【感想・ネタバレ】正欲(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繋がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。(解説・東畑開人)

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

「多様性ってなんだろう?本当に必要?」
この本は、多様性が無条件に善として捉えられている社会に対して、ものすごい課題提起をした小説だと思う。

私も日系大企業でグローバル組織に属しているため、日々感じていた違和感。私たちの言うダイバーシティって本当の全体からみたらものすごく限られたエリアの多様を語ってるに過ぎないよね。

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

多様性ってなんだろう。正しいってなんだろう。
悶々としながら読んでました。

私には少し重く、読むことにすごく時間がかかったけどとても面白かったです。

けれどあまりに自分の中で複雑な気持ちが溢れてしまって終盤は泣きながら読んでました。

私の中で正解はまだ見つかってないけど、
視野が少しだけ広がった気がします。

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2025年12月10日

Posted by ブクログ

おもしろかった
正しく思うことで否定して大事な人を傷つけてしまって関わることができなくなってしまったと思う…先に読んでいたら傷つけなかったかもしれないけど、変わらなかったかなとも思う
根幹に関わるけど間違ってると言われるようなことは言えずに抱えてしまうなと思う

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2025年12月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

満願からの欲望繋がりで正欲を読んでみました!朝井リョウさんは「何者」以来の2作品目。

最初、元号が変わるまでに何が起きるんだろう?ってずっともやもやした気持ち悪い空気が漂っているなーというかんじでした。元号が変わることで、何か今まで抱えていたものが新しい価値観や新しい考え方が変わるというそういうニュアンスなんですかね?→実際変わりませんでした……

視聴者の要望に応えたい子供YouTuberと自分の欲を満たしたいのかもしれないコメント投稿者。お互いの欲が満たされていると考えると…難しいですね。

人間の数だけそれぞれ考え方や欲望があるのだと思います。ただ、それを分類したときにマジョリティに当たる部分の人たちは、ただマジョリティに属しているだけで強い?と勘違いしている?そこに居座ることで不安な気持ちを払拭している?日本人は無宗教が多いけど、それぞれに宗教を持っている、というのはしっくりきました。明確な指針、例えば神のような、そういうものがない日本では、特にマジョリティに属しているという感覚だけで満たされる人が多くて、マイノリティの人たちを排斥することで、自らの地位を確固たるものにしているような、そんな感じなのでしょうか?まだまだ読み終わった後もモヤモヤでまとまっていません。

ショッピングモールの勘違いエピソードは、何回も強い言葉を読んで吸収していると、なんだか自分に言われているようで辛くなりました(泣)

途中から今まで二人称だった対象の人たちの視点になるの面白いけど、啓喜はずっと啓喜のまま。何か意味あるのかな?→啓喜は最後まで啓喜視点でした……

大也のことを思って言っている八重子は大也側からすると本当に身勝手で押しつけなかんじがしてて、途中までは目を背けたくなるほど噛み合っていませんでした。悲しかった……

みんな不安だから、自分がおかしくないかを確かめ合うようにしている!というのは納得しました。行動原理としては色々あると思いますが、自分の不安を解消するために、マジョリティである立場を守るために、他の人を攻撃してしまうのが人間社会なのかなと思いました。うん、まだ上手く言葉にできません。

面白かったので、他の朝井リョウさんの作品にも触れたいと思いました!!!

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2025年12月10日

Posted by ブクログ

「多様性」とは結局のところ社会が包摂(角を削って丸くして社会に溶け込ませるようなイメージ)できる限りの多様性でしかない。包摂しきれない多様性は社会から排除され、なかったものとされる。「多様性」という耳触りの良い言葉が孕む欺瞞を鋭く描いた作品。

特殊性癖とは違うが、私はアロマンティック(他者に恋愛的に惹かれない)を自認しており、恋愛とは無縁でありたいと思っている。なんでも恋愛に結びつけられ、なぜ恋愛しないのかと問い詰められ、恋愛していない者は劣等であるとジャッジされる異性愛至上主義社会にほとほと疲れている。そのような私にとって、この作品は「多様性」批判でありつつ異性愛至上主義批判でもあると感じられ、救われたような気持ちを抱いた。

