【感想・ネタバレ】正欲(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繋がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。(解説・東畑開人)

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Posted by ブクログ

「多様性」という言葉が溢れる現代社会へ、これは鋭利な刃物のように突きつけられる強烈な問題作である。
物語は、性に対して異質な欲求を持つ二人の男女と、世間の「普通」の中で生きることを強いられる検事や主婦といった複数の視点から展開する。一見、交わることのない彼らの人生が、ある事件をきっかけに絡み合い、読者はその度に、自分が立っている「正しさ」という名の不安定な足場を揺さぶられることになる。

作者が問うのは、社会が承認し称賛する「想像できる範囲の多様性」と、そこから排除される「不都合な多様性」との境界線だ。人は、自分の価値観から外れるものを差別し、排除することで、自分の「普通」や「正しさ」に安心を得ようとする。その無意識の差別意識や同調圧力が、いかに暴力的な「加害者性」を孕んでいるかを、本作は冷徹な筆致で描き出す。

そして、その根源にあるのが人間の「性欲」であるという視点が、この作品を唯一無二のものにしている。性欲が人間の根幹にあり、それが価値観そのものを形成しているならば、価値観は無限に多様であるはずだ。
読後、私たちは、安易に他者を「理解したつもりになること」の傲慢さ、そして想像力の限界を知ることになる。目の前の人間を、自分のものさしで測らず、安易なレッ釈を貼らずに、ただその存在を「積極的な不干渉」として認めること。この難しくも切実なテーマを投げかける、気迫に満ちた傑作である。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

本屋大賞ノミネートやタイトルの興味から読んだ。多様性という言葉を推進しながら、暗黙の雰囲気や価値観がある世間を再度認識させられる本だった。

人間として世間一般から「普通」「正しい」と思われている嗜好だけが全てではないよなと自分ではわかっているつもりでいる。マイノリティの嗜好が認められない世界の様子が描かれる。そして自分もその世界の一員になってしまっていることを自覚する。頭をガツンと殴られるような感覚もあった。

個人的には、「普通」のルートから外れることを心配する検事が印象に残った。自分に子どもができたとき、多様性や個人の意思尊重という言葉で、子どもがやりたいことをどこまで認め、応援することができるんだろうか。

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2025年12月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

正欲とは正しい欲を意味する
しかしその正しい欲は、社会という中において必ずしも正しい訳ではない
社会において一般的に普通と考えられている欲求が、一部の人間の居心地を悪くさせ、孤立させる事にもなる
しかしどのような欲求も許される訳ではない、社会的秩序を保つ為に規制もされるのだ
正欲は過剰と不足の間でブレ続けるものであるという言葉に最後納得がいった

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2025年12月06日

Posted by ブクログ

再読。”多様性”が注目される時代にまた違う視点を投げかけていて、読む度にモヤモヤした不思議な気持ちになる。読み終えた後、それまでの自分の物の考え方や捉え方に「?」が出てきて、キャッチコピーにあるとおり【読む前の自分に戻れない】気がした。
多様性に寄り添う考えが大切なことは疑わないけど、でもそれが"正義”で"社会貢献”のように安易にもてはやすような添い方は傲慢なのかもしれない、とも考えさせられる。何が"正しい”のかその尺度は何で決まったのか?、と混乱して、怖くすらなる。

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

正欲を読み終わって、今までの価値観が少し変わった。
読むまで正しい欲とはどのようなことか全く検討がつかない自分であったからこそ、より価値観の違いについて感じるものが大きかったのだと思った。
蛇口から噴水のように出る水に興奮することが、あまりにも身近に感じることがなかった分程遠い価値観のように感じていた。しかし、実際に生活している中でも、同性愛者がこんなにも近くに、またこんなにも多くいるということがこの本を読んでいる最中に知った。
そこから、程遠かった価値観がすごく近くにあるようにも感じた。その人にとっては、それは性欲であり、それをあまり理解できていない自分にとってはそんなが無いと決めつけていた正欲であったと感じる。誰しもがそれぞれの性欲と正欲を持っており、それを強引に結びつけることはマイノリティの人達にとってはとても生きづらいことなのだろう。
だからと言って、全員の価値観を合わせることは不可能であり、そんなことは望むものでは無い。
だから、それを知り、理解で収めることだけでそれ以上でそれ以下でもなく、十分なのかもしれないと感じた。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

