朝井リョウのレビュー一覧
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ネタバレ朝井リョウさんの紡ぐ言葉が好きだ。
物語としての展開はもちろん、登場人物一人一人の心理描写、発言に引き込まれた。
自分と同じ価値観の人は存在しない。だからこそたくさん経験を積んで、想像力を働かせて、相手に寄り添える人間になりたいと思っていた。
でも自分の想像の及ばない世界がまだまだ無限にあるって思い知らされた。
今回の性癖の観点とは全く違うけど、私は世間一般的なレールには乗れなくて、いつまでこの孤独と1人で戦わなきゃいけないんだって思っていた。
夏月の年末年始のシーンから読む手が止まらなくなった。
私ももう何年も季節を感じていない。クリスマスもお正月も苦手だ。世界は一緒に過ごす相手がいる人 -
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孤独で寂しい気持ちを埋めるには、視野を広げるよりもむしろ思いっきり狭めた方がいい
そして我に返らないようにして、できるだけその対象に集中し活動する
宗教と推し活は同じ構造だね
時間とお金と労力をつぎ込めば、心に平和をもたらしてくれる
集中する対象が家族なら正解っぽいし、人のためになる活動なら美しい感じがする
この本に出てきた人たちは、お金使い過ぎでまちがっちゃってる感じがするけど、やっぱり楽しそうでうらやましく思えてしまう
世の中にはあの手この手で沼にはまらせて、購買意欲を高めたり、寄付をさせたりするものにあふれているから、一旦冷静になろうという注意喚起の本なのかな?
やってきたことよりやら -
Posted by ブクログ
SNS布教が当たり前になった現代の推し活ファンダムの光と闇を、鋭く描き出した風刺作品。
推し活と宗教は紙一重で、人は誰しも知らないうちに何かに依存しながら生きている。その事実を、物語は静かに、しかし強烈に突きつけてくる。
推す側と推される側、立場は違うのに似た孤独を抱え、同じような「物語」にのめり込んでしまう姿は、苦しいほど胸に刺さった。
私自身、かつて無理な推し活で辛い思いをした経験があるからこそ、主要人物のひとりと年齢も性格も近いこともあり読みながら何度も感情移入してしまった。
そして改めて思うのは、朝井リョウさんの観察眼の鋭さ。特定のオタクではないとインタビューで明言していたのに、こ -
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この物語では、三人の登場人物がそれぞれ「孤独」とどう向き合うかが描かれる。
澄香はアイドルに自分を重ね、久保田は自分でつくり上げた物語を信じることで、行動する力を得、孤独をまぎらわす。
一方で絢子は、陰謀論という巨大な物語にのめり込み、同じ信奉者たちの中に居場所を求める。
3人とも、孤独から逃れるために物語を必要とする存在として描かれている。
ただ、物語に深く入り込みすぎると搾取されたり、倫理的に問題のある行動に走ってしまう。
だから視野狭窄は危険だ。
でも、物語を信じて突き進む人は、たしかにキラキラして見える。自分を後押しできる強さを持っている。
「物語を信じすぎる人生は危ういけれど、 -
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リビドー、つまり人間の行動となる根源的欲は人それぞれ。だがしかし行きすぎる欲望は危険だと考え、無秩序な欲は制御される。これが正欲。
多様性の時代が謳われているが、それは正しい側の人間が想像できる範囲内で、マイノリティを受け入れてあげるよと偉そうに謳っているだけ?
自分が想像する範囲にとどまる時点で正欲だ。正欲を批判するのも、受け入れるのもすべて正欲。
難しい。
《自分の想像力の及ばなさを自覚していない狭い狭い視野による公式で、誰かの苦しみを解き明かそうとするな。》
この小説を読んで、特殊性癖の有無に関わらず、他人のことなんか分かるはずがないと思った。分かろうとするなんて傲慢かもしれない。