あらすじ
『正欲』から3年半ぶりとなる最新長篇。
とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。
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Posted by ブクログ
とても新鮮でした。今生きるヒトの現状や課題、主人公を通してではなく、細胞が語る。
細胞からみれば、ヒトは生物の一種であるし、地球上の生命あるものと同じ。
だけど、ヒトは人間として人間が勝手に創り上げた価値や生き方の中にどっぷり浸かっている。
そこを気付かされる本だった。
人は成長、発展をとめないとあった。
確かそう思う。ただそれは勝手に人間が決めた価値観に合うものだけな気もした。
Posted by ブクログ
なかなか刺激的なタイトル。
本書で語りかけるのは、擬人化した生殖機能。 その生殖機能が宿るのが、同性愛好者の主人公。
主人公の行動へのツッコミが面白い。
そして、ヒトは一人で子孫を残すように進化するかもしれない、と考える。
そんなギャップを楽しむ。
Posted by ブクログ
第1章では語り手が誰なのかわからず、まさかの第二章で生殖本能であることが判明するという衝撃の展開。しかもしっかりと尚成に感情移入できるくらい彼の行動原理を説明してからゲイであることもカミングアウト。その思考が幼少期の家庭と学校という二大生育環境によって育まれたことは共感どころか同化を導く。資本主義に染まりきった現代社会は、常に成長拡大を求めるが、それに疲れてきているのも事実。そしてその事実に最も苦しんでいるのはそもそも、社会や世間に存在するために必死で戦ってきた人々である。だからこそ、同性愛者の尚成からみた記述は胸にくるものがあった。生殖本能がコミカルな語り口で、まるで全知のような言葉を紡ぎながら、それでもやはり一個人の視点でしかなく、そこから世界を展望するラストは爽快だった。
生殖本能が尚成のお母さんみたいに振る舞うのがどちらが主人なのかわからなくて面白かったのだが、その優しさがどこからくるものなのかが謎だった。
Posted by ブクログ
ほぼ一気読み。
多様性という社会、そのものにもいろんな立場からいろんな思いがあるんだなと思った。誰がどの権利を持って、許してあげる?赦してあげる?立場になっているのか確かにそんなことは考えたこともなかった。自分も散々使ってきた「そういう時代だから」という言葉、これをこれまで構成してきたのも自分という自覚なかったなぁ…ほんところころ流行に乗せられて雰囲気でみんな生きてるのかも…と思った。他人の目線を気にして生きても仕方ないけど一方で全くないと緊張感がないという話もしっくりきた…
この物語で1番面白かったのは颯と尚成の会話の部分でその中で出てきたこのフレーズ「否定系の意思表示って、誰にも見えないんですよ」
この流れで尚成も180度変わっていくと思いきや、また違った方向に変わったのもまた面白かった。いろんな種がいるなぁ…本能さんの語り?実況も独特で楽しく読めた。
匿名
至って真面目な「生き方」の本
やっぱり自分は朝井リョウさんの本は好きなんだなと再認識出来ました。繋がりの意識を求める現代人の生き方を見事に表現されていて、朝井さんと同世代の自分にグサッときました。
独特な目線から話してるなあ、人間のことを「ヒト」と読んだり〇個体とカウントしたり、、、新鮮で面白くて次々読んでいったらいつの間にか最後のページに。フレンドリーな口調が読みやすかったのかも。
人間は成長とか変化しないことを恐れていて絶対今にとどまろうとしないし、後戻りなんてもってのほか、、、ほんとそうだよねぇ、と思いながら読んだ。脳が発展していて身の回りがある程度満たされているから、暇なときに「生きてる意味ってなんだろう」みたいなことを考え始めるの、すっごく人間らしいよねぇ、とも。
ある事象に対する人々の見方や風潮の変化についての描写が興味深かった。
Posted by ブクログ
正欲に続く朝井リョウの描く生きづらさとそれに向き合う人たちの物語。今回の客観視点が実に斬新で、没入感がたまらなかった。この本を読んでから、世界を見る目が変わる。
拡大、発展、成長を前提とした社会で、それに抗って生きること。『役割から降りる』こと、『子供が欲しいという気持ちはなんなのか』『監視の目によって生かされていること』『共同体感覚と幸福』がとても印象的だった。ちょっともう一回読んでこようと思う。
あまりにも達観した人生の書すぎるので、新書で買って正解だなあという気持ち。
Posted by ブクログ
「ヒト」に対して「生産性」という言葉が結びつけられるとは思わなかった。
数年前、ある衆議院議員が同性カップルを念頭に「子供を作らない、つまりは『生産性』がない」と月刊誌の中で主張した、という記事を読んだ。少子化が問題になっている現在、子供を持たない、また今後子供を持つ可能性がないということはそういう発言をされてしまうものなのか。
