あらすじ
『正欲』から3年半ぶりとなる最新長篇。
とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
軽快な語り口で、生殖機能が語り続けます。軽やかであり、クスッと笑える口調とは裏腹に、内向的かつ解像度高く俯瞰しながらLGBTQ+目線から、または転生する生殖機能目線からの視点で社会や人間、生物の本質を見抜きバッサリとそれは爽快に活字にしてくださっています。救われると同時に、生殖機能が軽快に語ることで、こんなにも楽しく、事実に向き合わせてくれるなんて、天才!!!と感動しながら読み進めました。
最初の文章の「尚成…〜」って語り口からして小難しい主人公なのかな?と第一印象を感じつつ、読み進め 序盤で生殖機能が語るという衝撃。タイトルそういうことかー!と気付くと鳥肌が立ちました。「尚成」主人公の名前と、生殖機能からの視点、社会から見ても小生…、小さい人生…色んな意味を考えさせられる「しょうせい」が掛け合わさっていて、主人公の名前自体が「しょうせい」なのか…さすが朝井リョウさん…上手い!と感動しました。
生殖機能が語る という文体が発明すぎて、身震いしました。
しかも、生殖機能は魂のように意思を持ち続けたまま輪廻転生するという衝撃。
4の終盤の、
“何かしらのごっこ遊びを続けているだけなんじゃないか”
声に出して爆笑しました。
本当のことってこんなにも面白いんだ…!と改めて感じました。清々しく、資本主義の疑問と限界をこんなにおもしろく言語にしてくれて感動と感謝の気持ちが湧き上がってきました。
中盤にさしかかる辺りで、“尚成”は読んでいる自分自身でもある、と確信しながら読み進めました。
解釈の問題についての箇所は、自分の都合の良い解釈になってしまう(解釈せずにはいられない)人間って愚かだな…、自分の経験(日々、人に伝えたい事がうまく伝わらなかったり、話ズレてきてるなーと感じたり)からもそうだよな…という共感と、愚かな自分への反省(尚成は自分だ!だなんておこがましい!)と同時にやってくるこの矛盾した感情(共感と羞恥心と反省と)にさせてくださる朝井リョウさんの巧みな手法はさすがだなあ、と思いました。
生物によっての生殖機能の形成によっての行動原理の解釈は、すごい!!確かにー!!と読書(前のめりになりながら)していて楽しかった部分です。
会話の中で解決したようでその場限りの解釈での終結という現象(有耶無耶)は日常会話であるある!!と感じました。友達などとの会話の後、ひとりになって振り返ると、アレ違ったかも…とか間違ってたなーとかなることばかりなので。人と会うと毎回反省している私ですが、解釈のズレがあるから毎回疲れるのかー反省ではなくて解釈のズレでのストレスだったのかーと私の悩みをも新たな扉を開けてくれたような気がして、嬉しくなりました。
政治の話でもあるある!!根本を具体的に話し合おう!?ってことあるある!!!と感じて、感動しました。日々薄っすら感じていたこと(解像度が低く、モヤモヤになる感情)が、朝井さんの解像度の高い丁寧な文体で私の頭にある点と点が線に繋がり、アドレナリンどっっパー〜でした。
“ヒトって正誤の判断ができるわけじゃなくて認知能力とそれに伴う感情がやけに発達してるだけ”
たしかに〜となりました 笑
後半は一気に読み進めました。
AIナニーへの実現への未来があると思うと、現状 暗い方向へ向かいつつ感じていた未来も進化して希望が持てる未来にもなり得るんだな、と明るい気持ちにさせてくれました。
Posted by ブクログ
前提として、生殖機能目線の斬新な設定と難しい話題もすっと頭に入ってきてくれるようなライトな語り口が面白い!
