あらすじ
『正欲』から3年半ぶりとなる最新長篇。
とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。
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Posted by ブクログ
高校時代に読んだ『何者』以来の、朝井リョウ。
背表紙のあらすじやレビューなど特に見ず、タイトルに惹かれ読んだが、圧巻だった。
性別の性、各個体の性を身体的性の象徴と言える生殖器が語るという設定に思わず感嘆の声を上げた。
この本でも出てくる、同性婚の実現などについて、何故、施策や法整備がこれほどまでに進まないのか、何故反対されるのかと私自身も過去に考えたことがあった。この考えも、共同体の成長、発展、幸福を思ったものだろう。しかし、果たしてその共同体の主軸は?構成員は本当に全ての人なのか?資本主義的思想に傾倒していないか?など根本的、いわゆる足元は全然見ていなかったと、気付かされた。
自分が当事者でない限り、どこまで行っても平行線で、本当に理解、共感することはできないのだという話を聞いたことがあるが、まさにこの通りだと思った。尚成なりの幸福、可処分時間の過ごし方を100%理解できるのは、彼とその生殖器しかいないと思う。私に置き換えたって、そうだ。
「同じ種(ヒト)の個体でも、どんな”しっくり”を積み重ねるかで全く違う世界を生きる」
本当にこの言葉に尽きると思った。できるだけ多くの人が、この基本的なことを改めて認識し、理解できたら、性別的役割分担や、多様な性のあり方、人生観が認められて、広がっていくんだろうなと思った。
出会えて良かった、本当に良作だった。
Posted by ブクログ
生殖器★4.5
ち◯ち◯が喋ってる?!全く新しいスタイルでめっちゃ面白かった。
終始小説の語りは生殖器の一人称視点。主人公尚成ですら三人称である。いやそれなら尚成は主人公ではないのか笑。生殖器が意思を持ってかつ生殖器の持ち主の個体を客観的に見て話してる状況が斬新。ワクワクして読めた。
話しているのは生殖器で生殖器は持ち主の個体が死ぬと次に別の個体(人間以外も)の生殖器として生まれ変わる。前世の記憶を持ち合わせており、過去の話も織り込んでくれる。トリカヘチャタテとていう生物が女性が男性にペニス状のものを差し込み、精子を受け取るという不思議な生態であることを知った。
主人公の個体は性同一性障害であり、前回読んだ朝井リョウの正欲と「性的マイノリティ」を題材にしている点では共通を感じた。
Posted by ブクログ
生きづらい世の中をどう生き抜いていくのかを、面白い観点から描いた作品。周りのしがらみの中、多かれ少なかれ、自分の幸せを求めて人は生きている。主人公がこの生活を幸せだと思うなら、周りがとやかくいう問題ではない。たとえ共感できなくても。
Posted by ブクログ
生殖器視点で書くという発想の斬新さに、まず驚かされた。
数年前に話題になった議員の発言や、現在の社会の風潮に対する作者の違和感や思考が、生殖器視点(ある意味での神視点)という構造をとることで、感情論に流れず、非常に客観的に伝えられていると感じた。
また本作では、わたしたちが共同体感覚を持つこと=安心感を得ることだという点が、繰り返し提示されている。
「仕事でも家庭でも社会貢献活動でも何でもいいから、自分を走り続けさせてくれるものが欲しい」
という言葉は、特に印象に残った。
おそらく今は、価値観が多様化する中で、
「共同体への貢献=善」とする構造そのものに違和感を覚える人が、少しずつ増えている時代だと思う。
そうした感覚を抱えている人にとって、この作品は「しっくり」を得るヒントがある内容だったのではないだろうか。
また、その違和感をもつ人でも認知を広げ自分なりに世の中を解釈するのとで結果的に生きやすさの可能性(幸せだと思える生き方)を提示してくれる作品だと感じた。
Posted by ブクログ
なんとなく私が読んできた朝井リョウの作品とは全体の流れが違う気がした。一貫して生殖本能の視点から1人の人間が描写されている。
