小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白くて驚いた。
いくつか井伏鱒二の作品を読んで、この日常のささやかな(わりと退屈な)出来事を描写する感じと、原爆という重いテーマがうまく結びつかなかったけど、原爆投下後も続く平凡な市民の日常を書いている感じがすごかった。
ハーシーのルポはある種ヒーローもののような活躍をする人物が出てくるが、本作の主人公は原爆投下によって原爆症を負いながらわりと平凡な日常を続けている、このリアルさ。
死者を河原で火葬することを役所が黙認することになり、工場長の命で、お経を唱えることになる。近くの寺でお経を写させてもらって、できるだけのことはやる。
・夕方ちかくなると、三人も四人も死亡者が出た。はじめの一人二人の知らせのときは「閑間さん、すみませんがお経を頼みます」と云って来たが、次第にぞんざいになって来て「閑間さん、葬式ですから来て下さい」と云うようになった。僕もいつとはなしに、自分でもそう云ってもらった方が気が楽だと思うようになっていた。
なんか、この感じがすごく面白い。
・戦争はいやだ。勝敗はどちらでもいい。早く済みさえすればいい。いわゆる正義の戦争よりも不正義の平和の方がいい。
「戦争」や「原爆」は政治的な意味合いが色々付いてしまって、もはや実感できるものとして指摘できる実体がない。そこで、井伏鱒二は「戦争」はこういうこと、「原爆」はこいうこと、ということを具体的に描いているように思う。
姪の縁談のために自分の日記を清書し始めたが、縁談が破綻になったあとも最後まで清書するという、もはやよくわからない構成だが、よく残してくれたと思う作品だった。 -
Posted by ブクログ
事件解決に臨む警察の捜査チームの動きが想像以上に魅力的で、読みながら「この人たち、職場の空気いいな…」と妙な羨ましさまで覚えました。真犯人の人間像は、犯罪にかかわらない部分――他人から見える範囲の日常生活が思ったより普通で、そのギャップが印象に残りました。
物語には複数の捜査官が登場しますが、誰かがただの背景になることはなく、それぞれに役割がきちんとあって、チームとして動いている感じが心地よかったです。キャリアの上官とのやり取りや、真犯人・偽ハサミ男との対峙も、個人戦ではなく連携で突破していく雰囲気が魅力的でした。
事件の核心にはしっかり迫っていくものの、少しだけ勘違いしていたり、わずかに見落としていたりする“ありそうなズレ”が物語にリアリティを与えていて好みでした。全体としてとても面白かったのですが、被害者家族の背景や職場の人間関係、マスコミとの関わりなど、もう少し踏み込んだサイドストーリーがあればさらに楽しめたかもしれません。
読み終えて「その後どうなったんだろう」と思う点がいくつか残るのも、この作品らしい余韻だと感じました。 -
Posted by ブクログ
モキュメンタリーホラー。
読みやすくて、世界観にも引き込まれてついつい一気読み。
もうだいぶ昔のことだが、2ちゃんねるのオカルト板の怪談・心霊現象スレッドや心霊スポット突撃的なスレッドを夜な夜な見ては楽しんでいた経験があるので、そんな自分にはとても相性の良い世界観だった。
ひとつひとつのエピソードもゾワッとするし、それらが少しずつ重なっていくのも面白い。
ただ怖い話を羅列しましたというだけではなく、ひとつのストーリーとしてもきちんと構成されており、その中でちょっとした叙述トリック的な驚きも仕掛けられていたのが個人的には嬉しかった。
勢いに任せて読破してしまったので、深い考察はできずにいる。真相は一体……。