居場所のないこの世界でなんとか生き延びたいという切実な願いから戦略的結婚に至るところがおもしろい。主人公夫婦が恋愛感情ではない特殊な絆で結ばれていく一方で、恋愛結婚をした寺井夫婦の絆がほどけていく様は対照的。

(原作にハマった人はぜひ映画も見てほしい。神戸八重子役の東野絢香さんの男性に怯えて日常を過ごす演技が絶妙で好き。)

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2025年12月10日

Posted by ブクログ

“多様性”についての価値観が変わる一冊。
今の時代だからこそみんなに読んでほしい!
多様性とはなんぞや?という内容ではなく、マイノリティの人がどのような人生を歩んできたかという内容。
ただ作品中の登場人物は、LGBTQをマイノリティの中のマジョリティと定義づけるなら、マイノリティの中でもさらにマイノリティな嗜好を持っている人たち。

誰にも理解されない悩みをもつ人たちが、ある事件をきっかけに人生が触れ合いだす。

浅井リョウは心情表現が非常に豊かで、読んでいて性に合う。違う作品も楽しみ

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2025年12月10日

Posted by ブクログ

比べるのはお門違いかもしれないけど、私も特殊フォビアを持っているからか特に夏月に共感した。
自分がおかしいという自覚、孤独や諦め、それでもやっぱり卑屈でいることにも飽きてきて、人生が底を打ったときに初めてありのままでいることを肯定できるようになった気がする。 
今やっている仲間探しも、世間体だのプライドだの色んな鎧を脱げたから前に進み出している感覚があり、そんな自分で出逢うご縁だからこそ深く繋がれるんじゃないかなと思った。
私のこれまでに輪郭をつけてもらった気分だ。

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2025年12月09日

Posted by ブクログ

朝井リョウさんの小説を初めて手に取って読んだのがこの作品。
この本を手に取った理由は前から気になっていたというのもあるが、何より帯に書いてあった「読む前の自分には戻れない」というフレーズだった。
「多様性」という言葉が当たり前に飛び交うような時代になって、改めて自分の想像している物事の範囲内でしか考えられないんだと思った。性欲というのは思考の根であり、生涯のすべての根である。それが当たり前の世の中で、その枠組みで生きてしまっているからこそ理解されない部分も多いんだと思う。
何が正しいのか、何が正解か。この世界で生まれてきてしまったのだから、「多様性」に限らず、ずっとかんがえていかなければならないと思った。

それに誰かの悩みや状況に関して、救う側、理解していると思い込んでる側が存在し介入してくるのは、傲慢だと思ってしまった。分かった気になったりあくまでその前提で考えていることにも嫌になる。
それでも人というのはどこかで分かり合いたい、繋がりたいと思ってしまうのだろう。
人間というもの自体、そういう生き物なんだろうと思うと自分自身も嫌になる。

深く考えさせられたし、朝井さんの冷徹な筆致と表現力は凄いし、読んで色々と腑に落ちた。

またこの本を読みたくなる時が必ず来るんだろうなと思った。

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2025年12月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分の視野の狭さを、想像力の低さを責められているような気分になる。正欲というタイトルの意味がわかったとき、その窮屈さに嫌気がした。正しい欲。社会にとってマジョリティにとって普通で正しい欲。
なぜこの本を読もうと思ったのかを思い出していた。帯にあった「読む前の自分には戻れない」というキャッチコピーだ。確かに自分はもう「多様性」という言葉を気軽に使えなくなってしまった。「多様性」という言葉の持つ正しさに気づいてしまった。
「多様性」とは、どこかの誰かが定めた正しさにみんな従えって上からもの言ってるのと同じなんだと思う。
みんな孤独で不安だから確かめ合いたい。分かってもらおうと話しかけて分かってもらえたらそれはお互いにとって普通で正しいんだと思う。
分かってもらおうと話しかけても分かってくれなかったとき、どちらかが間違っている。そのどちらかはこの世には決して分かり合えない人たちや社会が存在するという諦めを心に抱えて絶望するんじゃないか。重力に負けた顔をして。
正しいか間違っているか、ただそれだけで世界が変わってしまう。
人は想像できる範囲内でしか物事を考えられないという当たり前を思い出した。だからこそもっと知識を吸収たいと思った。もっと本を読んで世界を広げたいと思った。そうすれば分かり合える世界が増えるかもしれない。