「多様性とは、都合よく使える美しい言葉ではない。自分の想像力の限界を突きつけられる言葉のはずだ。」

この表現が凄いしっくり来た。
自分とは違う何かに、自分達を認めろと主張された時、多様性という言葉を盾にして本来の自分を隠している人が多く居ると常々感じていた。
何も考えず、差異を認める事で自身もこの世界の進歩に貢献していると考えているのだろうか。
それとも、新しい価値観に対応していかないといけないと躍起になっているのか。
いずれにせよ、多様性という言葉を使う事で、その人達は自分達が正しいのだと信じて疑わない。
多くの人間が自分の信じる正しさを持ち合わせていることで、正しさ同士が反発するのは自然な事だと私は思う。だからこそ、多様性という言葉で逃げることは正しくないと感じる。

だけれども、こんな考えも自分の正欲の表れであるということに、打ちひしがれる。どう転んだって正欲から抜け出せない。そんな自分も嫌になる。
それでも、こうして悩みに悩んで頭の中が堂々巡りしていく感覚が凄い好き。結論が出なくとも自分の正欲は存在するし、それに従ってこれからも生きていく。正しくあろうとする自分を正しながら生きていく。

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2025年12月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2022.7
朝井リョウ「正欲」

多様性、という言葉はなんだか、温いな、という感覚は持っていた。具体的にどうだと話せるほど考えていたわけではない。なんていうか、愛、とか、人生、とかそういう類の、安易に口にして安易に定義してしまわないようにしないといけない要注意ワードみたいな、そんなふうに捉えていた

正欲は、主に"正しい命の循環から外れた"いわゆる"マイノリティ"の視点で描かれた、現代社会のある事件に関わる人々の話で、それぞれの背景を知った上で読む八重子や田吉の言葉の軽さ、浅はかさ、愚かさと言ったらない。

ただ、彼らは"多様性"という言葉を、(真の表現は忘れてしまったが)"マジョリティ側が定義した、多数派が想像できる範囲のマイノリティ"という形で受け取り、行使している。本当は、"多様性"は、"この世界に在る計り知れない多くの性質"なのだろうから、定義なんてできないのに。だけど彼らのような一見勘違いにも思える軽薄な言動は、非難されるものではないと思う。彼らは、たぶん、知らないだけだから。

世界が広いこと、見えるものだけが全てではないということ、明日生きているという保証はどこにもないのに、明日も生きたいという前提の社会があること、分かり合えない人がいること
それらを認識した時、私はああ自分はどう生きればいいのだろう、と途方に暮れる。自分の周りに"多様性"が果てしなく"在る"ことを知ってしまったら、途方に暮れ続け、自分がどう生きるかを考え続けるしかないのではないか、と思う。社会の中で生まれて死んでいく自分に、多様性を語り、認めるなんて権利はないのだから。

私は、言葉をある程度好きに使えるようになってからというもの、自分の思考を相手にぶつけて、自分の知っていることや経験や思考の中で相手の輪郭を捉えて知ろうとして、なのに投げたボールが返ってこないことがあって、もやもやしていることがある。よくある。

"分かり合えない"を受け入れることが、難しいと感じているのだと思う。
相手のことを、分かったつもりになりたい。
それで自分の言葉で、相手の心の深いところに届く言葉で、話しかけてみたい。
そんな欲求があって、ずっともやもやしている。
でも全然うまくいかない。大人相手でも、子ども相手でも。

水野良樹さんの大好きな言葉がある。
"人間はねそう簡単には分かり合えない。でも分かり合えなくてもいいってほど強くないんですよね。"

八重子と大也の間に飛び交った言葉が、これだった。
分かり合えないもの同士の、寄り添い方。
そんなん、一生考え続けたって、正解には辿り着けないのに、もうきっと考えずにはいられないだろう。

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2025年12月03日

Posted by ブクログ

すごい、引き込まれた。こんなに色々な人達の話が繋がっていくことにも圧巻だし、内容も今まで考えたことなかったな〜。

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2025年12月03日

Posted by ブクログ

岡山に住んだことがあり現在横浜にいる身としては、本作の舞台は非常に身近で、臨場感に溢れさせてくれたように思う。
ページを捲るにつれて全容が見えてくる。早く読み進めたい。でもこのまま読み進めてしまって良いものなのか。そんなことを思ったのは初めてだった。
刺さるかどうかは読めばわかる。まずは読み始めて欲しい。

