あらすじ
【正しい選択】なんて、この世にない。
「武道館ライブ」という合言葉のもとに活動する少女たちが、最終的に“自分の頭で”選んだ道とは――。
様々な題材を通して現代を描き続けてきた著者が今回選んだのは「アイドル」。
視聴者のあいだで物議を醸したドラマ化を経て、待望の文庫化。
解説には、音楽家として多くのアイドルをプロデュースしてきたつんく♂を迎える。
結成当時から、「武道館ライブ」を合言葉に活動してきた女性アイドルグループ「NEXT YOU」。
独自のスタイルで行う握手会や、売上ランキングに入るための販売戦略、一曲につき二つのパターンがある振付など、
さまざまな手段で人気と知名度をあげ、一歩ずつ目標に近づいていく。
しかし、注目が集まるにしたがって、様々な種類の視線が彼女たちに向けられるようになる。
そして、ある出来事がグループの存続さえも危うくしてしまい……。
「人って、人の幸せな姿を見たいのか、不幸を見たいのか、どっちなんだろう」
「アイドルを応援してくれてる人って、多分、どっちもあるんだろうね」
恋愛禁止、炎上、特典商法、握手会、スルースキル、無料文化、卒業……
この数年であっという間に市民権を得た言葉たちの中には、
アイドルという存在から発生したものも多い。
新しい言葉が生まれた場所から見えてくるのは、今を生きる人々の様々な一面。
現代社会での生き方を模索するすべての人へ送る、真摯な物語。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『武道館』というアイドルにとっての成功の証に焦点を当て、夢を追うことの美しさ、その過程で待ち受ける残酷さを描いた作品。自分の人生を自分で選び、自分で引き受けることの尊さを教えてくれる一冊でした。
「限りあるものをどう使うかに、その人らしさが出る」、アイドルとしての自分に費やす時間、体力、そして心。それらは無限ではなく、だからこそ、何に賭けるかが「その人らしさ」になる。愛子が武道館を目指す過程は、まさに「限りあるもの」をどう使うかの選択の連続であり、その選択が彼女自身を形作っていく。
これまでアイドルとは無縁の生活でしたが、作中で描かれる夢の実現とその裏にある孤独や葛藤が自分の人生と重なり、一気に読んでしまいます。
自分の人生をどう使うか——その問いに、真っ直ぐ向き合いたくなる作品でした。
Posted by ブクログ
アイドルの気持ちとファンの気持ち、どっちにも感情移入しちゃうからこそ苦しくなった。今ステージに立ち続けてくれる、理想のアイドル像を見せ続けてくれるアイドル達に感謝。アイドルってなんなんだろうって考えちゃうけど、私はやっぱりキラキラ歌って踊るアイドルが好きだな。
Posted by ブクログ
アイドル好きには是非読んで欲しい。
この世に正しい選択なんてない。
正しかった選択として、選択した方を正解にするしかないという愛子の考えに深く共感した。
アイドルをアイドルたらしめてるものって結局なんなんだろう。ほんとに異物な存在だなと感じ、同情した。
Posted by ブクログ
武道館ライブを目指すアイドルグループNEXT YOU。前に読んだ同じくアイドルを題材にした綿矢りさの「夢を与える」のちょっと後味悪い終わり方になるのかと思いきや…朝井リョウらしい読後感にさわやかさ溢れる希望に満ちた終わり方だった。
Posted by ブクログ
すごく良かったなー。
アイドルが武道館ライブを目指す話。エンタメ小説かと思いきや、これがなかなか深かった。
ネットの誹謗中傷に反応しないスキル、そんなのはじめから備わってるわけないよね。ちょっとしたことで大炎上してしまう世の中だから、人の注目を集める立場の人は本当に大変。
「正しい選択なんてこの世にない。たぶん、正しかった選択、しか、ないんだよ」
「何かを選んで選んで選び続けて、それを一個ずつ、正しかった選択にしていくしかないんだよ」
自分で選んだ人生、良いも悪いも自分次第だと私は常々思っているのだが、まさにそういうこと。
誰のせいにもせず、進んでいくしかない。
個人時に高校剣道全国大会の会場で地元の体育館が出てきたのが嬉しかった。
今年ももうじき同じ場所で開催される。
剣士たちよ、がんばれー。
Posted by ブクログ
