あらすじ
『正欲』から3年半ぶりとなる最新長篇。
とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。
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Posted by ブクログ
美しく洗練された表紙だと思った。生殖の記。古事記を連想した。重厚な話が展開されるのだろう、と想像して読み始めたら、それは生殖器視点の語りだった。
人間ではない視点でコミカルな語り口。作者はふざけてるのか等と思いつつも、さくさく読み進められ、その中で、いつの間にか、人間の幸せとはなんなのだろう、という真面目な問いに辿り着いた。娯楽としての面白さと、哲学としての興味深さが共存している、斬新な本だと思った。
成長だけが全てではない。仮に生産性がなくたって、平等に扱われなければならない。平等権は基本的人権の内の一つだ。
人間は成長や拡大を目指し過ぎている、という視点と、実は誰もが成長や拡大には限界があることに気づいているが、相互監視の状態で言い出せないだけ、という視点が興味深かった。
成長ができなくても、本人が幸せに生活できる環境を整えられたら理想的だ。しかし、成長しない/生産性の低い人間をほっておいてくれるほど社会は優しくない。
途中、ちょうど他の本でも読んだ、アドラー心理学の話も出てきた。共同体への貢献が幸せにつながる、という話。確かに「貢献できている」という思いは、幸せに繋がるようにも思う。
しかし、これって実は洗脳なんじゃないか、なんて思ったりした。社会に貢献できていることを、褒め、讃え、幸せと感じるように矯正されているのでは、なんて考えた。
また、同性婚への議論も、当事者ではない私は、ついつい「理解が進んで良かったね」等と考えてしまうが、そもそも理解しているしていないに関わらず、これまで不当に扱われていたこと自体がおかしいのだ、という当たり前の主張に、耳が痛かった。
以下、引用。
そもそも同性愛個体同士が婚姻関係を結ぶためにどうして異性愛個体の許可が必要なのでしょう。異性愛個体同士の結婚に同性愛個体は賛成も反対もしていないのに。そんな余地もないのに。
引用終わり。
こちらの主張ももっともだと思う。特権を持っている人間は、それが当たり前になってしまい、自身の特権に気づかない。このことには、自分自身も注意を向けていきたいと思う。
生殖器がしゃべる、という、ギャグ漫画のような設定から、こんなにも考えを深められる物語になるとは思いもしなかった。朝井リョウ氏の他の作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
本当に求めているものが何か分からない、〝成長、繁栄、拡大〟ばかりを追い求める•••
誰しもが感じたことがあるけど口に出すことはないモヤモヤを、すっきりと言語化してくれている。
会社などの共同体において、そこまで能力がないのに〝やる気がありそう〟なだけでチャンスをもらえたり評価が上がることがある。
数字で見える成果なんてほとんど無いのになぜ評価されるんだろう?と気になっていたけれど、〝共同体の成長と拡大に貢献してくれそうな人材だから〟だったんだと腑に落ちた。
この〝共同体の成長と拡大に貢献してくれそう〟=良いこと というのが生殖の視点から語られていて面白かったし、明確な答えはないけれど非常に考えさせられる本だった。
この本の主人公はどこか朝井さん本人に似ていて、きっと朝井さん自身が同じような葛藤を抱えたことがあったのだろう。
Posted by ブクログ
樹の、生殖器だけ一致していないのではないかという気付きが、よかった。
俺が女だったらなとかは考えたことがあるが、そっちの方がしっくりくる。
Posted by ブクログ
ヒトの生態、社会の仕組みを客観的に解説する語り口が刺さりました。
朝井リョウさんをかなり感じるお話でした。
劇的にストーリーが進むわけでもなく、9割この語りなので、途中で挫折する人もいるでしょう。
1番の山場は終盤、尚成と颯の一対一の飲み会の場面だと思います。ずーっと尚成の考え・処世術が語られてきて、最後の最後に同じ立場だけれど真逆の考え方が提示されます。「確かに!その考え方もアリ!」となったところで、尚成もそちらに寄っていくのかと思ったら。
