【感想・ネタバレ】宙わたる教室のレビュー

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Posted by ブクログ


各章いずれも胸が熱くなる内容でとても感動的で、一気に読むことができました。
定時制高校に通うさまざま事情を抱えた生徒さんが、先生との出会いをきっかけに、自分の興味、夢や目標を見いだし、可能性を広げチャレンジする姿勢がとても良かったです。

オポチュニティの轍
P129.8学ぶのをやめる人は誰もが年寄り。
P277.4人生こそ、自動的にはわからない。入った部屋で偶然誰かと出会い、あれこれ手を動かしてみて、次の扉をえいやっと選ぶだけ。

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2024年05月07日

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都立東新宿高校定時制にはさまざまな事情を抱えた多様な生徒たちが通う。ドロップアウト寸前の青年・岳人、料理店を営むフィリピン系のアンジェラ、不登校だった佳純、74歳の元工場経営者・長嶺。そんな彼らが理科教師・藤竹の誘いで科学部に入り、「火星クレーターを再現する」という実験で学会発表を目指すことに…!?
あとがきによればこの話は実話がきっかけで生まれたという。科学への情熱がこんなふうに人を救うこともあるのだ。手作りの装置で試行錯誤しながら実験に挑む姿は科学の原点そのもの。何度もぶつかり合いながら困難を乗り越えていく彼らに胸が熱くなった。

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2024年05月05日

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ある定時制高校でのお話。

色々な年齢、色々な事情を抱えた人が通ってくる。
昔、学校にいけなかった。
自分を変えたい。
人に会いたくない。
など定時制に通う理由も様々。
当然ながら揉め事がおこるが、
見守る教師があたたかい。
そうして出来た科学部が挑戦をする。
その先には予想もしなかった事が待ち受ける。
人生何が起こるかわからない。
どんな境遇でも挑戦し続ければ
何かが変わってくるかもしれないなあ。

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2024年05月04日

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それぞれの理由で定時制高校に通う4人が科学部を立ち上げ、火星のクレーター再現実験を通じて惑星科学の学会大会の高校生セッションに出場し・・・。
4人それぞれの四章と情報オリンピック本選を目指す普通科生、指導教諭、大会の三章を含めて、定時制高校、あるいは偏差値51の普通科高校とエリートアカデミアの権威意識の状況を踏まえても、ストーリーは出来すぎだよなと感じられた。
しかし、「あとがき」で下敷きとなるエピソードがあることを知って、フィクションとしての爽快感だけではなく、惑星科学の学会やJAXAの懐の深さにホッコリとした気持ちになった。
紹介されていたSF小説『夏への扉』『火星の人』『星を継ぐもの』も読んでみたくなった。
24-7

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2024年05月03日

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実話ベースの話とは知らずに読んだので、感動もののベタな話なのかも、と思いつつ読みはじめてしまった。
ところが、一気に読み切って最後は泣けた泣けた。
実話ベースとわかって本気で驚いて、なんだか後書きでも泣けた(笑)

科学の知識が本格的で、そこもなかなか。
話題になったからこそ読んだのだけど、売れてるのは読者としてもなんか嬉しい。

あー、こんな人たちがいたんだねー。いい話だな。

4星かなと思ったけど、この感動で一つ多めに!

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2024年04月25日

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様々な立場、複雑な問題を抱える定時制高校の生徒たちが科学と素晴らしい教師に出会い、学ぶことを知り、本当の仲間というものを知り、自分の中にあるいろんな感情を知る。
久しぶりに気持ちの良い本に出会えました。

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2024年04月21日

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定時制高校の科学部の学生たちが火星のクレーターの研究を行い、学会発表を目指すという青春科学小説。

様々な事情を抱える学生たちが、己の力を信じ、仲間の存在を受け入れ、「その気になりさえすれば、何だってできる」と熱い情熱を見せてくれます。
彼らの成長と熱意に感動しました。


