朝井リョウのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
こんな構成、展開ってあった?!と新鮮な驚き。
自身がセクシャルマイノリティに関心を持っていることもあり、読み込んでしまった。
現時点ではまだ道半ばで明るくは語れないテーマだが、語り手をまさかのこの存在にすることで読者を引き込む手法に脱帽。
朝井リョウさんの素晴らしい筆力に胸を打たれました。
自分の性自認や性的指向について、食べ物の好き嫌いを話すかのように何の衒いもなく語れる世の中が来ることを私は切望している。
尚成と楓、同じ性的指向だけれども表出が真逆で、どちらが幸せとか簡単に決めつけることは決してできない。
ただ、生い立ちは生き様を確定してしまうと痛感。
ラストにもグッと来た。
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Posted by ブクログ
ネタバレ一つの学校の中で自他を見つめ合う青春群像劇。
誰もが経験したことのある嫉妬・羨望が重なり合う痛気持ちいストーリーには何とも言えない切なさが詰まっていた。
陽キャグループに所属し何でもできる低体温の広樹が羨むのは、映画部で周りから笑われることに苦しむ前田涼也だった。
それは、目標と生きがいを持ち高揚感に溢れる「ひかり」を前田が宿していたから。
広樹が前田に話しかけるラストシーン、前田は広樹の野球バッグを見て目を逸らす。自分の内面を見られなかった広樹は自己嫌悪に陥り物語は終わる。
周りからどう見られるか、コミュニティの中でどんな立ち位置にいるのかなんてことは、どうでもいい。熱量を持つ人間になりたい -
Posted by ブクログ
性的なマイノリティだけでなく、あらゆるマイノリティの処世術を学べる話でもある。
自分はあらゆる意味で多数派な部分があるけども、自分が少数派になった時も心が強く持てるようなヒント、少数派に対して上辺だけの対応にならないヒントの両方があった。
また、自分の子供や、後世に生きる人達が少数派に対して狭量な人間にならなかったり、少数派になっても前向きに生きていけるようになる活路も一つ示唆されていて、少数派も多数派にも必読の価値がある本だと思った。
考えの違う人間に対し、自分ももっともっと認知能力や想像力を働かせられる人間になりたいと同時に、世界の一方的な「しっくり」から自分を守って、自分が1番幸せだ -
Posted by ブクログ
水に性欲を抱く人を描いた作品。
ゲイやトランスなど、流行の中で「マイノリティ」と言われる人々すらも超越するマイノリティがそこには存在した。
世界には自分では想像も「できない」、「思いもつかない」趣向が存在する。成人同士、異性同士の性欲は正しいもの(正欲)として奨励されのに、それ以外の性欲は厳しく規制される。ではそこに属する人々は誰と共感/共鳴し生きていけばいいのか?
自分は「多様性」を受け入れていると言えるか?
そもそも「多様」という言葉を真の意味で理解できていたか?(多様とはポジティブなものではない、自分の想像力の限界を突きつけられる言葉であり、時に吐き気を催すものがすぐそばで呼吸してい -
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Posted by ブクログ
先ず、初めに言わせて頂きたい。
“この小説は小生が生きてきた中で作られてきた価値観を破壊された。それも粉々に。”
私は今までの人生で割と“普通”の人生を送り、考え方や価値観も“普通”であると思っていた。
ただこの自惚れとも言えるような“普通”を自分で決めてしまうという異常性に気付かされたのが今作である。
複数の人物から織りなす群像劇の中でこの小説が言わんとするテーマが徐々に浮かび上がってくる。
そこで私たちはそれらの人物の「誰か」に共感し、感情移入することになると思うのだが、別の人物から見るとその「誰か」すなわち「私」も異常な人間であるということに気付かされる。
今まで何気なく過ごして