幸せの形は人それぞれ!ということですね。
Posted by ブクログ
宿っているモノが著者のエッセイそのままの口調だから、なんだか妙な人間味があって面白かったし、ちょっと笑ってしまった。
読後、尚成みたいに立てなくなる感覚の正体が分かった。次に繋がらない辛さを感じる仕組みが丁寧に言語化されていると思う。
Posted by ブクログ
おちんの目線はコミカルでクスッとしたり。
ゆるゆるまったりな尚成がなんか好き。
社会の成り立ちと当事者の在り方と混ざりあって少し難しかった、ふわっと読んじゃった。
私も当事者だったら尚成と同じ生き方を選ぶ。自分なりの“しっくり”を見つけるために、もがき苦しみ楽しむ。
Posted by ブクログ
尚成に刺激されて、お菓子作り(趣味だったけど子どもが生まれて遠のいてた)と運動(グアム旅行が決まって、水着を着るから)を始めた。我ながらそこじゃないだろっていう影響の受け方。感想クソ長くなりそうだったからちょいど良いや。
朝井リョウ節全開
生きるための原動力をテーマに、生殖機能の語り部によって描かれる生物や幸福の本質に迫る一冊。
語り部の口調も相まって、ちょいちょいCV朝井リョウで聞こえてしまう呪いにかかっています。助けて。
匿名
至って真面目な「生き方」の本
やっぱり自分は朝井リョウさんの本は好きなんだなと再認識出来ました。繋がりの意識を求める現代人の生き方を見事に表現されていて、朝井さんと同世代の自分にグサッときました。
独特な目線から話してるなあ、人間のことを「ヒト」と読んだり〇個体とカウントしたり、、、新鮮で面白くて次々読んでいったらいつの間にか最後のページに。フレンドリーな口調が読みやすかったのかも。
人間は成長とか変化しないことを恐れていて絶対今にとどまろうとしないし、後戻りなんてもってのほか、、、ほんとそうだよねぇ、と思いながら読んだ。脳が発展していて身の回りがある程度満たされているから、暇なときに「生きてる意味ってなんだろう」みたいなことを考え始めるの、すっごく人間らしいよねぇ、とも。
ある事象に対する人々の見方や風潮の変化についての描写が興味深かった。
Posted by ブクログ
ずっとおもしろい。どうしたらこんな着眼点で本を書こうと思うのか、、、
コンセプトはともかく、内容は深い問題をテーマにしてる。浅井リョウ先生の作品にはハズレがありません。
Posted by ブクログ
こんな人に勧めにくい本初めて!語りが衝撃的だしすごく面白い。朝井リョウはやっぱり現代について、マジョリティーについてマイノリティーについて、よく知ってて考えさせられる。
Posted by ブクログ
題名の通り、生殖の日記でした。人間を新しい目線から見る感じが面白かったし、スラスラ読める。
主人公の尚生がちゃんとキャラクター貫いている感じも好きでした。
Posted by ブクログ
おもしろかった。読みやすくてスラスラ読めた。
ゲイとしての多様性やLGBTの観点の話や、未来の生殖機能に関する話、現代社会における人生観について色んな観点で話が進められていて結構考えさせられた。
私はストレートだが、普通に生きる上で共感できる部分が多くて、世の中や人間が抱く言語化できないようなことをバシッと言語化する朝井リョウには感嘆した。何度でも見返したい本。
自分なりの「しっくり」を見つけて生きられればそれでいいのです。
Posted by ブクログ
変わった語り口&変わった主人公だったけど、人間観察してるみたいで面白く読めた。
成長とか拡大発展に対して積極的になれないというのは、仕事においては同意できるかも。なんかキリがないのが怖い感じする。
朝井リョウさんの本だいぶ久しぶりに読んだけど、面白かったから他も読んでみたいな!
Posted by ブクログ
主人公の生きづらさ、他の人間たちと上手くやる為の普通の人間の擬態化、無関心さ等そういった自分を守るための技術を研ぎ澄ましてきた描写に心打たれるものがあってスルスルと読み進められた。読破してよかった。
Posted by ブクログ
初めての朝井リョウさん。楽しかった。
ポッドキャスト「信頼できない語り手」でお声をずっと聴いているものだから、朝井さんの声で脳内オーディブル。書き手さんの声で再生されるなんて、そりゃ楽しいし贅沢でしょう。
いや、ほんと、文中の語り口調、めっちゃ朝井さんですよね?
