あらすじ
新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した尚吾と紘。二人は大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。受賞歴、再生回数、完成度、受け手の反応──プロとアマチュアの境界線なき今、世界を測る物差しを探る傑作長編。
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Posted by ブクログ
肉質にこだわっている焼肉屋さんが、質よりもどちらかといえば量や空間に力を入れている焼肉屋さんをみて、「どうしてあっちのお店のほうが混んでるんだろう? うちのほうが絶対おいしいのに!」と言っていたのを思い出した。
質の良さは人によって違うし、質がいいことがわかってはいても状況によっては質がいいことを選択基準にしないこともある。
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誰かの悪いところを指摘するのではなく、自分のしていることのいいことを言えるようにしたい。自分のしたこと、作ったものに対してどんな受け止められ方をするかはわからない。でも、自分だけはそれに対して胸を張れるように生きていこうと思えた。
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終盤は名言のオンパレードだった。今の世の中(SNS社会)を上手く表現できているように思えた。自分の価値観を大切にしないといけないと思った。そして、この価値観は他と比べて優れている、劣っているものではないということ。人それぞれに自分の信じたい世界があって、この世界が正しいと信じたい、証明するために、日々材料集めをしているということ。でも、そんなことをする必要はない。自分を信じて生きていかないと。
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今の日本に『スター』が当てはまる人はいるのだろうか。
私はyoutubeで見れる動画も劇場で見れる映画も好きだ。映画は数千円してしまうが、充足感を与えてるれる。
YouTubeは満たされる感じはないが埋められている感じがするからだ。
この現代、人が持つ好みは細分化され続けている。同じジャンルの中にも微かな違いがあってそこにも線が引かれている。
そんな線を理解できなくとも認めてあげられるような人に私はなりたい。
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ありがとうございました。
最後の千紗の言動がすごいな。ずっと影を潜めてたけど、尚吾との距離が遠くなってて、それはそもそもの二人の距離のせえで、そして彼女はそこに問いと答えを持ってて。読んでてゾクゾクした。
それまでも特に195ページ以降、浅沼と尚吾、絋とMOVE社長、占部と尚吾、泉と尚吾と絋、鐘ヶ江監督と尚吾。これらの対立、対話が話そのものの本質、「状態と中身」であり「あるものをないものに、ないものがあるものに」だった。
尚吾と絋が映像作ってフィニッシュかと思いきや全然そうじゃない。むしろ最後の千紗の言動に打ち砕かれる。
最近同じように感じていたのが、AI。作詞作曲してもらって配信をしてた。最初は思ったことが言語化されて、さらに格好いいメロディがついてめちゃくちゃ楽しいおもちゃが手に入ったと感じていた。けど、考えるとすぐにぶち当たるのが、何のために?って問いと、これって虚無じゃないかなって疑問。
本物を知らないし、本物を作ったことがない人が本物らしい物を作れる時代になった。でも本当は本物を知ってる。その本物の人や物たちに、「これが自分の作品ですって差し出すときの心に嘘がないかどうか。」を見ないようにしていた。
後ろめたかった。後ろめたさに気づきながら、無視してた。そして、もはや無視もしんどくなって配信も辞めた。
そこから自分にとっての本物を探すことを諦めて、小説やアニメや漫画に、インプットだからと言い訳をして逃げてた。
どうせ本物になれない。何の本物になりたいかも分かってない自分を無視してた。そして、無視もしんどくなって考えるのを辞めたんだ。
本当に心が動くもの。
それを見つけるまでは足掻かなければならないかもな。どうすればいいかわからないけど、兎に角。
Posted by ブクログ
誰かにとって何が正しいのかは分からない、と考えていた。自分にとって、これは違う、それはおかしいと感じることでも、なるべく「それは違うんじゃない?」と否定することを避けてきたことに少し誇らしさを感じる。(なるべく、なので、否定してしまったこともある。否定の言葉は、その時はよく覚えていて反省するのに、こうやって振り返ると誰の何を否定してしまったのか思い出せない。つくづく自分に呆れ失望する。なのに自分に誇らしさを感じているあたりタチが悪い。自分に甘いのだ)
