あらすじ
自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繋がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。(解説・東畑開人)
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朝井リョウ節全開
この作品について感想を書くこと自体が浅ましいとすら思うほどに心まで響きました。
登場人物の心情描写、言語化能力、小説としての構造どれもが素晴らしいです。
まさしく読む前の自分には戻れない一作です。
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私達は私たちの「正しい」の中を生きていて、それを共有し合うことが社会で生きることになる。そんな社会の、まるで「当たり前」とされてるルールを当たり前なんかじゃなくない?当たり前って片付けて気持ちよくなってんじゃねーよと言われているような気がした。
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多様性を認める言葉って口では簡単だけど、本当に本当に難しい言葉だと感じた。
世の中には自分の想像を超えた趣味趣向の人がいる、受け入れるか受け入れないかは別としてそれを認識しておくだけでも世の中の解像度が上がるんじゃないかと思えた。
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様々な登場人物の視点からの展開だったが、途中から登場人物同士が関わっていてとても読みやすかった。
諸橋大也の箇所の「多様性の繋がりを求めていても、大勢の前で繋がれない」というところが、確かに交流はしたくても誰にもバレずに繋がりたいと思うことはあるなと感じた。
諸橋大也と神戸八重子の合宿当日朝のやり取りは印象に残った。
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世間で言われる多様性も所詮マイノリティの中のマジョリティでしかなく、世界には自分が想像もできない想像したことすらない受け入れ難い人もたくさんいて、結局多数派を基に社会の仕組みが自然と出来ていることを実感した。多数派でいるとそのことにすら気付くきっかけも中々ないなと思ったのと、自分も想像すらできない世界の方が多いこと、その想像力を忘れないようにしようと思った。
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自分にとっての当たり前がマジョリティであることを何の違和感もなく享受し、知らず知らずのうちにマイノリティを生きづらくさせる社会の構造が、自分自身に深く染み付いていたのだと感じた。
自分が正しいと思うことでも、それを間違いだと感じる人は必ず存在する。だからこそ、自分の価値観や先入観にとらわれず、広い視野を持って物事を考えられる人間でありたいと思わされた。
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もう4年前くらいに読んだ本で、完全に内容を記憶しているわけではないが、自分の常識が覆されるような内容だった。自分の生きやすさは誰かにとっての生きづらさかもしれない、という観点が埋め込まれた作品で、忘れられない。
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『正しい』とか『普通』ってわからなくなりますね。
わからないから『確認』をして『安心』したくなる。
社会から逸脱していないかを。あいにく私はそのあたりの感覚が鈍いようで、相手に理解されないだろうことでも平気で話せてしまいます。
例えばそれは暴力で、常に頭の中で繰り広げられていることを現実で起こしてしまうのではないかといったものです。本書の登場人物たちからすれば、それは『普通側』にいるから話せるのだと言われてしまうのでしょうね。
さて、本書を読んで印象的だったのは『正義の押し付け』です。私がそれぞれの登場人物に対して、そういう考え方もあるんだ〜と思う一方で、私の正義を押し付けてイライラしてしまったからです。
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多様性という言葉の見方が変わる。多様性とは、みんなを理解して受け入れようってことではなく、自分には理解できないことがあると知ること。
理解できないことは悪いことではないから、そこで相手を排除したり線を引くのではなく、違いを持ったまま語り合おうとする姿勢が「全然違う頭の中の自由をお互いに守る」ことにつながると思った。
読めば読むほど正欲がわからない
違う世界線の人たちが読み進めていくうちに交じり合い、夢中で読み進めた。
多様性から外れる人たち…
この本を読むまでいかに自分の考える多様性が狭いものだったか思い知らされる。
読み終わっても多様性とは?正欲とは?わからない。もやもやが残る。
そのもやもやこそが正しい理解なのかもしれない。
最後の解説がこのもやもやを上手に言語化してくれてとてもよかった。
朝井リョウさんの書く文章が好きで新作が出る度に買っていますが、この作品は1位2位を争うくらいに好きです。LGBTQという言葉が世の中に知れ渡ってきた昨今、言葉を知っていると言うだけで本当の意味では理解出来ていないのでは?と考えさせられる作品でした。