主人公はマイノリティな部分を誰にも打ち明けられず、ひたすらに忍び続けている30代男性。
私、主人公と逆のタイプ。新鮮だった。
マイノリティに属する部分って、誰にでも何かしらあるかと思う。私もあるある。某後輩はマイノリティを起点に人と出会っているし、動いているし、マイノリティだから孤独に陥るかはイコールではない、結局は人による、だ。
全体的に、社会の構え方(やたら上からに感じちゃう)に対する不満がドーンって内容。
最後には主人公が明るくなっていたけど、それも自分にとって都合が良い情報があったおかげ。
それぞれが都合の良い情報をお守りにして生きている、てなんかわかる気がする。
また朝井リョウさん読みたい。
Posted by ブクログ
⚪︎⚪︎目線ってなんだろう、タイトル通りでした。共同体の拡大、発展、成長って必要なの?最近気付いて共感したこと。なんとなく思ってはいけないことのようで、気付いてなかった。人の言動と内心は違うんだな、それがとても面白くて読みやすい。
Posted by ブクログ
すごかった。
これを読んだ誰かと話したいよ、頼むよ…。
他の方のレビュー見て確かにと思ったけど、先に朝井リョウのエッセイを読んでると文体がかなり似ているので作者の中身がだいぶでてしまっているような感覚はある(だからって=とも限らないけど…)
これを読んで朝井リョウと話したいこと
・人間の美醜ってどう影響するかな?やはり美しさは異性愛における魅力、優位性になるから、いくら磨いても異性愛個体の共同体の成長に関わるでしかないのかな 自分なりの美しさだけに拘ることでそこの軸から離れることってできないのだろうか
・人間が飼う動物ってどう思うかな?私は尚成が思っているようなこと、レイアウトで切り取られた内容のこと、犬と話したりさわってる時は忘れられるんだよなー そもそもペットとして飼う事自体がおかしいのかなあ
Posted by ブクログ
個人と共同体の関係や、言葉にできずにいたモヤモヤとした感情を見事に言語化してくれた作品だった。
人間にはポジティブな時もあればネガティブな時もあり、誰もが波を抱えて生きている。主観と俯瞰の両方の視点から、どちらが正しいわけでも悪でもないと教えてくれるアプローチが実にユニークだ。マジョリティとマイノリティ、葛藤や疎外感といったテーマを朝井リョウ先生が軽妙に描き出しており、自分の意識や世界の捉え方を心地よく見直すことができた。
Posted by ブクログ
あまりにも自分が考えられていなかった領域と語り口調で読み進めるのに少し労力が必要だった
ここまで不思議な設定にして掘り下げていける朝井リョウすごいなぁ
Posted by ブクログ
まさかのタイトル、まさかの設定だったが、、、
なかなか面白かった。
クスッと笑える、朝井さんなりのユーモアもあり、、、でも、人間の真理、存在意義みたいなのは、的を射ていて、、、
220ページあたりからの、後輩の多和田くんとの飲み会のシーンは、本当に心を鷲掴みにされてしまい、、、本当に一気読みだった!
Posted by ブクログ
語り手がまさかのモノで、設定の斬新さという点で掴みとしては素晴らしい。ただ、この語り手自体に重要な意味があるというよりは、ヒトという生き物を俯瞰的に、シニカルに語るための役割として設定されている。
主人公しょうせいは同性愛者であり、幼体から成体になるまで、共同体との疎外感を感じて生きてきた。共同体の一員として見られないだけで、動物本来の生存すらままならない。そのため、これまでマットに手を添えずみんなと同じ方向に運ぶような生き方をしてきたわけである。しかし、これは同性愛者のみに限った話ではない。主人公のように共同体が基準が異性愛者の人もいれば、健常者、男、女、大人など、全く異なるものを共同体の基準に見る人もいる。また、しょうせいと多和田のように、共同体の基準が同じであれど、共同体感覚を持てない人もいれば、持つ人もいる。人それぞれの持つ悩み、年齢、時代によってそれは異なり、結局人からの見られ方を気にして、自分自身の在り方を変えること自体馬鹿げていると思えてくる。
また、作中の疑問点である、「前から思ってたんだけど…」これは最後まで何なのか明かされないが、おそらくそれぞれ違う疑問なのだろう。「達也くん会社をより良くしようとか思ってないタイプ?」「達也さんゲイなんですか?」などなど、、。語り手はその答えを気にしていたが、しょうせい自身は何も気にしていなかった。
解釈の余地を朝井リョウは残しているようで、もしかするとこれは、質問の答えを考えること自体無意味だということなのだろうか。
Posted by ブクログ
読みやすい。難しいこと言ってるようでなるほどなと思うことが多かった。こんなこと考えてこんなに自分を分析して生きているのは大変そうだけど生きやすそう。
この主人公は筆者がモデルか、筆者がこうなりたいとか思ってるのかなってちょっと思ったりする。
Posted by ブクログ
まず、生殖器の目線で語る設定がおもしろい。
その語り手が、軽くヒトを皮肉るのもおもしろい。
尚成くんて、一緒に住みたくはないけど、程よい距離感で観察したい人種で嫌いじゃない。
立ち姿を横から見ると、「ヒョロヒョロ猫背は平仮名の“く”」→「太ったら“も”」…なんてわかりやすい表現、笑
「成長欲求がない」とか、
「お菓子作りとダイエット、わざと同時にする」とか、
何でも考え過ぎずに、軽く生きてみようかと思えた。
朝井リョウさん、面白い作品でした。
ごきげんよう☺
Posted by ブクログ
総論興味深くすらすら読めた。令和を捉えるのががやはり上手な朝井リョウ!