しかし反面、自分が「良いこと」だと思うことの説明ができるかどうかと言われたら微妙だ。
どうせ直感で、なんとなく、などという枕詞から始まって、その時作り上げた言葉で語る自分の姿が容易に想像できる。気持ち悪い。
こうならないためにも、自分が良いと思うその理由、価値判断基準をよく考えたいと思う。
考えるには、普段いる慣れた場所もいいけど、どこか公園か何か、考えるための場所(自然豊かなところをイメージしている)で考えてみたい。
せっかく普段できない思考を巡らせることをメインで行う時間なのだ、普段とは違う気持ち環境で思考をしたい。ここの理由付け、価値観はちょっと自信がある。
Posted by ブクログ
中身じゃなく状態を評価している、欲求には大小があるわけでなく種類が違うだけで大は小を兼ねない、など今の社会の様子が的確に言語化されている感じがする。素晴らしい。作中のやり取りにある「問い」が提供されているようで読後余韻がすごい。インザメガチャーチにも似たところがあり、同じくおすすめ。
Posted by ブクログ
朝井リョウの本は世の中の解像度を上げてくれる。本当によく観察してる、何より目がいいんだろう。質とは、価値とはなんなのか、「質がいいものに触れろ」という祖父の口癖がこの本の核にあり、その言葉を胸に激動する世の中でもがき考え続ける尚吾の姿が印象的だった。朝井リョウは人が何かに影響されて変わっていく様子を描くのが上手い。とんな本でもvividに読み手が怖さを感じるほどに人が変わっていく。例えば、「知らないうちに悪い遺伝子に触れることで自分も生まれ変わってしまう。」という医者の発言が、大企業の経営者に反発した際に自分に戻ってくるシーンは震えた。皆、知らぬ間に変わっていくのだ。また構成の秀逸だと思う。朝井リョウの中で過去1の構成だった。質が低いとされているが、拡散され人の目につきやすい環境にいた絋と、質が高いとされているがなかなか人の目につきにくい尚吾、2人の環境は違えど最終的に同じような思考なら辿り着き、再開する2人。初めはこの2軸だったが、後半は泉と2人の対立軸に変化する。またこの2軸を解説してくれたのが千紗だった。彼女も尚吾と同じような環境いながらも「質」というテーマに向き合い考え続けていた。彼女が尚吾のなんとなく考えいたけど目を背けていたところをついたシーンは痛快だった。尚吾が知らず知らずのうちに自分の大切にしてたはずの考えが他から見たら違うように受け取られていたことを完全食の件ですっきりさせてくれた。質とか価値がテーマの作品だったが、朝井リョウは様々なプラットフォームができ、ピラミッド型で頂点にいる意味がなくなり細分化された世の中で、どう生きていけばいいのか教えてくれた。それは「想定していた相手じゃない人にまで届いたときに、胸を張ったままでいられるか」だと思う。
Posted by ブクログ
かつてのスター像は、誰が見てもスターと認めざると得ない何か1つのことに特別秀でた、そんな人だった。じゃあ、現代のスターって?
往年のスターに憧れたショウゴとチサ、自分の価値基準で物事を選び取るコウ、要領よく時代を乗りこなす泉。そして、バズや数字を優先する現代的な大人たち。
プラットフォームの変化によって、自分が信じてきた価値観が通用しなくなっていく中で、ショウゴは「正しいこと」や「質の高さ」だけでは作品を世に残せない現実に苦しむ。
印象的だったのは、最終的にショウゴが他者の価値観を否定するのではなく、それぞれに異なる基準や居場所があることを理解したうえで、それでも「越境しますよね、素晴らしいものは」と言い切ったことだ。
市場が細分化される時代だからこそ、彼は迎合ではなく横断を選んだ。構造を理解したうえでなおプロフェッショナルであり続けるという決意に、スターの矜持を感じた。
自分にとって本当に価値があるものを、自分の目で見て選び取ること。その大切さを考えさせられる一冊だった。
Posted by ブクログ
気軽に発信できるこの時代に、他人の意見や雰囲気に流され過ぎずに、自分の感性を大切に持続けていきたいと思いました。そして自分の感性に違和感を覚えるようなものに触れた時に、これは間違ってるんだって思うのは危険ですね、自分はその傾向にあるということを気付かされました。
ものづくりをする人たちの葛藤、苦悩を繊細な心理描写を交えてみることができてとても面白い作品です。
ほんとに、SNSなど、情報の流れが早過ぎて疲れてしまう時がありますね…
Posted by ブクログ
うわー!面白かった〜!!!