文庫本の方は少し中身が違うらしいので、そちらを読むのも楽しみ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレドローンビジネスを手がけるベンチャー企業で働く高木ハルオ。兄を水難事故で失い、近くにいたのに助けられなかった後悔から災害救助という言葉を目にして今の会社に入った。巨大地下都市計画のオープニングセレモニーの直後、巨大地震が起こる。地下5階建ての都市の中で、「見えない、聞こえない、話せない」YouTuber、中川博美が被災する。ドローンで彼女を誘導し、火災と浸水が起きた地下都市から彼女を救うことが出来るのか。「無理だと思ったらそこが限界なんだ」という口癖の高木が先輩社員の花村、我聞、消防士の火野、中川の介助者の伝田たちと協力しあって、中川の救助というミッションに取り組む…
直近で読んだデフ・ヴォイス夢見る言葉でも盲ろう者の話が出てきたが、今回は三重苦。
昔の話ではあるが、私に点字を教えてくれた先生のガイドヘルプをしたことがある。ほとんど要らないんじゃないか、というくらい、歩くのには長けた人であったが、新たに出来た建物であったので介助者があるといい、という話で買ってでたことがあったのだ。その建物は障害のある方が使うことが前提になっていたので、盲の方への案内も点字だけでなく、音での説明もあった。例えばトイレは突き当たりを右に曲がって何メートル、とか。何メートルよりも何歩のほうがいい、という話もあって、その辺を先生と詰めた覚えがある。
聾の方へのヘルプとしては要約筆記をしたことがあって、担当した会場にいた手話通訳の方が盲ろうの方への介助を勉強している最中で、私の点字の先生に指点字の話を質問していた。
盲ろうの方は全国で1万人以上いるという。
「アリアドネ」はクレタ王家ミノス王の王女で、最近?だと「テセウスの船」というドラマのタイトルにある「テセウス」を助けるためにラビリンス脱出の知恵を授ける王女様だ。テセウスを助けた後のアリアドネの運命は、非常に理不尽な物を感じるのだけれど、この話のタイトルには関係ないかな。
韮沢の八つ当たりについては「なんだかなあ」と思うし、あんなこと言っておいて、妹のためにドローンを貸してほしい、とかよく言えるよな、と思う。
高木が主体の文章であるが、消防士の火野さん、先輩社員の我聞さんのアシストが非常に良い。
中川の障害詐称疑惑でみんなの心が乱れそうになったときも、立て直しをしていくチームが素晴らしい。そしてこれは障害のある方に深く関わった人にはあるあるな体験だと思うけれど、人間ってこんなこと出来るんだ、という能力の開発。もちろん、そういう体験をしなかった、という人もいるかもしれないけれど、少なくとも私は障害のある方と関わって、凄い、と思ったことが多々あるし、他の方からもそのような話を聞いたことがある。
惜しむらくは私の能力不足で、3D的な状況説明が上手く脳内に思い浮かべることが出来なかったこと。
本当に凄い、小説だと思った。 -
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不穏なSF短編集。あまり好きじゃなかった。
第1話 人間が本になっている国のお話。
第2話 人間がいつか他の動物に転化する世界。
第3話 ケイジュは仮想空間で自分の複製を虐待していたが、それを婚約者に見られてしまった。
第4話 人類は痛みを痛妃に肩代わりさせることにした。
第5話 ある時から、傘を刺そうが何をしようが雨が一人の人間に降り注ぐという事態が起き始めた。憂にもそれが起きている。
第6話 フリーデは精神病だとされて、治療のために島に送り込まれる。途中で医師だと名乗る青年に、これから目を抉られ、耳を使い物にならないようにされると言われるが信じられない。
第7話 十は綴にとって最も大切な本だった。 -
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『フェイスブック
若き天才の野望』
デビッド・カークパトリック著
滑川海彦さん高橋信夫さん翻訳の本を読みました。
2010年当時までフェイスブックを作るザッカーバーグのノンフィクション本です。
急速に成長するフェイスブックの活写と少年のような19歳のザッカーバーグが読み取れます。
人とのコミュケーションをよくするフェイスブックの成長に邁進します。
