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Posted by ブクログ
この人の小説を初めて読んだ。568ページに及ぶ、第二次大戦の頃の長崎を中心に展開する物語。リアルな描写と登場人物たちの強い想いや激しい葛藤が伝わってきて、夢中になって読んだ。
自身もキリスト教信者だった作者の戦中の想いも色濃く投影されているようだ。戦時下で押しつぶされる個人の幸福や信仰心。アウシュビッツでの描写は、この世のありったけの地獄が描かれる。そしてその地獄の中でわずかに芽生える信仰心と人の良心と激しい葛藤。極限状態での人間の姿が刺さってくる。同時に、同調圧力を振りかざしてくる人間の姿もあり、それはコロナ禍で露わになった現代にも繋がるものを感じさせる。
戦争で引き裂かれる純愛。昨今でも扱われるテーマではあるが、まだ「戦後」が今より身近だった時代の作品で非常に重みと深みがあった。「二部」とあるように、本作で度々登場する主人公の祖母の従姉妹が主人公の一部も読んでみたい。
Posted by ブクログ
遠藤周作は「あとがき」にこう書いている。
「どんな人間にもその人生には書くに足る劇があるのは当然だが、我々世代の一人一人にはそういう意味で個々の劇のほかに共通したドラマがある。私はその共通したドラマを主人公サチ子の中に書いてみたかった。「あっ、これは、わたくしだ。わたくしと同じだ」 毎朝、私の新聞小説を読んでくださる主婦がそこに自分の似姿を見つけられたらなら、この小説は書き甲斐があったと言うべきであろう。」
市井の庶民一人一人の戦中体験が、実は、最も貴重な歴史そのものであるという認識が、作者の心の中を占めていた。
このようなサチ子を私が初めて知ったのは岡本喜八監督の映画「肉弾」の中で、大谷直子演じる少女像であった。そして最近では人気アニメから「あっちこっちのすずさん」が、自らのドラマを語り始めている。
もちろんアウシュヴィッツのテーマや、神の問題も重要ではあるが、歴史は、一人一人に固有のものでありつつ、かつ普遍的なものであるのかもしれない。
Posted by ブクログ
一部のキクの従姉妹、ミツの孫にあたるサチ子のお話。サチ子の幼なじみの修平との話と長崎の教会にいたあとポーランドに戻ったコルベ神父の話とが並行して描かれています。
五百ページを超える長編に様々な登場人物の関わりが細やかに描かれていて、非常に読みやすい文章ではあるものの、苦しくて途中から涙が止まらなくて休み休み読み終えました。
ひとたび戦争が始まると殺すことを命じられる苦しさ。
見下ろす港がキラキラとして綺麗で、美しい教会、坂道、緑多い山々。
あんな悲惨なことがこの美しい長崎で暮らした普通の人たちに起こったということがあまりにも苦しく切ないです。
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