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2025年12月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

多様性ってポジティブなイメージの言葉と捉えていたけど読み終わった後には、なんだかおめでたくてずるい言葉だなあと感じるようになった。正欲を読んで水に興奮する人がいるってことを初めて知った。この世界には私が想像してもしきれないくらいのことが沢山あるんだと実感した。どんな人に対しても差別のない言い方や態度をとろうとすると何もできないなと思った。だからこそふわっと、一見誰にも害のなさそうな「多様性」って言葉が生まれたのかな。ふわっと人と関わることしか許されない世界は寂しいけどそうするしかない。みんなに優しいは不可能なんじゃないか。
精神科で働く私にとって、寺井が窃盗癖のある被疑者の治療プログラムを見学するシーンは一番心に残った。罪を起こさないように社会から隔離することは簡単だけど被疑者のためにはならないしその場しのぎなだけ。越川の言っていること確かに分かる。けど働いてる身としては寺井の考え方になってしまう。実際問題難しい。
生まれた時から人と違う、自分は少数派の人間でましてやそれを共有できる人がいないというのはずっと暗闇にいるような感覚で、それを「地球に留学しているみたい」と表現していたのが凄すぎる。


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2025年11月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

p.99
自分がいかに世界に対して遠慮がちかということを思い知る。こんなことしたら迷惑かもしれない、相手が困るかもしれない、眉を顰められるかもしれない。どんな行動を起こすにしてもまずそう考えてしまう自分が我ながら鬱陶しい。
p.335
送られてきたURLに、ひとさし指で触れる。ノックをするときの何百分の一の力しか必要ないのに、その窓はいとも簡単に開いてしまう。
p.427
三分の二を二回続けて選ぶ確率は九分の四であるように、“多数派にずっと立ち続ける”ことは立派な少数派であることに。

面白かったです。一気読みでした。最初は人間の欲望の凄惨なドロドロ系かと思いましたが読み終わってみると、意外と爽やかな気分になりました。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

みんながみんな、この本読んで感化されて、メジャーな考え方になっちゃったら、一体どうなっちゃうんだろう?と、うすら寒くなってしまった…映画化もされて話題にもなっているし、受け売りの御託を並べて自身や社会に言い訳する方も増えるかもね

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

ただただエグい。
理解出来ていないのに理解したつもりになって「分かるよ」と伝える事の残酷さ、無責任さ。どうしたらこんな小説書けるんだろう。また読みたいと思うのに感情がまた激しく揺さぶられるのが怖くて読めない、、、

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2025年11月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

朝井リョウさんの紡ぐ言葉が好きだ。
物語としての展開はもちろん、登場人物一人一人の心理描写、発言に引き込まれた。

自分と同じ価値観の人は存在しない。だからこそたくさん経験を積んで、想像力を働かせて、相手に寄り添える人間になりたいと思っていた。
でも自分の想像の及ばない世界がまだまだ無限にあるって思い知らされた。

今回の性癖の観点とは全く違うけど、私は世間一般的なレールには乗れなくて、いつまでこの孤独と1人で戦わなきゃいけないんだって思っていた。
夏月の年末年始のシーンから読む手が止まらなくなった。
私ももう何年も季節を感じていない。クリスマスもお正月も苦手だ。世界は一緒に過ごす相手がいる人達に向けて動いてるって感じてた。
そこに追い打ちをかけられて全部嫌になったことが私にもあった。

重たかったけど、私には必要な物語で、この作品と主人公達に出会えて良かった。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

リビドー、つまり人間の行動となる根源的欲は人それぞれ。だがしかし行きすぎる欲望は危険だと考え、無秩序な欲は制御される。これが正欲。
多様性の時代が謳われているが、それは正しい側の人間が想像できる範囲内で、マイノリティを受け入れてあげるよと偉そうに謳っているだけ?
自分が想像する範囲にとどまる時点で正欲だ。正欲を批判するのも、受け入れるのもすべて正欲。
難しい。