ザッカーバーグはお金が欲しいのでないのでMTV、マイクロソフト、グーグルから巨額のお金を積まれてもフェイスブックを売りません。成長に必要なサーバーの費用を捻出。これらの巨大企業を利用してフェイスブックを成長させることに集中します。
フェイスブックが1000人規模の会社になるまで共にした創業当初の友達が去り、広告収入が得るためヤフーーで広告事業化を成功させた女性をヘッドハンティングして、フェイスブックの成長は止まりません。
オバマが大統領になれたのもフェイスブックを最大限活用したのが大きいようです。
良いことばかりではありません。実名主義のフェイスブックは個人情報流出の問題も解決しながら成長します。
ハーバード大学から他大学、高校、一般人、世界にフェイスブックを広げて行くタイミングで多くの苦労とアイデア、忍耐力、新しい仲間の協力で成長していくのは素晴らしいです。
グーグルの共同創立者のラリー・ページに会った時に、報道陣が近にいるのにフェイスブックを使っているのか聴いて、ラリー・ページから『私向きにはデザインされていないから使っていない。』と言われてムキになるザッカーバーグは面白いです。
昔、マイクロソフト、デルコンピューター、インテルのアンドリュー・グローブの本を読んで、急成長で世の中を変えて行くドキュメンタリーを読んだ時と同じように興奮しました。
こんなに急速に成長する会社で働いたらさぞ充実感があるでしょうね。
面白い本ありがとうございます。 -
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大好きな友だちと雑談してる時の幸せな空間がくどうれいんさんのエッセイにはある。
思い返せば何の話してたっけ?でもとっても笑って楽しかった事しか覚えてないねーって言い合えるそんな当たり前みたいだけど当たり前じゃない幸せをちゃんとその瞬間に味わえてる感覚。
しあわせは乾燥でドラム式洗濯機をオススメされるあたりの「仕事もうまくいって、モテまくって、お金もじゃんじゃん儲かって、今じゃ風呂に札束入れて入浴してるよ」なんてフザケながら笑ってる様子とか、洗い物が嫌だけど「さて、人生を進めるか」という夫も、日常の些細なこれ好きだなというのを余すことなくかつ変に誇張する事なくスルスル書いてくれてる。
くどうれいんさんって綺麗事ばかりじゃなくてちょっとイジワルちょっと不機嫌でも感謝や周りの人が大好きで尊敬してるっていうのが嫌味なく正直に描かれてるから、なんだか飾らないでも実は隠れた文章力の凄さを惜しみない。わあこの人の友だちになれたら、この本の中の一人になれたら、と思う位に好きな作家さん。 -
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一番に、ポーとティリーの関係性が最高だった!ティリーはIQ200近くある1世代に1人の天才。だが、社会常識に乏しく、人の言葉のウラを読んだり、冗談を理解したりするのが難しく、殺人現場に泊まりで行くと言えばテントや缶詰を用意しなければと、本気で行動してしまう女性。職場ではそのせいで馬鹿にされ、イジメられ、母親には毎日の電話、送り迎え、外出許可が必要と一人では生活も困難な様子。ポーが復職第1日目で彼女をイジメた同僚を叩き追い出し、母親から外出許可を取り付け、ティリーにテントは必要ないよ、と馬鹿にせずに取り合うのは胸が震えた。外出をあんなに嫌がっていたティリーも、実は外出するのに興奮してる様子には、同じ親として感じるものがあった。ミステリーとしても面白かったけど、何というか、ポーとティリーの成長を通した小説としてだけでも読めそう。こういう人間模様が濃いミステリーがすごく好き!
最後のティリーがポーを命懸けで助け、それを知ったポーとの遣り取り。自然と涙が出てきました‥。
最後は想像の余地を残した終わり方で、モヤモヤしちゃうから苦手。モヤモヤ。すっきりしたかった〜。
これからシリーズを読めることに感激。
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