あらすじ
徳川家康が最も恐れた男、真田幸村の謎に迫る!
「歴史ミステリとして、そして本格ミステリとして、実に優れた一作」
――大矢博子(解説より)
徳川・豊臣両家や諸将の思惑が交錯する大坂の陣。
亡き昌幸とその次男幸村――何年にもわたる真田父子の企みを読めず、翻弄される東西両軍。徳川家康、織田有楽斎、南条元忠、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永、ついには昌幸の長男信之までもが、口々に叫ぶ。「幸村を討て!」と……。戦国最後の戦いを通じて描く、親子、兄弟、そして「家」をめぐる、切なくも手に汗握る物語。
『塞王の楯』「羽州ぼろ鳶組」シリーズの熱さと『八本目の槍』の緻密な叙述を兼ね備え、家康を「探偵役」に紡がれた、単行本時各紙誌絶賛の傑作歴史ミステリーが待望の文庫化!
【目次】
家康の疑
逃げよ有楽斎
南条の影
名こそ又兵衛
政宗の夢
勝永の誓い
真田の戦
解説 大矢博子
〈大坂の陣410周年〉
感情タグBEST3
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大坂の陣を舞台に、徳川・豊臣・真田、それぞれの思惑が複雑に交わっていく。
“幸村を討て”という言葉の裏で、誰が何を守ろうとしていたのか――
物語を追ううちに、その答えが少しずつ見えてくる。
幸村その人はほとんど登場しないのに、読み終えるころには確かな存在として胸に残る。
多くの人物の視点を通して浮かび上がる“語られぬ幸村”が、本当に印象的だった。
そして今村翔吾さんの人物描写はやはり圧巻。
家康も政宗も、皆が迷いながら、それでも信じた道を歩いている。
登場人物の言葉や行動の裏にある真意を読み解くようにページをめくる時間が、とても刺激的だった。
戦の裏で交わされる言葉や策略の駆け引きが見事で、
誰もが何かを守るために沈黙を選ぶ――その姿が心に響いた。
上田で真田の歴史に触れたあとに読んだこともあり、
物語の世界がより身近に感じられた。読後の余韻が、まだ静かに残っている。
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すごい本に出会った。
戦国の世の終焉を告げる大坂の陣。
この戦いで名を馳せた、真田幸村とは一体何者なのか?なぜ名前を変えたのか?なぜ家康を討ち取らなかったのか?
幸村自身の視点ではなく、彼を取り巻く7人の語りをもとに真田幸村の大坂での挙動の不審さ、章の間に展開される真田家の秘密や約束は更に謎を深めてゆく。登場人物らと同じように「なぜ?」という疑念を深めていく。
しかし、謎と謎が線を結び、「幸村」の夢が明らかになったとき、その圧巻の展開に、それまでのわだかまりが解けると共に、息を呑む。そしてその背後にはもっと奥深く大きく、脈々と血の通った真田の絆があった。
この作品はミステリーとしてもたいへん読み応えがあり、また描かれる登場人物の描写やエピソードにすごく引き込まれた。それぞれが様々な想いを抱え、どんな過去を過ごしてきたのか、そしてこの戦いで何を目指すのか、克明に描かれ、胸が熱くなり、時に切なくもなる。
史実をもとに、その余白にたくさんのフィクションを入れこむことで、ありありと世界が浮かび上がった。
歴史のロマンを体現した素晴らしい作品だった。
真田幸村がこんなに人を惹きつけてやまないのは、現在語られている史実でも明らかになっていない事柄が多いからかもしれない。だから、人はそこに夢をのせ、彼に想いを馳せてしまうのだろう。
今村翔吾さんの作品を読むのは初めてだったが、構成、人物描写の美しさがすごいと思った。他の作品も読みたいと思う。本当に出会えて良かった一冊だった。
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面白かった。
真田家は徳川家康を最後まで悩ませた相性の悪い相手。
”名を残し家を残す”という父の想いを息子たちが受け継ぎ、時に身内同士で敵と味方に別れながらも戦国の終わりを突き進んだ真田家の家族愛の物語。
大阪の陣では勝敗は最初から明らか。
豊臣側に馳せ参じた浪人衆もそれぞれに名を挙げれたらそれでいいとか、武名をあげて徳川に寝返りたい。などの思惑があり、味方でありながらも味方でない状況。
その豊臣陣に入ったうちの1人が真田幸村。
徳川側にいる兄の信之と共に最後まで真田の夢を追う。
なぜそこで真田信繁という名前を幸村と変えて入ったのかなども含め少しずつ明らかになり、その他織田有楽斎、南条元忠、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永それぞれの視点からも幸村が語られてちょっとずつ全貌が見えてくる。