《自分の想像力の及ばなさを自覚していない狭い狭い視野による公式で、誰かの苦しみを解き明かそうとするな。》

この小説を読んで、特殊性癖の有無に関わらず、他人のことなんか分かるはずがないと思った。分かろうとするなんて傲慢かもしれない。
自分の中の正しさでしかやっぱり私も判断できない。考えられない。
はなからわかり合いたいなんて思わない方が良いのかもしれない。悲しい意味じゃなく。
少し世間の見え方が変わる面白い小説でした。

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2025年11月26日

Posted by ブクログ

世の中の多様性の押し付けに非常に違和感を感じ、外では言えない感情を抱いて
ましたが、作中の登場人物が私の感じていた違和感をまんま言語化して語ってくれていたので非常にすっきり。作者の現代に対する切り口が非常に秀逸です。

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2025年12月06日

ネタバレ 購入済み

読めば読むほど正欲がわからない

違う世界線の人たちが読み進めていくうちに交じり合い、夢中で読み進めた。

多様性から外れる人たち…
この本を読むまでいかに自分の考える多様性が狭いものだったか思い知らされる。
読み終わっても多様性とは?正欲とは?わからない。もやもやが残る。
そのもやもやこそが正しい理解なのかもしれない。
最後の解説がこのもやもやを上手に言語化してくれてとてもよかった。

#泣ける #切ない #深い

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2025年02月08日

購入済み

朝井リョウさんの書く文章が好きで新作が出る度に買っていますが、この作品は1位2位を争うくらいに好きです。LGBTQという言葉が世の中に知れ渡ってきた昨今、言葉を知っていると言うだけで本当の意味では理解出来ていないのでは?と考えさせられる作品でした。

#タメになる

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2025年01月19日

QM

購入済み

SNSで話題になっていたので読んでみた。
それぞれの人にとっての正欲とはなにか、考えさせられる。
多様性とは何か、についても。
もう時間空きすぎてほぼ忘れてるからまた読みたい。

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2024年09月25日

cnm

購入済み

多様性という言葉は、魔法のように全てを見通すことのできる美しい言葉ではない。けして交わることができない他者がすぐ隣にいるという絶望を突きつけるための、恐ろしい言葉だ。

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2024年07月18日

購入済み

正しさについて

自分の中で正しいと思っていたことが
周りから見てそうではないこともある。
過去の自分と重なる部分があり時間を忘れて読んでいました。

#ダーク #共感する

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2024年05月02日

購入済み

想像していた以上に面白かった。
個人的には八重子が一番好きでした。
彼女の視点があるのとないのとでは大違いだと思います。

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2023年12月18日

購入済み

多様性という名の暴力

普通の家庭を営んでる自分でも、あまり大っぴらにできない性的(嗜好)志向があったりする。
それは、家族に話しても理解されないし、たまに酒の席で漏らしても奇異の目で見られるだけだったりする。
世の中には、そういうモヤモヤを抱え続けて生きてる人も少なく無いんだと思う。
そういう人からは、そんな目新しい内容ではないのだけど、わかりやすいルートを辿ってきた人たちからしたら新鮮なんだろうな…と(と、書いてる自分も久々に★5をつけているのだけども)

近年、多様性のもとに、市民権を得てきた様々なマイノリティの人
それは、歓迎すべき事なんだろうけど、どこかで疑問を抱き続けてきた自分にとって、朝井リョウさんの本作は答えの1つになると思う。
ただ、本書で描かれるマイノリティの人は、そこまで唾棄すべきものではないと思うが、〇〇のようなものに性的興奮を覚える人もいるんだなぁ…というのは驚いた。まぁ、木の枝に興奮する人もいるし、世の中には想像もつかない人も沢山いるのは知っているのだけど。

分かりやすい例でいえば、小児性愛。たとえば近親相姦。
これを多様性と認めるか、それとも唾棄すべき性癖として嫌悪するか。
これらには否定される理由がある。それも理解した上で、創作物を楽しんでいる人たちを安全な場所から叩く人はどうなのか。

これは良し、これはダメと、多様性という言葉に条件をつけている現在に一石を投じてくれた本書は良い問題提起をしてくれたと思う。
本作を通じて、自身の考えてる多様性を、一人一人が真剣に向き合うキッカケになっているのは喜ばしいし、多くの人に考えてほしいテーマだと思う。

