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死んでしまいたいと思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(「健やかな論理」)尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が写されているような気がした。(「そんなの痛いに決まってる」)生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(「籤」)等鬱屈を抱え生きぬく人々の姿を活写した、心が疼く全六編。
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Posted by ブクログ
みんな何かを背負って、我慢して、ちょっとずつ生きてるんだな。 辛いときに辛いと、悲しいときに悲しいと、助けて欲しいときに助けてと、大人になっても言える場所があるといいな。 明日に向かって頑張って生きてみようと思う。
結局生きていくことは楽しいばかりでなく辛いことなのだと、だからこそどうしても生きてるのだと感じた。朝井リョウさんの作品は初めてだけどとても良かった。
『健やかな論理』 かなり短い話なのに、読後にずっと残るタイプだった。 主人公は、自殺した人のSNSを遡り、死にたくなる前触れを探すのではなく、むしろそこに因果関係が存在しないことを確認して安心している。 普通に投稿し、再配達を頼み、日常を続けていた人が、ある時突然死を選ぶ。 その不安定さを確認するこ...続きを読むとで、「人間はそもそも説明できない存在なんだ」という感覚に安心しているようにも見えた。 この話の面白さは、「死にたい理由」だけではなく、最後に「生きたい理由」も同じように説明できないものとして描いているところ。 人は大義名分や明確な理由だけで生きているわけじゃない。 読みかけの本、明日の予定、何気ないSNS、些細な楽しみ。 そんな曖昧で非論理的なものに、いつの間にか繋ぎ止められている。健やかという言葉の安心感と、論理という冷たさが、最後まで静かに不気味な短編だった。 『流転』 妻の妊娠をきっかけに夢を諦めた男が、 その選択をずっと心のどこかで引きずり続けている話。 ただ、この短編が上手いのは、単純な「夢を諦めた後悔」で終わらないところ。 主人公は後になって、新しく会社を立ち上げるという別の夢にも惹かれるが、今度は安定や継続との間で揺れ続ける。 結局、人はどんな選択をしても、選ばなかった人生をどこかで美化してしまう。 夢を追った人生。安定を選んだ人生。家庭を優先した人生。 どれを選んでも、別の可能性は失われなかった未来として残り続ける。 だから人生は、後悔を完全になくすことではなく、 自分が選んだ選択と、どう折り合いをつけていくかの連続なのかもしれない。 「あの時違う道を選んでいたら」という感情を抱えたまま、 それでも今の生活を続けていく。 静かな話なのに、年齢を重ねるほど刺さる短編だった。 『七分二十四秒めへ』 派遣切りに遭い、将来への不安を抱えながら生活する女性が、唯一心待ちにしているもの。 それは、世の中的には何の役にも立たず、 学びも感動もなく、「無駄」とすら言えるような時間だった。 でも、この短編が鋭いのは、 その無駄こそが、彼女にとって生きるために必要なものとして描かれているところ。 今の社会は、何を見るにも、 「意味」「成長」「学び」「自己投資」 を求められる。 SNSも動画も読書も、何かを得なければいけない空気がある。 だからこそ、何の評価軸にも乗らないもの、何の役にも立たない時間が、逆に人を救うことがある。 バラエティ番組をぼんやり見る時間。くだらない会話。何も残らないコンテンツ。 本来なら無駄とされるものが、張り詰めた現実から、ほんの少しだけ人を解放してくれる。 「生きる理由」みたいな大きな話ではなく、人は案外、そんな小さくて説明のつかないもので、ギリギリ生き延びているのかもしれない。 静かな話なのに、現代社会の息苦しさをかなり鋭く突いた短編だった。 