あらすじ
池井戸潤の最新長編の舞台は、
「東京箱根間往復大学駅伝競走」――通称・箱根駅伝。
青春をかけた挑戦、意地と意地のぶつかり合いが始まる。
ついに迎えた1月2日、箱根駅伝本選。
中継を担う大日テレビのスタッフは総勢千人。
東京~箱根間217.1kmを伝えるべく奔走する彼らの中枢にあって、
プロデューサー・徳重はいままさに、選択を迫られていた――。
テレビマンの矜持(きょうじ)を、「箱根」中継のスピリットを、徳重は守り切れるのか?
一方、明誠学院大学陸上競技部の青葉隼斗。
新監督の甲斐が掲げた「突拍子もない目標」の行方やいかに。
そして、煌(きら)めくようなスター選手たちを前に、彼らが選んだ戦い方とは。
全てを背負い、隼斗は走る。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
20241117一回目
20260124再読
途切れることのない緊張感の中で、順位変更に目を光らせ、最適なカメラワーク、場面の切り替え、実況、そしてCMもしっかり。スポンサーなしにはこの番組は成り立たず、ある意味スポンサーも一緒に箱根駅伝を走っている。どれひとつ欠けても、この舞台は成立しない。
諸矢)
「僕にとって箱根駅伝は人生そのものだった。38年間 選手たちと一緒に戦ってきた。だが、勝者はつねに一握りで、多くのものは敗者だ。だけどな、敗者にだって人生はあるし、敗者だからこそ得るものもあるんだよ。敗者は負けを認めることで勝者になる。僕はいったいどれだけ多くのことを、箱根駅伝から教えてもらったんだろう。僕は本当に幸せだったな」
甲斐は、様々な角度で選手を評価し、結果との因果関係に注目し、自分なりにぶんせきしていた。こいつは、ただ者ではない。そのとき甲斐に対して諸矢が抱いたのは、驚愕というより畏怖に近い感情であった。
佐和田晴)
陸上競技のランナーとして、晴は自分を一流だと思ったことはない。それどころか、自他共に認める二流である。だけど、そんな自分にも出番はある。沿道の応援を浴びながら、 晴は調布大学の後輩たちの大声で伝えたい気分だった。こんな俺だって、ここまでできるんだ。お前らにできないはずはない。だから諦めるな。走れ。走り続けろ。
松木浩太)
陸上競技人生の中でどれほどの距離を走ってきただろう。だが、 ひとつだけ確かなことがある。これほど力強く、勇気をもらえる数十メートルは絶対になかったということだ。
Posted by ブクログ
上巻のワクワク感、期待感をよくまとめたなという視点で星4つ。上巻の満点から星1つ減ってはいるけど、しっかり各ランナーに感情移入しつつボロボロ泣きながら読んでた。
上巻は関東学連が集まって練習を始め、各々の考え方の違いで衝突はしつつも目標へ向かって進んでいくという内容。下巻は上巻の内容を含め、箱根駅伝往路復路全レースの様子を描く。うまく走れるランナーやそうではない人もおり、順位を上げたり下げたりしながらレースは進んでいく。ランナーの視点や主務の視点、前監督、テレビ中継など多角的に切り取ることで飽きさせない工夫がされていたと思う。
往路復路含めると全10区あり、全ての区間の走りを丁寧に描写していた。その中でも私の中で印象深かったのは、星也、丈、浩太、隼斗の4ランナー。
星也と浩太は上巻ではヒールのような立ち位置で描かれていたが、それぞれが抱える思い、またレース展開は異なるものであった。星也はあくまで箱根駅伝を「通過点」と考えるクールなキャラであったが、本番では箱根駅伝の雰囲気にのまれてしまった。箱根駅伝の独特な空気感を考えるとそれも頷ける。
一方浩太は、箱根駅伝に出るために走ることを続けてきた人。自分が箱根駅伝に出る夢を家族や監督に支えられて、叶えられず、がんじがらめになってしまっていた。感謝と後悔を抱えながら走る最初で最後の箱根路は、涙なしには読めなかった。
丈は、山下りの6区を担当。学連チーム発足最初から前向きに練習していた。かなり好感度の高いキャラクターだった故好走を期待していたが、そうはならなかった。天候に恵まれず転倒してしまったのである。このあたりの無情さも、作品のリアリティを上げるのに買っているように感じた。負傷を抱えながらも走る姿は、箱根駅伝そのものだった。
学連チームキャプテンである隼斗の存在も、この物語にとってとても重要。新監督への疑い、チームメイトとのすれ違いや悪童と称される他チームのライバルとのいざこざなど。最終的には全て走りで解決していたため、アッサリしていると感じる部分もある。ただ箱根駅伝をテーマとしている以上、ただその距離を走ることのみでランナー本人の想いだとか、それが周りの人間に伝播していく様子を描いてくれたことは単純に嬉しい。