あらすじ
コミューン的な場所、アイデス“iDeath”と“忘れられた世界”、そして私たちとおんなじ言葉を話すことができる虎たち。西瓜糖の甘くて残酷な世界が夢見る幸福とは何だろうか…。澄明で静かな西瓜糖世界の人々の平和・愛・暴力・流血を描き、現代社会をあざやかに映して若者たちを熱狂させた詩的幻想小説。ブローティガンの代表作。
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Posted by ブクログ
小川洋子さんのエッセイで
取り上げられていたことから興味を持って。
読み始めてすぐに、”出会ってしまった”と思った。
生涯本棚に残しておきたい一冊。
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解説を読んだことを後悔した。この小説がどんな人に書かれて、そのときの時代背景のことなんか、全く知る必要はない。解釈も考察もいらない。ただ、西瓜糖で作られた橋やたくさんの川が流れる世界があって、九九を間違って教えてくる虎に両親は食べられてしまう。そのままのそれだけの世界。
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村上春樹と川上未映子の対談本で紹介されていたから手にとってみた。(確か)
情景が映画を観るように想像できて、独特な世界観にどっぷりと浸かれた。
読んだ後、ジーンと残るものがある。
「こんな小説は初めて」な読書体験。
読めて良かった。
本に出てくる「忘れられた世界」は私たちの今住む世界なのかなと思う。
アイデスは穏やかな世界なんだけど、なんか住みたくない…
住人もみんな穏やだけど、どこか寂しそうで不憫な感じ。
これは絶対また読み返したい。
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「そういうのはずるしてる、というのじゃないのかな」
「風が起こって、窓がかすかに震えた。風で、脆そうに半開きになった砂糖」
綺麗すぎるイメージ
「わたしたちが恋人同士になると、かの女は夜の長い散歩をやめた、でも、わたしはいまでも散歩する。夜、長い散歩をすることが、わたしは好きなのだ。」
怖い
マーガレットが好きだった
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牧歌的、といって良いだろうガジェットの中で行き交う現在はフィクショナルで至極自足している、かに見えるが、その円やかな事物の間隙から立ち上がってくる哀惜のノイズ、その鳴りが美しいような物語でした。冴えた月の円かさであるような。ソフトな手触りなのだが、明らかに、幽かに、かなしみを籠めてザラついている。かっこよかったです。
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発熱した状態で読むには非常に適した小説だった。筋らしい筋はほとんどない。ひたすらブローディガンの夢幻的世界観が詩のような文体で綴られている。何よりもページ数が少ないのが良かった。解説にもあったが、これを単にヒッピー文学として理解してはいけない。ことさらに提示されるのは楽園の中にあるかすかな不安であり、それは死の世界に近い。インボイルが主人公たちに見せつけようとしたのは、まさにこのことだったのだろう。ただ健康な状態で読めばまた感想が変わるかもしれない。あと、この文体でもう少し長いのを読んでみたいから、また別のブローディガンの作品を読んでみたいと思う。
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夢と現実の狭間を漂うような不思議な世界観。 みんな色々な感情に溢れ、今ここにいる人にもいなくなった人にも囲まれ、生と死、光と闇の中を行ったり来たりしながら生きている。よく分からないけど惹き込まれる。
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「西瓜糖」と「鱒の孵化場」など暗喩のような言葉がちりばめられた幻想的な本。
「ずっと以前、さいごの虎が殺されその場で焼かれたすぐあとで、アイデスに鱒の孵化場が造られた」
その虎はあたしたちと同じ言葉を話すし、算数もできる。
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・アイデスと忘れられた世界、、
アイデスはわたしの夢の中、空想の世界で、忘れられた世界がリアルな世界、現実世界。わたしは夢の中に逃避してポーリーンたちに会っているんではと思った。わたしにとってもはや現実世界は失われていて、アイデスこそが真にリアリティのある世界。
・アイデスは村上春樹さんのハードボイルドにでてくる世界を思い出した、閉ざされた静の世界。
・鱒はなにを意味してるの?鱒釣り読めばいいの?