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2024年04月14日

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読書備忘録817号。
★★★★★。

ストレスなく読める良い物語でした!
★5つはちょっと甘めかも・・・。

舞台は東京の定時制高校。
年齢もバックグラウンドも様々な学生が科学部という課外部活動を通じて自己肯定を得ていく、という物語。
構成は、登場人物にフォーカスされた章立てとなっており、一人ずつ科学部に入っていくという感じ。
そしてストーリー半ばから、取り組んでいる科学実験を、学会発表高校生の部!で発表するというひとつの目的に向けて突っ走るというもの。
分かりやすい。(^^♪

さて登場人物をご紹介!

柳田岳人。ゴミ収集の仕事をやる傍ら都立東新宿高校定時制に通う。決して勉強が嫌いな訳ではない。でも文章題が出されると何を回答すれば良いのか分からなくなる。
とある出来事がきっかけで、科学教師藤竹と話す機会を得る。
「君の数学の答案には計算式が全く書かれていない。しかし正解だ。暗算しているんですか?しかし文章題になると一切回答が書かれていない。もしかすると君は・・・。」と。
そう、彼は文字が識別できないディスレクシアという学習障害であったことが判明する。文字のフォントをちょっと変更するだけで劇的に読めるようになる岳人。
そして、なぜ空は青いのか?なぜ夕焼けは赤いのか?藤竹からレイリー散乱の原理を教わる。
そして「火星の夕焼けは青いんですよ。一緒に実験しませんか?」それは岳人を科学部に誘く藤竹の作戦だった。笑

越川アンジェラ。夫婦でフィリピン料理店を営む中年女性。仕事の傍ら定時制に通う。ただ、授業について行けない・・・。
全日制と教室を共有する定時制。同じクラスの池本マリが全日制の女子から盗難の難癖をつけられる。いざこざは大事になっていく。そして、アンジェラが全日制女子に暴行を振るう。
ただ、それには訳があった。その一件がきっかけでアンジェラは科学部に。

名取佳純。複雑な家庭環境で不登校に。それ以来人と関わることが出来ず定時制に通う。自律神経障害。リスカの常習。過呼吸頻発。定時制でも保健室に常駐。
保健室ではもっぱらSF小説を読む。アンディ・ウィアーの「火星の人」を読む!ジェイムズ・P・ホーガンの「星を継ぐもの」も登場!シンタローには堪らない作品群。
「火星の人」の孤独な主人公が火星で生き残る為に日記をつけていたのを真似て保健室の自由帳に日記を書く。
日記を通じて藤竹に科学部に誘われる。保健室以外にもう一カ所ハブ(火星の人参照!)があってもいいのでは?と。
そして、火星探査機オポチュニティの写真に衝撃を受ける。特に「オポチュニティの轍」。自分が歩んできた轍を振り返って写した写真だった。リストカットの跡。生きてきた証拠。
そして、思い切って科学部の人と関わることにチャレンジする。

長嶺省造。70代の爺さん。
集団就職で上京。工場で働きながら手に技術をつけて小さいながら長嶺製作所を立ち上げた。
妻、江美子はじん肺で入院。恵美子に背中を押されて行きかった高校、定時制に通う。
しかし、授業中に、しつこく質問することで、他の生徒との間に世代間ギャップの軋轢が生まれている。
藤竹は、省造に自分の話を披露してくれとお願いする。
そして語られたのは妻の物語。真剣に聞き入る学生たち。
藤竹は科学部の実験に機械装置が必要な状況を説明する。藤竹は省造に装置の制作を依頼する。
省造には造作もないことだった・・・。

全日制普通科2年。丹羽要。
コンピューター部所属。情報オリンピックの日本代表を目指し、日々プログラミングに励む。
そんなコンピュータ部の部室を定時制の科学部が使わせて欲しいと。
科学部の実験に必要な天上の高さを満たせるのはコンピュータ部の部室だけだと。
冗談じゃない!集中できない!
とある日。定時制と共用する机にゴミのような紙に落書きが。何かの手書きのグラフ。それは、藤竹と岳人が要を引き込む罠だった。笑