『風が吹いたとて』 タイトルは「風が吹けば桶屋が儲かる」を踏まえているが、この短編に込められているのはむしろ逆の感覚だ。 「風が吹いたとて、だから何なんだ。」 そんな乾いた現実感が全体に流れている。 物語の中心にいるのは、誠実で真面目な夫と、その妻。 夫は、自分の行動や正しさ、社会との関わりを深く考え、自責し続ける。一方で妻は、そんな大きな正しさよりも、今日の夕飯や明日の生活、半径5m以内の現実を回さなければならない。 この対比がとても苦しい。 夫の誠実さは決して間違いではない。 でも、生きるということは、理想や倫理だけでは回らない。 結局は、「今日をどう乗り切るか」「目の前の生活をどう続けるか」の方が、よほど切実で重要だったりする。 だからこの作品は、正しさを否定しているわけではなく「正しさだけでは生活は守れない」という現実を描いているように感じた。 最近、自分自身も折り合いについて考えることが多い。 理想、誠実さ、責任感、自己満足、生活。 どれか一つだけを選べるわけではなく、人はその全部を抱えながら、なんとか折り合いをつけて生きていくしかない。 静かな話なのに、読後にじわじわと現実の重さが残る短編だった。 『そんなの痛いに決まってる』 尊敬していた上司のSM動画流出をきっかけに、自分自身の性の悩みについて改めて向き合おうとする話。 題材自体はかなり興味深かった。常に低姿勢で責任感が強く、誰からも信頼されている上司が、なぜSMという行為に向かっていたのか。表の人格とのギャップには惹かれるものがあったし、優しい人の裏側”を覗き見るような不穏さも面白かった。 ただ、個人的には短編集の中では一番響かなかったかもしれない。主人公の性の悩みも興味深かったが、比較的理解しやすい地点に着地していて、テーマの危うさに対して、読後の感情は少し整理されすぎている印象もあった。 『籤』 短編とは思えないほど濃厚で、長編を読んだ後のような疲労感と読後感が残る作品だった。 その反面、扱っているテーマや要素がかなり多く、個人的にはもっと長い尺でじっくり読みたかった気持ちもある。 「どうしても生きてる」の中でも、読み進めるのが一番苦しかった話かもしれない。 ただ、その苦しさがあるからこそ、逆に一番希望を感じた。 人生を「当たり」「外れ」の籤みたいに考えてしまう瞬間はある。 何を選んだか、選ばなかったか、どの道を引いたか、そんなことで人生が決まるように感じてしまう。 でもこの作品を読んで、人生は確率や正解の問題ではないのだと思った。 どんな道でも、どんな人生でも、その先にしかない景色や続きがある。 「どうしても生きてる」というタイトルの意味が、静かに胸に残る作品だった。
いま、私すごくすごく心が弱っていて。 そんな時に読んでしまったから、評価が星5になってしまいました。苦しくて苦しくて。共感できる喜びがあって。この本のお陰で、言語化してくれたお陰で、流せる涙があって。 苦しい時にはこの本を読もうと思います。 私の舞台も明るくなってくれたらいいな。
どうしても生きてる。 変な日本語だな、と思いましたが読み終わってみて、あー、、これはびったりな表現かもと思いました。 どの短編もノンフィクション寄りのフィクションに感じました。生きていくなかで、外に吐き出すことはないけど考えてしまう、醜い自分。 そんな自分を抱えながら、どうしても生きてる。 また...続きを読む時間が経った頃に読み返してみようと思います。
********************************************* 1.自殺者のSNSを特定することがやめられない女性 2.夢を諦め過去を捨てて結婚し会社員になった男性 3.派遣切りにあった女性の鬱憤と焦燥と唯一の癒し 4.家族や日々の生活で手一杯になる女性の自己嫌悪 5. ...続きを読む妻と自分の収入が逆転し、妻への愛が揺らぐ男性 6.出生前診断で、子供に障害があると判明した女性 ********************************************* 短編嫌いの私だけど、やっぱりそこは朝井リョウ。 面白かった!手を差し出すけど冷たいとこも好き。 今を切り取り、それをキャッチーに落とし込む技。 