朝井リョウさんは、現代社会のなんとなくモヤモヤしている事象を言語化するのがとても巧いですよね。毎回言っている気がしますが、解像度がヤバいです。
今回はYouTubeで誰でも発信できる世の中になっていることにスポットライトが当たっています。色んな発信がされようと、受け取るのは変わらず人の心、というのがめちゃめちゃしっくりきました。文明が発達していくスピードに、人の心が追いついていないような気がしました。人が処理できる情報の量を、今の世の中でははるかに超えてしまっているんですよね。法律や倫理感が追いついていないような感覚、というのでしょうか。
朝井作品を読んだ後は、いつも見える世界が読む前と異なっているような気分になります。
しっかり言葉で物語が紡がれているのに、いざ自分で読んだ内容をまとめようとすると言葉が出てこない。まだ上手く自分の中で消化できていないんでしょうね。それぐらい今までの自分になかった考え方を、物語を通して与えてくれるのが朝井リョウさんなんだと思っています。
名監督への弟子入りと、YouTubeの発信という真逆の道を辿っていた二人が、最終的に同じところに戻ってくるのが、お互い本気で本物を求めた結果なんじゃないかと思いました。全ては心に繋がっている。
「スター」というタイトルは、最初は国民的スターのような意味合いで使われていたのに、終章で星型そのものの話になっていて、さらにこの物語をまとめる構造になっていて、思わず唸ってしまいました。かっこよすぎます!何とも言えない読後感。
余談ですが、作中に出てくる眼科医は、例のゆとり三部作の腹黒いくまのプーさんがモデルなんですかね?笑
Posted by ブクログ
多様性の中に生きる人間の葛藤を描く。
浅沼と千紗の言葉が特に響いた。
響いたというより、本作を読んで、確かに感じてはいるが言語化できない考えを、きれいで納得感のあるかたちに言語化してくれているという感覚。
今自分が生産しているものの、良いところに目を向けて生活しよう。
Posted by ブクログ
尚吾と紘がまた再会して、昔みたいに連絡を取り合う関係になれたのが純粋に嬉しかった。読みながら私も学生時代の親友を思い出した
本来は繋がらないはずの等号、たくさんあるよなぁ。自分の中だけにでもたくさんある。繋げて自分を納得させることも、繋げてしまって自分で自分を苦しめることも。
鐘ヶ江監督の意地が私は好きです、自分の大切なもの、自分を形成してくれたものを守りたい、その信念を曲げられないでいる、そういう自分にとっての「軸」が揺るがない人はかっこいいなって思う
受け取り手である私は、映像にしろ書籍にしろ、それぞれに「自分が」感じたこと/考えたこと、を大切にして、自分だけの価値観を持ち続けていたいな。
ーーー
・多様性って一人でやるもんでも一作でやるもんでもなくてさ、同時代に色んな人がいて色んな作品があること、じゃん。色んな極端が同時にあるっていう状態が〝多様性〟なわけで、私たちは一つの極端でしかないわけじゃん。そんなの当たり前だったはずなのに、そこがごちゃ混ぜになってる感じない?今って
・知名度と価値。創作者の人格と創作物の質。それとこれとは繫がらないはずのものを繫げる数多の不格好な等号に、ぐるぐる巻きにされていく。
・「誰かにとっての質と価値は、もう、その人以外には判断できないんだよ。それがどれだけ、自分にとって認められないものだとしても」
Posted by ブクログ
●感想
著者自らも、その仕組みの一部であることを引き受けながら、ものづくりと評価の関係を真っ向から描く、朝井リョウの書き手として、構造を俯瞰した態度が好きだ。
細分化された価値観を持つ受け取り手である大衆と、作り手はどういった思いで作品作りをし、向き合うか。自分と、自分の創作物を切り離して眺めることができるかどうか。
千紗のセリフがタイトルを説明している。昔はみんなが同じ「⭐︎」を思い描き、ある程度共通した価値観があり、正当な成功があった。しかしYouTube、様々なSNS、オンラインサロンの登場で価値観が細分化された今、個々のもつ「⭐︎」の形は様々になった。自分の価値観に基づいて、大切にしたいと部分や分野は違う。生み出す側も受け取る側も。それぞれの葛藤をそのまま見せてくれる。
●本概要