SNSで話題になっていたので読んでみた。
それぞれの人にとっての正欲とはなにか、考えさせられる。
多様性とは何か、についても。
もう時間空きすぎてほぼ忘れてるからまた読みたい。
多様性という言葉は、魔法のように全てを見通すことのできる美しい言葉ではない。けして交わることができない他者がすぐ隣にいるという絶望を突きつけるための、恐ろしい言葉だ。
正しさについて
自分の中で正しいと思っていたことが
周りから見てそうではないこともある。
過去の自分と重なる部分があり時間を忘れて読んでいました。
多様性という名の暴力
普通の家庭を営んでる自分でも、あまり大っぴらにできない性的(嗜好)志向があったりする。
それは、家族に話しても理解されないし、たまに酒の席で漏らしても奇異の目で見られるだけだったりする。
世の中には、そういうモヤモヤを抱え続けて生きてる人も少なく無いんだと思う。
そういう人からは、そんな目新しい内容ではないのだけど、わかりやすいルートを辿ってきた人たちからしたら新鮮なんだろうな…と(と、書いてる自分も久々に★5をつけているのだけども)
近年、多様性のもとに、市民権を得てきた様々なマイノリティの人
それは、歓迎すべき事なんだろうけど、どこかで疑問を抱き続けてきた自分にとって、朝井リョウさんの本作は答えの1つになると思う。
ただ、本書で描かれるマイノリティの人は、そこまで唾棄すべきものではないと思うが、〇〇のようなものに性的興奮を覚える人もいるんだなぁ…というのは驚いた。まぁ、木の枝に興奮する人もいるし、世の中には想像もつかない人も沢山いるのは知っているのだけど。
分かりやすい例でいえば、小児性愛。たとえば近親相姦。
これを多様性と認めるか、それとも唾棄すべき性癖として嫌悪するか。
これらには否定される理由がある。それも理解した上で、創作物を楽しんでいる人たちを安全な場所から叩く人はどうなのか。
これは良し、これはダメと、多様性という言葉に条件をつけている現在に一石を投じてくれた本書は良い問題提起をしてくれたと思う。
本作を通じて、自身の考えてる多様性を、一人一人が真剣に向き合うキッカケになっているのは喜ばしいし、多くの人に考えてほしいテーマだと思う。
多様性の外側にある多様性を知る
他者を理解するって本当に難しいことですね…
多様性に含まれる多様性の中でしか生きて来なかったのだと思い知らされました
他者を知る知見を広げるために全人類に読んでほしい……
夏月の最後の言葉大好きです。
Posted by ブクログ
なかなか微妙な心情や感性の機微が感じられる
あえて批判的に読むとすると、少しマイノリティからの視点に偏り過ぎてはしないだろうか?
マイノリティからの視点としての「正しいもの」に対する欲よりも、現代において提示すべきは、マイノリティではない「普通」の人の誰もが持っている歪さからの視点としての「正しいもの」に対する欲ではなかろうか?
あくまで私見であり、作品の価値を減殺はしないが
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文章にするのが難しいけど、心理描写の表現の仕方が嫌な感じで大変良い。
読んでいると、普段の自分の人への見方を綺麗に文章にされている気分で凄く刺される。
うー、辞めてくれ~…となりながらも読み進めてしまった。
内容に関係ない感想になってしまった。
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社内でDEI推進をやってる身からすると、ドキッとする、改めて考えられされる内容だった。
人にとっての正しさと自分にとっての正しさ。
横浜の地名がいくつも出てきて嬉しかった。
Posted by ブクログ
多様性が身近に感じる世の中になってきたけど、自分の近くではあまり多様性を感じたことがなく、どこか他人行儀に感じていました。
でもこの小説を読んで、もしかしたら他人から見た自分はマイノリティーで変わってる人と思われているのかもしれないと考えさせられました。
読んでいて苦しくなるシーンもあったけど、読み終わった後はスッキリした気分になれました。
Posted by ブクログ
正欲を読み、多数派はそれだけで少数派を排除し、多数派であることの安心感、少数派であることの生きづらさに対して理由をつけてくれたような気がした。私は、同調圧力が苦手で、みんなが良いというものが良いということに対して疑問をいだくことがあるが、多数派でありたい人は不安なのだと理解することができた。不安だから周りに確かめて一緒であろうとする。その方が楽だからである。
みんな正しさを求める、正欲を持っているのだ。
東畑開人さんによる解説の、「大人になるためには性欲を引き受けなければならない。性欲はときに他者を深刻に傷つけ、自己を損なう。それでも、性欲を恐れていては、他者を愛することも、自分を愛することもできない。私たちは動物でもあれば、人間でもある。この矛盾を引き受けて、何らかの形でやりこなせるようになっていくことが成熟である。」
この解説はとても腑に落ちた。
私は25歳で今まさに、これらの悩みを悶々と考えていたが、白黒な思考ではなく最適な位置に居続けることがとても重要なのだと学んだ。
今後仕事、恋愛、結婚、出産など悩むことは尽きないが上手くやっていくことが大切だと思って、毎日楽しく生きていきたい!