そしていよいよ明かされる、科学部の野望!
日本地球惑星科学連合の発表会が幕張メッセで開かれるという。
その高校生セッションに東新宿高校定時制としてエントリすると!
発表テーマは「火星重力下でランバート・クレーターを再現する」。

ここからは、上手くいかないことからの焦り、仲間割れ、実験の中断・・・。
実験を再開させるために、藤竹は自分がこの高校で密かに実行中だった実験を生徒たちに明かす・・・。
このくだりは熱くなります!
日本!下らないプライドに拘るな!と!

そして、幕張メッセ。
発表者の岳人と佳純は堂々とプレゼンを成功させる!
受賞チームの発表!そして、思いもよらないオファー!
胸アツです!

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2024年04月13日

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読み終わってホッとしたというか、良かったなという感じでした。読みながら応援していた様に思いました。最高でした!

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2024年04月13日

Posted by ブクログ

面白かった!
皆さんの評価が高かったので手にとってみたはじめましての作家さん。
定時制高校を舞台に、さまざまなな境遇や生きづらさを抱えた生徒達が部活動を通して成長していく物語。1人1人の葛藤や背景、そこからおこる軋轢にリアリティーもありつつ。現実と理想のギャップ、真っ直ぐに物事が運ばない現実。どう折り合うのか、うまくいかない時にどう受け入れるのか、進んでいくのか、そこが本当に大事だなぁと改めて思う。
連作短編のようになっていて、1人1人にスポットライトがあたっていきながら、それぞれが関わり合う事で化学反応が起きていく。本当に気持ちの良い読後感で、自然と前向きな気持ちになれる1冊。

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2024年04月09日

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最初は、いろんな事情で定時制高校に通う生徒をテーマにした短編集なのかなと思っていたら、先生が科学部を立上げて、その生徒達が集まり、研究が始まるというストーリー
メンバーがそれぞれの得意な事を出しあって、一つの目標に向かって取り組むのって本当にいい!
きれいごとっぽくも見えなくもない無いけど、でもやっぱり、そんな事は無く、変化とも成長とも進化とも化学反応とも言えるような言えないような関係性が楽しそうと思った
途中、装置の説明とかイメージが辛かったところはあったけど、最後まで読み切って良かった!

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2024年04月06日

Posted by ブクログ

面白かった~。

定時制高校の科学部が舞台。
いろいろな生徒をうまく導く藤竹先生がすごい。

あとがきにはきちんとモデルがあり、これが「はやぶさ2」ともつながっている。

伊与原 新さんは神戸大学理学部を卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻とのこと。
この本が出来たのも伊予原さんならではのこと。
すごく良い作品でした。
この本は読まないと。

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2024年04月04日

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この人の本は甘い。嫌になるくらい現実を見せてくるけど、『出来すぎでしょ』と言いたくなるような結末が待っている。なのに全く嫌な気がしない。登場人物たちの頑張りにエールを送り、トラブルに心配し、結末に歓喜する。科学小説のようで青春小説であり、明日への期待を持てるようにしてくれる作品。

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2024年03月30日

Posted by ブクログ

どんな境遇でも、自身の振る舞い方、また周りの人々との出会いによって道を切り開けることを体現している。
読みながら涙が出てくる作品。熱い気持ちを持って前進すること、社会の偏見にもめげない力強さの重要性を理解できる。
また、話の途中でトリアージされた学生が出てくる。救われるものが救われる世界。現実的な面も見せながら、未来への希望、変化することに年齢は関係ないことという強いメッセージを感じる。