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2025年12月10日

Posted by ブクログ

「多様性」という言葉が溢れる現代社会へ、これは鋭利な刃物のように突きつけられる強烈な問題作である。
物語は、性に対して異質な欲求を持つ二人の男女と、世間の「普通」の中で生きることを強いられる検事や主婦といった複数の視点から展開する。一見、交わることのない彼らの人生が、ある事件をきっかけに絡み合い、読者はその度に、自分が立っている「正しさ」という名の不安定な足場を揺さぶられることになる。

作者が問うのは、社会が承認し称賛する「想像できる範囲の多様性」と、そこから排除される「不都合な多様性」との境界線だ。人は、自分の価値観から外れるものを差別し、排除することで、自分の「普通」や「正しさ」に安心を得ようとする。その無意識の差別意識や同調圧力が、いかに暴力的な「加害者性」を孕んでいるかを、本作は冷徹な筆致で描き出す。

そして、その根源にあるのが人間の「性欲」であるという視点が、この作品を唯一無二のものにしている。性欲が人間の根幹にあり、それが価値観そのものを形成しているならば、価値観は無限に多様であるはずだ。
読後、私たちは、安易に他者を「理解したつもりになること」の傲慢さ、そして想像力の限界を知ることになる。目の前の人間を、自分のものさしで測らず、安易なレッ釈を貼らずに、ただその存在を「積極的な不干渉」として認めること。この難しくも切実なテーマを投げかける、気迫に満ちた傑作である。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

本屋大賞ノミネートやタイトルの興味から読んだ。多様性という言葉を推進しながら、暗黙の雰囲気や価値観がある世間を再度認識させられる本だった。

人間として世間一般から「普通」「正しい」と思われている嗜好だけが全てではないよなと自分ではわかっているつもりでいる。マイノリティの嗜好が認められない世界の様子が描かれる。そして自分もその世界の一員になってしまっていることを自覚する。頭をガツンと殴られるような感覚もあった。

個人的には、「普通」のルートから外れることを心配する検事が印象に残った。自分に子どもができたとき、多様性や個人の意思尊重という言葉で、子どもがやりたいことをどこまで認め、応援することができるんだろうか。

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2025年12月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

正欲とは正しい欲を意味する
しかしその正しい欲は、社会という中において必ずしも正しい訳ではない
社会において一般的に普通と考えられている欲求が、一部の人間の居心地を悪くさせ、孤立させる事にもなる
しかしどのような欲求も許される訳ではない、社会的秩序を保つ為に規制もされるのだ
正欲は過剰と不足の間でブレ続けるものであるという言葉に最後納得がいった

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2025年12月06日

Posted by ブクログ

正欲を読み終わって、今までの価値観が少し変わった。
読むまで正しい欲とはどのようなことか全く検討がつかない自分であったからこそ、より価値観の違いについて感じるものが大きかったのだと思った。
蛇口から噴水のように出る水に興奮することが、あまりにも身近に感じることがなかった分程遠い価値観のように感じていた。しかし、実際に生活している中でも、同性愛者がこんなにも近くに、またこんなにも多くいるということがこの本を読んでいる最中に知った。
そこから、程遠かった価値観がすごく近くにあるようにも感じた。その人にとっては、それは性欲であり、それをあまり理解できていない自分にとってはそんなが無いと決めつけていた正欲であったと感じる。誰しもがそれぞれの性欲と正欲を持っており、それを強引に結びつけることはマイノリティの人達にとってはとても生きづらいことなのだろう。
だからと言って、全員の価値観を合わせることは不可能であり、そんなことは望むものでは無い。
だから、それを知り、理解で収めることだけでそれ以上でそれ以下でもなく、十分なのかもしれないと感じた。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