あれほど隠したがってる秘密も、打ち明けてしまいたいと思っているような節が見えるしょうせい、人間だなぁ。それも自分から打ち明ける勇気はないから相手がもう一歩踏み込んできてくれればいいのに、なんて期待してしまうのもめちゃくちゃ人間。都合のいい物語みたいに他人は思ったほど踏み込んでこないし、一瞬の勇気は本心を隠すことを続けてきた年月に簡単に勝てない。
独特な目線から話してるなあ、人間のことを「ヒト」と読んだり〇個体とカウントしたり、、、新鮮で面白くて次々読んでいったらいつの間にか最後のページに。フレンドリーな口調が読みやすかったのかも。
人間は成長とか変化しないことを恐れていて絶対今にとどまろうとしないし、後戻りなんてもってのほか、、、ほんとそうだよねぇ、と思いながら読んだ。脳が発展していて身の回りがある程度満たされているから、暇なときに「生きてる意味ってなんだろう」みたいなことを考え始めるの、すっごく人間らしいよねぇ、とも。
ある事象に対する人々の見方や風潮の変化についての描写が興味深かった。
Posted by ブクログ
人間社会で過ごす中で、無意識に抱えている感情が言語化されていた。
読み終わった後に、自分は共同体と向き合うか考えさせられるが、こうしないといけない、と言うのもないと考える。
視点が男性器、テーマがLGBTで新鮮でサクサク読めた。
Posted by ブクログ
・自分は必ず死ぬこと、死までの大体の期間を把握していること。これが人特有の悩みの原因。
→死から逆算して考えた時の理想と現実のギャップに不安や焦りを感じてしまう。
・学生時代と労働社会では、共同体から追放される対象が異常者から生産性の低い者に変わる。
・「他人の目は気にするな」は、個性を大切にではなく、他人の目自体がコロコロ変わるからという捉え方もある。
今まで読んだことないジャンルの本で新鮮だった。
Posted by ブクログ
オーディブルで。
語り手の設定よく思いつくなあと笑
同性愛者で生きづらさを抱えている主人公。
生きづらいながらも、変にひねくれたり人にいじわるする人にならず立派。幼少期は辛い経験もしたようだけど、社会人になってからの仲間がいい人たちでよかった。
最後はオペラを作る計画、オペラを食べた分のカロリーを消費する筋トレの計画をたてて、こうして時間が過ぎて行く計画をたてている時が一番しっくりときて最大幸福値を感じられるって気付けていたこと。
いい風が吹いて「しあわせだなあ」と呟いけていてよかった!
Posted by ブクログ
2025/60
面白かった〜〜〜〜〜。
久しぶりにイッキ読みしてしまった。
朝井リョウさんの本をもっと読みたくなった。
生殖本能が語り手という斬新なアイデア
いったいいつどうやって思いつくんだろう。
生殖本能の軽口が面白いし可愛すぎて、笑いながら読んでた。この個体、レスどころかネバーなのに。
確かに何が欲しいか分からないとか、自分が子供が欲しいか悩んでるなんて「優雅な悩み」なのかもね。満開の桜の中にいる人は、自分が綺麗なものに囲まれているって気が付かないから。
日本には国教もないし、明文化されたルールは少ないはずなのに「なんとな〜くの空気」で決められたことがたくさんある。すごく分かるなあと思った。
生きていて虚しい、と感じるのは大体の寿命を人間は知っているから。必ず死ぬこと、期間を把握してること、それがあるから逆算して「○○までに〜しなきゃ」と思ってしまう。たしかに〜。
他の生き物は「今ここ」をどう生き抜くかだけで精一杯なのに、私たちは過去とか未来に思いを馳せたりして勝手に虚しくなってるだけなのかもね。
共同体での自分の立場や貢献度によって、幸福度が変わる。これってあるあるだけど自分軸で生きられていない気がして私は嫌だなあ。
国家、神様、人権など人が大切にしてるものって実在しないものばっかり。考えたことなかったけど、たしかに目に見えないものってなんでこんなに大切なんだろうね。星の王子さま的言い回しになっちゃった。
職場は媒介。拡大、発展、成長を求めているわけじゃないから、職場でなにいわれても「あんた火星でなんか言われてるらしいよ」程度の感覚。
とくに好きだった言葉は
