朝井リョウのレビュー一覧
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『健やかな論理』
〇〇だから〇〇のようにはっきりと境界線が引かれた健やかな論理に何でもかんでも当てはめたがるのは安心したいから。こわいから。けど全てを当てはめられるわけはなく曖昧な境界がほとんど。
>いつだって少しだけ死にたいように、きっかけなんてなくたって消え失せられるように、いつだって少しだけ生きていたい自分がいる、きっかけなんてなくなって暴力的に誰かを大切に想いたい自分がいる。
さまざまな感情が入り乱れた境界のない自己の中に突然生まれる健やかな論理に則った感情。その稀有性に胸が震えた。
『流転』
嘘をついてでも変わらないものに自分を託してしまう。嘘をつかず直線で進んだ先は誰も -
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『武道館』というアイドルにとっての成功の証に焦点を当て、夢を追うことの美しさ、その過程で待ち受ける残酷さを描いた作品。自分の人生を自分で選び、自分で引き受けることの尊さを教えてくれる一冊でした。
「限りあるものをどう使うかに、その人らしさが出る」、アイドルとしての自分に費やす時間、体力、そして心。それらは無限ではなく、だからこそ、何に賭けるかが「その人らしさ」になる。愛子が武道館を目指す過程は、まさに「限りあるもの」をどう使うかの選択の連続であり、その選択が彼女自身を形作っていく。
これまでアイドルとは無縁の生活でしたが、作中で描かれる夢の実現とその裏にある孤独や葛藤が自分の人生と重なり、 -
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浅井リョウの人の心を言語化する力にはいつも感嘆する。
健やかな論理
こういう事する人だからああいう事する。という風に論理付けしたくなる気持ちは健やか。たいがい間違えてるけど。
流転
独立する明石はその後どうなったのか気になった。豊川は会社に残るしか道はないがまた余計な荷物を背負ってこの先も生きていかなければいけないのだな。
七分二十四秒めへ
「男のユーチューバーが別にやらなくてもいいことばっかりやるのって、男ってだけで生きていける世の中だからですよね」
という一文が同じ男として生まれた身には、正直優越感を覚えた。
風が吹いたとて
なぜこんなに物語の中で風が吹いているのか分からなかった。 -
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ネタバレ1号も楽しかったので、2号は視界に入るだけで読むのが楽しみでワクワクする。
普段文芸誌は、目当ての作家さんの作品しか読まなかったが、GOATは最初から飛ばさずに読んでいる。
毒のある小説が好きなので、今回の「悪」というテーマはどの作品も面白い。
まだ読み途中だけど、今のところ特に好きな作品:
・木爾チレン「あの子にしか行けない天国」
女性は18歳になったらⅠかⅡを選ばなければいけない。Ⅰの生き方は平均寿命45歳だけど、永遠に老けない。妊娠は卵子凍結・体外受精すれば30歳まで可能。Ⅱの生き方は今まで通り老化するが平均寿命95歳、自然妊娠50歳まで、卵子凍結・体外受精は60歳まで可。
18歳 -
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ネタバレなんでこんなにもこの人の小説は、自分自身の内面に眠る嫌〜なところをチクチクついてくるんだろう。。
本作は特に刺さってしまった
結局、自分を自分で肯定するために敵を作って戦うこと、何かを見下したい欲求から逃げられないのが人なのか。そうでないと信じたい智也ですら、自分も父という敵があったからこそ自分を保ってきたことに気づきどん底に落ちてゆく。
最近別で読んだ哲学書に通づるところもあった
では、私自身はどうなのか。この本で感じた感情が新しいうちに、智也のように、自分が何を「生きがい」...いや「死にがい」として生きてきたのか?丁寧に考えを積み上げてみる作業をしてみたい気持ちになった(が、どん底に落 -
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ネタバレ死ぬまでの時間に役割が欲しいだけ、という雄介の悲痛な叫びに心がギュッとなった。
私は、目標(=生きがい)がないと虚無感と不安で生きる事への絶望を感じる性格だ。
目標を見いだせなくなり、先を行く道が真っ暗になった時期があり、生きづらさを強く感じていた。
私が生きづらさを感じる要因と、小説の中でそれぞれの登場人物が感じる痛みが自分と重なり、共感や納得感を得られた。
終盤の、智也による「どうせ歩き続けるしかないのだから、きれいごとに聞こえる話を絶望と一緒に一度呑み込んでみるのも手ではないか」という言葉。
私は軽い衝撃を受けた。そうか、と。
どうせ生きていくしかないのだから(それだけでも有り難い事は承