国民的スターって、今、いないよな。…… いや、もう、いらないのかも。 誰もが発信者となった今、プロとアマチュアの境界線は消えた。 新時代の「スター」は誰だ。 「どっちが先に有名監督になるか、勝負だな」 新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した 立原尚吾と大土井紘。ふたりは大学卒業後、 名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。 受賞歴、再生回数、完成度、利益、受け手の反応―― 作品の質や価値は何をもって測られるのか。 私たちはこの世界に、どの物差しを添えるのか。 ベストセラー『正欲』と共に作家生活10周年を飾った長編小説が待望の文庫化。
Posted by ブクログ
自分達の年代が子供の頃は、まだ「スター」とされる人達が存在する時代だった。何万人、何十万人の中から選ばれた特別な存在こそが「スター」だという考えは今もある。だから、自分もどちらかというと登場人物の尚吾の様な考え方でYouTuberを捉えている。でも、結局それは、新しい価値観に順応できていない自分が、新しいものを頭から拒否して取り入れていない結果でもある。
「他を貶すより、自身のやっていることのよいところを見つけていくこと」と千紗の考え方が、新しい価値観が出現した時に大切になってくるのかも知れない。
選択肢が多過ぎて、正しいことも間違っていることも、人によって異なり、自身で選択していくことが難しい時代だと思う。作中で、「答えをもっている人にみんな縋りたくなる。」ということが書かれており、すごく納得した。
Posted by ブクログ
朝井リョウさんはやっぱり好きです。考えさせられるポイントだらけ。最後に千紗が尚吾に話するところが結構好きです。
「ある欲求はある欲求より小さいわけでも、ましてや下にあるわけでもない。全部別の種類のもの」
「欲求に大小や上下があるんじゃなくて、ぜーんぶ小分けされて横並びになる」
「自分がいない空間に対して指摘する資格は誰にもない。あるジャンルの頂点を知っていたとして本当に頂点だとしても、頂点の場所にある一つの点だけを知ってるにすぎない」
なんか、どれもなるほどと思ってしまった。
Posted by ブクログ
『スター』は、創作と評価について真正面から向き合った作品だった。
映画監督を目指す尚吾と、動画配信の世界で活躍する紘。対照的な二人の姿を通して、「良い作品とは何か」「評価されることにどんな意味があるのか」を考えさせられた。
SNSや動画配信が当たり前になった現代ならではのテーマを扱いながらも、単なる時事ネタに終わらず、創作に情熱を注ぐ人々の葛藤や成長が丁寧に描かれているのが印象的だった。再生回数や数字では測れない価値がある一方で、多くの人に届くことにも確かな意味がある。そのどちらも否定せずに描いているところに好感が持てた。
何かを作ったことがある人なら、登場人物たちの悩みや焦りに共感せずにはいられないのだろう。読み終えた後、自分にとっての「良い作品」とは何かを改めて考えたくなる一冊だった。
Posted by ブクログ
世の中が移り変わるとき、その狭間にいる人たちの葛藤について考えさせられた。
新しいものをすぐに受け入れられる人もいれば、どうしても受け入れられない人もいる。
そこには、昔から受け継がれてきたものを守りたい気持ちや、「本物とは何か」を問い続けたい気持ちがあるのだと思う。
私はどちらかというと、新しいもの、便利なもの、楽しそうなものに流されやすい。
でもこの小説を読んで、一度立ち止まって、それをどう受け取るのか、どう使うのかを考えることも大切なのだと思わされた。
映像の世界の話ではあるけれど、私自身もものをつくっているから、創作に向き合う人たちの言葉が強く残った。
特に、「自分じゃなくて、自分の創作物のほうが愛されてほしいと思える人じゃないと、後まで粘れない世界なんだと思う」という言葉が印象的だった。
ものをつくるということは、自分が評価されたい気持ちだけでは続かないのかもしれない。
自分の手を離れたあとも、作品が誰かに届き、愛されていくことを願えるかどうか。
そこに、創作を続ける人の覚悟のようなものを感じた。
Posted by ブクログ
なんでも比較したくなる感覚って誰もが持っているとは思う。勉強でも、スポーツでも、どんな領域でも…
それでも自分の信じる価値観は誰にも良い、悪いを決められないもの。だからこそそれを貫くって難しいけれど、その人の中にあるものだから大事にするべきなんだと思う!
