朝井リョウのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
そんな世界があることを知ってしまったからには、もう読む前には戻れない。知らなかったことにはできない。この先の様々な場面でふと過ってしまう、私にとってそういう本だった。
「多様性」という言葉の中にすら入れない、掬い上げようとすら思われない恋愛対象を持つ人たちがいる。私たちが想像し得る多様性とは、多くの人を排除した後に残った多様性。確かにそうだ…と思ってしまう。自分も無意識に加害者なんだと気づかされて、傷つく。
帯に書かれた「今いる世界が輝いて見えました」という読者コメントを見て、この本を読んでよくもまあそんな非道な、と思ったんだけど、理解できない世界を理解したつもり、優しくいれてるつもり、よりか -
Posted by ブクログ
こんなの読んだら、何も言えなくなる。
自分の視野の狭さに未熟だなとも考えるし、いや広いからいいと言うわけでもないしな、とか、そもそも広いって何だ、とか。
正解はないし、人間の正しいの概念からもうわからない。
人に優しくありたいと思ったけど、優しさって何かももうわからない。
ただやっぱりハッと思わせられる表現が好き。
夏月と佳道が東横インで年越しを過ごすシーン。
ホテルのことを、ただの建物のありふれた部屋、みたいな表現してて、彼ら視点ではそう見えてるんだなと。
ホテルに2人、まさかの2人で何か起きる的な展開の線も?とか思ったりしたが(浅はか)、それは彼らが言う多数派の人の視点なのか?と思わせら -
Posted by ブクログ
・バレー部のキャプテンである桐島が部活をやめることで、周囲の人にちょっとずつ影響を与える。短編集でそれぞれの視点で描かれている。
オーディブルでも聴き、特に小野憲章さんが語るパートは、詩やエッセイのようにも聞こえて耳が心地良かった。
特に好きだったのは、短編の中で唯一バレー部の話である小泉風助の章。
なぜなら私もかつて高校のときにバレー部かつベンチメンバーだったからである。
不在の桐島の代わりに試合に出られる。桐島がいないのは残念だが、内心自分が試合に出られて嬉しい。しかしコートに入ると居心地が悪くも感じる。この、高校生ならではの思春期のもどかしさを絶妙に表現している。
そして、バレー経験 -
Posted by ブクログ
朝井リョウさんの本は、読むたびに頭をぶん殴られるような感覚になるので、大好きなのに、心の準備ができてないとなかなか読めないのです。
なので今作も、出版後すぐに購入していたのに、最近までずっと積読してました。なお、いま巻末を確認すると、初版本でした。
なんか、もしかしたら違うかも、ですけど、最後はすごい皮肉な終わり方じゃないですか?
いま絶対的な主権を握ってる人が、時間が経つにつれ、ジワジワと自動的にその権力を失うさまを楽しみに生きていくよーってことなのかな、と。
国を保ち続けるためには、次世代の誕生が必要で、そのためには異性がそれぞれ揃う必要があり、その異性同士がお互いを求め合うことが望ま -
Posted by ブクログ
生存本能、生存戦略、そして辿り着いた生存超越。体の中の細胞たちが命を繋げと休むことなくささやく世界では、私たちの心や悩みさえも、種を存続させるための効率的な仕組みの一部のように感じられます。これまで当たり前だと思っていた生きる意味が、実は生物としてのプログラムに過ぎなかったのかもしれない。そう気づいた時、物語は単なる生物学の話を超えて、一人の人間の尊厳を問いかけてきました。
作中を通じて感じたのは、自分という存在の多面性です。ある側面では社会の仕組みに適合するマジョリティとして振る舞いながら、別の側面では誰にも理解されない切実な孤独を抱えるマイノリティでもある。私たちは常にその両端を揺れ動