人は生きてる状態だけが続くと「成長したい、生きてる意味とは」って考え始めるけど
それを「暇で、退屈そうです」と言われたこと。
私はガチガチのNF思考派でそんな自分が好きだし、悪いこととは思ってないけど
自分の人生をややこしくしてるのって案外私なんだよなと改めて気付かされた。なんかその事実笑っちゃったし気持ちがラクになりました。暇なんだね私。
悩むのが好きだよね〜人間。
幸福度を預ける場所を独自に錬成しないと、生きにくいという状況はよくあることなのかな。
人生や自分自身について、今までにない角度から考えさせられてとっても面白かった。
少し内容を詰め込みすぎていたので★4
「手は添えて、だけど力は込めず」ですね。
Posted by ブクログ
共同体への不信感、社会での生きづらさを抱えながら、それでも生きるべくこの生息地でいかに生きるのか。日常生活での人との関わりや経験をやり過ごすと言いながら、多分普通の人以上にいろいろと考えて、ある意味都合の良く、とても器用に生きていると思った。独り言のようなやや毒舌な語り口が楽しい。老いることを残念と思うのではなく時間が経つことが楽しみとなるような生きがいとは何か。日常生活こそ人生、自分に「しっくり」な生き方を見つけたい。
Posted by ブクログ
「正欲」の時も独特なタイトルだなーって思ってましたが、今回もそう思いました。てか、ほんとに「生殖記」やないかい!と冒頭を読んで心の中でツッコミました(笑)ポップな語り口なのが面白くてツボでした。
すべては資本主義から来ている悩みとか、わかりやすい表現だなと思いました。ずーーーっと、今より良くを続けていくって大変ですよね。資本主義社会にいる限りは、新商品を生み出し続けないといけないし、人間も「拡大・発展・成長」に貢献し続けなければならない。どの企業も分かっているけど考えないようにしているというか。もう完成形なのに、「これ、いる?」って性能をちょっと足して新商品出すとか、スマホ業界がすぐ思い浮かびました。だんだん社会論みたいなかんじになっていってましたね。
ちょっと前流行ってたアドラーの共同体感覚のこととかSDGsのこととか、軽くいじりながら書いていて、本質的には人間が都合よく生きるためのものっていうのがめちゃめちゃ納得しました。確かに、考えているの人間だし。聞こえが良くても巡り巡ればポジショントークの一種なのかもと、少し穿った考え方もできますよね。考えすぎ?私、疲れてますかね?(笑)
「眉毛」ってあだ名に反応した人はしっかり社会の共同体感覚に適応できているっていうのがピンポイントで面白い!(笑)特に日本は神様とか宗教とかそういう分かりやすい指針を持っている人が多くないので、社会のなんとなくーの感覚に左右されがちですよね。そこに資本主義社会というのが絡んでくると、結局お金が全て!お金が多ければ多いほど幸せ!今よりもっと多くのお金を!と、お金が幸福度の尺度になってしまうのでしょうか?
「擬態」って言葉が何か、日本の社会を一言でまとめているような、そんな気がして、言葉選びも好きだなーと思いました。みんな何かしら擬態して生きていますもんね。
人は自分が認知している範囲でしか考えが及ばない、というのも、悲しい話ですがそうだなと思いました。そうなると、自分が良ければそれでいいやーってなりますよね……もちろん私もその一人です。
朝井リョウさんの作品、とっても面白いです!が、色々とモヤモヤと考えることが多くなる、たぶん普段目を背けがちな面にあえて焦点を当てているのでしょう。こうなると、朝井リョウさんの有名な「桐島」は果たしてどんな作品なんだろうって楽しみです!モヤモヤがある程度解消されれば読んでみようかな?
Posted by ブクログ
かなり異色な語り手。
とはいえ、語り手の話す人物の生き方に少なからずも共感を覚える人も少なくないのでは?と思えた。
全てではなく、〇〇に関してはそう。というような。
1つの事をクリアしたら、次はコレ、コレをクリアしたら次はアレ、という永遠に続く人生。
「多様性」という便利な言葉が出来て、多少は生きやすくなったけど。中々な深刻な問題を軽快な語り口で切り裂いていて面白かった!