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2024年03月29日

Posted by ブクログ

こういうお話好きだわ〜。
それぞれわけあって定時制高校に通っている面々が、藤竹先生によって科学部に集められる。彼らはいくつかの衝突を乗り越えて、学会発表で賞を取る!いわゆるサクセスストーリーなんですが、あとがきを読んでびっくり。実話をもとにしてるんですって。
夜間学校に通う岳人は、難しい計算も暗算できちゃうのに、文章問題になるとからきしダメ。ディスレクシアという学習障害だと藤竹が気づかせてくれる。「俺はバカじゃない。怠けてたわけでもない。」岳人のセリフに胸打たれました。
集団就職で上京した長峰さんのお話は、ご本人の葛藤に加え奥様との愛情も感じられて、心が揺さぶられます。
それぞれの登場人物について語られるパートでお話が進んでいくので、登場人物みんなに感情移入できてしまう。それがこのお話に引き込まれた一番の理由だったかもしれません。
素敵なお話でした。

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2024年03月10日

Posted by ブクログ

 当たり前だが、定時制の理解は、あんまりにもステレオタイプだ。世間的なイメージにとらわれすぎている。
 ただ、定時制が生きるための「学び」の場であることは、きちんと描かれていた。
 感動するのは、物語が織りなす人と人とのつながり。さらに、学ぶことの何よりのかけがえのなさ。彼らにとっても、私達にとっても、学ぶことは何よりの希望なのである。

 

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2024年03月05日

Posted by ブクログ

すごく良かった

重松清の「青い鳥」と辻村深月の「この夏の星を見る」を合わせたみたい

定時制高校での話
個性的な登場人物それぞれが上手く絡み合っていて面白かった

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2024年03月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後の章はぞわぞわ鳥肌が。

学ぶことを知り、本当の仲間と言うものを知り、自分の中にあるいろんな感情を知ったこの日々をこの先決して忘れる事はないだろう

これが学校なんだ。

フリースクールとか、自宅学習とか、色んな学習手段がある中でそれでも「学校」がなくならないのは、いろんな人がいて、もしかしたらこの先会うことのない人たちといっときでも同じ場に集まり、学ぶ。それってとても尊いことなんだなって、この本を読んでじわじわと感じた。

長嶺さんの章から本に入り込んでいって、一緒に青春できた。そして後書きみたらこの話のベースとなっていることが現実にあったなんて!!そこでまた感動。ありがとう。


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2024年02月29日

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あー、最後、泣けたなぁ。
定時制高校の科学部のお話。
定時制だから、年齢は様々。
みんな、それぞれ理由があって今この教室にいる。
高卒の資格を取りたいということであれば、通信制の高校でもいいのに、わざわ足を運んでくるのは何故なのか?
同じ教室の中の世代間の溝、定時制と全日制の生徒の溝。それらが埋まっていく過程もグッとくるけれど、ただのいい話だけで終わっていないところがまたいい。
保健室の先生は誰が救えて誰が救えないかトリアージをしているし、科学部の顧問の藤竹も部を立ち上げる目的は実は個人的な理由があったりする。
でも、その先には生徒を思う気持ちがある。
保健室の先生も藤竹先生も、受け身でなく、自分から学ぼう、自分自身を救おうと思うことの大切さを教えてくれている。
とてもいいお話だった。大満足の一冊。

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2024年02月26日

Posted by ブクログ

 東京都立東新宿高校定時制。
 勤労学生が仕事のかたわら意欲的に通っていたかつての姿はない。入学してくるのは全日制には通えない何らかの事情を持った生徒ばかりだ。そこには将来を見据える前向きな生徒はほとんどいないように見える。

 荒れる生徒、無気力な生徒と対するだけで精一杯の教師たち。そこに1人の風変わりな教師が着任し科学部を立ち上げたことで、変化が生じていく。

 これは「教室に『火星』を作り出す」という突拍子もない実験に挑んでいく老若男女4人の高校生たちの1年間を描く青春小説である。
         ◇
 牛丼屋を出た柳田岳人は腕時計に目をやった。定時制では3限目の時間だが、岳人は構わずコンビニでたばこを買い、くわえたばこのまま歩道の真ん中を歩いて学校に向かった。
 校門まで来ると、中からバイクの耳障りな爆音が聞こえる。ため息をついた岳人がグラウンドまで出てみると、退学したはずの三浦が朴を後ろに乗せて原付で走り回っていた。

