あらすじ
左手を失った帰還兵バルタザールと不思議な力を持つブリムンダの愛の物語。国王の修道院建立、飛行機の発明、天才音楽家などが紡ぐ驚きの空想物語。ノーベル賞作家の最高傑作、新訳決定版。
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Posted by ブクログ
王家とカトリック教会が権勢を振るう18世紀のポルトガルを舞台に、権力に翻弄される人々を描く物語。本書の魅力はなんといってもその臨場感にある。読み手は冒頭からリスボンの雑踏と喧騒に放り込まれ、主人公たち同様明日もわからぬまま、時に天上の音楽に包まれ時に血と汗と泥にまみれる。
心に残るのは主人公ふたりが神父とともに飛行機械を作る日々だ。かたわらでは宮廷音楽家がチェンバロを弾いている。身分も立場も違うこの4人が風変わりな友情と信頼で結ばれるひとときは、ほのかな光を放って物語全体を照らしているかのようだ。異端審問がそこに暗い影を落とすが、その影もまた光を引き立てている。まるでラ・トゥールの絵画のように。
語りがたいへんおもしろく、とくに権力側に対する辛辣さは時に笑ってしまうほど。ただそうなると現在もカトリック国であるポルトガルでどのような立ち位置になるのか気になるところ‥と思いながら読んだが、あとがきで丁寧に解説されていた。満足。
Posted by ブクログ
18世紀ポルトガルを舞台にした小説。スペイン継承戦争帰りの元兵士バルタザールと透視能力を持つブリムンダの夫婦が主人公だが、実在のバルトロメウ神父がパサロールという飛行船を発明し、夫婦はその製作を手伝う。パサロールの完成とその後の顛末が描かれるとともに、バルタザールの故郷マフラでは当時の王ジョアン5世の肝いりで修道院の建設が始まり、バルタザールはその建設に従事する。
夫婦の愛の物語、と紹介されているが、モノを作るということに対しての人間の執着がテーマではないかと思う。モノを作ること自体、完成した後の活用、製作の作業そのものなど、登場人物それぞれによってこだわりが異なり、それが良きにしろ悪しきにしろ与える影響がテーマなのだろうと思う。