毛利勝永さんいい人やったな〜
最後の家康と信之の問答も緊張したー
真田幸村は死んじゃったけど、真田家としては勝ったんだ。
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これはすごい。
戦国の世の終幕を迎えた兵たちの多様な生き様を6つの章と真田の章から鮮やかに浮かび上がらせていて、それに加え家族愛をいたるパートで強調していて何度も感情を揺さぶられた。これらの要素を大坂の陣のミステリーを解き明かすものとしてぎゅっと内容を濃縮させた本書は本当に本当に面白かった、、、
「幸村を討て!」最後の信之による伏線回収はミステリー小説としての本書を確立するものであり、「真田の戦い」を通して歴史小説としても文句のつけようがないほど面白かった。すごいこれは本当にすごかった、、、、
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読んでいてこんなに胸踊る小説は初めてだったかもしれない。
真田幸村が歴史上の人物で一番好きだが、
途中まで「え?これ、、、幸村悪いやつ、、、?」と疑ってしまうほどだった。
そのときの幸村像が今までのイメージと全く違って、冷たくて底知れぬ恐ろしさがあった。
読み進めていくにつれ、「これは、、、。?
優しい人なのか?どっちなんだ〜!?」と考えすぎて自分でも笑ってしまうほどこの謎にハマってしまった。
今村さんの小説はまだ読んだことがなかったが、こんなに文章が読みやすくて面白いならもっと読みたいと感じた。
この本は歴史が好きな人なら、とても面白く読めると思う!
とにかく最高だった!
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名将、真田幸村の生涯に巧みにミステリーの要素を織り込みながら描かれる物語。
題名「幸村を討て」に込められた真意がすごい。
そして、戦乱の只中にあっても揺らぐことのない真田家の家族の絆に、ただただ感動。
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歴史小説ファンだけじゃなく、歴史は興味あるけど歴史小説は手に取ったことがない人や、「歴史小説=読みにくい、難しい」というイメージを持つ人にも優しく面白い構成がなされている。
と堅苦しく書いたが、ほんっとうに面白かった!ページ数は多いが、読み進めていくうちにどんどん内容にのめり込み、終盤には「まだ終わってくれるな…」と終わりに到達したくない気持ちが出てくるほど素晴らしかった!
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面白かった。
物語の構成も上手いと思う。
大阪の冬の陣、夏の陣で徳川家康が感じた違和感が何であるのかを突き止めると言う構成だ。
五人の武将の章もそれぞれ視点が違う物語で興味深い。
そして最後に「真田の戦」は真田信之が家康と対峙して、戦の始末をする。
戦国時代最後の決戦に深みが増し、人間味が感じられる作品だ。
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真田家は人気のある武将ですがなぜ最後に幸村に名前に変えたのかが、ミステリーとして描かれておりとても新鮮でした。最後の攻防もハラハラさせられますが家族愛がベースにあり読み終わった後にはこれで良かったんだとほろっとさせられました。
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600ページ近くの分厚さに、読み終わるまでどれだけ時間がかかるかなと思っていたけれど、気づいたらほとんど一気読みしていた。真田幸村あるいは真田家を中心に据えた、戦国武将たちのお話詰め合わせセットってかんじの連絡短編。それぞれのお話に繋がりがあるといえど、ひとつのお話としてどれも文句なしに面白い。だから途中までは個々のお話として楽しんでいたのだけれど、最後にすべてをひとつのお話としてまとめあげてきたな〜と感じてにやけた。散々血で血を洗う戦を描いたあとで、最後は銃も刀も使わない、舌“戦”という答え合わせで締め括るなんて。圧巻。お話としては、南条元忠がすきすぎて悶絶した。
やっぱり今村翔吾って面白いものしか書けない呪いにでもかかってるんじゃないかと思えてくる(ご本人の才能と努力の賜物なんだけど…なに読んでも面白くてほんとうに感謝です)
Posted by ブクログ
連作短編の様に綴られる幸村の人と為り。
何故家康を討たなかったのか?
