらに上げていく。ゴールに向かって、さらに私の期待が高まる。
第8章『ギフト』。8区のランナーは乃木圭介。京成大学1年生。京成大学は予選会で敗れて、本大会出場は叶わなかった。その中で、圭介は関東学生連合チームに選出され、8区を走っている。現在5番目という順位。関東学生連合チームはオープン参加のため、正式な順位や記録には載らない。しかし、走っている選手たちの気持ちは、そんなことは関係なく、ただ自分たちのためにチームのために、そして出場が叶わなかった多くの大学の同じ志を持つ選手たちのために走っていた。とても明確で単純で、だからこその走りのように私の想像世界が広がる。上位校の選手たちは名だたる有名な選手たち。その選手に気後れしない堂々とした走りを見せる圭介。邪心はなくただひたすらに走っている感じが爽快。スピードも感じる池井戸さんの描写に魅了される。そして、最高の結果が圭介にもたらされる。それは、この後を走る2人にも引き継がれるだろう、そんな思いが私に広がり、圭介の走りにただ感動した。
第9章『雑草の誉れ』。9区のランナーは松木浩太。青山学院に次いで2番目で襷を受け取った。この9区は全区間で最長距離であり、各校が力のある選手を送り出している。浩太のプレッシャーはいかほどだろう。初めての箱根駅伝であり、4年生の浩太にとっては最後の箱根駅伝。このために大学に進学し、練習を積み重ねてきた。喜びの大きさは計り知れない。だが、素直に喜べない状況が浩太にはあった。所属する大学の北野監督との確執、浩太の実家で祖父の代から継がれてきた飲食店の閉店。どちらも、浩太の心に暗いものを広げていた。走ることに専念したいだろうけれど、心に抱えたものは個人によってさまざまだ。メンタルがいかに大切かを考える。その胸のうちを図るように、甲斐監督が浩太に声をかける。心の暗雲が消えて光が差し込むように。さらに感動場面が訪れる。給水ポイントで、給水係として浩太に駆け寄ってきたのは北野監督。浩太の驚きがわかる。私も予想外の展開に胸が高鳴る。北野監督の厳しくも温かい檄が浩太に響く。私の心にも。目頭が熱くなる。心が軽くなると走りも変わるのだろう、そんなことを想像しながら浩太の走りを楽しむ。いよいよアンカーの隼斗へ襷がつながる。
第10章『俺たちの箱根駅伝』。10区のランナーは隼斗。この物語の中心人物である。明誠学院大学の4年生でキャプテン。また、この関東学生連合チームのキャプテンでもある。周りに気遣いができ、チームをひつにすることができる力が隼斗にはあった。走力とは別の力が、隼斗の人となりを表していて、この物語のフィナーレに相応しい、展開が続く。明誠学院大学の監督であった諸矢は、入院先でこのテレビ中継を妻と見ている。諸矢の病気が明らかになるとともに、甲斐監督とのやりとりも描かれる。壮絶な人生を賭けた物語がそこにはあった。諸矢は懸命に生き、その意志を引き継ぎ、甲斐は自分の色として輝かせようとする。箱根駅伝の中継では見えない物語が、私の胸を震わせる。二人の監督の意志に呼応するかのような隼斗の走り、私の中に鮮やかな映像として浮かぶ。かっこいいな。ゴールは歓喜の中で。涙を流す登場人物たち、その涙が私にも転化する。思わずありがとうという言葉が出てくる。そんな気持ちになりながら、この章を読み終える。
最終章『エンディング•ロール』。タイトルの通り、この物語の終幕。箱根駅伝後の登場人物たちのその後が描かれている。それぞれの明日に向かって、進んでいる状況にホッとしながらも、物語同様に実際の箱根駅伝も終わった時から、次の年の箱根駅伝に向けたスタートが切られているのだろうと想像する。喜びや悔しさを糧に、また次に向けて動き出す。私もそうかな。感情の高まりは、何かを始めるには大切なものだろうな。物語に気づかされる。
池井戸さんの巧みな描写が何度も胸に響き、目頭が熱くなった。爽快感とモチベーションの高まりを得た。そんな作品に出会えたことを嬉しく思う。
Posted by ブクログ
いよいよ、箱根駅伝本番。
記録が残らない学生連合の10人が走る。
本作品は放送するテレビ局のスタッフ達を描いたもう一つの俺たちの箱根駅伝ドラマが印象深い。
チーフディレクターを務める宮本菜月の思い切りの良さと鋭く状況を見極める判断力が臨場感ある。箱根駅伝をわかってない感の編集局長黒石がいい感じに悪役。
箱根駅伝は、首位争いだけでなく、シード権争い、予選会、復路の20分の壁(首位選手が走り出して20分たつとタスキはつげない)などさまざまなドラマがあるのだかそれを余すことなく描かれていて大満足。
Posted by ブクログ
終わりたくない! 上巻から一気読み。でも8区辺りから、終わってしまうのがイヤで、読みたいけど読みたくない!と初めての感覚。箱根駅伝好きにはたまらないと思います。情景が浮かびます。
Posted by ブクログ
素晴らしい作品でした 人生には良い時も悪い時もあり、起き忘れてきたものがあり、勝ち取ってきたものもあります。それらは、自分が置き忘れたと思っているだけで、人にとってはなんて事のない物語かもしれません。勝ち取ってきたものも同じです。それでも、自分にとって大切な物語であり、これからも大切にしたいと思わせてくれました。
そんな自分の歴史の1ページ1ページを思い出しながら、悔しさや喜び、やるせなさや感動をこの物語から得る事が出来ました。努力が実らずに辛かった経験も、私の血となり骨となり今の自分が生きていることに、誇りを持ってもいいのかなと思いました。
とても良い作品でした。また、読んでみたいと思います。
Posted by ブクログ
迎えた箱根駅伝本番の日。1区16位でスタートした関東学生連合チームは2区村井、3区富岡、5区倉科の好走に後押しされ往路6位と好成績を収める。予想外の学生連合の好成績はそれまで冷ややかな見方だった大日テレビ、そして本選出場の各大学に徐々に影響を及ぼし始める。復路6区の猪又が凍結した路面に足を取られ転倒というアクシデントに見舞われたものの、7区、8区が区間賞に迫る快走を見せ学生連合チームや目標の3位を上回る2位相当でゴールする。
本物の箱根駅伝さながらに選手一人一人にスポットが当たる下巻。家族、先生、チームメイト、色々な思いを抱えながら走るランナーに胸が熱くなる。6区の猪又の激走には思わず涙したがこれ美談にしてよいのか?