この語り手によれば 「ヒト」は「生まれた意味とか生きる理由とか自分の価値とか、そういう 暇ゆえに生まれる余計なことを考え始めたり」する。「根詰めて考えると精神が病んでしまうような本質的な事柄に追いつかれてしまわないよう常に鬼ごっこをするように生きているように見える。亅
同性愛個体である主人公の尚成。拡大や発展や成長を目指す共同体の中で「手は添えて だけど力は込めず」にいることで"しっくり"を見いだす。
多くは共同体の中で共同体の発展や成長のために力を尽くすことで自分の価値を見出だそうとする。そして少数派への理解を示すような発言を 上から述べたりするのだろう。
何だかいろいろ考えさせられたが 結局自分の"しっくり"くるものを探すしかないのか。"人それぞれ"なんて言うと この語り手に 便利な言葉だと言われそう。
Posted by ブクログ
なるほど,そうきたか。
ある意味,実験小説っぽい感じの物語だった。
主人公は「個体」なのか,それともその「個体」に巣くっている「個体の中の生きもの」なのか。主人公の気持ちを代弁するように「そいつ」が話すこともあれば,まるで第三者のように主人公を突き放すこともある。
小者の身体の中で話し続ける「やつ」は,いったい何者だ!
取り上げた話題は「同性愛を隠して生きてきた30代の男性」の生きざま。共同性・協同性・協働性を求められる社会にうんざりしながらも,それなりに「お金」のために生きている社会人。
その彼の目を通して,成長し続けることを求められる社会に対しての違和感を,読者と共有しようとする。そして,その著者の作戦は,少なくともこのわたしには成功しているようだ。成長が当たり前の社会を求め続けるのは,違うのではないか…。
Posted by ブクログ
30代の家電メーカーの会社員である達家尚成に宿る生殖器が語り手となって描かれる。まさかの生殖器視点に驚いたが、徐々に明らかになる尚成の生い立ちや現状からどう転んでいくのだろうと思いながら読み進めた。人間社会の不思議さを感じながら、最後まで尚成の日常には派手な出来事は起きなかった。ただ、その中でも尚成自身が心地よく過ごせる生き方を見出した姿は他人にはくだらないかもしれないが、本人にとっては希望に満ち溢れていることがあるのだと思えた。自分も尚成のように人生を誰かに監視されたら、くだらないと思われるだろう。
Posted by ブクログ
面白い。
「否定系の意思表示って、誰にも見えないんですよ。
だったらまずは、する、っていうほうの意思表示を選んでみようかなって。しない、を選ぶのはその後、ていうか最終手段でもいいのかなって。」
「モラハラ大黒柱に支配されてる家みたい」
社会に対するもんもんとした怒りとか疑問とか、普段隠れてるけど人の中につもりに積もった感情をこんな形で描きこなせるんだ…すごい…
Posted by ブクログ
単純に主人公が生殖器という発想が面白かった。
本の中によく出てきた共同体感覚私も苦手です。
人の生き方の表現、常に人に監視されれている感覚すごく納得させられて楽しめました。
Posted by ブクログ
同性愛の男性についた生殖器の一人語り。
私は異性愛者ですが子供も生まず生産性のない人間なので 尚成 ほどではないけど世の中の成長、拡大に嫌気がさす気持ち、理解ができる。それをこんなに 言語化してくれる朝井リョウはすごい!
「人の目を気にするな」人の世界ではよく聞く言葉ですけど これって単純に 人の目がコロコロ変わるから当てにするな っていう意味だったんですね。 てっきり 自分らしく生きるとか個性を大切にとかそういう話かと思っていました。
職場は 拡大 発展 成長の文脈から金銭を吸い上げてくれる 媒介であり 別の仕組みの星であり 出稼ぎ先です 解雇という経済的自立を揺るがす 結果につながるほどの悪評 でなければ会社という共同体の中での評価なんて 別にどうだっていいのです
Posted by ブクログ
生殖本能視点で物語が進行し、語りがとてもユニークだった。
本作で度々取り上げられる共同体感覚。
全ての人は共同体に属しており、人は共同体に貢献することで、幸せを得ることができるというアドラー心理学による考え方。
素晴らしい考え方であり、自分自身アドラー心理学の本を読んだ際には感銘受けたのだが、本作を通して自分が共同体というものについて、深く理解できていなかったことに気付かされた。
近年重視されている多様性という言葉。
これまで共同体から見ないふりをされてきた人達の視点からしたら、勝手で上から目線な言葉なのだということに気付かされた。
共同体内にも優劣があり、大多数の意見が反映され、少数の意見や行動は共同体に背くものとしてみなされてしまう。
多様性について、言葉にするのは簡単だが実践にはかなり困難が伴うものだと感じた。
Posted by ブクログ
生殖本能視点とかどういう脳みそしてたらこんなこと思いつくんだろうと著者への畏敬の念が堪えない。正欲の時よりその気持ちは強くなった。現代社会に対する皮肉なのか。
Posted by ブクログ
超SF的な話だなあと思って読み進めていたら、結構人間の内面を分析する話で意外だった!
