【感想・ネタバレ】正欲(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繋がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。(解説・東畑開人)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

満願からの欲望繋がりで正欲を読んでみました!朝井リョウさんは「何者」以来の2作品目。

最初、元号が変わるまでに何が起きるんだろう?ってずっともやもやした気持ち悪い空気が漂っているなーというかんじでした。元号が変わることで、何か今まで抱えていたものが新しい価値観や新しい考え方が変わるというそういうニュアンスなんですかね?→実際変わりませんでした……

視聴者の要望に応えたい子供YouTuberと自分の欲を満たしたいのかもしれないコメント投稿者。お互いの欲が満たされていると考えると…難しいですね。

人間の数だけそれぞれ考え方や欲望があるのだと思います。ただ、それを分類したときにマジョリティに当たる部分の人たちは、ただマジョリティに属しているだけで強い?と勘違いしている?そこに居座ることで不安な気持ちを払拭している?日本人は無宗教が多いけど、それぞれに宗教を持っている、というのはしっくりきました。明確な指針、例えば神のような、そういうものがない日本では、特にマジョリティに属しているという感覚だけで満たされる人が多くて、マイノリティの人たちを排斥することで、自らの地位を確固たるものにしているような、そんな感じなのでしょうか?まだまだ読み終わった後もモヤモヤでまとまっていません。

ショッピングモールの勘違いエピソードは、何回も強い言葉を読んで吸収していると、なんだか自分に言われているようで辛くなりました(泣)

途中から今まで二人称だった対象の人たちの視点になるの面白いけど、啓喜はずっと啓喜のまま。何か意味あるのかな?→啓喜は最後まで啓喜視点でした……

大也のことを思って言っている八重子は大也側からすると本当に身勝手で押しつけなかんじがしてて、途中までは目を背けたくなるほど噛み合っていませんでした。悲しかった……

みんな不安だから、自分がおかしくないかを確かめ合うようにしている!というのは納得しました。行動原理としては色々あると思いますが、自分の不安を解消するために、マジョリティである立場を守るために、他の人を攻撃してしまうのが人間社会なのかなと思いました。うん、まだ上手く言葉にできません。

面白かったので、他の朝井リョウさんの作品にも触れたいと思いました!!!

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2025年12月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分の視野の狭さを、想像力の低さを責められているような気分になる。正欲というタイトルの意味がわかったとき、その窮屈さに嫌気がした。正しい欲。社会にとってマジョリティにとって普通で正しい欲。
なぜこの本を読もうと思ったのかを思い出していた。帯にあった「読む前の自分には戻れない」というキャッチコピーだ。確かに自分はもう「多様性」という言葉を気軽に使えなくなってしまった。「多様性」という言葉の持つ正しさに気づいてしまった。
「多様性」とは、どこかの誰かが定めた正しさにみんな従えって上からもの言ってるのと同じなんだと思う。
みんな孤独で不安だから確かめ合いたい。分かってもらおうと話しかけて分かってもらえたらそれはお互いにとって普通で正しいんだと思う。
分かってもらおうと話しかけても分かってくれなかったとき、どちらかが間違っている。そのどちらかはこの世には決して分かり合えない人たちや社会が存在するという諦めを心に抱えて絶望するんじゃないか。重力に負けた顔をして。
正しいか間違っているか、ただそれだけで世界が変わってしまう。
人は想像できる範囲内でしか物事を考えられないという当たり前を思い出した。だからこそもっと知識を吸収たいと思った。もっと本を読んで世界を広げたいと思った。そうすれば分かり合える世界が増えるかもしれない。

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2025年12月10日

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ネタバレ

正欲とは正しい欲を意味する
しかしその正しい欲は、社会という中において必ずしも正しい訳ではない
社会において一般的に普通と考えられている欲求が、一部の人間の居心地を悪くさせ、孤立させる事にもなる
しかしどのような欲求も許される訳ではない、社会的秩序を保つ為に規制もされるのだ
正欲は過剰と不足の間でブレ続けるものであるという言葉に最後納得がいった

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2025年12月06日

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ネタバレ

多様性や、マイノリティについての1つの見解を知ることが出来る。

人は1人では生きられない故に、社会に馴染むため自分を押し殺しながら生きてる人は多い。もちろんそれは少数派とか関係無しに。

その中で、特に少数派について。今までマイノリティに対する正解が分からなかった。少数派の人達を何でもかんでも否定するのも肯定するのも違うような気がしてならなかった
そのある程度の正解が、この本と、最後にある東畑氏の解説によってある程度スッキリした