「多様性とは、都合よく使える美しい言葉ではない。自分の想像力の限界を突きつけられる言葉のはずだ。」

この表現が凄いしっくり来た。
自分とは違う何かに、自分達を認めろと主張された時、多様性という言葉を盾にして本来の自分を隠している人が多く居ると常々感じていた。
何も考えず、差異を認める事で自身もこの世界の進歩に貢献していると考えているのだろうか。
それとも、新しい価値観に対応していかないといけないと躍起になっているのか。
いずれにせよ、多様性という言葉を使う事で、その人達は自分達が正しいのだと信じて疑わない。
多くの人間が自分の信じる正しさを持ち合わせていることで、正しさ同士が反発するのは自然な事だと私は思う。だからこそ、多様性という言葉で逃げることは正しくないと感じる。

だけれども、こんな考えも自分の正欲の表れであるということに、打ちひしがれる。どう転んだって正欲から抜け出せない。そんな自分も嫌になる。
それでも、こうして悩みに悩んで頭の中が堂々巡りしていく感覚が凄い好き。結論が出なくとも自分の正欲は存在するし、それに従ってこれからも生きていく。正しくあろうとする自分を正しながら生きていく。

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2025年12月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

多様性や、マイノリティについての1つの見解を知ることが出来る。

人は1人では生きられない故に、社会に馴染むため自分を押し殺しながら生きてる人は多い。もちろんそれは少数派とか関係無しに。

その中で、特に少数派について。今までマイノリティに対する正解が分からなかった。少数派の人達を何でもかんでも否定するのも肯定するのも違うような気がしてならなかった
そのある程度の正解が、この本と、最後にある東畑氏の解説によってある程度スッキリした

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2025年12月12日

Posted by ブクログ

世の中の多様性の押し付けに非常に違和感を感じ、外では言えない感情を抱いて
ましたが、作中の登場人物が私の感じていた違和感をまんま言語化して語ってくれていたので非常にすっきり。作者の現代に対する切り口が非常に秀逸です。

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2025年12月06日

ネタバレ 購入済み

読めば読むほど正欲がわからない

違う世界線の人たちが読み進めていくうちに交じり合い、夢中で読み進めた。

多様性から外れる人たち…
この本を読むまでいかに自分の考える多様性が狭いものだったか思い知らされる。
読み終わっても多様性とは?正欲とは?わからない。もやもやが残る。
そのもやもやこそが正しい理解なのかもしれない。
最後の解説がこのもやもやを上手に言語化してくれてとてもよかった。

#泣ける #切ない #深い

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2025年02月08日

購入済み

朝井リョウさんの書く文章が好きで新作が出る度に買っていますが、この作品は1位2位を争うくらいに好きです。LGBTQという言葉が世の中に知れ渡ってきた昨今、言葉を知っていると言うだけで本当の意味では理解出来ていないのでは?と考えさせられる作品でした。

#タメになる

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2025年01月19日

QM

購入済み

SNSで話題になっていたので読んでみた。
それぞれの人にとっての正欲とはなにか、考えさせられる。
多様性とは何か、についても。
もう時間空きすぎてほぼ忘れてるからまた読みたい。

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2024年09月25日

cnm

購入済み

多様性という言葉は、魔法のように全てを見通すことのできる美しい言葉ではない。けして交わることができない他者がすぐ隣にいるという絶望を突きつけるための、恐ろしい言葉だ。