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ひんやりと、冷たい。つめたくて、寂しい。なのにぼんやりとした黄色いひだまりが感じられる。
ここは、どこなんだろう。私は誰なんだろう。そんなことは時にまかせて。あなたが呼んだままに。
時の流れは無常で、流れるだけで、とまらない。
ここで構築された世界を私は忘れたくないと思う。
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氷砂糖のような言葉の世界だった。掴んだと思ったら味わううちに溶けてしまう。皆慈悲深く、穏やかで、とてもひんやりとした冷たさを持っている。
忘れられた世界のイメージ、血のイメージがありありと迫る。
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西瓜糖の日々
小川洋子さんのやっているラジオ番組で取り上げられていて興味を持ちました。
はじめてのブローディガン。
iDeathというコミューンとそれに隣接している忘れられた世界。静かな毎日の中に不穏な空気があり、だんだんと破綻に向かっていく。
ヒッピームーブメントやコミューンの流行の最中の小説家と思いきや、その前の小説ということでびっくり。時代の先を感じる作者の感性のなせる技なのか?
人と人が関わるところには必ず現れる関わり合いの澱のような不安定さも良く描けていると思います。
今、ブローディガンが小説を書いたら、どんな未来を予見してくれるんだろう?とふと思いました。
竹蔵
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死後の世界ってこと?長老鱒?西瓜糖でできた何もかもって何?忘れられた世界?いろんなことが意味ありげに出てくるけど、結局何かはわからない。でも主人公は彼女に飽きて新しい女を作ったり、セックスしたり俗っぽいというか行動がリアルで、そのアンバランスさが面白い。
これは1960年代のヒッピーコミューンのこと?と思いながら進めたものの、解説だとそうでもないみたい、、。
晴れた日に永遠が見えた、ピーウィーの大冒険、去年マリエンバートでを思い出した。
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西瓜糖、アイデス(iDEATH)、忘れられた世界、鱒の養殖場、歌う虎、川に沈む棺…
魅力的で妖しい言葉の数々が、穏やかで閉じた世界を描き出す幻想小説。
物語をあるがままに受け取ることが得意な人、物語の筋書きより手ざわりを愛しむ人には、たまらない一冊だと思う。
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初ブローティガン。
原題”In Watermelon Sugar”。
全88断章が連なる、寓話。
「西瓜糖の世界で」「インボイル」「マーガレット」の3チャプター。
寓意は簡単に判りそうな気も、する。
時間と、忘却と、生と死と、無関心と、自己欺瞞と……。
が、あまり茫漠としすぎていて、全然判らないという気も、する。
つまり村上春樹っぽい。
影響関係でいえば逆なのだが。
(また、高橋源一郎、小川洋子、柴田元幸、岸本佐知子、etc...)
SFではないが、ユートピア≒ディストピア、の系列。
また、地図を描きたくなる。
アイデス : 忘れられた世界
あるいは忘れられた世界の中に孤島のようにアイデスがあり、アイデスの住人の住居はその辺縁にある?
人々(わたし、チャーリー、ポーリーン)(マーガレット→) : インボイル
という構図か。
清教徒的・小市民的生活と、対立。
時系列的にヒッピーから生まれた文芸では決してないらしいが、やはりヒッピーとの親近性はありそう。
語り手の「わたし」がむしろ阻害「する」側で、インボイルやマーガレットのほうが読者に近い。はず。人間っぽい。
語り手が実は鼻持ちならない側、というのも、春樹っぽい。
連想。
タイガー立石「とらのゆめ」。
虎と西瓜から。
ドラッギーなところとか。
連想2。
突飛かもしれないが、「マインクラフト」。
世界の素材が西瓜糖、というところから。
藤本和子の文体、好き。
訳書をいくつか読んでから「塩を食う女たち――聞書・北米の黒人女性」を読みたい。
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西瓜島,アイデス,忘れられた世界,虎,鱒の孵化場.わたしの住む世界はゆるい時間の流れの中で,決められた毎日が単調に過ぎゆく.そして時に挟み込まれる剥き出しの暴力.断片が積み重なり,不可解で秩序のあるようなないような世界が漂っている.