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2025年12月12日

ネタバレ 購入済み

読めば読むほど正欲がわからない

違う世界線の人たちが読み進めていくうちに交じり合い、夢中で読み進めた。

多様性から外れる人たち…
この本を読むまでいかに自分の考える多様性が狭いものだったか思い知らされる。
読み終わっても多様性とは?正欲とは?わからない。もやもやが残る。
そのもやもやこそが正しい理解なのかもしれない。
最後の解説がこのもやもやを上手に言語化してくれてとてもよかった。

#泣ける #切ない #深い

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2025年02月08日

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ネタバレ

1.水フェチってなんやそれ?!となるけど、おそらく読んでいる人に不快感を与えないフェチとして出してきてたギリギリの線だったのかな?
2.他人の性志向ってそんなにみんな気にするものなのかな?家族とか好きな人とかならギリ関係あるけどそうじゃない人は普段が普通なら関係なくない?(犯罪にならないならば)
3.なんだかんだ八重子が一番エグい。あれだけ大也に関わってきて、あっさり平穏な生活に帰っていく。自分の抱えてる闇、みたいな描写あったけどそれだって所詮は他人のこと。その対象としてみられた嫌悪感だけ。あ、そうか性欲の対象として見られた人間の描写っていう立ち位置でもあるのか。一般人としての立ち位置だけではなかったのか、このキャラは。
4.ゆうても自分は普通の人間なので寺井(検事)の言っていることが一番共感できる。人生のレール、ハズレないに越したことはない。

多様性を描いた話?それだけではないんじゃないかなぁ。もっとなにかあるはず。数年後にもう一度読んでみたい。

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2025年12月14日

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ネタバレ

【きっかけ】
生殖記を読み、ちょっと衝撃だったので、以前から気になっていて、評価も高め、映画化もされたということで、暗い気持ちになりそうな予感を押し殺して、Audibleで聴くことに。
【読後】
なんだろう、この救われない感じ…。作中の誰にも共感できず、最初から最後まで、とにかく苦痛でした。しかし、マイノリティをテーマに、ここまで重く、苦しい気持ちにさせられるというのは、やはり、凄い小説なのか。
コメントも書きづらい。作中の誰を、私が不快に思ったとして、それを言葉にすれは、知らずに誰かを傷つけてしまうのか?と、言葉を飲み込まざるを得ないような風潮が、「多様性」を許容する理想の世界なのかなぁ?だとしたら、悲しいし、皆が楽しくないよなぁ。生殖記の方が、まだ、救われない感は、少なかった。(語り手のせいか)むむむ…と、考えさせられた。特に、後半の八重子と大也のやり取りは、とても苦痛なやりとりなのに、引き込まれちゃったなぁ。なんなんだ。
【敢えて考察】
なんというか、「マイノリティ」を描くのに、やはり「性」からは逃れられないのだろうな。必然的に重くなるなぁ。「命」が生まれる営みに関わるから?特殊性癖を持つと、こんなに辛いことになってしまうのでしょうか。
「性」から離れれば、集団の中で「マイノリティ」を感じることは、比較的、誰もが経験したことがあるのではなかろうか?例えば「価値観」は、本当に多様と感じる。異なる「価値観」を否定しないという「多様性」なら、大賛成なんだよな。とにかく、異なる価値観を否定しないだけで良いのよ。「自分の価値観しか認めない人」とか「少数派の人を、あいつ変わっているよなー」とかいうのが、良くないのだろうね。それくらいのレベルなら、多くの人が、日常的に経験していることじゃないかな。「異なる価値観」を恐れる気持ち、それは、自分が「異端(マイノリティ)」かもしれないという不安につながる。確かに。でも、50過ぎたらむしろ、「変わった価値観」の方が、面白いじゃん!と前向きに受け止められるんだけどなぁ。若い頃だったら、決して、そうは思わなかったんだろうな。
小説としての構成や作りは素晴らしいのですが、あくまでも好みで★3にさせてもらいました。
【追記】解説を読んで…
臨床心理士さんの解説がメチャクチャ良かった。
八重子と大也の罵倒しあうシーンを、「正交渉」だと。人は、繋がりあうために、傷つきあいながらも、何度も何度も話し合う、終わらない「正交渉」を繰り返す。それが愛なのでは?と。
「正欲」と「性欲」の対比を考えて振り返ると、とても面白い。いかに、自分自身が「正欲」にとらわれ、時に相手を傷つけることを恐れているか、分かる。しかし、繋がるためにも、「性欲」と同様に、相手を認め、コントロールできるよう、「正熟」しなければならないと。うまいなぁ。
ということで、解説含め、★4に修正です。
解説読んでない人は、読んでみては?お勧めです。