#深い #共感する

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2023年11月16日

購入済み

多様性の外側にある多様性を知る

他者を理解するって本当に難しいことですね…

多様性に含まれる多様性の中でしか生きて来なかったのだと思い知らされました
他者を知る知見を広げるために全人類に読んでほしい……
夏月の最後の言葉大好きです。

#泣ける #切ない

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2023年09月13日

Posted by ブクログ

夏月と佳道の関係性が苦しいけど素敵だった。
性愛じゃなく、世界で唯一の理解者というパートナー。いなくならないから。
多様性という言葉は好きでも嫌いでもないけど、マジョリティ側が自分とは違う何かをそれに当てはめて、自分の中の正解にすることで安心するために使用する感覚は嫌いだ。多様性でもなんでも、私も押し付けが嫌い。
本当の意味でみんな違ってみんないい、どんな者があっても当たり前の世界を望むけど、欲と罪が一発触発の人達はどう生きればいいというのか。
ハッピーエンドじゃないところがよりリアルで、救いが無く虚しくなった。
それとは別で、朝井リョウさんは岐阜県出身。
ちょっと期待してたけど、いきなりチラッと岐阜が出てきて嬉しかった〜

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2025年12月08日

Posted by ブクログ

多様性とは何かを考えられた、世間で騒がれてる多様性では理解が足りない人たちが何人もいるということに気付かされた。正解はない

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2025年12月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 水への性欲。本作を読み終わった今ならば、その存在や、そういう嗜好を持つ人への嫌悪というものはない。しかし、それを言い出してしまえば、この世のありとあらゆるものごとへの性欲に対しても同じように臨まなければいけない。それは例えば、児童ポルノのような法律で罰せられる性欲に対しても
だ。
 社会正義とは何だろうか。1つの「正解」は、他者に迷惑を掛けないことであろう。それが異性愛だろうが、同性や児童、水、何に対しての性欲でも、それを満たすために既存の法律に触れる行為や、他者を不快にさせる行為は悪行である。ならば法律で児童ポルノが禁じられる小児性愛は、存在そのものが悪であるのか。水への性欲を持つことを知られ、他者を不快にさせればそれは悪であるのか。
 結局のところ、その「正解」は存在しなさそうである。他者に寛容であることが正しいとも言い切れたものか。
 しかし、この作品で揺らがなかった真実は、他者と分かち合うことの価値である。夏月と佳道が協力したように、そしてパーティをつくり悩みや性欲を共有したように、共感できる仲間がいることは、「明日、死にたくない」と思えることに繋がるはずだ。
 もう1つ挙げるとするならば、やはり素直さ、柔軟さである。寺井啓喜ができなかったことは、自分の正義を曲げることだ。人間誰しも、自分が正しいと信じたことは正しくあって欲しい。自分の正欲を満たすためには、自分が正しくなければならないのである。それが足枷となって、他者への理解をなおざりにしてしまったが故に、繋がりがなくなってしまったのだ。

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

多様性について考えさせられる。
場面が結構切り替わるので読むスピードが遅いと理解が追いつかなくなっていく。

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

自分≧寺井啓喜 
子供は二人とも不登校 妻は新興宗教+マルチまがいの健康食品
正しい事が悪だなんて微塵も思っていない
二人子供は自らの足で歩きだした 私には未だ心もとないと見えてしまうが それなりに歩んでいる
妻は思ったような現世利益が得られなかったのか それともただ単に飽きてしまったのかその当時はまっていた集団との繋がりは切れた が今度は別の美容関連グッズにご執心 常になにかにすがっていたいらしく始末に悪い
自分は寺井とほぼ同じように感じ 考え 言葉にした
今現在 妻と朝顔を合わせても おはよう とは言わない  なんなら家の中でなるべく見ないように努力している
私たちは二人も子をもうけたが 夏月と佳道のほうが遥かに強くしっかりと繋がっている  
思い知らされた?叩きのめされた? いやしかし負けてはいない まだファイティングポーズは取っているつもりだ
どうして星が5個じゃなかったか 帯に新垣結衣の写真があったから 読む前から夏月は新垣結衣でイメージが固定されてしまった 売りたい気持ちが裏目に