Posted by ブクログ
借金玉さんが折に触れてすすめてるやつ
浮遊感?のある不思議な文体
ちびちび読んでいるけど「西瓜糖」が何なのかよくわからない。(村で採れる作物で、食用のほか建物の材料になったりしてる。
桃源郷ものぽくもあり、とはいえソロ隠者ではないので『ヘンリ・ライクロフトの私記』ほどひねくれてもいない。
●
「わたしの生活は静かに過ぎてゆく。」
Posted by ブクログ
アイデスでなじめない人間が行くところが忘れられた世界であるような感じで読めるが、実際にはその逆なんだろうと思います。
前作「アメリカの鱒釣り」は楽しい感じでしたが、今作は一転物悲しい感じとなっています。
Posted by ブクログ
多くのものが西瓜糖で作られている世界。
死後を思わせるような、<過剰でない>平穏な人々。
詩的な幻想ながら、藤本和子さんの翻訳が見事で読みやすかった。
なんとなく、長野まゆみさんを思い出す。もしかしかたらブローティガンがお好きなのかもしれない。
『ビッグ・サーの南軍将軍』もいつか読みたい。
Posted by ブクログ
おすすめされて読んだのだが、何故おすすめされたかわからなかった、、(キュートなあのひとごめんなさい)面白いけどね、不思議ワールドすぎて「ほーん」って感じだった。私はリアルを生きたいっ
Posted by ブクログ
語り手の淡々とした物言いのおかげで、物語はずっと穏やかで静謐で、だけどどこか狂気があった。
わたしたちが今いる現実世界とはかけ離れた場所に物語の世界はあって、ずっと遠い未来か、現実世界の向こうの死の世界か。虎の時代やインボイルの事件などがあっても、基本的には穏やかな時間が流れているように感じた。両親を虎に食い殺されたときでさえ、"わたし"はそれを俯瞰して眺めているというか、いつかのポーリーンのように激しく心を乱しているようには見えなかった。西瓜糖でできた橋やその他たくさんのもの、西瓜糖鱒油をつかったランプをわたしたちは持っていないけど、わたしたちが持っているたくさんのものも、向こうの世界にはないのだろうと思う。
「本当のアイデス」とはなんだったのか、"わたし"のような、名前を持たない存在は何なのか、アイデスがどのような場所を表すのか、など、疑問に残るところが多々あった。〈虎の時代〉があったように、アイデス(iDEATH)は常に"死"がある場所で、血に塗れているはずの場所というのが、インボイルたちの解釈なんじゃないかと思った。だからあんな事件を起こしたのではないか。"わたし"の名前はわたしたちが決めるもので、わたしたちの思ったことや感情による。特定の名前を持たずにやわらかく変化しつづけ、わたしたちの感情に寄り添う(?)から、女性2人からも愛されるくらいモテるんだろうなと勝手な想像。だって、親友が付き合っていた男を好きになるって、相当魅力的じゃなきゃそんなことにならないと思う…。
日によって変化する太陽やそれに影響される西瓜が面白かった。黒い太陽の沈黙の日、わたしも体験してみたい。淡々としているけど文章はどこか詩的で、読んでいて心地の良い感じがあった。
小川洋子のエッセイ『遠慮深いうたたね』で紹介されていて気になったので読みました。たしかに、小川洋子が好きそうな世界観かも。
Posted by ブクログ
西瓜糖で作られた、閉じられた静謐な世界。そんな世界の中にはうっすらと不穏な空気があり、グロテスクな死や流血が書かれるけれど、恐怖やおぞましさみたいなものはすっぽりと抜け落ちているようで不思議な読み心地。起こる出来事に関連性はあるが物語の筋のようなものはなくて、この独特な世界の雰囲気を味わう小説なのかも。