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2024年07月18日

購入済み

正しさについて

自分の中で正しいと思っていたことが
周りから見てそうではないこともある。
過去の自分と重なる部分があり時間を忘れて読んでいました。

#ダーク #共感する

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2024年05月02日

購入済み

想像していた以上に面白かった。
個人的には八重子が一番好きでした。
彼女の視点があるのとないのとでは大違いだと思います。

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2023年12月18日

購入済み

多様性という名の暴力

普通の家庭を営んでる自分でも、あまり大っぴらにできない性的(嗜好)志向があったりする。
それは、家族に話しても理解されないし、たまに酒の席で漏らしても奇異の目で見られるだけだったりする。
世の中には、そういうモヤモヤを抱え続けて生きてる人も少なく無いんだと思う。
そういう人からは、そんな目新しい内容ではないのだけど、わかりやすいルートを辿ってきた人たちからしたら新鮮なんだろうな…と(と、書いてる自分も久々に★5をつけているのだけども)

近年、多様性のもとに、市民権を得てきた様々なマイノリティの人
それは、歓迎すべき事なんだろうけど、どこかで疑問を抱き続けてきた自分にとって、朝井リョウさんの本作は答えの1つになると思う。
ただ、本書で描かれるマイノリティの人は、そこまで唾棄すべきものではないと思うが、〇〇のようなものに性的興奮を覚える人もいるんだなぁ…というのは驚いた。まぁ、木の枝に興奮する人もいるし、世の中には想像もつかない人も沢山いるのは知っているのだけど。

分かりやすい例でいえば、小児性愛。たとえば近親相姦。
これを多様性と認めるか、それとも唾棄すべき性癖として嫌悪するか。
これらには否定される理由がある。それも理解した上で、創作物を楽しんでいる人たちを安全な場所から叩く人はどうなのか。

これは良し、これはダメと、多様性という言葉に条件をつけている現在に一石を投じてくれた本書は良い問題提起をしてくれたと思う。
本作を通じて、自身の考えてる多様性を、一人一人が真剣に向き合うキッカケになっているのは喜ばしいし、多くの人に考えてほしいテーマだと思う。

#深い #共感する

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2023年11月16日

購入済み

多様性の外側にある多様性を知る

他者を理解するって本当に難しいことですね…

多様性に含まれる多様性の中でしか生きて来なかったのだと思い知らされました
他者を知る知見を広げるために全人類に読んでほしい……
夏月の最後の言葉大好きです。

#泣ける #切ない

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2023年09月13日

Posted by ブクログ


多様性、正しさとは何ぞやと。きっと永遠に答えは出ないのでしょう。エンタメ小説として消化はできず。骨太。
自分が抱えている歪んだ性癖、性欲も、誰かに迷惑をかけない範囲で自己消化できているなら否定する必要はないと、勇気をもらいました。解説も好き。

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1.水フェチってなんやそれ?!となるけど、おそらく読んでいる人に不快感を与えないフェチとして出してきてたギリギリの線だったのかな?
2.他人の性志向ってそんなにみんな気にするものなのかな?家族とか好きな人とかならギリ関係あるけどそうじゃない人は普段が普通なら関係なくない?(犯罪にならないならば)
3.なんだかんだ八重子が一番エグい。あれだけ大也に関わってきて、あっさり平穏な生活に帰っていく。自分の抱えてる闇、みたいな描写あったけどそれだって所詮は他人のこと。その対象としてみられた嫌悪感だけ。あ、そうか性欲の対象として見られた人間の描写っていう立ち位置でもあるのか。一般人としての立ち位置だけではなかったのか、このキャラは。
4.ゆうても自分は普通の人間なので寺井(検事)の言っていることが一番共感できる。人生のレール、ハズレないに越したことはない。