でもそれよりも内容がこれまた自分に響くものだった。なぜだか読み終わったら涙が出た。感動とか悲しいとかではない。何故なのか自分でもわからず理由を考えてみた。
きっと私は(実は多くの人もそうなのか?)尚成のように力を入れず手を添えるだけでマットを運ぶ生き方をしてきた。もっと主体的に生きた方がいいというのは散々色んなところで言われてきているから理解はしているけど、その方が楽だから。そして主体的になれるような目標がない。頭を使わず没頭できる作業があることに安心するのにもものすごく共感。でもそれをずっと後ろめたく感じてきた。その末路を見ているようで苦しくなった。人の話も上辺だけで聞き、深い人間関係を作ってこなかったことも。恐らくこういう人間は、マカロン屋のおじさんのように内に内に籠るのを辞め自分を開放していくことで未来が拓けるのかなとも思った。けどその勇気もないし、そもそも自分の本音もわからないので開放のしようもない。そのあたりの苦しい気持ちは普段胸の中の見えない届かないところにしまってあるはずなのに、それをチクチク針で刺されたような感覚になった。
颯のようにありのままの自分でやりたいことを見つけて生きるベースには、家庭と学校での受け入れられてきた経験があるっていうのが、最近よくきく自己肯定感ってやつなんだろうな。
何か自分の生き方を改善する答えが見つかったわけではないけど、色々考えを巡らせるきっかけになった。
Posted by ブクログ
【AIによる概要】Claudeとの対話より
* 共同体や資本主義の仕組みの捉え方が良かった
* 共同体に加わってハッピーエンド、という展開にならないところが良かった。どう読み取るかまでは整理できていないが、「そういう在り方もありえる」と感じた
* マイノリティの描き方がうまい。『正欲』と比べて、よりポップに別の角度から描かれている
* ドキッとする描写もありつつ、朝井リョウらしいポップな語り口が面白い。話し方が自分と似ている部分もあってクスッとした
* 一瞬で読み終わった
Posted by ブクログ
朝井リョウ作品には、個人的には小説っぽい小説と、評論っぽい小説があると思う。
本作は評論っぽい小説で、個人的には朝井ワールド全開!!と沸き立ったが、大衆受けするのは小説っぽい小説の方だと思うので、本屋大賞にノミネートされたのが本作、というのは意外な感じがした。
生殖機能、という斬新な視点ではあるが、斬新だからおもしろい、という単純なわけではなく、月並みな言葉にはなるが、忠実に「生物学的な視点からの現代社会」を描ききった点が本作のおもしろさであると思う。
特に、SDGsやLGBTQ+に対する評価の仕方は、これらに対する私のモヤモヤを具現化したようで、心に留めたい言葉がたくさんあると感じた。
Posted by ブクログ
美しく洗練された表紙だと思った。生殖の記。古事記を連想した。重厚な話が展開されるのだろう、と想像して読み始めたら、それは生殖器視点の語りだった。
人間ではない視点でコミカルな語り口。作者はふざけてるのか等と思いつつも、さくさく読み進められ、その中で、いつの間にか、人間の幸せとはなんなのだろう、という真面目な問いに辿り着いた。娯楽としての面白さと、哲学としての興味深さが共存している、斬新な本だと思った。
成長だけが全てではない。仮に生産性がなくたって、平等に扱われなければならない。平等権は基本的人権の内の一つだ。
人間は成長や拡大を目指し過ぎている、という視点と、実は誰もが成長や拡大には限界があることに気づいているが、相互監視の状態で言い出せないだけ、という視点が興味深かった。
成長ができなくても、本人が幸せに生活できる環境を整えられたら理想的だ。しかし、成長しない/生産性の低い人間をほっておいてくれるほど社会は優しくない。
途中、ちょうど他の本でも読んだ、アドラー心理学の話も出てきた。共同体への貢献が幸せにつながる、という話。確かに「貢献できている」という思いは、幸せに繋がるようにも思う。
しかし、これって実は洗脳なんじゃないか、なんて思ったりした。社会に貢献できていることを、褒め、讃え、幸せと感じるように矯正されているのでは、なんて考えた。
また、同性婚への議論も、当事者ではない私は、ついつい「理解が進んで良かったね」等と考えてしまうが、そもそも理解しているしていないに関わらず、これまで不当に扱われていたこと自体がおかしいのだ、という当たり前の主張に、耳が痛かった。
以下、引用。
そもそも同性愛個体同士が婚姻関係を結ぶためにどうして異性愛個体の許可が必要なのでしょう。異性愛個体同士の結婚に同性愛個体は賛成も反対もしていないのに。そんな余地もないのに。
引用終わり。
こちらの主張ももっともだと思う。特権を持っている人間は、それが当たり前になってしまい、自身の特権に気づかない。このことには、自分自身も注意を向けていきたいと思う。
生殖器がしゃべる、という、ギャグ漫画のような設定から、こんなにも考えを深められる物語になるとは思いもしなかった。朝井リョウ氏の他の作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
上司に「人格を持ってるとさ………性器が」と教えてもらって、どういうこと?!と俄然興味を持って読みました。
面白かった!!