Posted by ブクログ
Audibleにて。
ゲイの生殖器視点で、性的マイノリティの苦悩を描いた作品。
ゲイである尚成が、学校と家族という共同体から拒絶された経験をもとに、性的マジョリティによる性的マジョリティのための社会に対する活動に対して線を引き生きていく話。
面白い見方だと思ったのは、性的マイノリティが認められるようになった風潮に対し、尚成が、「認めるって何様だよ!そんなとこ言う前にまずはこれまでのこと土下座しろよ!」と憤る考え方だ。
すべての発言がSNSなどの空間に漂い続け、時代が変わり、考え方をそれに合わせてアップデートしたとしても、かつての発言は残り続ける。
ここで尚成は、社会レベルにたいし、まず謝れと言っているが、いまやこの主張は個人単位に対しても要求できるようになってしまった。
どんどん便利になることで、遊びがなくなり、許す・忘れることができなくなっている。みんな薄々気付いているが、周りが全力疾走しているなかで、誰も自分だけ降りることができない。
強硬に降り続けていた尚成が、本書の最後で社会に希望を見いだすシーンは、一見するとハッピーエンドだが、実はとんでもなく救いのない話なのではないだろうか。
Posted by ブクログ
斬新な語り手、私達が生きる日常の1シーン1シーンを俯瞰的に論理的に言語化する。自分では考えつかない世界の構造に、自分てなんてちっぽけなのかと考えさせられた。
生物学であり、社会学であり、心理学であり、その一方で1人の人生を解像度高く解説する小説。
読み物として多種多様なコンテンツが盛り込まれていて、面白いと感じた。
Posted by ブクログ
同性愛者である主人公の男性の性器?が語り手の物語。
生殖器としての役割だけでなく、主人公の頭の中まで理解しながら話すため、主人公が人と行動するごとに実況が入ってるようで面白かった。
少年時代に同性愛者であることを疑われ、差別された経験から、周りに公表することや深い人間関係を避け、ただ生きるためだけに保守的な行動をする主人公。同性愛者であることを思考し続けて、自身の生き方を決めつけていたが、同じ同性愛者の後輩がオープンな行動をしているのを見て、自分もできる範囲で人の役に立てる、自分が楽しいとも思えることをして生きようと改心して終わる。
語り手の斬新な立場、軽い口調が面白く印象的だった。同性愛に悩み、諦め、保守的な行動をする主人公の話は読んでいて心が痛んだ。LGBTQの人がそうでない人の世界に住まわせてもらってる、ということがあってはならないと感じた。
Posted by ブクログ
やはり面白いなあ。生殖器目線の語りなんて今までなさすぎて発想がもう異次元。そしてハッとなるような言葉ばかりでてくる。最初は読み進まなかったけど後半に向けてどんどん読んでいった。
それでも、生きていくっていう主人公を書くのが朝井さんぽいと思う。
「人生に大きく関わることほど自分で選べないって、本当だね。大人になればなるほど、その意味がわかるようになる」
「偏見ないよとか言ってくる相手に俺はめちゃ偏見持ってたりしますし、気にしないよとか言われてもお前が気にするかどうかは俺の人生に関係ないから自意識過剰だなって思いますし。誰を好きになってもいいとかお前に許可出される筋合いないし時代関係なく俺はゲイだし」
ヒトって別に正誤の判断ができるわけじゃなくて認知能力とそれに伴う感情がやけに発達してるだけなんだって、再確認したんですよね。
Posted by ブクログ
つい先日読んだ正欲でも感じたけれど、わたしが感じている日常に潜む小さな違和感を、的確に言語化してくれて、読んでいて非常に心地いい。
同性愛者の主人公:尚成を軸に話が進んでいくが、なんといっても、もう一人の語り手の存在が本当に面白い。
キャッチーだけれども達観した存在である語り手がいるからこそ、難しいテーマでもある本作を最後まで楽しめたと感じた。
何度も読み返したい。
Posted by ブクログ
こんな小説、読んだことない!
語り手がまさかの…というのもあるけど、現代社会の人間を見事に俯瞰してる。
いろんなタイプのヒトが出てくるけど、自分にも当てはまる個体がいるはずです。
朝井リョウさん、やっぱりすごい作家だ。
Posted by ブクログ
軽快な語り口で、引っかかりなく読み進められる一冊でした。しかし、その語りの中身はかなり厭世的というかシニカルというか。。社会や人間関係、生き方そのものを斜めから見つめる視線が終始貫かれていて、読んでいて息苦しさを覚える場面もありました。
作品としての完成度や面白さは十分感じられる一方で、個人的には感情的に強く刺さるところまでは至りませんでした。共感よりも距離を保ったまま読み終えた印象となったのは、「共同体感覚」故でしょうか。
Posted by ブクログ
誰目線で話が進んでるんだっけ?
