朝井リョウのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ自分の好きな作品について、どうかその作者が作りたいものを作れていて、それによって生活も満足に成り立っていると良いと思う。
ただ現実はきっと作りたいものを作っているだけじゃない。
プロとして生活のために制作を選ぶことは、自分の好きなことだけをやれるわけではない。
安定したクオリティ。予算内での模索。定められた期間。
何よりも、売り上げ。
需要を満たし、経済活動となること。
それによって自分が生活していけるということ。
主人公の尚吾と紘は、共作映画で受賞してから方や伝統的な監督路線へ、方やSNS中心のファストコンテンツの方向へと向かっていった。
前者は裏打ちされた信頼があるものの多様化する社会 -
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最後が恐怖。ホラー。
結局、のめり込むのがいいのか、視野を広く持つことがいいのか、自分の中でも正解が出なかった。
印象に残ったフレーズや内容をメモする。
○人を没頭させるノウハウ
最も没入しやすい形に整えて差し出し直すこと。最も共感能力が高く、自他の境界が曖昧で、視野を狭めやすい気質のファン層を炙り出し、より先鋭化させること。
○推し活はしたことないけれど、同じことをいつも思っていたこと
何かに対して熱量を高めていたい、何かに時間や労力や資金を注いでいたいという人はとても多い
○私の好きな、朝井リョウの例えの表現。
・国見は、生年月日でも答えるように言った。
・突然始まったゲ -
Posted by ブクログ
ネタバレヤバかった。私自身、推し活という言葉になる前からオタク活動を長いことしている。ある声優さんが好きなのだ。この本を読んで、視野をわざと狭めることで見ないようにしてたことが突きつけられた。本当はこんなことにこんなに金を使ってる場合ではない、けど俺にはこの人に助けられたという物語があると信じ込んでそれで生きてこれたという自覚がある。自分のいる界隈はこんな汚いことないよ、だってここが違うもん、と思いつつ似ているところがあることも重々承知しているし、この界隈やその声優さんのいいところを本気で語ったところで一般の人には「はいはい、盲目だねー」ってなることもわかってる。本当に見たくない(見ないようにしてたこ
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Posted by ブクログ
ネタバレ面白かった、、、!
視野が広くなるほど自分の行動一つ一つに間違った事をしていないか悩んでしまうこと、視野が狭いほど正しいかどうかは置いといて自分はこう!と自信を持って行動できること(私なりの解釈)は、自分が推し活に過去1番励んでいた時になんとなく感じていた感覚に近いなと興味深かった。
本当にそう思う。選択肢がありすぎるし、さも自分が1番正しいと言う人が主にSNS上に溢れすぎている結果、自分が直感で好きだと思う人、応援したい人、共感できる人の言う事を信じたくなるし身も心も捧げたくなるのが、特にいわゆる繊細さん程陥りがちな価値観かもしれない。性格というよりその時の環境や心の状態に依るところが大きい -
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ネタバレ多様性ってポジティブなイメージの言葉と捉えていたけど読み終わった後には、なんだかおめでたくてずるい言葉だなあと感じるようになった。正欲を読んで水に興奮する人がいるってことを初めて知った。この世界には私が想像してもしきれないくらいのことが沢山あるんだと実感した。どんな人に対しても差別のない言い方や態度をとろうとすると何もできないなと思った。だからこそふわっと、一見誰にも害のなさそうな「多様性」って言葉が生まれたのかな。ふわっと人と関わることしか許されない世界は寂しいけどそうするしかない。みんなに優しいは不可能なんじゃないか。
精神科で働く私にとって、寺井が窃盗癖のある被疑者の治療プログラムを見学 -
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苦しかった。苦しい物語。
老若男女誰が読んでも心が痛むところがあり、ギクッとするところがあるような気がする
結局自分が正しいと信じていることは、幻想なのかもしれないな
高尚な趣味ってなんだ。
この人なら大丈夫だね、この子なら大丈夫だね、なんて、そんなの簡単にひっくり返る
今私は自分で安定した生活を送れている、と思う。だけどそれはあくまで今私の尺度であり、簡単にかわっちゃう
視野が狭いって、幸せなのかもしれない
ふたをして、目の前のことにだけ向き合って。
戦争のつらさを知っている日本でも、こうやって戦争は起きるのかもしれないな
とか、思考があちこちに行って、苦しかった。
でも、現代に生き -
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ち◯ち◯が喋ってる!という奇抜な語り口から脱力お気楽系の雰囲気を出しておいて、内容は現代社会の在り方や価値観を問い直す骨太なメッセージが語られている。むしろこういう設定でなければ重苦しくてとても難しい話になるはずで、そのGAPと効果に唸った。
上から目線、というのが私もしっくりきた。SDGeSやLGBTQの活動に何かしらの違和感を感じてしまうのは、結局支配側の気分でルールが変わる傲慢さを感じるからなのだろうな。
私は偶然にも支配的な共同体の価値観にほぼ同調しているから、この本の主人公である尚成のような悩みは無く生きている。
想像はできるけど、本当に悩んでいる人の気持ちは理解はできていないのだ -
Posted by ブクログ
ネタバレp.99
自分がいかに世界に対して遠慮がちかということを思い知る。こんなことしたら迷惑かもしれない、相手が困るかもしれない、眉を顰められるかもしれない。どんな行動を起こすにしてもまずそう考えてしまう自分が我ながら鬱陶しい。
p.335
送られてきたURLに、ひとさし指で触れる。ノックをするときの何百分の一の力しか必要ないのに、その窓はいとも簡単に開いてしまう。
p.427
三分の二を二回続けて選ぶ確率は九分の四であるように、“多数派にずっと立ち続ける”ことは立派な少数派であることに。
面白かったです。一気読みでした。最初は人間の欲望の凄惨なドロドロ系かと思いましたが読み終わってみると、意外と -
Posted by ブクログ
面白い。声に出して笑ってしまった。
そしてもし私が小説家を夢見ていたとしたら、朝井さんに対して半端ないコンプレックスを抱いたと思う。
早稲田大学在学中に作家デビュー、最年少で直木賞受賞、ダンスサークルに所属して夏休みには男女問わず仲間たちとアクティブにマラソンや京都までのバイク旅、車で北海道旅行(不発でしたが)などなど、陽キャすぎる……。
元のタイトルは「学生時代にやらなくてもいい20のこと(あやふや)」だったけど、絶対した方がいい。というかしたくてもできない。
メディアで見かける時もお喋りが上手すぎるし、生徒会長や応援団長も勤めていたらしい。きっとクラスでも人気者でいろんな人に囲まれていた