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

不安だから、多数決の多い方にいたい。それが正しいと信じたい。そうだよなぁ私の欲、つまり正欲なんてその人にとっての“正しさ”だけであるということをじめじめと描かれていた。

「自分とは違う人が生きやすくなる世界とはつまり、あしたの自分が生きやすくなる世界でもあるのに。」

啓喜のように世間の正しさ(のようなもの)を身近な人よりも気にしてしまいがちな私にとってはトゲが刺さったような文章。

「三分の二を二回続けて選ぶ確率は九分の四であるように、"多数派にずっと立ち続ける”ことは立派な少数派であることに。」

多数派でいることの方が立派な少数派…

こういう本を読んだときにうまく言葉にできない、言いたいことが言葉にも文章にもならない自分がもどかしい。からまた本を読む。

もう一度、数年後、読み返したい。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

朝井リョウさんの現代を生きる人の心の描写がリアルでドキッとする。
SNSとは真逆の見ざる言わざる聞かざる…
自分の孤独とどう向き合うか…自分ならどちらもほどほどにしたい。

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2025年11月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本当に圧倒された時に中々言葉が出てこないように中々感想が出てこない。

私は人より「〜すべき」、「目には目を」、というような思想が強い。人より”正欲”が強いのかもしれない。
この本を読んでいても啓喜の
「被疑者ではなく社会の視点から考えるべきだ」
みたいな言葉にそうそう、と思った。
被害者が苦しみ、犯罪者が平気で生活してるなんて納得できない。
一方で、多様性につけこんでマイノリティを遠回しに排除したり、ダイバーシティのせいでマジョリティの自由が奪われたり(男女兼用トイレ、女湯男湯etc.)
正義が複雑化してシンプルな倫理観が崩壊する現代社会はおかしいとも思う。
これも個人の尺度なのかなぁ、と思いつつも
正しいことと、間違ってること、は決めなければならない。

本作では水が性的対象だからまだ”美化”されていたけど、
例えば、幼児性愛を始めとする弱い者を狙う性的嗜好は許されるべきではないし、再犯するなら終身刑でも去勢でも◯刑でもするべきだと思う。

多様性だか、マイノリティだか色々言ってるけど、「うるせえ、黙れ。」
他人に迷惑かけたり、傷つけたらだめ。
結局は幼稚園で教わるようなシンプルなことを皆が守ればいいのに
なんでそれができないのかな?

世の中の子供達が守られ、幸せでありますように。

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2025年12月02日

購入済み

自覚

自分になかった考えを、この本を通して知ることが出来た。

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2024年12月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

当たり前と思っている事が他の人にとっては理解出来ない欲がある。その事で1人悩み、苦しんでいる人がいるのかもしれない。仲間を見つけて理解し合う事、全ては理解出来ないかもしれないけれど話し合うことでどれほど悩んでいた心が軽くなるか、正欲を通じて知る事ができた。私自身も悩みを人に話す事時は勇気がいる。自分が悪いと攻撃されるのではないか、呆れられるのではないか。。しかし話した事によって自分の期待の反応や返事ではなくとも、話した事によって少しスッキリする。佳道や夏月の悩みに比べれば、私の悩みなんてちっぽけだけれど、1番の悩みを共感できる間柄は、他人には計り知れない、家族よりも強い絆で結ばれていると感じた。
啓喜は妻の話に向き合わず、息子が不登校という事実にも向き合わず、常に自分が正しいと考えている。誰しもそのような自分には都合が悪いことに対して向き合うことは怖いし辛いが、逃げてばかりではいけない。家族だからこそ協力して前を向き、どうすれば息子が最善な方法で生活できるのか、考えるべきだった。私自身も考えさせられる本だった。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

正直途中までは読んでて、水に興奮するってことが意味わからなさすぎて気持ち悪って思った。
でも、読むのを辞めなかったのはどう終わるのかが気になってたしまったから、自分の想像できる範疇での内容じゃなかったから、この本を読まなければ知ることのなかった世界があったと知ったからだと思う。

八重子の行動があまりにもお節介で気持ち悪いって思ってたから、八重子が出してきた「繋がり」って言葉にすら嫌悪感を持った。でも、最後まで読んで、佳道と夏月が佳道と大也が誰にも理解されないところで、繋がれて良かったなって思ってしまった。明日生きたいと思ってる人が死ななくて良かったって。まあ、でもある意味繋がってしまった故に生まれる絶望もあるよね。もう繋がる前には戻れない、知ってしまったから。取調べで出た「いなくならないから」を聞いたとき、2人とも明日を生きたいって思ってる、良かったって思った。

