あらすじ
映画化大ヒット小説! きっかけは、キャプテンの桐島が突然バレー部をやめたことだった。そこから波紋が広がっていく。地方の県立高校のバレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部、野球部――。それぞれの部活で、教室で、グラウンドで、5つの物語がリンクする。彼らがそれぞれ抱える問題は? 桐島はなぜ部活をやめたのか? 第22回小説すばる新人賞受賞作。
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桐島が部活を辞めたことで周りの人の人生が大きく動き出す、みたいな物語かと思ってたけど違った。
題名通り、やめるってよ。くらいの第三者にとって小さな出来事。しかしその出来事が大小関わらず他者に影響を与える。
そうした日常の中で、自分にとって大事なこと、弱さ、他人の優しさに気付き、登場人物達の中で小さな変化が起こる。
感情に焦点が当てられた話が好きな自分にとってはとても面白かったです!
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運動ができるかできないか、可愛いがダサいか、制服をおしゃれに着こなせるか着こなせないか…。
クラスの中で目立ついわゆる1軍と呼ばれる人たち。
学校という狭い世界の中にいると分からなくなることが多いけど、一軍に選ばれるための明文化されていない基準・ルールってとても理不尽で極端。
こうやっていろんな視点から世界を覗くとそう痛感させられる。
映画部の涼也や武文は、運動部によくいる明るくて目立つ人たちが苦手で、教室ではできるだけ存在感を消していた。
そんな普段は目立たない彼らだが 、心から映画が大好きで映画の撮影を共に行っている時は自分の 劣等感とかはどうでも良くなり、ひたすら映画の世界に没入する。
さらに高校生映画コンクールの全国大会で特別賞を取るなど、実力も本物であった。
しかし、どんなにすごい賞を取っでも、運動ができない、見た目がパッとしない、そんな理由で他の同級生から「ダサい」と一蹴される、または扱いづらそうにされる。
『体育でチームメイトに迷惑をかけたとき、自分は世界で一番悪いことをしたと感じる。体育でチームメイトに落胆されたとき、自分は世界で一番みっともない存在だと感じる。』
運動ができて、常に堂々としていられて、青春という言葉がぴったりな恋愛もできる、そんな一軍の存在を毎日感じながら、なるべく関わらないようにと意識しながら、2人は日々を送っていた。
そんな2人から見たら1軍の真ん中にいる宏樹。
彼視点の物語が一番面白かった。
かっこいいし、練習しなくてもシュートは決められるし、彼女もいる、自分が目立つ存在であることを自覚している。
だけど、自分の限界を知るのが怖くて心のどこかで怯えていること、 地味だと決めつけていた映画部2人が映画を撮影する際レンズを覗く横顔が光そのものに見えたこと、彼女は可愛いけど多分ただそれだけだということ、うまく形容しきれないイライラを抱えながら悶々としていた。
パッとしない生活を送っていると、キラキラ輝いている人と自分を比較して落ち込んだり、嫉妬したりすることがあるけど、一見輝いてそうな人にも葛藤やまた別の辛さがある。
隣の芝生の青さにやきもきしているのはみんな同じなんだと思った。
狭い世界の中で周りからどう見られているのかを気にして偏った 勝ち負けや優劣をつけて自信がついたり落ち込んだり、そんな繰り返しの中にいるのかな自分も
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面白かった
読んでる途中で朝井リョウさんが19歳の時に書いたと知って、さらにこの本にのめり込んでいった。
個人的には宏樹の章が一番面白かった。前田涼也という話したこともなかった存在に、自分には何もないんだということを気付かされる。
自分は宏樹のような「陽キャ」ではないけれど、涼也のことが「眩しい」と表現している宏樹に少し親近感のようなものを感じる。
この本を今読めて良かった。
Posted by ブクログ
もう高校時代なんて10年くらい前だけど、あの時の空気感が読んでいるうちにぶわっと蘇ってきた。それぐらいこの小説は高校生活がぎゅっと詰まっていて、それは綺麗なものもあればちょっと苦しいのもあってほんとに全部詰まっているなと感じた。
