朝井リョウのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ質の良いものに触れることを大切にする尚吾と、
良いと思うものは自分で見つける、という紘。
大学卒業後、尚吾は憧れの監督の元で働き、
紘はYouTubeの世界へ入っていく。
「みんな重たいものは見たくないんですよ、
時間を潰せる軽いものを欲してるんです」と泉は言う。
作品を世に送り出すことが
簡単にできるようになった現代で、
何を基準に価値を決めるのか、
そもそも価値って必要なのか、分からなくなった。
鐘ヶ江監督が尚吾に向けて言った、
「尊敬する人の言葉を信じるんじゃなくて、
その言葉をきっかけに始まった自分の時間を
信じなさい」という言葉が良かった。
誰かを盲信するのは、場合によっては
成長が止まってしまったり、思考停止に陥りかねない。
でも、誰かを尊敬して積み重ねてきた行動や思考は
消えることはない。
監督を諦めたものの、
自分に合った仕事を見つけた浅沼と
自分には監督の才能がないから、と
今の時代に合ったやり方にシフトした泉は
道筋が似ている気がする。
でも浅沼には好感が持てたけど、
泉はあまり好きではないと感じた。
単純にキャラの違いなのか、
浅沼は尚吾に関して感じたことを
ただ伝えているだけという気がして、
泉は尚吾たちのことを古い人間だと
見下しているような感じがしたからかもしれない。
浅沼が尚吾の作ったお話について
「多様性を一作品に詰め込むのっておかしい。
本来、色んな人が色んな極端な作品を作り出すのが
多様性なんじゃないか、
私たちはそのひとつの極端にすぎない」
というようなことを言っていて、
時代的にウケそうな作品を作る人も必要だけど、
尚吾はそういう人じゃないって理解して
アドバイスしている感じがいいなあ、と思った。
最後の会話で千紗が、尚吾や自分たちが今まで
やってきたことを「星形」や「ピラミッドの頂点」に
例えていたのが、分かりやすくて納得した。
「最高の環境で、高品質の技術を学んだ自分たちは、
大は小を兼ねるの"大"だと思っていた、
だから自分より小さい人たちが認められて、
自分の差し出したものが認められないと
イライラしていた。
でも実際の星は星形じゃないし、今は
自分が見えた星の形を描いて、
これが星ですって言っていく時代になった。
私たちができるのは
ただお手本の星形を描くことだけ、
ピラミッドの頂点の一点を押さえられるだけで、
全体を塗り潰せるわけじゃない、傲慢だった。」
と反省する。
その後、
「でも、あの星形をきれいに描くことを
頑張ってきた時間も、絶対に無駄じゃない」と、
鐘ヶ江監督と似たことを尚吾に伝える。
尊敬する人の言葉、信じてきた星形、
それらが時代に取り残されそうでも
積み重ねたものは、これから先、ちゃんと役に立つ。
また二人で一緒に作品を作っていくのかな?と、
良い意味で続きが気になる終わり方だった。
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Posted by ブクログ
今の時代、テレビ、ラジオ、映画、YouTube、ネトフリなど様々な媒体で発信ができるようになり、確かに万人が認める「スター」はいなくなってしまったような気がする。少し前までは、今やってるドラマや映画が誰にでもできる雑談の話題だったのに、今ではそういった共通の娯楽は少なくなってしまった。誰でも発信できるのは良いことでもあるが、それだけ受け手が自分が本当に良いと思うものを自分と相談しながら評価し、好きなものを見つける必要がある。いろんなものに対してアクセスするハードルは下がったが、それだけ選択肢が増えてしまい、正直疲れてしまうこともある。何を得られるかも重要だが、同じくらい何を捨てるか何が失われているかを意識するのが大事になってきている。私もやはり質の面で見れば映画のほうがYouTubeより優れていると感じてしまうが、おそらくそれはお金を払っているからであり、お金を払っているからそれなりのものなんだろうという先入観も入ってしまっている気がする。自分が好きなものに出逢おうとするとき、何を通じて出会うかというその媒体の違いは、その質の違いとは分けて考えなければいけない時がきていると思った。
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Posted by ブクログ
異常性癖が原因でマイノリティに属している人達の物語と受け取った。
彼らはいかなる日も自分をジャッジし、絶望しながら生きてきたのだろう。
その息苦しさが痛いほど伝わってくる。
「自殺の方法を一度も調べたことのない人の人生は、どんな季節で溢れているのだろう」という文はあまりにリアルすぎる。
ラストの夏月の伝言は本作の希望そのものだ。
逆に自分自身と向き合う機会のなかったマジョリティ側の人間の末路は悲惨なもので、実際にありそうな転落例だった。
多様性という言葉には時に上から目線な空気が纏わりつく。
実際、作中人物のように響かない人、煩わしいと思う人も少なくないだろう。
多様性が魔法のワードでないことは留意したい。
正欲がマジョリティ側の唱える「明日死なないこと」だけではなく、「気持ちを共有できる仲間との繋がり」でもあるのは本書を通して感じた事だ。
ただ後者はどこかの誰かの都合や、犯罪行為によりいとも簡単に踏みにじられる。
規制、言論統制へと舵を切った現代はひどくつまらなくなり、人の居場所を奪い続けている。