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2025年12月13日

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ネタバレ

夏月と佳道の関係性が苦しいけど素敵だった。
性愛じゃなく、世界で唯一の理解者というパートナー。いなくならないから。
多様性という言葉は好きでも嫌いでもないけど、マジョリティ側が自分とは違う何かをそれに当てはめて、自分の中の正解にすることで安心するために使用する感覚は嫌いだ。多様性でもなんでも、私も押し付けが嫌い。
本当の意味でみんな違ってみんないい、どんな者があっても当たり前の世界を望むけど、欲と罪が一発触発の人達はどう生きればいいというのか。
ハッピーエンドじゃないところがよりリアルで、救いが無く虚しくなった。
それとは別で、朝井リョウさんは岐阜県出身。
ちょっと期待してたけど、いきなりチラッと岐阜が出てきて嬉しかった〜

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2025年12月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

高校卒業したとき?に初めて読んだきり、あんまりしっくりこんくてなかなか手を出してこなかった朝井リョウさん。22年の本屋大賞か。この表紙はよう見てましたよ本屋では。
ほんまはさ、桐島買うつもりやったのに、まさかの本屋に置いてないからどーしようと思って手に取ったのが今回の『正欲』
久しぶりによむ朝井リョウでちょっとビビってたけど、これは読みやすい。テーマは重かったけれど。
最近のご時世でみんなが良かれと思ってつかっている「多様性」。それってそんなに便利な言葉か?
正直そこまで考えを巡らせられてなかったなと思い知らされた。
ヨーロッパに留学してた経験から、LGBTQとか、ヴィーガン、ぺスカトリアンとかの食の嗜好性については、ある程度寛容やと思ってたけど、この本でスポットライトが当たるのは、もっと深いところ。異常性癖の人たちはどうしているのか?
水に興奮する とかいま考えても分からんし、分からんくて当然のものなんやろと。この作品の中でも、正常(とされる)人は、最後まで見当違いなままで終わっていったし、世間から見た肩身の狭さは変わらんままやったと思う。
わからんものはわからんくても対話は必要。かと、まさかの八重子にあんな熱量持って語られるとは
正直、「お前がそんな言えるんかよ」ってビックリ。

作家の扱うテーマって、ほんまによくそこまで話がふくらませられるなって
この話も、振り返ると、冒頭部分にもう事件の記事は載せられてて、向かう結末が分かってるのが、面白いところなのかも。
いろんな登場人物の視点から描かれるっていうところでは伊坂幸太郎味がある気もしたけどこれはまた別物と気付かされた。
面白かったね

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2025年12月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

当たり前と思っている事が他の人にとっては理解出来ない欲がある。その事で1人悩み、苦しんでいる人がいるのかもしれない。仲間を見つけて理解し合う事、全ては理解出来ないかもしれないけれど話し合うことでどれほど悩んでいた心が軽くなるか、正欲を通じて知る事ができた。私自身も悩みを人に話す事時は勇気がいる。自分が悪いと攻撃されるのではないか、呆れられるのではないか。。しかし話した事によって自分の期待の反応や返事ではなくとも、話した事によって少しスッキリする。佳道や夏月の悩みに比べれば、私の悩みなんてちっぽけだけれど、1番の悩みを共感できる間柄は、他人には計り知れない、家族よりも強い絆で結ばれていると感じた。
啓喜は妻の話に向き合わず、息子が不登校という事実にも向き合わず、常に自分が正しいと考えている。誰しもそのような自分には都合が悪いことに対して向き合うことは怖いし辛いが、逃げてばかりではいけない。家族だからこそ協力して前を向き、どうすれば息子が最善な方法で生活できるのか、考えるべきだった。私自身も考えさせられる本だった。

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2025年12月07日

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