私はあの3年間、別に何か大きなことは成し遂げてはいないけど、それぞれの章の子達みたいに悩んで悔やんで羨んでそして友達とキラキラしあって、きっと一つの章を作れるくらいには青春をしてきたかもなと振り返っていた。
あの時の青春を味わいたいなと思った人は読んだら楽しめると思います。良かった。
Posted by ブクログ
期待以上に面白かった…
何が起きてどうなったかっていうストーリーの展開というか、一人一人の身の回りに起こる日常の中で普通ーーにありそうなこととそのときの心情の描写に、読んでるこっちも妙にドキドキそわそわしてしまって。
出てくる子たちの誰に似てるでもない学生生活だったけど、誰の気持ちにも共感してしまう部分があった。
Posted by ブクログ
スクールカーストとやらを身をもって体験してない世代なので、共感的な感情は湧かなかったが、登場人物それぞれの心理描写は見事だったし、こんなにドロドロした人間の内面を描いてきたのに(書き下ろし部分を含まない)ラストの数ページで爽やかな読後感に浸れたのには驚いた。
多様性が声高に叫ばれている現代の高校生は、また違ったものを抱えているのかな。
Posted by ブクログ
青春のキラキラが眩しかった。桐島が一度も出てこないのに桐島を中心に話が進んでいるような不思議な感じがして面白かった。高校の頃は学校が世界の全てみたいな感覚で、カーストや他人の目を気にする登場人物たちにとても共感した。大学生の今は、自由が増えて、世界も広がって見えるけど、社会人になったらもっと広がるのかな〜。
Posted by ブクログ
Netflixで映画が配信されていたので、見た上で再読。
なんで1回目読んだ時はそう思わなかったのかな、ってくらいに宏樹に感情移入するのと共に、羨ましくなった
未来だけはあって、でもそこに描く未来がなくて、自分が空っぽに思えて、俯瞰して冷笑して、自分に呆れて
高校生でそこまで見えてるなら大したもんですよ
ラストとかあんな感じだったっけ?
と思って見てたけど、結構改変はされてる
でも映画は映画で、こちらに委ねてくれるものもあってすごい好きです
必要なのは少しの勇気
タイトルにある「桐島」という人物は、作中に実体として存在しない。「桐島」が喋ったり、他の生徒と関わったりすることはない。「『桐島』以外の誰か」が話す内容でしか、「桐島」自身を把握することは出来ない。
ここが“仕掛け”として上手い。
けれど、この作品はそんな小手先のテクニックが優れているのではない。人物を冷静に観察して、こころの動きを見事に描き出している。
タイトルの奇抜さ(?)は当時話題になったものだが、ライトノベルには、この比でない奇抜なタイトルがいくらでもある。とくにこの世代以降は文学とライトノベルの境が曖昧になっている。このタイトルは非常に計算されているし、作品の持つ空気を的確に表している。
中高生にとって「部活」とは「恋愛」と同じくらいの重要度を持つ。恋愛が往々にして砂糖菓子のように美化されて語られるのに対し、部活はもっと泥臭い。大多数の生徒は部活に所属しているわけで、それに「入る」のも「やめる」のも、とうの中学生、高校生にとっては学校生活を左右する一大事だ。
「やめるってよ」という伝聞形が示す通り、「桐島」本人がやめるという場面は出てこない。そういう意思表示はあったが、登場人物の誰も直接確認していない、間接的にそれを聞きながら、「ふーん、そうなんだ」程度の距離感で、物語は進んでいく。
「桐島」と関わりのある5人の生徒のモノローグは、それぞれが心に抱えているもの――それは決してひかり輝くものばかりではない、ときに醜かったり惨めであったりする――を、偽ること無く淡々と描いていく。
この作品が書かれた当時「スクールカースト」という言葉は、まだ今ほど一般的ではなかった。
誰もが学生時代に経験し、教室内で“普通に”起こっていたこと。学校生活を円滑に行う上でみんなが何となく“弁えて”いた『序列のようなもの』。それを生々しく描き出している。それが物語の主題ではないのだが、しかしこの事は無視できないくらい大きな“バックグラウンド”だ。
人は誰しも心のなかに醜い部分を持っている。それを表に出さないよう生きるのが「社会性」というものだ。学校という身近な場所で、それについて描写したこの作品は、いわゆる“青春モノ”の持つさわやかなイメージとはおよそかけ離れている。だが、当時に間違いなく存在していた、“正視したくないリアル”を描いている。