Posted by ブクログ
多数派であるということに安住し自分という個体について考える機会に恵まれないのは、一つの不幸でもあるのかもしれない。
なんか浅い言葉では語れない小説
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正欲と性欲
マジョリティが型に当てはめる性欲は
マイノリティが思う正欲ではない
とても深く難しい作品だった。
「明日死にたくない」が深く刺さった
何度も読み返して自分なりの哲学として取り入れたい作品
Posted by ブクログ
他者との関わり、自己開示、生きること、人間の根底にあるものについて色々と考えさせられた。普段生きてる社会の中で誰にも理解されない側の人間だと自分を認識している。でもそれがどの程度なのか。死にたい気持ちを持ったことがある人間ではあるが、私は佐々木が冒頭で話す人間の枠組みの中にいる程度なのかもしれない。八重子のように手を差し伸べようとすることや自分の気持ちを提示することは欲の発散だろうか。それでも今1人でいる人間を救いたい1人にさせたくないという気持ちが芽生えることは1人の存在を無視したり、否定するよりよっぽど考えられた選択だと思うし、私もそうありたいと思ってしまう。
Posted by ブクログ
異常性癖が原因でマイノリティに属している人達の物語と受け取った。
彼らはいかなる日も自分をジャッジし、絶望しながら生きてきたその息苦しさが痛いほど伝わってくる。
「自殺の方法を一度も調べたことのない人の人生は、どんな季節で溢れているのだろう」という文はあまりにリアルすぎる。
ラストの夏月の伝言は本作の希望そのものだ。
逆に自分自身と向き合う機会のなかったマジョリティ側の人間の末路は悲惨なもので、実際にありそうな転落例だった。
多様性という言葉には時に上から目線な空気が纏わりつく。
実際、作中人物のように響かない人、煩わしいと思う人も少なくないだろう。
多様性が魔法のワードでないことは留意したい。
正欲がマジョリティ側の唱える「明日死なないこと」だけではなく、「気持ちを共有できる仲間との繋がり」でもあるのは本書を通して感じた事だ。
ただ後者はどこかの誰かの都合や、犯罪行為によりいとも簡単に踏みにじられる。
規制、言論統制へと舵を切った現代はひどくつまらなくなり、人の居場所を奪い続けている。
Posted by ブクログ
これまで、自分たちの性癖が外に知られることのないよう、息を殺してきた人たちが、同志とつながるために、ほんの少しだけ紐を解いた。その一瞬に通報されてしまったことが、何とも無念。
恋愛の話は、人との距離を縮めるための便利な話題だけど、「異性を好きになる」という前提で話をするとそうでない人を傷つけてしまうリスクもあるね。
Posted by ブクログ
ずっと思っていたことを最後の方で言ってくれてよかった。自分がいつマイノリティになるのかもわからないのに、自分ごとに思わず自分はマジョリティだからと、たかを括っている人たちへの不快感を一冊にした感じ。
時代の流れで倫理観もマジョリティの概念すらも流動的に変わり、自分が一体どんなタイプのマイノリティになるのかなんてコントロールもできない。例えば事故で脚を失ったら、その日からマジョリティの中からこぼれ落ちる。極めてランダムな要素で構成し得る。
多様性には限界があって、公に認められた価値観に一つずつマイノリティの思想を加えても、それはただ境界線を引き直しただけで、そのすぐそばにまた新たなマイノリティが生まれ続ける。予測不可能な世襲で行われる線引きも、自分はあくまで線を引いている側なのだと信じ切る人々が、極めて傲慢だと思う。
とこの本を読んで思った。
途中でキモすぎて読む手が止まった。特に検察のパパがキモい。実は真ん中あたりをキモすぎて一部読み飛ばしてる。
検事はその内時代の流れのマジョリティからこぼれ落ちる側なのかもなと思った。
Posted by ブクログ
社会の規範はマジョリティ側、もしくはその社会の一部で作り上げられている。
現代社会でトレンド的に多様性が安易に取り扱われてしまうと、いつの間にかマジョリティによって、「多様性とはこういうもの」という一定の範囲がぼんやりと輪郭付けられてしまう。