 岳人が近づくよりはやく、痩せた貧相な体格の男がバイクの前に歩み出た。岳人の担任の藤竹だった。
 藤竹が何か言っている。三浦に対し、怯えも怒りも感じない淡々とした態度でだ。薄ら笑いを浮かべつつ食ってかかる三浦に臆することなく平然としている。

 そんな藤竹を威嚇するように三浦はバイクを発進させ、藤竹のまわりをぐるぐる回り始めた。それを見た岳人が、暗がりから三浦に「おい」と声をかけたところ……。
 (第1章「夜八時の青空教室」) 全7章。

     * * * * *

 教師に必要な資質。それが描かれていました。

 担当教科についての十分な知識や指導力があることは当然ですが、そこに正確な観察眼と洞察力、柔軟な対応力も必要です。
 短気を起こさず生徒の向上心の発芽を待てる忍耐力も必要でしょうし、トリアージの判断能力も求められるかも知れません。

 藤竹という教師はそれらすべてを持っていた上に、さらに極上の資質を有していました。
 それは、藤竹自身がのめり込める専門分野を持つとともに、その楽しさを生徒に伝え、同じ世界にいざなえる情熱を持ち合わせていることでした。

 その象徴的なシーンが、物語の終盤にあります。

 空中分解寸前となった部員を前にした藤竹が、自らの経歴を語ったあと、君たちを科学部に引き込んだのは定時制高校に科学部を作り生徒に活動させることができるかという「実験」のためだった、と告白します。
 すると部員の中で最も内気な佳純が実験の前提となる仮説を尋ね、それに対する藤竹の答えを聞いて言い放ちます。
「相手のことを信じてやる実験なんて、ない」と。

 この指摘に、藤竹は安堵と感嘆を覚えます。生徒たちを、研究者の冷徹な目で見ていたわけではなく、同じ宇宙に魅せられた仲間と捉えていたことに気づかされたからでしょう。

 定時制に来ざるを得ない事情。障害、学力不足、貧しさ、不登校。それらを乗り越えてでも科学部活動、ひいては学校活動に生徒たちを引き込んでいくだけの熱量を、藤竹は持っていたとわかる、感動的なシーンでした。

 ディスレクシアの岳人。フィリピン育ちで読み書きが覚束ない日比ハーフのアンジェラ。炭鉱町の貧しい家庭で育った長嶺。 
 学力不足の3人は向学心がないのではなく、向学心を阻む原因が解決されなかっただけだったのです。

 そこにもう1人、ストレス障害で教室に入れなくなった佳純が加わりました。保健室登校だった佳純ですが、藤竹に対する信頼感と SF 好きだったことが、佳純に保健室を出る決心をさせたのです。

 計算力と行動力に長け、優れた理解力も有する岳人。コミュ力が高くチームを融和させる人徳を持つアンジェラ。町工場を長く営み、ものづくりの名手である長嶺。客観的に物事を捉える観察力と緻密な分析力に裏打ちされた高い学力を持つ佳純。

 この4人の適性を見抜き、さり気なくフォローしながら不安や不満を和らげて、惑星科学の入口に立たせてやる。そんな藤竹の手腕はまったく見事というほかありません。
 ただし藤竹から狡智に長けた嫌らしさは感じません。むしろおちゃめな印象すら受けるのです。
 奇しくも科学部入部を決めた長嶺が藤竹に言ったことば、「食えんな、あんたは。妻より食えん」によく表れています。
 笑顔で夫をうまくおだて仕事をする気にさせる長嶺の妻。藤竹はそれ以上だと長嶺は言ったのです。