Posted by ブクログ
タイトルから、すごくライトな青春ものだと思ってた。
でも全然違った。
高校生の頃のなんとなく思っていたことが文章になってる。
クラスの中でのランクとか、自分たちはどうやってもあんなにカッコよく体操服を着こなせない気持ちとか。
あとはチャットモンチーとかリリィ・シュシュとかジョゼとか、好きだったものが出てくる出てくる。
それだけで私にぴったりだなんて錯覚を起こしてしまいそうなくらいに。
何か大きなことが起こるわけじゃないのに、なんだか私も光を見た気持ちになる話だった。
リアルすぎる
私は高3です。初めて呼んだのは小学6年生のときでした。その頃は物語に何の共感もできなかったのですが、中学生、高校生になって何度も読み返しました。読む年齢によって感じ方が全く違って、高校生になって読んだ時、「何でこんなにリアルな高校生が書けるの?」と思いました。桐島がいる高校は私の高校と多分校風が似ていて、きっと偏差値もそこまで変わらない気がして。こういう人、いる、いる、って思って、この見えないスクールカーストをみんなが見えているところとか。私は亜矢と似ていて、すごく共感できました。
現実
夢や希望に溢れる青春物語ではなく、高校という狭い社会でもがく物語。
作者の朝井リョウさんと同世代のため、非常に共感を覚えました。
嫌われたくないから空気を読む。
イケてるヤツ、イケてないヤツ。
大学?みんな行くから、行く。
他にも、高校の頃の懐かしい悩みを丁寧に書いてくれています。
Posted by ブクログ
この前まで感じていたあのモヤモヤが全て詰まってた。
あと、ずっと感じていた疑問も少し。
わたしは所謂「陰キャ」と呼ばれるような類の人間(その境目が何処なのか分からないけど)だったので、ずっとフシギだった。陽キャ、と呼ばれる(つまり、わたしの認識では、委員長をやったり、教室で目立つような事をしている)人達がどういう思考でどういう気持ちで毎日を過ごしているのか。
少し、ほんの少しだけ、分かった気がした。
そりゃあ勿論、この本の中で登場した人達のような人ばかりでは無いけれど、少なくとも、そういう人が居る、ということは分かった。
正直、あの人たちは何も考えていないんじゃないか、と思うことがあって(今ではそんな事ないと分かるし、自分もさして考えられる人間では無い)、それは違うなと感じた。
何も考えてないんじゃなくて、考えてるからこそなのかなとも思ったりした。
でもやっぱりわたしはあの人たちみたいにカッコイイ人間にはなれないので、出来ることなら1度、頭の中を覗いてみたい。
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高校生の頃、まだ本を読まず先に映画を見た記憶がある。しかし、その時意味がわからなかった。後に友達に話すと桐島は出ないと聞いて納得して終わっていた。最近昔わからなかったドラマを見ると面白いと気づき改めて読んでみたらすごく面白かった。解説でも書いてあったが、これを19歳で書いた朝井さんは天才だと思った。17歳青春真っ只中の時の感情を繊細に描いていた。あの時は夢も明確ではないし、自分の学校での立ち位置ばかり気にしていた気がする。人を馬鹿にしたりすることで自分が上であることを安心していた。今思うとすごくしょうもないことだがあの狭い世界ではそれが正義だと思っていた。学生時代に読んでいたら何か変わっていたと思うような、ここまで冷静に自分を見れないとも思う。17歳を経験した人全員、誰かの話には共感でき、懐かしく思え、あの時期をまた経験してみたいなと思える作品だと感じる。
Posted by ブクログ
映画化されていた作品ということもあって、題名は知っていたが読んでみると面白かった。
部活や立場が違う5人をそれぞれの視点から描くことによってスクールカーストを感じながら、物語が進んでいて、良かった。
また桐島という謎めいた人物を上手くストーリーに絡めることによって、読者の興味関心をそそるようにしているとも感じた。
Posted by ブクログ
私が共感できること、できないことどちらもあった。しかし、高校生をよく捉えている。こういうことを考えている高校生は今もいる。