自殺者SNS、バクマン、炎上系YouTuber、 不正の片棒、SM動画流出、はずれくじ、 ほ〜らほら、興味をそそるワードばかりだろう?笑 人生半ば、「詰んだかな」と思いながらも、 それでも生きていくしかない人たちの群像劇。 全⑥篇、どの物語も容赦なく心を抉ってくる。 孤独感、自分の弱さ、日常の苛立ちと葛藤、 光を浴びる側の人間と、消費されていく側の人間。 救いがないように見える物語の最後で、 奥底に小さな希望を見つけてしまうような余韻。 希望を見出せなくても続く人生のやりきれなさ。 「痛い」けど自分だけじゃないという奇妙な安堵。 別に目標があって生きているわけではない。 生きるのをやめる理由もないから生きている。 その中でわずかな快楽にかろうじて縋りながら。 みんなが「もういいや」と思う瞬間がきっとある。 それでも、死ねないから、『どうしても生きてる』 はーータイトル秀逸! 最終話のラスト1ページまで絶望しかなかったのに 最後の最後でざまあみろ感に涙しか出なかった!! これがスカッとジャパンてこと…?(え) (そして別にそこまでスカッとしません) ----------✂︎-----------✂︎----------✂︎-------- 結局男って自分より社会的地位の低い女しか抱けないの?言わんとしてることは分かるけど、唯一胸糞悪かったかな…でも男女逆転してたら別に気にならないのかなうむむむ… ----------✂︎-----------✂︎----------✂︎--------
朝井リョウの小説は、現実、そして現代そのものだなと痛感しながら読み進めた。 主人公がどん底に突き落とされた状態で、もがき苦しむ最中に物語は終わる。 改心したり、明るい未来が来ることがなく、もしかしたらそんな未来が訪れるのかもしれないが、現実はそう甘くない。 明るい未来が見えることはなく、今よりは...続きを読む良くなるかもしれない未来を生きていくしかない主人公たちに、自分の人生を重ねたりしながら、たまに思いを馳せたいと思った。 自分の思い描いた人生に起こるはずのない事が起こっても、訪れるべき幸せが訪れなくても、道が外れてしまっても、受け入れて生きていくしかない。 そうすることで、受け入れられずに誰かを犠牲にしてきた人達が見ることの出来ない未来を生きることができる。そう信じて生きていく。
自分の頭の中で思考がぐるぐる回る人間にとってはその思考の根源と感情を教えてもらったような本だった。生まれ持った自分のマイナスをリカバリするように、大人になってからは自分が意識的に恵まれている、人より何かで優れていると思えるような選択を、自分の意思や感情とは別に無理やりしてきたことを目の前で見せつけら...続きを読むれた感じ。
深い。言語化がうますぎる。感情の機微を繊細かつ正確な比喩で表現されていて、文章がするっと自分の感情に重なってくる感覚があった。鮮やかな生の話ではなく、タイトルどおり、ぎりぎりのラインでかろうじて保たれている生の話が綴られている。短編集だけど、一つ一つの内容が重くてこころにずっしりとおもりがのしかかる...続きを読むかんじ。不完全燃焼の話もあるけど、それがいっそう現実感を掻き立てる。なかでも一話目の話が1番印象に残った。きっと心のどこかで私も似た感情を抱いて生きてきたからだと思う。 「いつだって少しだけ死にたいように」 「いつだって少しだけ生きていたい自分がいる」 「こういうことがあった辛くてたまらないもう死にたい死にたい死にたいって助走があるわけじゃなくて、ふと、なんか、別にもういっか、ってなる瞬間。」 ほっそい糸がプチンと切れて、全てを諦めたような感情になるときがたまにある。こういう経験をした人にしかわからない感情が、この本では100%の精度で言語化をされていた。 この作者の別の本ももっと読んでみたい。
生きている中でどうにもならない、歳をとるにつれて言葉にも態度にも出せなくなっていく想いが綴られている物語に感じた。みんな、痛いと叫びたい、苦しいと言いたい、でも言えない。そんな現実と、その現実で生きていくしかない人生への向き合い方を上手く言葉にはできないけれど自分の中に落ちてきた。
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