人間のよく考える生きる意味とか働く意味とかそういうのを超自然的に俯瞰して種の拡大発展のためですってまとめちゃうの面白いなって思った。
多様性とかも本来は生存の厳しい環境下で種の保存を優先するために生まれたもので、今更発生した価値観では無いよとか、人間は安定した環境下の生き物になったので単為生殖のみでいいのでは??的な考え方はびっくりするくらい俯瞰してないと無理だろ。朝井リョウは何食って生きてんだ。
Posted by ブクログ
主人公 尚成の男性器目線が語るストーリー。
今までにない視点で面白かった
心の声が出てくる小説はよくあるけど、男性器ならでは(?)の声が漏れる場面もあり、面白い。
同性愛者の主人公が考える様々な場面から「多様性」について考えさせられるストーリー。
LGBTQ +の人たちに向けた制度整備をするためのNPO法人を立ち上げた後輩の「法整備が進むにつれ、LGBTQ+の人を苦しめる可能性もある。カミングアウトできた人たちにとっては良いことをしていても、出来ない人たちにとっては同性婚や色々な制度が出来ることによってより格差を感じる場面が出てくるかもしれない」といった考えにははっとさせられた。
多様性という言葉が広く用いられるようになった今、マイノリティをマジョリティが「認める」といった上下関係みたいなものが出来上がってしまうようにも思う。誰が認めようが認めまいが、個々がしっくりと幸せを感じられるようになるにはどうしたら良いんだろう、そんなことを考えさせられました。
Posted by ブクログ
もう怪談YouTubeにハマってしまって久しぶりの読書!
生殖器が語り手って……さすが朝井リョウ!
読み始めから「その視点でくる!?」と驚かされました。
LGBTについての描き方も、私はとても自然に受け止めました。
誰かに迷惑をかけているわけでもないのなら、それがその人でしょ、と思うし、外側からとやかく言うことでもないよなぁと。作品を通して改めて「普通」ってなんだろうと考えさせられました。
「拡大・発展・成長への貢献!」みたいな価値観にも、うんうんと頷きつつ、
みんながみんな同じ方向を向いていなくていいよね、とも思う。
何も考えずに日にちを潰せることが“お菓子作りとダイエット”って、そんなに時間あるの!?とちょっと笑ってしまったり。
私のやること、少しあげるよって言いたくなりました(笑)
ただ、最後は少し突然終わったように感じてしまって、そこだけはちょっと物足りなさも。
でもその“投げっぱなし感”も含めて、やっぱり朝井リョウだなぁとも思います。
驚きと皮肉と観察眼。
今回もやられましたー!
Posted by ブクログ
結婚するとかしないとか、子供を産むとか産まないとか、異性愛、同性愛などなどについて「普通」ってなんだろう、私たちは一体誰の価値観で生きているんだろう、生き方はひとつじゃないよねってことを考えさせられるような話。でも、語り手は「生殖器」。やはりぶっ飛んでるな、朝井リョウ様は。ぶっ飛びすぎて正直入り込めなかった(笑)
Posted by ブクログ
・生殖器目線の小説。かなり変な話で、万人受けするような話じゃなく、読みにくい。社会やLGBT、生きる意味などについての論文を小説という形でアウトプットしてる感じ。物語を読んでる時間より哲学的な話を読んでる時間が長い。
・現代の日本で生きることの意義とかそういう概念に興味があれば、読んでてなるほどってなるけど、そうでもなければ読むのが苦痛になりそう。
・正欲とテーマが地続きな感じはするけど、正欲は希望を感じる読後感だった(個人的には)けど、生殖記は平坦な終わり方でそこも薄気味悪さを感じるような終わり方だった。
・生き物の存在の目的は、拡大、発展、繁栄、維持であり、種の多様性を拡大し、生存可能性を高めるために有性生殖がある。日本の人間は生きる、サバイブすることについては難しくないが、それでも存在目的は、かかわる共同体の拡大、発展、繁栄、維持が目的になっており、その目的に反する個体は淘汰される。という背景を元に、ゲイである尚成が存在する意味ってなんだろうってとこが大きなテーマ。
・尚成は、共同体の拡大、発展、繁栄、維持を目的とすることがしっくりこない。ゲイだから子供を残せない点、自分を殺してきた共同体に対して貢献したい気持ちが一切ない点が原因。最終的には、人口子宮による完全体外生殖という技術を見つけた尚成は、その技術が発達し、ゲイでも子供を残せる社会を心待ちにするという終わり方。
・全体的に共感できることが少ない本書だけど、やることがあると気が楽なのは共感できる。つまり、暇だと色々なことを考えて悩んでしまう。日々決断することって結構負荷があるから(だから管理職は平社員より給料高いとおもう)、自分のなかに指針(神)があって、それに従うだけっていうのは楽だよなあっておもう。だから尚成がたどり着いた結論である、時間がかかる趣味をもつことは理にかなってると感じた。
Posted by ブクログ
生殖器の視点でなーに言ってんだ
って感じの冒頭だったけど
陰鬱な語り口から結びでタンポポの綿毛くらいフワッフワな足取りに変わっていく
そんなしっくりを手に入れていくサマが面白かった!