1番印象に残ったのは実果の話。私が実果だったら、お母さんに「私は実果!」と言ってしまうだろう。
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高校生の心情を生々しく描いた青春群像劇
バレー部のキャプテン桐島が突然部活をやめることを聞いた高校生たちの心情の変化や成長を描く。生徒たちの生命力に満ち溢れ、瑞々しくも儚くて残酷で、叫びたくなるような青春の1ページ。大人にこそ刺さる1冊。
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「あなた」は「○○部活やめるってよ」と友人にあるいは噂で知ることになります。
○○はあなたにとってどんな存在か。部活の親友だったかもしれないし、友人の友人で名前程度、ただの顔見知りだったかもしれない。「桐島」はあくまでも「あなた」の青春時代の物語に登場する人物の一人でしかないことを強調しているのかなと思いました
どのお話も読者を青春時代に引き込む、あるいは「似たような状況だなぁ」と感じる人もいると思います。あなたにとって一番共感するお話はどれでしょうか。学生の読者の方は共感し、社会人の方にとってはノスタルジックに感じる本だなと思います。
Posted by ブクログ
名前しか出てこない桐島の影響を受け、これまでの生活が少しずつ変化する登場人物たち。
学生の頃は確かに「上」の人が言えば絶対な雰囲気もあった。今思えば、好きなものは好きということ、それぞれの個性や価値観、考え方を否定せず受け入れることが大事だと改めて気づいたし、今からでも遅くないと思った。
Posted by ブクログ
高校生を主人公にした青春小説。バレー部のキャプテン桐島が部活をやめたことはきっかけでバレー部、吹奏楽部、映画部、ソフト部、バドミントン部の部員たちの物語でした。映画部の話がおもしろかった。
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高校生青春小説。
そういったなかでも、高校生という大人と子どものあいだに抱くような、不安や不満、また生徒間の鬱憤やスクールカーストがテーマかなぁ。
あと拝読する前に聞いていた「桐島が出てこない」が本当だった。
スクールカースト下位だった私には『そうそう!』な展開ありで変に共感できて楽しめました笑。
Posted by ブクログ
タイトルのインパクトによって手に取らざるをえなかった。読んでみて思ったが、桐島本人自体の深掘りはほとんどなく、あくまで出てくる登場人物の一例だった。
作品を通じて若さを感じた。ひかりの描写が多く、学生時代を想起させた。
宮部と菊池の回は面白かった。
群像劇でいろんな話が繋がるが、そこから生まれるシナジーはあまり感じなかった。あくまでそれぞれの心理描写をつなぎ合わせて状況を理解するくらいだった。
人間にはいろんなキャラクターがあるが、その実態は状況によって変化する。生きていく上でずっと同じキャラクターで生きていける人はあまりいない。
本作もいろんな人物のストーリーがあるが、何か一つは読者にとって刺さる回があるのではないか。
そういう意味では読む価値があると思う。
しかし、一つの小説としては物足りない感が残った。
著者のデビュー作というのもあるのだろうが。
いずれ直木賞を取ったという作品を手に取ってみるのも悪くないと感じた。
菊池回はどんぴしゃだった
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短編小説だった。各々の高校生の繊細な感情を描いている。
僕の高校生活は部活、勉強、遊びでいっぱいいっぱいだった。そのためあまり「ヒエラルキーが上・下」だとか、「かっこいい・ダサい」とか周りの人間と比較して自分を立ち位置を分析する事はしなかった。
登場人物全体が卑屈のように感じた。そんな反発を出しながらもすんなり読めてしまう。それは高校生の複雑で繊細な気持ちを上手に表現しているからだと思った。
Posted by ブクログ
2009年刊行。
「小説すばる新人賞」を受賞した、朝井リョウのデビュー作。
舞台はとある田舎の高校。そこそこの進学校。
バレー部のキャプテン、桐島が部活を辞めた。
その小さな出来事が、バレー部の補欠・風助、ブラスバンド部の部長・亜矢、映画部・涼也、ソフト部・実果、野球部の幽霊部員・宏樹、バドミントン部のかすみ、彼らの日常に小さな変化を与える。
