朝井リョウのレビュー一覧
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第148回直木賞受賞作品。
多くの人が経験する/したであろう就職活動をテーマにした作品。「何者」であるかを求められ証明させられ選別させられる、社会に晒されれば当然のことを特定期間一斉に行うことが異様な光景と思われるのだろう。そのなかにSNSという現代性を取り入れ人間の裏表を描いた点が興味深い。著者の小気味よいテンポの文章やキャラの描き方が光り、終盤の叙述トリック的どんでん返しやフラッシュバックするような演出は惹き込まれる。傍観者である我々を含めた者らへのつるし上げはやや歪んだカタルシスを得られる。
直木賞受賞作品といわれると少し疑問があったが、その後の朝井リョウ氏の作品を見ると納得の受賞であっ -
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ネタバレAudibleにて。
ゲイの生殖器視点で、性的マイノリティの苦悩を描いた作品。
ゲイである尚成が、学校と家族という共同体から拒絶された経験をもとに、性的マジョリティによる性的マジョリティのための社会に対する活動に対して線を引き生きていく話。
面白い見方だと思ったのは、性的マイノリティが認められるようになった風潮に対し、尚成が、「認めるって何様だよ!そんなとこ言う前にまずはこれまでのこと土下座しろよ!」と憤る考え方だ。
すべての発言がSNSなどの空間に漂い続け、時代が変わり、考え方をそれに合わせてアップデートしたとしても、かつての発言は残り続ける。
ここで尚成は、社会レベルにたいし、まず謝れと言 -
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声を出して笑ってしまったエッセイ。
特に印象に残っているのは、大学時代の「地獄の100キロハイク」のエピソードだ。
埼玉から早稲田まで、100キロ歩くという狂気のイベント。屍のようになりながら、ボロボロの状態で歩き切った末に綴られる一文が、忘れられない。
「本当に本当に本当に本当に
人生諦めなければ何だってできるのだ。
だけど明日は何もできない。
世界で一番綺麗な二律背反が誕生した瞬間だった」
あとは「モデルケースを体験する」という章も秀逸だった。カットモデル、カラーモデルとして美容室に行くのだが、出てくる美容師さんがとにかく癖が強い。
文字だけなのに情景がありありと浮かび、まるでコントを -
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ネタバレ同性愛者である主人公の男性の性器?が語り手の物語。
生殖器としての役割だけでなく、主人公の頭の中まで理解しながら話すため、主人公が人と行動するごとに実況が入ってるようで面白かった。
少年時代に同性愛者であることを疑われ、差別された経験から、周りに公表することや深い人間関係を避け、ただ生きるためだけに保守的な行動をする主人公。同性愛者であることを思考し続けて、自身の生き方を決めつけていたが、同じ同性愛者の後輩がオープンな行動をしているのを見て、自分もできる範囲で人の役に立てる、自分が楽しいとも思えることをして生きようと改心して終わる。
語り手の斬新な立場、軽い口調が面白く印象的だった。同性愛に -
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ネタバレ1.水フェチってなんやそれ?!となるけど、おそらく読んでいる人に不快感を与えないフェチとして出してきてたギリギリの線だったのかな?
2.他人の性志向ってそんなにみんな気にするものなのかな?家族とか好きな人とかならギリ関係あるけどそうじゃない人は普段が普通なら関係なくない?(犯罪にならないならば)
3.なんだかんだ八重子が一番エグい。あれだけ大也に関わってきて、あっさり平穏な生活に帰っていく。自分の抱えてる闇、みたいな描写あったけどそれだって所詮は他人のこと。その対象としてみられた嫌悪感だけ。あ、そうか性欲の対象として見られた人間の描写っていう立ち位置でもあるのか。一般人としての立ち位置だけでは -
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ネタバレやはり面白いなあ。生殖器目線の語りなんて今までなさすぎて発想がもう異次元。そしてハッとなるような言葉ばかりでてくる。最初は読み進まなかったけど後半に向けてどんどん読んでいった。
それでも、生きていくっていう主人公を書くのが朝井さんぽいと思う。
「人生に大きく関わることほど自分で選べないって、本当だね。大人になればなるほど、その意味がわかるようになる」
「偏見ないよとか言ってくる相手に俺はめちゃ偏見持ってたりしますし、気にしないよとか言われてもお前が気にするかどうかは俺の人生に関係ないから自意識過剰だなって思いますし。誰を好きになってもいいとかお前に許可出される筋合いないし時代関係なく俺は -
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ネタバレいやーこわい。
心霊とか、ヒトコワとかそういう次元じゃなくて。
自分のすぐ隣にありそうな、どでかい落とし穴な感じがリアルで怖かった。
現代社会の厳しさと、そこに生きる人たちの寄る辺なさ
社会で孤立してしまう自分が
寂しさで潰れてしまわないために"推し"をつくる。
SNSやオンラインが主流のいま。
外に出なくても生きていける世の中にしてしまったがために生まれる孤独。
推しに対する愛情や、推し仲間との繋がりで孤独さを癒す。
なんだか、色々と本末転倒だよな。
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誰かの目に晒されたとき、外部との違いに気付くことや指摘されることが恥ずかしい。
その恥ずかしさに負けないために視野を