【感想・ネタバレ】西瓜糖の日々のレビュー

あらすじ

コミューン的な場所、アイデス“iDeath”と“忘れられた世界”、そして私たちとおんなじ言葉を話すことができる虎たち。西瓜糖の甘くて残酷な世界が夢見る幸福とは何だろうか…。澄明で静かな西瓜糖世界の人々の平和・愛・暴力・流血を描き、現代社会をあざやかに映して若者たちを熱狂させた詩的幻想小説。ブローティガンの代表作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

西瓜糖の日々

小川洋子さんのやっているラジオ番組で取り上げられていて興味を持ちました。
はじめてのブローディガン。
iDeathというコミューンとそれに隣接している忘れられた世界。静かな毎日の中に不穏な空気があり、だんだんと破綻に向かっていく。
ヒッピームーブメントやコミューンの流行の最中の小説家と思いきや、その前の小説ということでびっくり。時代の先を感じる作者の感性のなせる技なのか?
人と人が関わるところには必ず現れる関わり合いの澱のような不安定さも良く描けていると思います。
今、ブローディガンが小説を書いたら、どんな未来を予見してくれるんだろう?とふと思いました。

竹蔵

0
2025年10月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初ブローティガン。
原題”In Watermelon Sugar”。
全88断章が連なる、寓話。
「西瓜糖の世界で」「インボイル」「マーガレット」の3チャプター。
寓意は簡単に判りそうな気も、する。
時間と、忘却と、生と死と、無関心と、自己欺瞞と……。
が、あまり茫漠としすぎていて、全然判らないという気も、する。
つまり村上春樹っぽい。
影響関係でいえば逆なのだが。
(また、高橋源一郎、小川洋子、柴田元幸、岸本佐知子、etc...)
SFではないが、ユートピア≒ディストピア、の系列。
また、地図を描きたくなる。
アイデス : 忘れられた世界
あるいは忘れられた世界の中に孤島のようにアイデスがあり、アイデスの住人の住居はその辺縁にある?
人々(わたし、チャーリー、ポーリーン)(マーガレット→) : インボイル
という構図か。
清教徒的・小市民的生活と、対立。
時系列的にヒッピーから生まれた文芸では決してないらしいが、やはりヒッピーとの親近性はありそう。
語り手の「わたし」がむしろ阻害「する」側で、インボイルやマーガレットのほうが読者に近い。はず。人間っぽい。
語り手が実は鼻持ちならない側、というのも、春樹っぽい。

連想。
タイガー立石「とらのゆめ」。
虎と西瓜から。
ドラッギーなところとか。

連想2。
突飛かもしれないが、「マインクラフト」。
世界の素材が西瓜糖、というところから。

藤本和子の文体、好き。
訳書をいくつか読んでから「塩を食う女たち――聞書・北米の黒人女性」を読みたい。

0
2023年12月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

語り手の淡々とした物言いのおかげで、物語はずっと穏やかで静謐で、だけどどこか狂気があった。
わたしたちが今いる現実世界とはかけ離れた場所に物語の世界はあって、ずっと遠い未来か、現実世界の向こうの死の世界か。虎の時代やインボイルの事件などがあっても、基本的には穏やかな時間が流れているように感じた。両親を虎に食い殺されたときでさえ、"わたし"はそれを俯瞰して眺めているというか、いつかのポーリーンのように激しく心を乱しているようには見えなかった。西瓜糖でできた橋やその他たくさんのもの、西瓜糖鱒油をつかったランプをわたしたちは持っていないけど、わたしたちが持っているたくさんのものも、向こうの世界にはないのだろうと思う。

「本当のアイデス」とはなんだったのか、"わたし"のような、名前を持たない存在は何なのか、アイデスがどのような場所を表すのか、など、疑問に残るところが多々あった。〈虎の時代〉があったように、アイデス(iDEATH)は常に"死"がある場所で、血に塗れているはずの場所というのが、インボイルたちの解釈なんじゃないかと思った。だからあんな事件を起こしたのではないか。"わたし"の名前はわたしたちが決めるもので、わたしたちの思ったことや感情による。特定の名前を持たずにやわらかく変化しつづけ、わたしたちの感情に寄り添う(?)から、女性2人からも愛されるくらいモテるんだろうなと勝手な想像。だって、親友が付き合っていた男を好きになるって、相当魅力的じゃなきゃそんなことにならないと思う…。

日によって変化する太陽やそれに影響される西瓜が面白かった。黒い太陽の沈黙の日、わたしも体験してみたい。淡々としているけど文章はどこか詩的で、読んでいて心地の良い感じがあった。
小川洋子のエッセイ『遠慮深いうたたね』で紹介されていて気になったので読みました。たしかに、小川洋子が好きそうな世界観かも。

0
2025年07月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

不思議な町、世界の話。
最初、西瓜糖ってなに?って思ってぐぐった。
西瓜糖を原料としていろいろなもの(家とか)を作ってる世界の話。

世界観は好きだったし、
ブログみたいな感じでサブタイトルがあって、
そのサブタイトルに対する文章が短くて区切りがいっぱいあって
とても読みやすかった。

最初は??が多かったけど、
後々わかってく部類の小説か?と思ったら
そんなにわからない部類の小説だった。

インボイル率いる軍団が、
集団自殺をした場面は、
それまでの素敵な描写と相反してすごく際立ってたし
グロテスクだった。

村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の、
世界の終わりの部分をもうちょっと現代風にした感じ。
わたしの想像力がもっとあればもっとこの世界観を想像できたんだろうなぁと悔やまれる。
想像力が試される小説。

まだ続くんだろうな〜って思ってページをめくったら、
めくる前のページが最終ページだったという。
終わりがよくわからなかった。

0
2022年04月29日

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