多様性を描いた話?それだけではないんじゃないかなぁ。もっとなにかあるはず。数年後にもう一度読んでみたい。

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【きっかけ】
生殖記を読み、ちょっと衝撃だったので、以前から気になっていて、評価も高め、映画化もされたということで、暗い気持ちになりそうな予感を押し殺して、Audibleで聴くことに。
【読後】
なんだろう、この救われない感じ…。作中の誰にも共感できず、最初から最後まで、とにかく苦痛でした。しかし、マイノリティをテーマに、ここまで重く、苦しい気持ちにさせられるというのは、やはり、凄い小説なのか。
コメントも書きづらい。作中の誰を、私が不快に思ったとして、それを言葉にすれは、知らずに誰かを傷つけてしまうのか?と、言葉を飲み込まざるを得ないような風潮が、「多様性」を許容する理想の世界なのかなぁ?だとしたら、悲しいし、皆が楽しくないよなぁ。生殖記の方が、まだ、救われない感は、少なかった。(語り手のせいか)むむむ…と、考えさせられた。特に、後半の八重子と大也のやり取りは、とても苦痛なやりとりなのに、引き込まれちゃったなぁ。なんなんだ。
【敢えて考察】
なんというか、「マイノリティ」を描くのに、やはり「性」からは逃れられないのだろうな。必然的に重くなるなぁ。「命」が生まれる営みに関わるから?特殊性癖を持つと、こんなに辛いことになってしまうのでしょうか。
「性」から離れれば、集団の中で「マイノリティ」を感じることは、比較的、誰もが経験したことがあるのではなかろうか?例えば「価値観」は、本当に多様と感じる。異なる「価値観」を否定しないという「多様性」なら、大賛成なんだよな。とにかく、異なる価値観を否定しないだけで良いのよ。「自分の価値観しか認めない人」とか「少数派の人を、あいつ変わっているよなー」とかいうのが、良くないのだろうね。それくらいのレベルなら、多くの人が、日常的に経験していることじゃないかな。「異なる価値観」を恐れる気持ち、それは、自分が「異端(マイノリティ)」かもしれないという不安につながる。確かに。でも、50過ぎたらむしろ、「変わった価値観」の方が、面白いじゃん!と前向きに受け止められるんだけどなぁ。若い頃だったら、決して、そうは思わなかったんだろうな。
小説としての構成や作りは素晴らしいのですが、あくまでも好みで★3にさせてもらいました。
【追記】解説を読んで…
臨床心理士さんの解説がメチャクチャ良かった。
八重子と大也の罵倒しあうシーンを、「正交渉」だと。人は、繋がりあうために、傷つきあいながらも、何度も何度も話し合う、終わらない「正交渉」を繰り返す。それが愛なのでは?と。
「正欲」と「性欲」の対比を考えて振り返ると、とても面白い。いかに、自分自身が「正欲」にとらわれ、時に相手を傷つけることを恐れているか、分かる。しかし、繋がるためにも、「性欲」と同様に、相手を認め、コントロールできるよう、「正熟」しなければならないと。うまいなぁ。
ということで、解説含め、★4に修正です。
解説読んでない人は、読んでみては?お勧めです。

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2025年12月13日

Posted by ブクログ

啓喜、八重子、夏月の順でそれぞれのエピソードが綴られていく本で、読み進めるうちに徐々に3人が繋がっていくのが分かる
次の人に移るときは必ず前のエピソードのキーワードを受け継いでいくので、全く関係がないように読める前半部でもなにか3人に共通の関係があるのか疑ってしまう
最後は全員繋がるんだけど、めっちゃおもろい終わり方するわけじゃないし「世界への諦め」って感じ

マジョリティで居続けるってことは不可能でどっかの70%の人がまた別の場所で70%になるなんて、半分くらいの確率でそれを何回もくぐり抜けることに意味なんてないって気付かされる

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2025年12月11日

Posted by ブクログ

「マイノリティ(それも、かなり特殊な)」と「ダイバーシティ」をテーマにした作品。
マイノリティにはマイノリティの悩みや苦悩があるなんて、考えたこともなかった。
例えば、小児性愛者。
小児性愛者=気持ち悪い、とか、変態、とか、そういう見方しか持っていなかった。
もちろん、子どもを性の対象にして己の欲望を満たそうとすることには不快感しかないし1㎜も許せないが、幼い子にしか興奮しない、すなわち幼い子でなけれぱ欲情できない、というのは見方を変えれば気の毒でもある。