岸本佐知子さんのエッセイでいしいしんじ好きな人におすすめと書かれていたので気になって読んでみたんだけど、ちょっと違う気がする。不思議な世界を描くという点では似ているのかもしれないが、いしいしんじ作品にあるようなあたたかみ、人間のにおいのようなものは全く感じられなくて、それらを排除したのがこの西瓜糖の世界というイメージ。私にはちょっと刺さらなかった。
Posted by ブクログ
【あらすじ】
コミューン的な閉じられた幻想的な世界、「アイデス」と「忘れられた世界」。
そこは完璧で美しいが同時に残酷な一面を持つ。
詩篇のような文章で綴られていく、抽象的なストーリー。
【感想】
人を選ぶ作品であることは間違いない。
「アイデス」を理想世界と思うか、息苦しい世界と思うか…
ただし、あまり深く考えずに描写そのものを堪能するのもありだと思う。
川の主の大鯰や、西瓜糖で出来た家具など想像を掻き立てることは間違いない。
Posted by ブクログ
淡々としている主人公の語りがうつくしかったり時には落ち着きすぎていてこわく思えたり。でも読者の感情の動きはよそに静かに、浮世離れしているような設定の世界。それでも人間関係があり、善があり悪があり、好きな食べ物があり日々の仕事がある。不思議な空気でした。毎日の太陽の違いが面白かった。
Posted by ブクログ
こういう小説ひっっっさしぶりに読んだ!!
言葉選びが好きすぎて前半ニコニコしてたんどけど、後半が割りと不穏な展開でビビり散らかしてた。
でも何故かひとつひとつの文章が心に染みてくるという不思議な感覚……。
全部の文章が凄かったが一番よかったのは64ページの文章かな。
2行だけでこんなブッ刺さるなんて思ってなかったよ。
Posted by ブクログ
不思議な町、世界の話。
最初、西瓜糖ってなに?って思ってぐぐった。
西瓜糖を原料としていろいろなもの(家とか)を作ってる世界の話。
世界観は好きだったし、
ブログみたいな感じでサブタイトルがあって、
そのサブタイトルに対する文章が短くて区切りがいっぱいあって
とても読みやすかった。
最初は??が多かったけど、
後々わかってく部類の小説か?と思ったら
そんなにわからない部類の小説だった。
インボイル率いる軍団が、
集団自殺をした場面は、
それまでの素敵な描写と相反してすごく際立ってたし
グロテスクだった。
村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の、
世界の終わりの部分をもうちょっと現代風にした感じ。
わたしの想像力がもっとあればもっとこの世界観を想像できたんだろうなぁと悔やまれる。
想像力が試される小説。
まだ続くんだろうな〜って思ってページをめくったら、
めくる前のページが最終ページだったという。
終わりがよくわからなかった。
Posted by ブクログ
現代的な感覚からすると、世界観に設定が少なく、物足りない気もするけれど、だからこそ古臭くならないのかも。由来は異なるけれど、シュルレアリスム絵画に描かれる無意識の世界のように感じた。
また、後世の多くの作家と作品に影響を与えていることも読み取れた。忙しなく読み進めてしまったけれど、もう少しゆっくりした時間のなかで読んでみるとまた違った印象を持つかもしれない。
Posted by ブクログ
過度な感じが全くない、死後の天国のような世界には、常になにかに脅かされているような、ヒヤヒヤさせられるような、生暖かい恐怖のようなものを感じる。
リアルさの欠ける不思議な世界観のなかで進んでいく物語も、欠如している部分が多い。
村上春樹好きのフォトグラファーにこの本を教えてもらいはじめてリチャードブローティガンを読んだが、私なりの腑に落ちるまでもう少し時間がかかりそう。
アメリカの鱒釣りもいつか読んでみたい。