登場人物たちみんながそれぞれの価値観をきちんと認識して理解していることが素晴らしいと思った!
自分も価値観を大切にしていきたい!
Posted by ブクログ
何が驚きって、これが2000年に発売された本だっていうこと。今はあーなるほどと思うけれど、発売当初に読んでも流行りに疎いので、尚吾の方に肩入れしていたと思う。数年前から、安室ちゃんみたいな紅白でおかえり〜と祝ってもらえるようなスターも場ももうないなぁと思っていたけど、そういうことなんだと。
ネットメディアとSNS映えの時代に、文字や紙媒体が主戦場の作家さんってどんな気持ちなんだろうとも思った。
Posted by ブクログ
映画はあまり詳しくないのですが、YouTubeが普及して複雑な思いを抱えている作り手の方は確かに居たんだろうなと想像できます。どんな風に着地するのか気になりながら読みましたが、流石朝井リョウさん。ここまで言語化されているのは凄い。「その空間にはその空間のルールがある」という視点は、何事においても大事だなと思います。
Posted by ブクログ
「でも、今、消費者が対価として払ってるのって多分、お金じゃなくて時間ですよ」
あらすじをとくに読まずに手に取ったのだが、さすが朝井リョウ。
言語化しにくいことを、さらっと登場人物に言わせてしっかりと問題提起をしてくる。
とはいえ説教くさくはないので読みやすい。
ありとあらゆるものが量産され簡単に手に入る時代。
暇ができてはSNSを無意識のうちに眺めて時間を溶かしている。
そこにはありとあらゆる人それぞれが溢れている。
自分が思う質と価値を大切にしていきたいと思う。
題名の『スター』に込められた意味がわかったときそうきたかと思った。
若い世代におすすめな一冊。
こんな人におすすめ!
・若者
・社会問題に興味がある人
・将来のビジョンがみえない人
・考えることが好きな人
・クリエイターや発信者
Posted by ブクログ
人生では、他人の成功に嫉妬したり、自分の得意分野で、自分より質が低いと感じるものが高く評価されていたりすることがある。しかし、今の世の中は一つの価値観で成り立っているように見えて、実際には価値の判断基準は、それを感じる人の数だけ存在している。それは、本作のタイトルにもなっている「スター」という言葉を聞いたときに思い浮かべる人物が、人によって異なることと同じだ。
このような世の中だからこそ、人を騙す人もいれば、騙されることを望む人もいる。だからこそ、自分自身が心から信じられ、誰に見られても胸を張れるものを生み出していくことが大切なのだと思った。
また、そのようなものを作り上げていく過程では、さまざまな選択を迫られる場面がある。しかし、その選択肢は、そもそも優劣を比べる必要のないものかもしれない。価値観がますます細分化していく現代だからこそ、自分なりの価値基準をしっかり持ち、自信を持つことが重要である。そのためには、自分とは異なる領域の欠点を探すのではなく、自分が生み出したものの良さを、自分自身の言葉で多く語れるようになるべきだと感じた。
Posted by ブクログ
少年たちの成長の話?