そういう社会の一面。『社会とは、究極的に狭い視野しか持ち合わせていない個人の集まりだ。』ということを忘れて、"多様性"について語ることは、そこに当てはまらないモノを排除、隔離してしまいかねない。
Posted by ブクログ
理解し難いものをどこまで受け入れらるのか、そもそも受け入れる必要があるのか、当事者たちも本当に受け入れて欲しいと思っているのか、、と色々と考えさせられました。他者を理解しようとする行為って大事だけど、それ自体が偽善だし差別だし、でもそれが社会なんですよね。
ただ物語としては、◯に性的に興奮するという以外にも、ぶっ飛んだ性癖のレパートリーがもう少し欲しかったなと、そこは冷静に思ってしまって、面白さのピークが中盤で終わってしまった感がありました。
Posted by ブクログ
この本は私にとって難しく感じた。ただ、自分の考えが必ずしも正しいものだと思って相手に話すべきでないと思った。相手がどう思うか考えるべきだ。相手を知って話さないといけないと感じた。だから八重子の言葉はとても響いた。
Posted by ブクログ
うーん、水よりも良い欲の矛先は無かったのかな
水への欲求を満たすオカズなんていくらでも自分で作れると思うし、そうしない理由が「1人では動画を撮るのが難しいから」なのはいまいち納得できなかったな
自分で撮らないにしても、例えばダムとか、調べればいくらでもネット上に資料が転がってそうなもんだけどね
というかそもそも映像にする必要もなくて、家で一人で水風船で遊んだっていいと思うし
ていうのがあって、わざわざYouTuberにリクエストするってのがあまり理解できなかったな
小児性愛者×水フェチ、の人がそうするのは十分理解できるんだけどね
こういう物語作りたい!って思った後に、性欲の矛先を何しよう?って考え始めて、あまりいいのが思い浮かばなかったのかなあ
私にとって八重子はストーカーまがいのことをしてしまうようなすごく気持ち悪い女だったから、そんな女に絆されかけてた大也のことが信じられなかった
マイノリティに属する人間が、自分ばかりが物事を深く考えてる!とか思いこんでるけど、結局はそいつらだって浅いんだよ、って示したかったってこと?
ならいいんだけど、どんな人だって分かり合うことができるんです✨️みたいな綺麗事ストーリーにまとまりかけた気がして嫌だったかも
Posted by ブクログ
評価:3.9
めちゃめちゃ考えさせられる本。社会が形成した正しさを納得しなくても受け入れて生きるのか、それともはみ出しても貫いて生きていくのか。何が正しいかたちなのか考えされられた。
Posted by ブクログ
最初の数ページ出てくる『明日死なないために』というフレーズになるほどと思わされ、続きが気になりじわじわと読み進めました。
本の帯には『読む前には戻れない』と書いてあったのでどんなふうに自分が変わるのかとワクワクしていたのだけれど、特に目新しい考え方はなかったです。
普通を生きられない人も普通に生きてる人もそれぞれ悩みや譲れないものがあって、その中で誰かと手を取ったり誰かを傷つけたりしてて、という話。
読みやすい文でサクサク読めたのは良かったかなと。
Posted by ブクログ
私には難しく過ぎました。周りにいた知り合い、友人の嫁、同級生、部下、立ち飲み屋で知り合った方、性の正はない事を理解させてくれた方たち「そうか、そうか、大変だったな辛かっただろう。」わかった振りみたいなん恥ずかしいよね。分け隔て無く付き合える俺、俺にだけ、カミングアウトしてくれた。やっぱり俺、良いやつなんだなと結局、自分の事が好きなだけだったんではとか悩んでしまいました。私は小説は読んだ瞬間から如何なる作品も自分のストーリー、感性と置き換えて感じる事を幸せと思っています。それは例えで違うかも知れませんが、ラーメン屋さんの大将が命を削って作った一杯でも読み手、あ、ラーメンは食べ手でした。食べた瞬間、幸せを感じるか、或いはそうでないかは傲慢と言われようが受け手の感性、味覚に任せるべきと考えています。然し乍ら、本作品は非常に難しい。ただ、少し共感出来たのは部分もありました。ただ、内容は匿名でも書けないんですよね、だから悩みなんだよな。