朝井リョウのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
身震いするような衝撃は、ページを捲る動作と比例するように大きくなっていった。
もちろんこれは、「何者」かになった人々の話ではなく、「何者」にもなれない人々の話である。
ただそれが私たちにも降り注いでくる。
それがまた"就活“に挑む23歳の物語だからこそ戦慄が走る。
この物語における衝撃とは、即ち否定である。
それは登場人物ではなく、我々への。
本作では6人の登場人物がいる。
主人公は二宮拓人という大学生、物語は彼の目線で進行していく。
私達読者はまるで噂話を俯瞰視点で見ているような錯覚に陥る。まさに無敵状態。
自らが敵意や危機に晒されることなく、
他人の暮らしだとか、日常 -
Posted by ブクログ
SNSよりもリアルの方が繋がれるはず、
AIが作る作品は心がない、、
そんな、世の中に溢れる一般論や、自分の中にある一般論をバッサリと切られるような感覚を覚えた作品だった。
ラストの畳み掛けとこの後味は、まさに朝井リョウ。笑
リアルの繋がりが、すべて本当とは限らないし、案外表面的にしか関わりのない人の方が、さらけだせる気持ちだってある。
便利さが、人とのつながりを希薄にすることもあるけど、その便利さは、誰かが誰かを思う故に生み出されたものだったりする。そして、そこから生まれるつながりもまた、存在する。
結局のところ、根底にある、人が人を思う気持ちは変わらないのかもしれない。
表面的な世界 -
Posted by ブクログ
幾つかの短編で全体が構成されており、各章の登場人物の繋がりがあることで人物の見え方が章によって変わってくるのが見応えがあり面白かった。
ある人から見た自分と自分の思う自分は全然違う面を持っていて、だからこそ今の自分というのは構成されていて、もがきたくもなるし変わりたくもなるしでも"自分"でいたい。
何者かになりたくて、何者にもなれず
在り方を探りながら人知れず葛藤を繰りかえす
あの子を羨んで比較をしては劣等にやられ
特別がただひたすらに眩しい
大人でも子どもでもない不思議な時期:若者ならではの瑞々しさを様々な境遇にある大学生男女を通して表された作品。
どんなに劣等感 -
Posted by ブクログ
生きているだけで生産性を求められるって凄くしんどい。
子孫を残して人類を増やすこと、会社を共同体として成長させること、社会と地球の成長に関わること。
そのどれかに関われたら苦労しないけど、きっとうまく関われない人がたくさんいるんだろういろんな理由で。
自分もその一人だ、何のために生きているのか分からない。
生きる理由が欲しい。消化するだけの日々。
理由を見つけられたらなんて幸せなんだろう。
そもそも、生まれただけで素晴らしいことなんだから、理由なんでほんとはいらないはずなんだ。
主人公は見つけられて良かった。
人類の正常とは真逆の方向だが、でも主人公はそれで生きられるのだから素敵なことだ -
Posted by ブクログ
皆んな「何者」かになりたくて生きている。
この本に登場する5人の学生たちも就職活動を通して「何者」かになろうとチームを組んでいる。チーム内で繰り広げられる人間関係を通してそれぞれ自分が「何者」であるかを意識し始める。特に主人公である拓人の内面の醜さと外面の良さは非常に人間らしくてリアルであった。そしてその「リアルさ」が心に直接刺さる匕首のように私自身に迫って来るのだ。読み終わった後は完全に心を貫かれしばらく動くことができなかった。
また、主人公である拓人に嫌悪感を抱く人が多いようだが、私はむしろこの主人公が好きだ。自分と似ていて何故か応援したくなってしまうのだ。
作者の小説は今回で2つ目だか、 -
Posted by ブクログ
数々の名だたる作品を世に送り出している著者のエッセイ、面白くないわけがない。
とはいえ朝井リョウ作品は正欲以来。
正欲、衝撃作品でしたねー。
本著はいい意味でとにかくくだらない、そう、くだらないのである。
朝井さんのエッセイ読者やラジオリスナーでない限り、あんな衝撃作を生み出す著者はさぞかし真面目で私生活も整っているのだろうと想像に難くない。
つまり本著を読み進めながら、そのくだらなさと数々の作品を想像しもやりながらも感銘を受けるのである。
エピソードにでてくる運動的な要素や〇〇会を盛り上げたい感、とてもわかる、いやしかし熱力の根拠が独特すぎる。
つまりギャップを楽しめる。というか吹き出し -
Posted by ブクログ
『イン・ザ・メガチャーチ』での本屋大賞受賞を機にこの作品を手に取った。「生殖」という観点から現代社会を語る。しかも語り手は主人公の生殖器という、かなり朝井リョウみを感じる独特な視点だった。
まさに言語化の神様!現実的で触れづらいテーマとユニークな文章の対比がとても面白かった。淡々としていながらも、主人公に対してノッたりツッコんだりする語り口が印象的だった。
性的マイノリティーである主人公は、社会の中で少数派としての生きづらさを抱えながらも、波風を立てないように「普通の人間」を擬態し続けている。その様子を、生殖器という第三者的な存在が解説していく構造が面白い。自分ではうまく言葉にできないよう