見事な結末にただ脱帽…。
歴史ファンとして、真田幸村ファンとして嬉しい作品だった。
Posted by ブクログ
幸村の話と見せかけて実は信之の話。フィクションだとはいえ本当にこうだったのではないか、こうだったらいいなと思ってしまうくらい魅力ある話だった。伊達政宗とのやりとりが特に魅力的。幸村を討て、その題名も素晴らしい。
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時代小説は難しいからゆるりと読んでたけど
後半そんなん言ってられないほど
おもしろくて一気に読み終えた。
それぞれの章で異なる武将が
主人公となる群像劇で
大坂の陣の謎を解く歴史ミステリー。
おもしろすぎてちょっと震えた笑
Posted by ブクログ
この方の小説、もちろん読み始める前からただの歴史小説ではないと期待はしていたが超えてきた。
ミステリー、戦記、愛情の物語が盛り込まれさまざまな視点や思惑が入り混じる層の厚い展開。
めちゃくちゃに贅沢な時間を過ごす事ができた。
Posted by ブクログ
視点を変えながらも少しずつ進んでく物語。
長編なのに長さを全く感じさせない。
そして、トリップしたような…その場にいるような感覚です。
しっかりと歴史モノのしっかりとミステリー。
もう…最高でした!
Posted by ブクログ
幸村にフォーカスされたドラマや話はよく見たり読んだりしたけども、信之視点での物語は初めてだったから新鮮で、信之の有能さに驚かされた。
大坂5人衆や、豊臣側の武将の一生にフォーカスしたり、それが真田家の策に結びついたり色々な人生が深く絡みあっていて、気づいたら各武将へ感情移入してしまっていた。
真田家の絆の強さ、夢に向かってもがく生き様。漢として憧れる。
タイトルの使い方も上手で素晴らしい。
無茶苦茶おもろい。
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三読め。初読、讀賣新聞オンライン、再読、単行本、そして文庫化を機に三読した。やはり大傑作。大坂の陣を舞台とし、そこで繰り広げられた徳川家康対真田家の奇妙な戦い。大坂城に入った真田幸村は何を意図しているのか、その謎を解いていく。それを戦に関わった人物達の人生を縦糸とし、いくつかのエピソードを横糸として繋げ、壮大で魅力的な一枚の織物に仕立て上げる、その作家の手付きの妙。一人一人の人物を人生をそれぞれ魅力的に構築し、その人生の断片を巧妙に撚り合わせる。超絶技巧。今村祥吾、当代一の歴史時代小説作家だわ。織田有楽斎素敵、鉢屋弥之三郎かっこいい! 南条元忠、後藤又兵衛可哀相、となったところで、それぞれの思いを阻む真田幸村がなんとも悪辣で憎たらしくなってくる。そして伊達政宗、毛利勝永ああ、で持ち直して、最後の、徳川家康vs真田信之の行き詰まる攻防! たまらん。
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真に歴史ミステリー。
大阪夏・冬の陣に臨むそれぞれの思惑が交わり、真実を隠している。戦国時代の漢達に人間味が加わって不思議な世界が造られている。
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戦国最後の戦いを通じて描く、真田家の親子、兄弟、そして「家」をめぐる、手に汗握る歴史ミステリー。
真田幸村という戦国武将は、これまでも多くの作品で魅力的に描かれていると思いますが、幸村だけでなく、真田家をめぐる親や兄弟の思いを見事に描いた作品として、とても秀逸だと感じました。
しかも、大坂の陣の中の敵、味方をの目を通して、幸村の真の野望の謎に迫るミステリー形式なっており、歴史小説の新たな醍醐味を味わいました。
また、一つ一つのエピソード自体が一つの作品として十分に堪能できる内容となっていて、歴史好きにはたまらない作品でした。
大阪城にこもる武将たちのそれぞれの思惑から対立する人間関係など、いつの時代にも通じる普遍的なテーマもとても興味深かったです。
昔から気になる人物ではありましたが、改めて幸村という戦国武将の魅力を再認識することができました。
Posted by ブクログ
大阪の陣を舞台に真田左衛門佐信繁と兄信之をいろんな武将の視点から紐解いていく物語。どうしてあの行動に出たのか、誰がその情報を流したのか、誰と誰が密約していたのか、等の謎も散りばめられたミステリーになっており歴史小説が苦手な私でも史実に興味が湧くほど楽しめました。
Posted by ブクログ
毛利殿の章が義に溢れ良い話だと思いましたが、題の 幸村を打て 私は最後の信之の発言が痺れました。家康と信之の戦の最後、書状による宛名の件は初め理解ができませんでしたが、信繁という宛名が今は通用しない、彼は幸村だという押し問答だったということで腑に落としました。その決め台詞がこれだとは予想だにしていなかったので、感嘆しました。
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2025年度、大阪ほんま本大賞受賞を機に手に取った。
大賞発表後すぐに買いに行ったのに、数ヶ月積んでました…( 'ᵕ' ; )
大阪ほんま本大賞仕様の本書は著者近影が、めっちゃかっこいいんです♡
大阪近郊にお住まいの方、見掛けたら是非手に取って見てみてください(*ˊ ˋ*)
舞台は大坂夏の陣。
真田幸村の企みを読めず、翻弄される諸将たち。戦を終え、ある疑問を持った家康は真相を探り始め…。
戦国最後の戦いを通じて描かれる、親子、兄弟、そして「家」をめぐる、切なくも手に汗握る物語。
戦国時代って、理解するのがすごく難しい…!