朝井リョウさん初めて読んだのですが、とてもテンポが良いですね〜。読みやすかったです。
そして、同性愛者ではないものの自分も感じたことがある、社会を構成する一人としての生き苦しさが言語化してあって、わかる〜、と感じながら読みました。
面白い本なのに、私の言語化能力が低すぎて伝えきれない!もどかしい!
親個体と少しでも違う遺伝子持って生まれてきただけでオールオッケー!みたいなところ、好きです。
Posted by ブクログ
インザメガチャーチは難しそうだけど、こちらなら読めそうかも、むしろどんな本だよという興味で購入。
尚成と同じで現状維持しか希望していない仕事でも、趣味でも、日常生活でも、家庭でも自然と"今よりもっと"を求めるし、求められるし、監視カメラが今よりなければ確かに私もただ生きている、だけのヒトになってしまいそうかもと思った。
最初は同性愛、異性愛個体とか色々出てきて、難しい内容で合わないかもと思ったけど、読み進めていくうちに尚成にも同感する部分が増えていった。
何はともあれオス個体目線で語られるのがシュールで面白かった。この小説の1番の良さなんだと思う。
話の内容の一部に出てきた、近い将来実現されるのかもしれないけど、有性生殖じゃなくてAIとか人工的なモノからヒトが作られるのは怖い。制御できない個体が出てきそう。
Posted by ブクログ
思っていたのとは違うけど面白かった。特に幼少期の経験などが人生に与える影響は大きいよねと頷けた。自分は同性愛者ではないが、頷ける部分も多かった。
Posted by ブクログ
いやーおもしろかった!自分とは全く違う考え方をする人の気持ちの動き方がわかった気がして、とても新鮮で楽しかった。理解できないような人と人が今も尚同じ世界で暮らしているのは、それぞれにそれ相応の役割があるとも考えられた。それにしても、それぞれが頑張りすぎずに生きやすいような世界であり続けて欲しいと思った。
なにより最後に、生殖器が語り部になった経緯を説明してくれたのがすっきりしてよかった。
朝井リョウさんのエッセイを呼んだことがあるけど、ところどころ、あー朝井リョウさんだー!となる文面があって、それも楽しめた!ほんとに読みやすくて、大好きです。
Posted by ブクログ
総論興味深くすらすら読めた。令和を捉えるのががやはり上手な朝井リョウ!
普段なら自分にもっと刺さる内容のはずだけど、おそらくタイミングの問題?で期待ほど刺さらなかった。。
以下メモ
人間は社会の拡大、成長、発展に向けて動き続けるしかない生き物であるという視点は、日頃自分も考えるテーマだから共感した。非現実的だと分かっていても全世界の発展を一斉に止めれば良いと何度思ったことか。思えば世界レベルでなく個人レベルで考えてみても"今日の夕飯味付けイマイチだったから次は醤油足してみようかな"とか"この部屋散らかっているから棚買って整理しようかな"とか、日々の生活でも小さな成長を繰り返している。これが無くなると主人公のように本当にただだらんとするのみ。成長発展は生命に課された逃れることのない宿命なんだな、と、改めて気付きを得てもう諦めることにした。。。
あと主人公の生き方の背景には「自分を虐げていた側の社会に貢献したくない」的な怒りの要素や、そもそも異性愛者優位の社会でサバイブに必死という要素があったと思うんだけど、そういった背景が全く無い(異性愛者、それなりに困らず生きてきた)のに社会の発展に興味が無い•どうでもいいと思う人々(これが現代の大多数だと思うのだけど)のことはどう捉えれば良いんだろうか。朝井リョウに聞いてみたい!
作中で出てきた、まだ咀嚼できていないけど覚えておきたい楓のセリフ
「否定系の意思表示って誰にも見えないんですよ」「どんどん外界を遮断して、自分から独りに逃げ込んで、色んなことを"してやらない"ってして、それで世界を否定した気になっても、周りから見ればそれって、ただそこにいる人なんです」「意識してやらないでいたこととか、意識して言わないようにしていたこととかって、誰の目にも見えない分、自分にだけはめちゃくちゃ目につくようになると思うんですよ。切り捨ててきたものたちが、逆に自分をどんどん縛っていく。」