あらすじ
『正欲』から3年半ぶりとなる最新長篇。
とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。
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Posted by ブクログ
小説というより良質な評論を読みを得たような読後感。
浅はかな私たちの腹をえぐるのなんのって。
成長・発展するしかないチキンレースの中で、このレースに違和感を持ちながらそれでも仕方なく従っている人って全体のどれほどの割合なんだろーってこういうお話を読むとぼんやり思う。きっと全員が全員気づいていて上手く装っているだけなのだろう、とも思う。全身全霊で100%心酔しきっているなんて考えられないしなー、程度はあると思うけど。
朝井リョウは同世代の鬼人だね。言語化の権化、時代を切り取る魔術師だね。とはいっても確かまだ2作目。彼の思想を養分に育っていきたいという願望が芽生えた。読み進めてみよう。
Posted by ブクログ
『正欲』に続いて多様性がテーマ。みんながなんとなく思ったり感じたりしていること(無意識かもしれない)を、「朝井さん、言っちゃった!」という印象で読み進めた。「しっくり」来ない感じの正体はこれだったのかと。
結局、みんな何を尚成に言いたかったんだろう。それを考えるのは面白い。
ミステリーではないがネタバレしないで読んでいただきたい作品。
余談ですが、読んでいる最中、尚成の雰囲気が自分にもうつってしまい、やる気が出なくて困った笑。
Posted by ブクログ
オーディブルにて。
同性愛者の30代未婚男性の生殖器が語り手、という今までにないスタイル。
主人公は同性愛者であるが故か本来の性格なのか、無気力で生涯の時間潰しのために日々を生きているような生活。
始めは堅苦しい表現かなと思いきや、朝井リョウさんらしいマイノリティの視点6割、いつものエッセイの面白さ4割でとても面白く読めた。
確かにLGBTなどの同性婚を認める認めない論争に一般的な異性愛者が入ってくるのも場違いだし、その異性愛者の恋愛については議論の必要性すらないと言うのに。
朝井リョウさんの本は私達が認識していない当たり前に気づかせてくれるし、新たな視点の気づきが大きい。
本当どんな生活してたらそんな気づきが得れるのだ…?
Posted by ブクログ
正欲ほどの感動はなかったけれど、設定が面白いのと話がテンポよく進むのですぐに読み終わった。
共同体の中に生きていることが普通である私には別の世界にいる主人公の考えが新鮮だった。主人公と同じようにゲイである会社の後輩は全く違う生き方をしていて、マイノリティだから、と一括りにして考えてはいけないなと改めて思った。
人工授精が発展して生殖器が進化の過程で無くなるのではないかという説には少し恐怖を感じた。
Posted by ブクログ
尚成みたいな何もかもに対して無気力で、ただただ時間をかけて時間を消費するタイプの人間がいるなんて衝撃的だった
拡大発展成長こそが至高とばかり思っていた自分としては頭を殴られたような感覚、、
何も中身がないことをそれっぽく言う能力が高い人って結構いるよなと思った
それは尚成が小さい頃から植え付けられた張り紙だったり、トイレの前の通せんぼだったり、街頭演説だったり、フィルタリングだったりが少しずつ蝕んできた成功体験の真逆の営みなのだと、トラウマなのだとわかった
多様性だったりは時代の潮流で、本気で思っている人は少数で大多数は時代に流されていて、尚成を昔痛めつけた人々は呑気に多様性だよねーと言っているのだと言うところがぞ自分にも当てはまりそうでゾッとした
まじでこういうことあったんだよな
人の意見は鵜呑みにするなって言うのが、自分らしく生きろっていうことじゃなくて、そんなふうに人の価値観は簡単に変わりうるからだってことがめっちゃしっくりきた
マルヤムの話も、神がいる国では全て良いこと悪いことが決まっているが神がいない日本では、共同体の目線が神(=行動原理)であるということ、
動物との対比で、自然界の摂理(=半球睡眠など)が人間には通用しないようにしてしまったせいで、共同体の拡大発展成長を追求し続ける、終わりのないレースを続けてしまうことだと、それによって苦しみ自殺してしまうヒトがいるのだと、興味深い
時たま現れる朝井リョウ語、を話す生殖器が面白い
Posted by ブクログ
とっても不思議な本だった。主人公に共感できないからということもあるし、語り手がそもそも性器って。物語ではあるけど昨今のLGBTQや生殖医療について言及されていて新書を読んだかのような読後感でした。
Posted by ブクログ
朝井リョウさんの著作のなかでもちょっといまいちな感じの作品でした。少子化やLGBTQ+のことに触れていて、尚成という主人公の生殖器目線での語りで話は進むわけですが、この主人公の行動には謎が多く、周囲の常に前進していこうとする流れにしっくりこない日々を過ごし、もやもやしながらも日々の業務を当たり障りのないやり取りで切り抜けていく感じが、周りにもいるなぁという感じでした。読後もなんだかなぁ…という良くも悪くもなく、読まなくても良かったかもなと。