鋭い観察力で温かい視点で選手に声かけをする新人監督甲斐、とっつきずらく実直だが選手への愛情を持つアナウンサーの辛島、見守る大人たちが素晴らしい。現実離れしてるかもしれないけど、エリートではないランナーたちにスポットを当て、次に繋がる前向きなラストも爽やかでよい。
好きなくだりはここ。「世の中に”才能”のあるものはいくらでもいる。足りないのは尺度なのだ。才能を評価し、世の中に出す尺度である。」
Posted by ブクログ
一気読みした〜!
文章も描写も、キャラクター設定も上手すぎてするする読める。箱根関連で最近「風が強く吹いている」を読んだので、せっかくならと思いこちらにも手をつけてみることに。
上巻のラストが大好き。
Posted by ブクログ
箱根駅伝当日
選手の転倒は、実際に早稲田の選手が転倒した出来事がよぎるし、もともと学連を応援したい私としては涙なしには読めない話だった
Posted by ブクログ
現実に箱根駅伝を今、観ているかのような臨場感が素晴らしかった。関東学生連合チームに所属する主役チームの出身大学は全て架空名だが、青山学院、駒澤、早稲田、筑波、国学院、法政、拓殖、神奈川、中央、順天堂、帝京など各大学が実名で出て、しかも走者の名前(実在かどうかは不明)が。10区の走る場面が詳細に語られる。一体、何年(いつ)のレースを舞台にして書いた物語なのだろうか?そして、その裏で奮闘するテレビ局のプロデューサーなどのスタッフの姿が生々しい。成程CMをこのように悩みながら挟み込むんだ!監督、コーチ、マネージャーの役割も良く分かり、これから「箱根」を見る時の視線が間違いなく変わりそうだ。感動的な結末のゴールとともに、各区間でタスキが渡るときの描写も感動的。特に8区走者のインタビュー場面には泣かされた!
Posted by ブクログ
『俺たちの箱根駅伝 下』は、走ることの意味をもう一度問い直す物語だ。予選で敗れた大学の選手たちが、寄せ集めの“学生連合チーム”として箱根駅伝本戦に挑む。順位にも記録にも残らない。けれど、彼らは「もう一度走りたい」という想いだけを胸に、白い襷をつなぐ。その姿には、勝ち負けを超えた“挑戦の尊さ”があった。読み進めるうちに、結果よりも「走る理由」そのものが物語の中心になっていくのがわかる。
監督の甲斐真人は、かつてのビジネスマン。スポーツの指導者としては素人同然だった。最初こそ選手たちから不信の目を向けられていたが、彼は“数字”ではなく“人”を見る。経験や理論ではなく、選手一人ひとりの心に寄り添いながらチームを整えていく。明確な目標を掲げ、迷う若者たちに「自分の走りを信じろ」と伝える姿に、池井戸潤作品らしい熱があった。寄せ集めだったチームが、やがて本物のチームになっていく過程は、企業再建小説を思わせるほどドラマチックだ。
箱根路を舞台に繰り広げられる10人のランナーの物語も圧巻だ。吹きすさぶ風、雪、そして肉体の限界。アクシデントの中でも、彼らは決して襷を離さない。誰かが倒れ、誰かが支え、誰かが涙をのんで走り抜ける。そこには“勝利”という言葉よりも、“つなぐ”という祈りに近い感情がある。ページをめくるたびに、読者の心の中にも静かな熱が宿っていく。
そして今作では、駅伝を支えるテレビ局スタッフの視点も描かれている。中継班、制作スタッフ、カメラマンたちが、選手と同じように走っている。視聴率、スポンサー、演出――そんな“現実”の中で、彼らもまた「どうすれば、この走りを正しく伝えられるか」と葛藤する。その姿が、作品全体にもう一つの厚みを与えている。箱根駅伝という巨大な舞台を、選手だけでなく“支える人々”の物語として描く筆致が素晴らしい。
読み終えたとき、心に残るのは「挑戦することの意味」だ。結果がどうであれ、走るという行為そのものに価値がある。誰かと競うのではなく、自分を超える。その姿が、読む者の胸を静かに熱くさせる。
『俺たちの箱根駅伝』は、駅伝小説でありながら、人生の縮図でもある。走る者、支える者、伝える者――それぞれが全力で“自分の区間”を生きている。
読後にはきっと、誰もが少しだけ前を向いて歩き出したくなるだろう。それはまさに、池井戸潤が描く「努力の美しさ」と「希望の力」そのものだった。