本作は、彼らそれぞれの視点から見た短篇に分かれている。大きなイベントは起きず、ごく普段の高校生活、しかし大きくざわめく彼らの内景描写を軸にストーリーが綴られる。
桐島は登場しない。
彼が本当に部活を辞めたのか、どんな性格で何を考えているのかは深掘りされない。あくまでも、「桐島が部活を辞めたかもしれない」ということがストーリーの触媒として働くだけである。
この小説で描かれるのは、高校生の格差だ。
田舎の高校、一学年の人数は300人程度、みんなおなじ十七歳。この小さなコミュニティが、彼らにとっては世界そのものだ。
しかし、その中には当然、目立つ生徒もいれば目立たない生徒もいる。
ルックスが良くて運動が得意な男子と、ルックスが良くて化粧が上手くてファッション・センスがある女子はカーストの上に立てるが、そうでない生徒はそれぞれ下のカーストでグループを作る。
この、ある種残酷ではあるが自然な序列は、当人たちも当然の寄与のものとして受け入れ、そのカーストの中でどのように波風を立てずに過ごすかに関心が向けられる。
カーストそのものへの抵抗ではない。それは誰も試みない。この序列がひっくり返ることはなく、無意味だからだ。
この描写が非常に解像度が高く、生々しい。
ゆえに読んだ人を自身の高校時代へと連れ戻す。そこで喚起される記憶がエモーショナルを誘う。
十七歳、高二。
まだまだ子どもだけど、なんとなく早く大人になるように急かされるような気がする、そんな時期。
自分の半径500Mが世界のすべてで、無敵だと思いながらも、漠然とした不安がまとわりつく、そんな時期。
作中の宏樹の台詞、「この体育館には真っ白なキャンバスがとりあえず300以上あるけど、みんなそれに何か描く気はあるのだろうか。
同じような髪型をして、全員揃って何していいかわかんないって感じだ。真っ白なキャンバスでも、真っ暗闇の中で見れば真っ黒だ。」
この台詞が、彼らの葛藤をよく表している。
私自身も、彼らと同じような歳の頃、おなじような苛立ちを持っていたことを思い出した。
この小説は、ストーリーとして大きな動きがあるわけでも、上手い伏線や仕掛けがあるわけでもない。そこに物足りなさは感じる。
ただ、主人公たちの心の中の動きを丁寧に描写することで、魅力ある作品に仕上がっている。
この表現が上手くて、当時19歳、後にヒットを連発する朝井リョウの才能の片鱗を十分に感じさせる作品である。
Posted by ブクログ
思春期ならではの生々しい諦念感と瑞々しさ。
自分の好きなものに真っ直ぐ向き合う尊さ、難しさを感じた。
自信が田舎の自称進学校出身なため感情移入を強く行えた。
Posted by ブクログ
朝井リョウ氏2009年(当時19歳)の作品。デビュー作。本作で第22回小説すばる新人賞受賞。
なお氏は2013年に『何者』で直木賞を受賞。
・・・
はっきり言うと、あまりついていけなかった、というのが本音。
バレー部のキャプテン桐島が二年の半ばで部活をやめるという所から物語は始まります。
当の桐島は一切出てこず、その周囲のキャラからみた高校生活が描かれます。
野球部のユーレイ部員菊池、バレー部の補欠風助、ブラバンの主将亜矢、映画部の涼也、ソフト部の実果。いわゆる上位組、下位組などの見えない枠を意識しつつ、上位は上位でこのままでいいのだろうかと悩み、下位は下位で縮こまってしまった自己に嫌気がさす。
皆、充実しているように見えて、生きづらさを感じている、不完全燃焼感を感じている、上位には上位の鬱屈、下位には下位のやるせなさがある、そんな筆致でした。
・・・
で、私は男子校に通っていたので、女子のいる生活というのが全く想像できません。共学というのは羨ましすぎる!って常に思っていました。
他方、本作で、女子の上位グループがあからさまに下位グループの男子をバカにしているシーンなどを見ると、「わし共学だったら完全に下位だわ。笑われるやつだ」って感じます。
そういう意味では、男子校で救われたかもって思います。
だし、埼玉県みたいな公立の別学が残っているのもそれはそれで多様でよいのではとも感じます。共学に生きづらさを感じるのであれば別学に行けばよろしい、と。
なんてことを考えていると、本作で描かれている生きづらさ・息苦しさみたいなのは、多くの共学で大小あろうも存在するのかもしれません。