 最終章で描かれる、「日本地球惑星科学連合大会」の高校生セッションで発表する岳人と佳純やフォローする長嶺とアンジェラの姿は爽快で涙が出るほどでした。

 事実を元にしている物語なので、できすぎた話との批判もないでしょう。教育の可能性について考えさせてくれる感動作でした。

 不満を1つ挙げるなら、岳人が昔のワル仲間からリンチを受ける展開は避けてほしかったということです。
 そこは朴をうまく使えなかったのかと思いました。( もしかして、これも実際にあったできごとなのかも知れませんが……。)

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2024年02月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

伊予原新作品は「月まで3キロ」に続き二作目
今作も途中から加速度的に引き込まれていった
フィクションでありながら、設定としてモデルになった定時制高校とJAXAの話があったことが更にワクワク感を増す
「人間は、その気にさせられてこそ、遠くまで行ける」
良い言葉だなぁ〜

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2024年04月22日

Posted by ブクログ

どこにいるか、よりも、そこで何をするか、が大事だと思う。置かれた立場や環境に納得できないことも、不公平だと感じることもあるだろうけど、結局は自分がどう生きていきたいか、なんだと思う。偶然その場所に集まっただけの人が、かけがえのない友達になることも、少しのきっかけに、未来が変わることも、本当はすごく身近に誰にでも起こりうるんだと思った。

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2024年04月18日

Posted by ブクログ

面白かった。胸が熱くなる。そもそも定時制で学ぼうって気持ちがあること自体がもうすごいと思う。ディスレクシアという言葉が出てきたけど、馬鹿でも怠けてた訳でも無く、そういう学習障害だってこと一体どれだけの人が理解してくれるんだろう。すごく判断が難しい。岳人はそれがわかってよかった。頑張る人の応援は自然としてしまうもの。他の人たちもそう。伊予原新さんのこういう分野の作品ほんとに好きだなー。

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2024年04月05日

Posted by ブクログ

定時制高校に通う生徒が「科学部」という居場所を見つけ、ある教師とともにたくましく成長していく物語。
ワルを絵に描いたような生徒や自傷行為に走る生徒、リタイアした高齢者、外国人等、普通高校ではまず見られない、それぞれに事情を抱えた人たちが学ぶ定時制高校。もちろんクラスとしてまとまりなど出るわけがなく、教室は荒れ放題。そんな中、ある教師が一人、また一人と引き込み「科学部」を創設。それぞれが足りない部分を補いながら、ついにはコンテストにまで出場して…というような形で物語は進んでいく。
ほとんどの人が交わることのない、見聞きすることのない定時制高校という空間を感じることができて、非常におもしろく読ませてもらった。途中普通高校の生徒とも触れ合い、お互いがお互いを理解していく姿も非常に良かったなと。
助け合い、思いやりの精神の大事さを改めて感じた一冊でした。

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2024年03月30日

Posted by ブクログ

この方の作品は小説の中にアカデミックな要素が含まれていて、いつも好みの話に仕上げてくれます。今回も将来への希望を感じさせてくれる仕上がりで、大変気持ちよく読ませてもらいました。

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2024年03月27日

Posted by ブクログ

東京・新宿にある都立高校の定時制クラス。年齢も抱える事情もさまざまな生徒たち。
担任で理科の教師・藤竹の声掛けで結成されたたった4人の「科学部」。夜の教室に集まった彼らが起こす素晴らしい奇跡の物語。

負のスパイラルから抜け出せない岳人、先生になりたかった日比ハーフのアンジェラ、保健室登校するリストカット常習者の佳純、集団就職で高校に行けなかった妻の代わりに通う長嶺、科学部員となる4人それぞれの事情が描かれていく各章。

中でも「オボチュニティの轍」が一番好き。
NASAの火星探査車・オポチュニティのミッション終了のエピソード、それに力をもらう佳純の想いには涙、涙。

そして藤竹のある企み。
「この国ではいつまでも、科学はエリートと優等生だけのものなのだろうか」
この言葉は自らも研究者であった作者の思いでもあるのだろう。
そして希望あるラスト。
この結末に、「現実はそう上手くいかないよね。やっぱり小説だからな〜」と思っていたら、なんと実際にあったエピソードに基づくお話と知ってびっくり!

