朝井リョウのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
《若い頃にしかできない選択は、時にあまりにも残酷だ》
「インメガ」本屋大賞受賞を機に、朝井リョウさんの「推し」に関する作品を読もうと思って手に取った。
こちらは推されるアイドル視点のお話✧*。
「武道館ライブ」を合言葉に活動してきた女性アイドルグループ「NEXT YOU」。彼女たちは徐々に人気と知名度を上げていくがー…。
こちら、刊行されたのは11年前。
読んだ方はきっと分かってくれると思うのですが、11年前にこのラストを描いた朝井リョウさん、すごくない!?天才すぎでは!?Σ( ˙꒳˙ )
今でこそ許容されてるのかな、と思うけど当時は絶対無理だったでしょ!!!
この構成もよかったなぁ✧*。
こちら、刊行当時のアイドル文化や空気感をかなり取り込まれた作品だな、と感じた。
作中で扱われている事件は、実在のあの事件を連想する読者は多いハズ。
完全なフィクションなのに、現実で見たことがあるような感覚がずっと続くところが怖い…!
特にSNSの空気とか、ファンの距離感とか、アイドル本人より周囲が物語を作っていく感じとかが妙に生々しくて。
剣道の試合とアイドル活動の対比がとても印象的だった。
剣道はルールが比較的明確で、勝敗も見える。
一方アイドル活動は努力したから報われるとは限らないし、評価基準も曖昧、好かれるかどうか、が大きい世界。
だからこそ、剣道の試合の場面の度になんか胸がギュッとなった。
剣道って「礼」で始まって「礼」で終わる競技なんですよ。
その誠実さと、アイドル業界の消費の速さ・残酷さの対比にもグサッときた。
アイドルって、自分の気持ちを歌っているようで、実際は与えられた言葉を歌っている側面もあると思っていて、その借り物の歌詞に、自分の人生や感情が重なってしまうのが切なくて苦しい。でも美しくもあるのかもしれない。
人生は取捨選択の連続であり、正しい選択はない。
自分で選び取ったものを、信じ続けるしかない。
そして武道館という場所は憧れの象徴でもあり、人生の通過点でもある。
彼女たちが選び取った人生とは…?刊行当時のことを懐かしみながら見届けてほしいです✧*。
解説がつんく♂さんというのが、またすごい!(ㅅ´∀`*) スゴイ -
Posted by ブクログ
朝井リョウって女だっけ?というくらいに
女の心の機微や嫌なところ、とりわけ好きな男の前では絶対に出さないであろう真っ黒な部分を書き表すのが最高にうますぎる。
3人の女性がそれぞれ主人公になる連作集。
出てくる女性たちそれぞれに、ああこういう人いるわ、私もこういうところあるわ、と共感する。
そして、一回全員を嫌いになる。
三者三様、悩みは違うけど、共通するのは他人軸で生きていること。
そして、他社と比較することで「あいつよりマシだな」とか「こいつ、ずるいわ」とか思いながら生きていた。
だけど、ある時から「あいつ」や「こいつ」によって、これまでうまくやってきた人生の歯車が狂いだす。
狂った結果は絶望?それとも? -
Posted by ブクログ
《その歪みは、きっと誰の中にもある》
書店で「朝井リョウの隠れた名作は推し活小説!?」という全面帯に惹かれて手に取った。
「インメガ」が本屋大賞を受賞したら読もうと思っていました✧*。
有名劇団のかつてのスターのファンクラブの幹部、彼女の元同級生、かつてのスター…一見キラキラしている彼女たちの過去や現在の歪み、一歩踏み出そうとする様を描いた連作短編集。
短編のタイトルがいろんな含みを持たせていそうで秀逸。
特に「スペードの3」が秀逸すぎてお気に入り。
読み始めてすぐ、うわ、この切れ味朝井リョウさんだ…!と思った。
(偉そうに言ってますが、朝井さん歴は浅いです。シャレ?)
人間の見たくない感情をまざまざと見せつけられる感じ…そして、「こんな人いるよ…!」というリアルさが怖い。
その気持ちが分からなくもないからこれがまた刺さるし、登場人物たちが抱えている感情はきっと誰しも少しは抱えているものだと感じた。
彼女たちはみんな本当は満たされていなかったり、現状に違和感があったり、変わりたい気持ちを持ったりしているのに自分の意思だけでは動き切れなくて、いつもの日常が続いていく。
出会い、憧れ、嫉妬、事件みたいな外側からの刺激が、前に進むきっかけになる。
綺麗な成長物語として描かれていないところがすごくリアルだし、人って案外そういう不格好な衝動で動き出す生き物なのかもしれない。
「インメガ」の原点ここにあり!
と思わず言ってしまうような文章もあって驚いて読後に見たのですが、こちら刊行されたのが2014年。
12年前かぁ…朝井さん、この頃から物語の功罪について考えていらしたのかなぁ( ˊ꒳ˋ ) ᐝ
特に大人の女性におすすめです✧*。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ少女は卒業しないは、読み終わったあとにじんわりと温かい余韻が残る、とても素敵な青春小説だった。
物語は卒業を控えた短い時間を描いているだけなのに、その中に詰まっている感情の量がとても豊かで、自然と引き込まれる。大きな事件が起こるわけではないけれど、だからこそ一つひとつの気持ちが丁寧に伝わってきて、「ああ、こういう時間あったな」と自分の記憶と重なる瞬間が何度もあった。
登場する少女たちもそれぞれに魅力があって、誰か一人に強く寄り添うというより、「いろんな気持ちがあるよね」と優しく受け止められる感じが心地いい。恋や友情にきちんと答えが出るわけではないけれど、その曖昧さも含めてリアルで、逆にそれがこの作品の良さになっていると感じた。
そして何より印象に残ったのは、卒業前のあの独特な空気感。終わりが近づいているのに、どこか実感がなくて、でも確かに何かが変わろうとしている――そんな繊細な時間がすごく上手に描かれていて、読んでいるだけで胸が少しきゅっとなる。
派手さはないけれど、その分だけ静かに心に残る作品で、「今ある時間を大事にしたい」と思わせてくれる一冊だった。読後には優しい余韻と、少しの切なさ、そしてどこか前向きな気持ちが残る、そんな心地よい読書体験だった。 -
Posted by ブクログ
『イン・ザ・メガチャーチ』での本屋大賞受賞を機にこの作品を手に取った。「生殖」という観点から現代社会を語る。しかも語り手は主人公の生殖器という、かなり朝井リョウみを感じる独特な視点だった。
まさに言語化の神様!現実的で触れづらいテーマとユニークな文章の対比がとても面白かった。淡々としていながらも、主人公に対してノッたりツッコんだりする語り口が印象的だった。
性的マイノリティーである主人公は、社会の中で少数派としての生きづらさを抱えながらも、波風を立てないように「普通の人間」を擬態し続けている。その様子を、生殖器という第三者的な存在が解説していく構造が面白い。自分ではうまく言葉にできないような感情まで掬い上げられていく感じがあった。
作中に出てくる「共同体感覚」という言葉。そこに馴染めない感覚や、むしろ手放したいと思う気持ちにも共感してしまう。理解しきれないと思っていた心情の解像度が、読んでいるうちに少しずつ上がっていった気がする。
エンディングが印象的で、主人公が少しでも前を向ける形で終わったことにほっとした。所々やかましくて好き。
本屋大賞で興味を持った人にぜひとも読んでほしい!