インターネットで匿名の情報が溢れるこの時代に、「正しさの軸とは、選択するとはどういうことか」を、アイドルという分かりやすい対象を通して問う。「桐島〜」に続き2冊目の朝井本。「何者になれるのか、なりたいのか」で揺れる高校生の心情にここまで隣に立てるのはすごい。
Posted by ブクログ
アイドルの青春。あって当たり前のことを、画面の中の存在のみを当たり前って思って、深く考えたことがなかったです。僕はアイドルではないのに、批判にさらされて苦しむ気持ちに同情し、匿名の投稿に腹を立ててしまいました。アイドルというレンズで、現代の社会を浮き彫りにするストーリー展開に脱帽です。
Posted by ブクログ
【読んだ目的・理由】武道館に行ったから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.3
【一番好きな表現】つまり、怒るということは、自分の中にある器の許容量や、形をさらけだすということだ。(本文から引用)
Posted by ブクログ
アイドルが好きな私からしたら、ベタなあるあるが多くて感情移入できるストーリーだった。
アイドル史に残った事実が出てきたり、ありがちなエモい展開が出てきたり。
アイドルって「偶像」という意味があるように、世間が作り上げた「正しさ」で成り立っていて、私が見ているアイドルも本物じゃないのだろうけど、できる限り本物だといいなあと思った。
きっと私も、あるべき正しいと言われる姿の自分と、その時の本能で選択して動く自分って同じになる事はない。
でもその選択を自分で正解だって思えるようにしていくことの連続で、人生が続いていくんだと思った。
Posted by ブクログ
アイドルが人気を博しているのは数十年もの間変わらない事実であるが、その周りを取り巻く環境は大きく変わっているんだなと改めて実感させられました。
愛子がイメトレと称して夜な夜な他のアイドルのライブ映像を見るときに、当たり前のように夜中まで観てしまえるくらい、何が好きなのか分からなくなってしまうくらい溢れている無料のエンタメ、音楽を聴くのにもわざわざお金を出してCDを買わずとも、スマホさえあればお金を払わずに簡単に聴きたい音楽にアクセスできてしまう。
スキャンダルだって、昔は週刊誌記者が追える範囲でのみだったのが、仲間だと思っていた人や、見ず知らずの他人から向けられるカメラや発せられる情報でいとも簡単に暴かれてしまう。そして、SNSでは顔も名前もわからない人から攻撃を受ける。
アイドルにとって現代はとても生きにくいものだとしみじみ感じましたし、エンタメやアイドルの希少性が失われつつあることに悲しさを覚えました。
アイドルオタクとしてはアイドルの個性や心情が細やかに描かれているところに惹かれてストーリーに没頭でき、結末にも納得です。
Posted by ブクログ
巻末のつんくの感想は、やはりプロデューサー視点だなという感じで、実際に作ってきた人の書評だった。
読み始めは、幼馴染と最後武道館で剣道かアイドルのコンサートどちらが行われるか、みたいな話しの流れになるかと思いきや、異なる終わり方だった。
印刷の発注の下請け会社の人の話しとか、ちょっとなんでこれ話しに入れたのか、振り返ってもあんまりわかってない。
アイドル同士がグループ内でたこ焼きパーティするような仲って、実際にあり得るのかなという疑問は読み進めながらあった。
背負わされすぎる足枷の多さに対して、夢を売る仕事だから。というのは、やはり酷なことに感じられる。一挙手一投足見られて、そこまでストイックに何か求められるのことに対して、なぜそこまで応えないといけないんだ、みたいなのはアイドル以外の他の事象にも当てはまりそう。
Posted by ブクログ
解像度の高さが、さすが朝井リョウ。
“武道館”を合言葉に活動するアイドルグループ「NEXT YOU」。
主人公はそのメンバーのひとり、愛子。
幼い頃から歌って踊ることが大好きだった愛子と、共に夢を追うメンバーたちが、夢を叶えるために日々活動を続ける物語。
ただ、単純なサクセスストーリーでは決してないのが本作の面白さ。
ファンには見せない裏側が、時にファンにとっては残酷なほど緻密に的確に描かれており、その解像度にただただ感心させられる。
これが10年前に書かれたというのが衝撃。