実は当初、登場人物の幾つかに「皆さん感傷的やねえ」とやや斜めに構えていたのですが、解説で吉田大八氏(映画監督)が「美化された回想でもなく、現場からの荒々しいレポートでもなく、ギリギリの距離感で触れたか触れないか、そんな生々しさ」(P.242)と仰るところを見ると、きっと近年の高校生ってこんな感じなのでしょうね。
お疲れ様でございます。
・・・
ということで朝井氏のデビュー作でした。
氏の作品は、特にエッセイが秀逸で高校生の娘が「電車でふいてもた」と申しておりました。確かに面白い。小説は読者の立ち位置で判断が分かれそうですね。
学校生活で悶々としている学生さん、教育実習に赴く前の大学生とかが読んだら少しは参考になるかもしれません。
Posted by ブクログ
高校生の頃の自分がぐっと大きな手で引っ張り出されて日の目を浴びたような読書体験。
カースト制度を死ぬほど意識していたあの頃。自分は一軍だとか二軍だとかそういうことが常に頭の中を渦巻いていた。
体育が苦手だった気持ちが特に鮮明に思い出されて胸が苦しくなった。友達と過ごした何気ない日々も彼ができたあの日も高校生ってだけできらきらしていたのかもしれない。
Posted by ブクログ
良くも悪くも高校生のリアルを濃縮した一冊。一体いつから高校生に「自由」「青春」「元気」というレッテルを貼り付けるようになったのか。かつて闘っていた自らの記憶を呼び起こす。そして思いを馳せるは今の高校生達。SNSの普及、仮初の意志尊重、痛みのない温室の中で彼ら彼女らは一体どんな思いで生きているのか。時代を超えてアップデートされていって欲しい1冊
Posted by ブクログ
大好きな朝井リョウさんの有名な作品!!
自分の予想に反して短編:長編が7:3のような作品だった。
内容はあらすじのまんまで、桐島が部活を辞めたことをきっかけに学校生活での出来事を6人の視点から描かれているところ。この作品の面白いところとして桐島が脇役のような立ち位置であることだと思う。タイトルにいるのに、桐島が中心にいることは無い。まずこの作りが面白かった。また、女子高校生の心情を描くのが本当に上手。ずっと男性として生きているはずなのになぜこんなにも女子の気持ちが分かっているのか不思議でたまらない。本当にこれに関するエピソードを聞きたい。そして菊池宏樹のエピソードが最高でした。自分は上のカーストにいる。でも自分というものを持っていない。そこで映画に一途な前田と出会って変わっていく姿に成長と青春を感じた。この絶妙なバランスで複雑な心を持つ高校生の心情を私より1つ下(19)の時に描ききったというのはもはや脱帽レベルである。
ただ、朝井リョウさんということで期待値も高まっていたこともあるし、ある意味では高校生の日常という枠のような印象を受けてしまい私的には合わなかったのでこの評価。ごめんなさい。
Posted by ブクログ
生々しくて、眩しすぎた
学生の頃には、1ミリのズレを許せなかったり、思い悩んだり、喜んだり悲しんだり
大人になれば対応できるのか、諦められるのか、気にも留めないような誰かの変化によって、
あの頃の世界はごちゃごちゃにかき混ぜられていたな
Posted by ブクログ
後書きを読んでより好きになった。
確かに、この作品を19歳の時に書いたとは思えない。
19歳だからこその生々しさと19歳らしからぬ冷静な語り口。
ただ、キラキラ女子の解像度が他の登場人物に比べて低いと感じた。仕方ないのかもしれない。
Posted by ブクログ
大人になることを「安全圏に逃げ込む」と表している解説の言葉がすべてだった。
安全圏に逃げ込んだ後に読んでよかった。まだ少ないダメージで済んだ。
高校生の時、リアルタイムで読んでいたら三日三晩寝込んでいただろう。
Posted by ブクログ
朝井リョウさんの「正欲」を読んで再読したくなった。
かなり昔に映画で見ておもしろかったので読んでいたはずだけど初見だったかもしれない。
情景や人物の内面の描写が正欲よりも瑞々しくサラサラしているのは、著者が若かったからか扱っているテーマや年代が違うからか。
どちらかというと中高生の娘たちに読ませたい。
後味はよくない
オチはないので後味はよくないですね。ちょっと読んでいて辛かった。高校生の心情を淡々と書いているけど、自分の時(80年代)とは余りに違っていて、判るところもあれば、共感できないところもある。