朝井リョウのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
アイドルが「女の子」や「幻想」を売る時代は終わり、確かな技術があるものが売れる時代に変わった。それらは、本人が自ら考えて選択したものでないと本物にはなれなくて、選ぶための信念がある者が残っていく時代でもある。
それがパーフォーマーとして正しい評価のされ方たし、るりかが作中で言っていたように、女の子が表舞台に立つには「女の子」を売るアイドルとしてのシステムが必要だった、という時代に比べると、はるかに正しい。10年前に書かれた未来に今なっているということがとても驚く。
だが、それゆえにまやかしが効かない、本当に技術のあるものが残る時代なんだとも思う。
その技術は歌や踊りでもあるし、もはや「可愛い -
Posted by ブクログ
「待つ それだけのことが、俺たちはどんどん下手になっている」
この一文は、現代社会を非常に高い解像度で切り取っている。
物と情報が氾濫した現代で、すべてのものがインスタントに消費され、生まれては消えていく。
「ないものをあるようにみせる」人間が跋扈し、小さなコミュニティが乱立する。
無駄に多忙な生活のなかで、本当に大切な「あるものがないように」生きている。
でもそれでいいのだと思う。
なぜなら、騙す人よりも「今はそれに騙されていたい」という人の方が多いからだ。
「酔っていたい」という自分の内側の声に気づけている場合はまだマシだが、多くの場合はその声があることにすら気づけていない。
いってみ -
Posted by ブクログ
20歳を迎える5人の男女を描いた短編集。
かつて夢見た大人像と今の自分とのズレに違和感を覚える時期は、誰しもが通る道だと思う。また、その後も常に抱え続ける課題だ。20歳をとっくに過ぎた今も、私はその感覚を持ち続けている。
そういう意味で本作は、若者だけの物語ではない。
それぞれの短編がゆるやかな繋がりを持ち、登場人物たちは都度別の視点で語られる。誰かにとっての憧れの人物も、大きな劣等感を抱えていること、他人が羨むような立場の者であっても一人の人間であることが的確に語られているのが見事だった。
短編集という語り口ではあるが、没入力の高い一作だ。
LINEはあるが音楽配信サービスがないという -