普段なら自分にもっと刺さる内容のはずだけど、おそらくタイミングの問題?で期待ほど刺さらなかった。。
以下メモ
人間は社会の拡大、成長、発展に向けて動き続けるしかない生き物であるという視点は、日頃自分も考えるテーマだから共感した。非現実的だと分かっていても全世界の発展を一斉に止めれば良いと何度思ったことか。思えば世界レベルでなく個人レベルで考えてみても"今日の夕飯味付けイマイチだったから次は醤油足してみようかな"とか"この部屋散らかっているから棚買って整理しようかな"とか、日々の生活でも小さな成長を繰り返している。これが無くなると主人公のように本当にただだらんとするのみ。成長発展は生命に課された逃れることのない宿命なんだな、と、改めて気付きを得てもう諦めることにした。。。
あと主人公の生き方の背景には「自分を虐げていた側の社会に貢献したくない」的な怒りの要素や、そもそも異性愛者優位の社会でサバイブに必死という要素があったと思うんだけど、そういった背景が全く無い(異性愛者、それなりに困らず生きてきた)のに社会の発展に興味が無い•どうでもいいと思う人々(これが現代の大多数だと思うのだけど)のことはどう捉えれば良いんだろうか。朝井リョウに聞いてみたい!
作中で出てきた、まだ咀嚼できていないけど覚えておきたい楓のセリフ
「否定系の意思表示って誰にも見えないんですよ」「どんどん外界を遮断して、自分から独りに逃げ込んで、色んなことを"してやらない"ってして、それで世界を否定した気になっても、周りから見ればそれって、ただそこにいる人なんです」「意識してやらないでいたこととか、意識して言わないようにしていたこととかって、誰の目にも見えない分、自分にだけはめちゃくちゃ目につくようになると思うんですよ。切り捨ててきたものたちが、逆に自分をどんどん縛っていく。」
Posted by ブクログ
尚成が颯との会話をきっかけに、考え方が変わっていった。
自分の価値観を認めてもらえたことが、その変化につながったのかもしれない。
誰かの役に立つことだけが幸せではなく、自分にとってしっくりくる生き方を見つけることも大切なのかなと思った。
Posted by ブクログ
『私』の話は朝井リョウさんの考えを覗いている気持ちになれる。大学入試の現代文を読まされてる感覚になって目で追うだけでは少々理解するのに難しかった。主観なのに第三者目線で書くのが上手だった。
一方、尚成の物語としては大きな波乱もなく日常を描いているのになぜか引き込まれる話だった。
最終章でもタイトルを回収でき、尚成の相槌のごとく、なるほど〜。って、本を閉じた。
Posted by ブクログ
主人公の行動を主人公の生殖器がずっと解説するという珍しいタイプの物語。この物語は創りが面白かった。
内容的には、生きるモチベーションというものがなく、自分を殺して生きてこなければいけなかった共同体への還元が嫌で社会貢献はしたくない。そんな中で、0に保ち続けるためにはどうしたらいいのかというのを考え続けながら生きている個体。それ以上でもそれ以下でもない物語。
幸せって人それぞれだよねというのが1番の感想。他者の幸せを否定しないように自分は自分の幸せを見つけたいなと思った。
Posted by ブクログ
イン・ザ・メガチャーチで、朝井リョウワールドにどっぷり浸かり、そのままの流れで購読。
語り手の設定が独特すぎて、最初は中々ページが進まなかったが、読み進めていくうちにまたまた朝井リョウの世界に入り込んでいった。
「ヒト」って確かにそういうものね、と語り手と同じ目線になれたことが非日常的で面白かった!
結論、毎日自分なりの幸福を感じながら過ごせたら各々いいと思ったが、資本主義世界ではそうもいかないのかも。