物語を構成するうえで、こうしないと物語にならないってのは分かってるけど、どうしても思ってしまったことがある。
この本に出てくる登場人物たち、爪が甘すぎる。もし、私が水に性的指向があってそれを撮影したいと思ったら絶対人気のない山とかキャンプ場を借りるね。白昼堂々人が来るかも知れない公園でなんかやらない。だって、彼らにとって水への性的指向が他の人に知られたらいけないって考えてるんでしょ?多数派だって、人が来るかもしれない公園とかで白昼堂々セックスなんかしない。ホテルとか見えないところでする。それが普通じゃん。その普通さえわかってなかったってことなのかな?
さすがに公園に大人3人が水鉄砲持ってたら変な目で見られるに決まってんじゃん。まあ、それが理由で捕まったわけじゃないのは知ってるけど、人気のないところでやってたら、子どもと接触することなく、自身の望む性的指向の画像だけゲットして捕まることはなかったわけじゃん。
なんか、他人に知られてはいけないって思って自ら社会を拒絶していくくらい高い危機管理能力があるのに、そういうちょっとした危機管理の無さがもったいないって思った。この登場人物の性指向を知ってるからこそ、冤罪になってることがわかるし、捕まらなくてよかった人ってのが神の視点的にわかってるじゃん。だからバカだなって。社会から閉ざすくらい危機管理あんのに、最後の最後そこで踏み外すのが馬鹿すぎて、モヤモヤした。

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2025年12月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

昨今"多様性"という言葉を至る所で聞くが、少数派の人がそれをどのように受け止めているのか、の事例を学べたストーリーだった。世間では少数派と言われる夏希と佳道はとても生きづらそうであったが、最終的には2人だけの強固なつながりがあり、お互いがそれを信じて疑わないところに羨ましさを感じた。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

全体的に無気力なムードやテンションをブラさず登場人物個々の心情を書くのすごい。

逮捕される理由がやや強引な気がした(子供を通さなくても、水は自由に使えるだろうなと)
でも、視野が狭くなるのもまたリアルなのかも。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

朝井リョウさんの作品って感じがした。(当たり前だろ)

人の欲やその人にとっての普通はひとつではない。
誰かにとっての普通が、それが多数派の普通としたら、少数派の普通を排除して、ある人の普通を普通じゃないと言っていないか。そしてそれが人を傷つけていないか。(複雑)

普通が普通でないかだけで人を判断しては行けない。
みんな違うんだから。
好きなように生きればいいと思う。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

解説にもあるが、読みながら多様性について考えれば考えるほど出口がない問題ということが分かる作品。自分も世間がいう言葉だけの「多様性」に違和感を感じていた側なので、この本に登場するマイノリティの意見には共感した。そして共感すればするほど出口がなくて辛くなる。解説にもある通り「多様性を否定する多様性はない」から。

登場人物たちの葛藤する思いと、日常の雑音を同時に描写していたのは見事だった。孤独って日常が日常であるほど辛いんだよなと思った。多分この本を思春期の孤独な時期に読んだら救われる人は多いと思う。大人になった今読んでも、自分の潜在意識にある孤独感が共鳴して辛かった。

一方で「出口」を求めれば求めるほど、この小説自体にも疑問を抱くという構造になってしまっている。そもそもそんなにはっきりと、この人はこのジャンル、と分けられないものではないかと(異性愛者でも同性愛者になることはあるし)。自分はこの性癖だと一旦認めた上で、でもこっちかもしれない。。と葛藤しても良いのではないかと思ったけど、それはノーマルの人間の考え方なのか。。

あとマイノリティの性欲を発散させるために動画を撮る、というのも女性の自分にはあまりよく分からなかった。性欲の発散=AVの男性の発想では?と。女性だったらもっと違う発散のさせ方や発想の転換があるのではないかと思ったけど、それも自分がノーマルだから想像力が及んでいないだけなのかもしれない。。と、よく言えば考えさせられるし、悪くいえば永遠にモヤモヤする本だった。

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2025年11月28日

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