名前変わるし、寝返るし、婚姻関係複雑すぎるし…( 'ᵕ' ; )
全体像を把握するのに、序盤はかなり苦戦したのですが、「南条の影」あたりから、私の好きな今村翔吾さん作品の要素が入ってきて、一気に引き込まれた。
なんといっても、構成がすごく好きだった。
まず読者に提示された大きな謎があって、各章にもそれぞれ謎が散りばめられていて、章間にも仕掛けがあって(タイトルが凝ってる) 、最終章では全部それが繋がっていくのですが、それだけじゃないんです。
とにかく、最終章が本当にすごすぎて、痺れた…!
戦国時代の諸将たち、それぞれが自分の正義を信じて戦っている姿、主従関係や兄弟、親子、朋友…それぞれの絆の強さ、尊さに胸を打たれた。
絆って、やっぱり人を強くするなぁと。
そして、それと同じくらい、夢も人を強くするんだなぁと感じた。
現実には到底叶わぬ夢。
しかし、それを最後まで信じ抜いたことで、自分はもちろん、周りの人の生き方さえも変えていく。
人の絆と夢の力ってすごいですね。
歴史小説は数多く読んでいるわけではないけれど、今村さんの他作品や他の作家さんの作品に出てきた武将がチラッと本書に登場して、ちょっとテンション上がった(*ˊ ˋ*)
歴史小説って、こういう楽しみもありますね♪
✎︎____________
「歳を取るとは嫌なものだ」
生きるのに必要でないことにまで疑り深くなる。(p.43)
男とは誰しも、大なり小なりそんな下らぬ自尊心に囚われて生きているもの。(p.231)
母は何があろうと母なのだ。(p.321)
我と共に天下を目指した者どもよ。何者にも飼われぬ、竜の意志を思い出せ(p.356)
「名⋯⋯とは何でしょうなあ」
(中略)
「名付けた者の願いそのものかもしれません」(p.445)
──人は死の間際にこそ、生きたいと願うものです。(p.449)
そこに至るまでの己を信じること⋯⋯最後はここの強さよ(p.468)
人の欲が衒いなく発散されるのが乱世ならば、泰平などそれに薄皮一枚覆いかぶせただけのものではないか。その薄皮の下でも変わらず人の欲心は蠢く。(p.513)
出来れば戦いたくはないと互いに思っている。だがやらねばならない。戦というものは、概してそのようなものなのだろう。(p.541)
誰しも一生のうちに、知られたくないことの一つや、二つほどはあるもの。そして疚しいことより、大切にしたいものこそ、概して強い想いに変わるものかと(p.554)
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真田幸村は、徳川家康を最後まで苦しめた武将として有名であり、NHK大河ドラマにまでなった。しかし史実においては幸村という諱を名乗ったことはなく、後年に講談等で「真田三代記」等で語られる活躍が伝えられてきたものである。ではどうして、真田幸村がここまで語られるようになったのであろうか?
今村翔吾氏が歴史文学に興味を持った『真田太平記』は原点かつ大切な物語であり、その影響を受けたこの本は直木賞受賞後のタイミングで満を持して世に出された。戦国から太平へと遷り変わる最後の戦いとしての大阪冬の陣において伝説となった真田丸、そして大阪夏の陣では家康の本陣に迫り死をも覚悟させたという逸話は、真田幸村という武将の強さを物語っている。
大阪の陣では戦前より勝敗は明らかであり、豊臣方に馳せ参じる浪人衆は活躍して武名を上げて徳川方に自分を売り込んで寝返るか、戦国最後の戦いに自らの武名を高めて歴史に名を残すか、といった自分本位の目的で参画していたと言われる。そして登場人物もそれぞれの思惑を持っており、織田有楽斎、南条元忠、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永という各武将の視点から幸村が語られる。同じ豊臣方だからといって味方なわけではなく、また徳川方だから敵という訳でもない。
ある程度の史実を踏まえつつも、魅力的かつミステリアスな存在としての真田幸村を新たな視点で描いた作品として画期的なエンターテイメントとなっており、最終章の徳川家康と真田信之の問答は息も吐かせぬ戦いに仕上がっている。真田幸村は大阪の陣で死んだのだが、真田の戦に勝ったのだ。
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最終章の信之、家康、正信3人の丁々発止の手に汗握る駆け引き!