こんなことが現実にあるなら、まだまだ日本の科学の未来は明るいとちょっとホッとしました。
読んで良かった。

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2024年03月24日

Posted by ブクログ

様々な理由で定時制高校に通う生徒たちが、ある先生の元、科学部を立ち上げ、つながり、奮闘して行く姿。
それぞれの人柄もクローズアップされながら、また学歴社会の綻びや親ガチャなどにも触れ、学ぶこと、仲間を作ることの大切さが伝わった。

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2024年03月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

定時制高校の宇宙の話。科学部の話。
逆境から立ち上がって一念発起するっていう熱い話なんだけど、伊予原新さんの科学ネタ満載で読み応えある知的な小説だった。
難しくてよく分からないところもあったけど、淡々とした青春小説って感じなのが良かった。
頑張れば報われる。いつからでもやり直せる。
やりたい事見つけたいと思った。

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2024年03月12日

Posted by ブクログ

 一発大逆転の物語。みなさんは何か諦めていることはありませんか?自分の環境や年齢やその他諸々諦める理由はあると思いますが、諦めなければなんでもできると思わせてくれる物語です。

 定時制の高校に通う個性豊かな登場人物たち。担任の藤竹は、元ヤンや外国籍の中年女性、リストカットを繰り返していた保健室登校の女子生徒、70歳を越えた元工場社長を集めて化学部を作る。

 もちろん、個性豊かな面々。実験を繰り返していくうちに色んなことが起こります。でも、そんな『不良品』たちが最後に奇跡を起こす様は人々に感動を与えてくれます。

 私個人的には、実験や科学というめちゃくちゃ苦手な分野の話なので、物語に入り込めない部分もかなりありました。それでも『オポチュニティの轍』はすごく胸に刺さるものがありました。

 この物語は若い世代だけではく、色んな世代に刺さる物語だと思います。諦めることをやめて、やることから始めてみよう。

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2024年03月11日

Posted by ブクログ

定時制高校に通う人たちは年齢も幅広く、通う理由も様々で個性的。全日制よりも1年多く通わなければいけないけれどみんな高卒資格もらえるように最後まで頑張ってほしいと思いました。新任教師の藤竹がじつに上手い立ち回りをして1話ごとに科学部の仲間を増やしていきます。そして行われる実験が面白そうでついついひき込まれていきました。
金髪ピアスの柳田岳人に、フィリピン料理屋のママ越川アンジェラ、過呼吸保健室登校の名取佳純、74歳元町工場経営者の長嶺省造、全日制に通うPCオタクの丹羽要は密かに佳純ちゃんが気になってるようでイエローカードだしたくなりましたw
火星の夕焼けは青いとかオポチュニティの轍の話とかは想像を膨らませるには充分すぎて心躍りました。
藤竹の経歴が明かされ科学部を作った目的を語り出した時に鼻持ちならない感じがしたのですが、佳純の言葉に目から鱗でした。そして予想以上の成果が生まれることもしばしばで嬉しい誤算なんだと思います。

【追記】
火星探索で独りぼっち14年間も地球にフォトを送り続けたオポチュニティの話は特に感動してしまいました。最後にふり返って自分が歩いてきた軌跡のフォトを送信するとか無茶ツボでした。私も誰も歩いていない雪山でスノーシュー履いて踏み跡残すのが好きでよく振返って我ながら規則正しい踏み跡にウルウルすることがあるんです。下山するのが勿体なくってこのままずーとここにいたいなぁとか思って立止まると3分もしないうちに凍えてきてまた歩き出すんですけど、すごい雪庇を乗り超えて歩いてきた軌跡は自己満足にすぎないのですがSNSにアップしてニマニマしてます。

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2024年03月02日

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