って頭が混乱してしまった。
異性個体と同性個体って、一文字しか違わないからこれは誰の主張だ?
そうか、内容的にこっちね。
みたいになった。
朝井リョウは皮を剥いて、剥いて、剥いた後の核心を書くのがうまいなーと思う。
その核心って、みんななんとなく気がついているんたけど、その言語化力がすごい。
一文に、
みんか自分の成果アピールしてる一方で、
それ以外の人を下げてる、見下してる
みたいなのがあるんだけど
まさしく私がそれな気がしてしまった。
Posted by ブクログ
ストーリーは面白かったが、繰り返しの記述が多くくどいと感じてしまった。主人公にとっては、危機回避能力が高く核心に触れられないのは幸運だろうが、読者としてはその先が見たいと思ってしまう。
Posted by ブクログ
初めてのパターン。タイトル面白。
選択していると思い込んでいる自分を疑わせる作品。
なんだろうな〜、本を読むと何かしら救いになることを受け取ることができると思ってはいるんですが、この本はそうではなくて、現実?をスパッと叩きつけられるような感覚になる。
Posted by ブクログ
小生、小生、小生、小生って何の話?
なんやろうねぇー自分の気持ちに素直に、正直に、生きられるって幸せ
でも終始気持ち悪く、朝井先生って感じの作品
Posted by ブクログ
〜1周目〜
2025.12.15
目線が生殖器というのはびっくりしたけど、本人でもないし、第三者でもないし、という視点は新しいものだった。
最後の方に繰り出される主人公に迫る他人から見た主人公とはというところを切り出されていたらどう展開されているんだろう、どうなんだろうと気になった。
Posted by ブクログ
同性愛者だということを隠して生きている30代男性の生き方を、生殖器である「私」が語る話。
星3.5くらい。面白かったけれど、少し説教くさく感じるところなどがあり、「あーこれTwitter(現X)でよく見るやつ」というような身も蓋もない感想が何回か出てきてしまった。私がツイ廃なのが悪い。
語り口調なのでaudibleととても相性が良く、さくさくと読み(聞き)進められました。ヒトではない「私」視点の話の進み方も斬新で面白かったです。
終着点はどうなるんだろうと思っていたのですが、会社の上司や元後輩や同僚たちの監視カメラ個体たちから「もしかして」の疑惑を解消させないまま、主人公が主人公なりの“しっくり”を得られて物語は終わるという幕引きは、ここで終わるのかとは思いつつも、嫌ではなかったです。
「拡大、発展、成長する共同体」
Posted by ブクログ
生殖器の人格が見る人間社会。シニカルで斬新、面白い視点だった。スピ系の人がよく生殖器の大切さとか重要性説いてるの思い出した。人間世界の常識や価値観なんてコロコロ変わってそれに振り回されて無理やりでも己や社会の拡大発展のために生きるしかない我々ってなんて哀れなんだろう。
Posted by ブクログ
なるほど…
そう言う事か…
タイトルと装丁からもっと文学的な重たい話しを想像していたので、砕けたラフな文調にびっくりしました。
まさかの目線からの語りから始まる物語は、戸惑いから最初は中々入り込んでいけませんでしたが笑
とても読みやすい文体で最後まであっという間に読むことができました。
フラットな語り口で明るくユーモアを交えて書かれているのですが、内容的にはとても考えさせられるものです。
きっと当事者の方々はそれぞれ、こう言った形を変えた苦悩を抱えているんだろうな、と考えさせられました。
隣にいるかもしれない苦悩を抱えた誰かに、想像力を働かせ「手を添えて力は込めず」寄り添える自分でありたいと思いました。
一見コミカルな話しですが、新たな視点や考えを与えてくれる今の時代に読みたい作品だと思います。
ただ…
朝井リョウさんがメディア露出が多いせいか、ご本人のイメージが強いせいか…
もう読んでいて朝井リョウさんが語っているようなイメージが抜けない笑
最後まで朝井リョウさんがずーっと喋り続けているような感覚でした。
そして同じようなターンが何度も繰り返される。
そこがまたご本人の語り口を思わせる…
良い作品なのかどうかも分からない…
私は今後、朝井リョウさんの作品はエッセイ以外はダメかもしれないな…と寂しくなりました笑