「本を読む」ことの楽しさを十分に堪能させてくれる1冊。虚実皮膜の紙一重を見事に描ききった作品でした。
そして何より、今村翔吾は……泣かせる!
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真田幸村に追い詰められた徳川家康が真田の全てを知るべく、真田を取り巻く武将も含めた調査を各武将の独白の形で表現した短編集のような作品。意味は色々ありつつもそれぞれの話で武将が共通して「幸村を討て」と言い放つ様はなんとなく気分が上がった。とりあえず武将に対する三人称がみんな複数あって誰の事を言ってるのか理解しながら読み進めてたらえらい時間がかかってしまった。
Posted by ブクログ
今村翔吾が真田が好きなのはよくわかった。名作、真田太平記へのオマージュ。ミステリー要素を入れたため、逆にストーリーがわかりにくかった。真田の物語を熟知している読者なら、すんなり読めるが、基礎知識がない方にはどう映るだろう。私は羽州ボロ火消しのようなストレートな物語の方が好きだ。
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昔から私は真田家にあまり好感を持てない。多くの武士が主家のために命を懸けて戦う中で、真田は常に自分本位に動いているようで、その姿勢がどうにも苦手だ。そんな中でも、真田の中では信之には比較的好感を持っている。幸村が好戦的であるのに対し、信之は冷静沈着で、ふたりの対比が鮮やかであること。そして、どれほど幸村が勇名を轟かせようとも、関ヶ原・大坂と二度の決戦に敗れた「敗者」であるという事実は変わらないからだ。
本作は、その大坂の陣における幸村を、家康・秀忠陣営の武将たちの視点を通じて描いた物語である。ここで描かれる幸村は、勝利そのものよりも家名を轟かせることに重きを置く人物として登場するが、上記の通りの私の考え方と終始かみ合わなかった。作中で後藤又兵衛が貶められているが、個人と集団という立場の違いこそあれ、幸村の行動も本質的には同じではないかと思えてしまう。
また、序盤では各話の主役が真田の「真意」を知り驚く様子が描かれ、読者に対してはその真意を終盤まで伏せられる。そのため期待して読み進めたが、結局のところ驚きはさほどなかった。冒頭で提示された源四郎が実は生きていて名を変えて活躍することに少し期待していただけに落胆の思いが強く、そうすると各章の間に挟まれる真田視点のパートの意味は、と疑問が残る。
大坂の陣についてより深い知識があれば、物語全体に張り巡らされた伏線や、真田の「謎」を通底させた構成にもより深く感銘を受けたのだろう。ただ、その知識に乏しい私には、作者が期待するほどの読後の余韻を味わうことはできなかったのが正直なところだ。
とはいえ、ラストで信之が語る「雪を割って咲く華こそ美しい」という一言は、幸村と信之が実は共謀していたという事実を美しくまとめた見事なサゲであった。
Posted by ブクログ
実家の父が読んでいた本。まだほとんど読んでいないけれど手に取ってみたい。
興味を持った理由は、いわゆる歴史小説、時代小説で、作家が自分よりも年下であるものを手に取った記憶がないから。
いわゆる現代小説であれば、自分よりも後に生まれた作家はたくさんおり、彼らの若い感性を感じたくて本を手に取ることもある。ただ、こと歴史小説になると、そもそも歴史自体が自分よりも年上の方々が主に興味のあるジャンルという思い込みもあり、作家も自分より年上が当たり前と思い込んでいた。
ただ、本書の作者である今井氏は自分よりも5歳ほど年下(写真を拝見したところ、見た目は結構風格があるけれど。笑)。ついにこういう時代が来たのだなと感じた。
ペラペラとめくってみたところ、文章自体はとても読みやすそう。自分と同世代の文章であることの良さかと思った。次に実家に帰った時にしっかりと読んでみようと思う。