自分は特殊性癖を持っていないので完全に理解することは出来ないし、作中で大也が「理解してもらおうだなんて思っちゃいない」と言っていたように、おそらくそういう人達は皆一様にそう思っているんだと思う。
けど、そのような「マイノリティの中のマイノリティ」である人達は、自分には想像も出来ないような底知れぬ苦悩を抱えているかも知れないし、それでも生きていかなければならない絶望を常に背負っているのかも知れないということは、忘れてはいけないと思った。



『誰もが、昨日から見た対岸で目覚める可能性がある。まとも側にいた昨日の自分が禁じた項目に、今の自分が苦しめられる可能性がある。
 自分とは違う人が生きやすくなる世界とはつまり、明日の自分が生きやすくなる世界でもあるのだ。』


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2025年12月11日

Posted by ブクログ

朝井リョウ作品でこれは読んでおかないといけないような気がして拝読。
プロローグ?から不穏すぎて心がざわついたまま読み進めました。
多様性を鋭くめった刺しするぐらいの感覚、恐怖さえ覚えました。
多様性のシンボルとして新元号を軸にして、それぞれの登場人物の話が展開していく様は圧巻。
面白かったです。


もう少し救いも欲しかった…

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2025年12月09日

Posted by ブクログ

読む前の自分には戻れないというより、読んだことを無かったことにはできないって感じ
最終的にこの本で求められるのは理解ではなく対話なので、できるだけ多くの人の手に届いてほしい

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2025年12月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

夏月と佳道の関係性が苦しいけど素敵だった。
性愛じゃなく、世界で唯一の理解者というパートナー。いなくならないから。
多様性という言葉は好きでも嫌いでもないけど、マジョリティ側が自分とは違う何かをそれに当てはめて、自分の中の正解にすることで安心するために使用する感覚は嫌いだ。多様性でもなんでも、私も押し付けが嫌い。
本当の意味でみんな違ってみんないい、どんな者があっても当たり前の世界を望むけど、欲と罪が一発触発の人達はどう生きればいいというのか。
ハッピーエンドじゃないところがよりリアルで、救いが無く虚しくなった。
それとは別で、朝井リョウさんは岐阜県出身。
ちょっと期待してたけど、いきなりチラッと岐阜が出てきて嬉しかった〜

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2025年12月08日

Posted by ブクログ

多様性とは何かを考えられた、世間で騒がれてる多様性では理解が足りない人たちが何人もいるということに気付かされた。正解はない

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2025年12月06日

購入済み

自覚

自分になかった考えを、この本を通して知ることが出来た。

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2024年12月23日

Posted by ブクログ

性的嗜好の多様性についての小説。
結局のところ、多様性も地政学と国家の関係と同じなのではないだろうか。
各国家が覇権国家、さらには世界統一を目指すのと同じように、数多くの種類がある個々の性的嗜好も争い続け、表面上は理解を示しても本質的に共感することはない。実際のところ統一国家なぞごめんなので、個々が違うことを理解し、争いを避けながら自国が栄える道を探すという方向性でいいのではないだろうか。そんなことを考えさせられた。

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2025年12月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