Posted by ブクログ
朝井リョウは恐らく自分と同世代。使っている言葉に「同じ時代を生きてきた感」が香る。『◯ネーの虎』のキャッチフレーズをもじった台詞が出てたし。懐かしい。
自虐ネタが爆笑を掻っ攫う、こちら側の人間だと感じさせる彼のエッセイが大好き。ただ最近は「馬面でカットモデルになることもびびってたくせに、遂に金髪にしたんか…そうか、君はそういう奴だったんだな」と、自分の中の脳内エーミールが発動するくらいで、彼の小説はあまり読んでいなかった。
自分たちの世代、とまとめるのも烏滸がましいが、なんとなく感じていることや、世間への違和感を言語化してくれるありがたい人だなあと、読むたびに思う。今回は語り手がライトなキャラだったこともあり、重たさはなかったけれど、人生に悩む今の自分には刺さる部分が多かった。
Posted by ブクログ
主人公の生殖器を語り部にしてワンイシューで押し通す構造。
語り部は主人公本人ではないけれど、本人に限りなく近いから、主人公の思考にまで言及できる便利な存在。特殊な一人称小説? でも、制約が多い窮屈な設定なのは否めません。
視点を固定することにより、現代社会の歪みをより鮮明に描き出す意図があったのかもしれません。共感できる思考もあったのですが、正直、途中で飽きてしまいました。
話題が限定されているのも一因ですが、語り口が一辺倒過ぎたのが大きかったと思います。
面白かったけど、延々と作者の考えを聞かされているようで、もうちょっと小説にして欲しかったなと感じました。
語り部については、露悪的に生殖器にしなくても、視床下部とかでも行けた気がしますし、なんなら「脳内ポイズンベリー」とか「インザヘッド」のような設定でも成り立ちます。パクリと言われるだろうけど、、、
Posted by ブクログ
尚成とは違った理由で世界の拡大には寄与できないことにしょんぼりすることもあるから「何のために生きてるんだろ」みたいに自分の人生の意味を無意味に問いただすことがあるから気持ちがよくわかるよ!
周りのなんとな〜くの何かしらの雰囲気に加担している自分もいるのも事実だし、逆に少数派に属している時はそのなんとな〜くの雰囲気に悲しくなるのも事実
なんとな〜くの雰囲気が作る空気ってなんとな〜く変わるからこそ好きなことして死にたいね
人生死ぬまで暇つぶしだから
Posted by ブクログ
朝井リョウさんの本は難しい。
結局、書いてあることの半分も頭に入ってこないから、内容もあんまり理解できてない。
朝井リョウと会って話すと、疲れるだろうな。理屈がすごい、、、。
Posted by ブクログ
初の朝井リョウ作品。斬新な切り口で、主人公の内面がとても丁寧に描かれていた。結局何が言いたいかわからん!的な部分もあったが、そこも含めて一個人の人間なのかな。
Posted by ブクログ
性に関する小説かと思いきや、ナレーション語りがかなり多めの類だった。中盤まで(樹が心情を吐露)、ナレーションのしつこさに読み進めるのがしんどく思えたが、それ以降面白くなってきた。
この世界は、異性愛個体を軸に中心、成長・発展・拡大を前提として皆が社会で生きている。の旨の考え方にすごく納得感があった。
Posted by ブクログ
これも人気のある本だと知った上で読み始めた。読み始めると一人称が変わっていて不思議な感覚がした。なかなか進まないところとどんどん読めるところとあった。朝井リョウって変わってる人なの?もう少し読んでみよう