私とタイプの違う人たちすぎて読み進めるのがしんどかった。主人公たちが青すぎるのもあるかな。
もっと若くて、全部に一生懸命だった頃に読めば違う印象だったのかも。
メインの主人公の尚吾は、結局自分で何も考えてなくて、尊敬する人や自分が認めた人たちの考えに影響されてるだけでは?と感じる。
結局彼が自分で考え抜いて発した言葉ってあるんだろうか。
尊敬していない人や自分の認められない人たちには頑固で、そうでない人に対して素直と思われるところにモヤモヤを感じ得ない。
ダブル主人公の紘の方が、不器用でイマドキな部分にヤキモキするところもあるか、芯があり自分で考えて行動していて好感が持てる。
話全体としては、時代の変化と価値観をテーマにしているのかな。
ホンモノとか、評価とか、具体的な話になると、何が正解かわからなくなるけど、自分の感性からは受け入れがたいものへのリスペクトを忘れないようにしたいと思った。
Posted by ブクログ
相変わらず時代を先取るのが上手いなぁと感じた。数年前に発売してるものの、無料動画プラットフォームにおける表現の行く先が今と重なる。
あと小説内で確かになと思ったのは、YouTuberとテレビタレントの違いについて。
彼らの違いは企画内容などではなく、関係性や文脈にあるということ。インフルエンサーと呼ばれる人々が一堂に介しても大して盛り上がらない一方、テレビタレントは先輩や後輩、大御所などの文脈があるから、内容そのものではなく文脈に反応しているということ。
昔のように共通の文脈で盛り上がれないと言われる現在、今インフルエンサーと呼ばれてる人も10、20年後には、何かしら文脈ができて、また新しいスターが出てるのかもなと。
Posted by ブクログ
千紗の最後の言葉が、軽やかなのに重い。心を決めた人の言葉だ、と思った。その瞬間に思い浮かぶ顔が尚吾でよかった、と素直に思えた。裏切り展開をちょっとドキドキしながら待ってしまったのは内緒…
登場人物みんなに、どうにか幸せになってほしいと思えたのが、この小説の誠実さだと思う。
才能があっても、輝く場所を間違えれば曇ってしまう。どこで輝きたいのか、どこで輝けるのか
それって「多様性」の話でもあるけど、媒体や表現の場の話でもある。自分がどう見られたいかじゃなくて、自分がどこにいたいか。凡人には想像もできない悩みなのに、妙にリアルに感じられた。
Posted by ブクログ
さすが朝井さんの言語力という感じ…
クリエイティブな世界を諦めた自分には「本物」を追求し続ける尚吾のストイックさがリアルで気後れしてしまった。
とても丁寧な現代へのアンチテーゼだった。
尚吾の先輩の浅沼や、うまく現代で立ち回る泉の言葉がそれぞれの角度から、現代に流されてる自分にちくっと刺さる。
「なんか、本気の一作にちゃんと向き合うのって疲れません? 暇潰しくらいの感覚で二十四時間過ごしちゃいたいっていうか」
「なんか今って、あっちもこっちも色んな方向に目配りしてるみたいな話が多くない? バーンって突き進んでみれば意外とそれでいいかもしれないのに、全方向に対して〝大丈夫ですよ~あなたの生きづらさもナデナデしてあげますよ~社会が良い方向に変わる答えが描かれてますからね~〟みたいな空気のものばっかりだよね、特にあんたたちの世代が創るものって」
「誰が観ても傷つかないような配慮が素晴らしい、みたいな評とかあるけどさ、それだって作品の中身じゃなくて〝状態〟なわけじゃん。」
あとは恋人の千紗の言葉にスッキリしたなあ。
「差し出す人の動機はどんなものでも、差し出されたものを受け取って喜んでる人がいる以上、私たちがそのやりとりの良し悪しを判断することはできないのかなって。できないっていうか、判断しようとしても仕方ないっていうか」
YouTuberみたいな新しい職業をどこか見下すような風潮あるけど、まさにこれだよなと。誰かの消費に繋がってる以上、外野が良し悪しを判断する権利なんかないんだろうな。
Posted by ブクログ
映画サークルのスターと呼ばれる二人の苦悩を通して、「スターとは何か」を問いかける作品だった。
印象に残ったのは、受信するのも人の心だということ。同じ言葉や作品でも受け取り方は人それぞれで、発信だけでは価値は生まれない。
また、映画館の閉館という出来事がとても現実的だった。身近でも劇場の閉館があり、寂しさや悲しさを感じる一方で、運営の厳しさを考えるとどうすることもできないもどかしさもある。作品の中の出来事が遠い話には思えなかった。
対価はお金ではなく時間であり、時間は人生そのものだという考え方も心に残った。
今の時代は絶対的なスターが生まれにくい一方で、人は誰かに憧れ、心を動かされ続ける。
だからスターとは有名な人ではなく、それぞれの人生の中にいる唯一無二の存在なのだと感じた。人それぞれにスターがいることの尊さを教えてくれる作品だった。