高校卒業したとき?に初めて読んだきり、あんまりしっくりこんくてなかなか手を出してこなかった朝井リョウさん。22年の本屋大賞か。この表紙はよう見てましたよ本屋では。
ほんまはさ、桐島買うつもりやったのに、まさかの本屋に置いてないからどーしようと思って手に取ったのが今回の『正欲』
久しぶりによむ朝井リョウでちょっとビビってたけど、これは読みやすい。テーマは重かったけれど。
最近のご時世でみんなが良かれと思ってつかっている「多様性」。それってそんなに便利な言葉か?
正直そこまで考えを巡らせられてなかったなと思い知らされた。
ヨーロッパに留学してた経験から、LGBTQとか、ヴィーガン、ぺスカトリアンとかの食の嗜好性については、ある程度寛容やと思ってたけど、この本でスポットライトが当たるのは、もっと深いところ。異常性癖の人たちはどうしているのか?
水に興奮する とかいま考えても分からんし、分からんくて当然のものなんやろと。この作品の中でも、正常(とされる)人は、最後まで見当違いなままで終わっていったし、世間から見た肩身の狭さは変わらんままやったと思う。
わからんものはわからんくても対話は必要。かと、まさかの八重子にあんな熱量持って語られるとは
正直、「お前がそんな言えるんかよ」ってビックリ。

作家の扱うテーマって、ほんまによくそこまで話がふくらませられるなって
この話も、振り返ると、冒頭部分にもう事件の記事は載せられてて、向かう結末が分かってるのが、面白いところなのかも。
いろんな登場人物の視点から描かれるっていうところでは伊坂幸太郎味がある気もしたけどこれはまた別物と気付かされた。
面白かったね

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2025年12月10日

Posted by ブクログ

冒頭の児童ポルノのニュースでは、容疑者たちがただ気持ち悪いという印象しかなかった。
けれど最後まで読むと、世間の偏見によって事実を見ようともせず、最初から決めつけていたことに気付かされる。
読む前と読んだ後では、容疑者に対する捉え方がまったく違い、自分はそもそも理解しようとすらしていなかったのだと思った。
だって児童に興奮するとか気持ち悪いし…と私自身も思ってしまう。
そういう“多数派の感覚”を当たり前のものとして押しつけるから、マジョリティの外にいる人たちは生きにくいのだと実感した。

また、ダイバーシティという言葉は会社でもよく耳にするけれど、それによって救われる人がいる一方で、傷つく人もいるのかもしれない。
特に小児性愛のように社会に受け入れられない嗜好は、マイノリティにすら含まれない。
性癖は変えようがないのに、その事実だけで嫌悪される世の中で、生き続けるのはどれほど苦しいのだろう。
行為や犯罪に向かわないなら罪ではないはずなのに、“そういう嗜好がある”というだけで否定される。
マジョリティは簡単に他者を疎外してしまう、その指摘はまさにそうだと思った。
そして、マジョリティに属するからこそ、自分を持たず、考えることを放棄してしまうという指摘にも納得した。
私も、自分がマジョリティ側にいることにどこか安心していたのだと気付かされた。

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2025年12月09日

Posted by ブクログ

自分の思う正しさを相手に押し付けず相手の思う正しさを否定せず寛容になる。
相手を変えることはできないから
相手を受け入れられる自分になって
お互いに違いを認め合える優しい世界になったらいいな。

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2025年12月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

当たり前と思っている事が他の人にとっては理解出来ない欲がある。その事で1人悩み、苦しんでいる人がいるのかもしれない。仲間を見つけて理解し合う事、全ては理解出来ないかもしれないけれど話し合うことでどれほど悩んでいた心が軽くなるか、正欲を通じて知る事ができた。私自身も悩みを人に話す事時は勇気がいる。自分が悪いと攻撃されるのではないか、呆れられるのではないか。。しかし話した事によって自分の期待の反応や返事ではなくとも、話した事によって少しスッキリする。佳道や夏月の悩みに比べれば、私の悩みなんてちっぽけだけれど、1番の悩みを共感できる間柄は、他人には計り知れない、家族よりも強い絆で結ばれていると感じた。
啓喜は妻の話に向き合わず、息子が不登校という事実にも向き合わず、常に自分が正しいと考えている。誰しもそのような自分には都合が悪いことに対して向き合うことは怖いし辛いが、逃げてばかりではいけない。家族だからこそ協力して前を向き、どうすれば息子が最善な方法で生活できるのか、考えるべきだった。私自身も考えさせられる本だった。

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2025年12月07日

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