崩れない前髪、落ちないヘッドドレス。
配信サービスが当たり前になった今だからこそ、その価値が問われるCDと特典商法、
握手会に毎回来る上から目線のファン、
ビジュアルへの固執、SNSの反響、失われる日常、
そして恋愛。
ファンという立場からすれば、大切な時期にその道を脅かす行為はしてほしくないと願ってしまう。でも、それは結局、こちら側の一方的な我儘に過ぎない。
彼女たちも認められない行為だと理解しつつ、それでも感情が先に動いてしまううのだろう。だって、アイドルの前に一人の少女なのだから。
「やりたいこと。夢、いま自分がいる環境、現実。全ては両立しない。
だからは人は選択をする。
ならば、その選択にどうにかしてマルをつけたかった。」
選んだ道が正しいかどうかは誰にも分からないけれど、その選択を自分で肯定しようとする愛子の生き方は、芯が通っていてかっこいいと感じた。
主人公であるはずの愛子のキャラが、ほかのメンバーに比べてやや薄く感じられたのは少し意外だった。
けれど、個性があまり強くない彼女だからこそグループ全体を客観的に捉えられていたのかもしれない。
愛子の、と言うよりはNEXT YOUの成長ストーリーとして読むのがおすすめ。
物語の結末は、賛否が分かれそうではあったが、私自身は割と好きだった。
皆それぞれが選んだ道で、きっと「正解」だと思える人生を歩むことができたのではないだろうか。
「アイドルをアイドルたらしめるものとは何なのか」
表舞台以外の顔を一切見せずにアイドルであり続けてくれる推したちに尊敬の念を新たにした。
そしてこれからも、精一杯応援し、その限られたアイドル人生を見届けようと思う。
Posted by ブクログ
最初はアイドルの話かと、半ば冷めた目で読んでいたけど、主人公愛子の「アイドルの自分」と「本当の自分」の葛藤が面白くて熱くなっていく。
歌って踊ることが好きと、幼なじみと過ごすことが好きは、アイドル前からあったことで決して矛盾しない。
でも、アイドルとして生きていくためには、選択をしなくてはいけない。それが、その時代の流れで時代のルールなのだ。十年後、二十年後は変わっているかもしれないけど。
「正しい選択なんてこの世にない。たぶん、正しかった選択、しか、ないんだよ」
「何かを選んで選んで選び続けて、それを一個ずつ、正しかった選択にしていくしかないんだよ」
愛子の選択、杏佳の選択に幸あれ。そう祈った。
自分自身の内面をきちんと見つめ、
自分にとっての「本当」を見出していくことが
SNSをはじめ周囲の風にのまれない生き方なんだろうな。
朝井リョウさんの文章を読んでいると、それだけで楽しくなる。
Posted by ブクログ
この作品が世に出て、もう10年が経過しているのが恐ろしい。私も若者ではなくなったということか。この時代から変わったことは、配信サービスとAI、ポリコレ周辺、コロナ、右傾化、戦争あたりだと思うが、そんなに変わっていない気もする。
さて、本作は中堅アイドルの奮闘を克明に描く一作。アイドルも一人の人間。だが、一人の人間としての幸せを、周りは許容してくれるわけではない。ファンもいる。運営もいる。ラストは怒涛の展開。
AKBにハマっていた時期、ふと、アイドルを戦国武将に似ていると思ったことがある。一瞬のきらめきのために、全てを懸けているんだ。
Posted by ブクログ
2025年 22
【正しい選択】なんてこの世にない。
「武道館ライブ」を合言葉に活動してきた女性アイドルグループ「NEXT YOU」。独自のスタイルで行う握手会や売上ランキングに入るための販売戦略、一曲につき二つのパターンがある振付などさまざまな手段で人気と知名度をあげ、一歩ずつ目標に近づいていく。
しかし、注目が集まるにしたがって、様々な種類の視線が彼女たちに向けられるようになる。そして、ある出来事がグループの存続さえも危うくしてしまい……。
「人って人の幸せな姿を見たいのか、不幸を見たいのかどっちなんだろう」「アイドルを応援してくれてる人って、多分どっちもあるんだろうね」
恋愛禁止、炎上、特典商法、握手会、スルースキル、無料文化、卒業……この数年であっという間に市民権を得た言葉たちの中には、アイドルという存在から発生したものも多い。新しい言葉が生まれた場所から見えてくるのは今を生きる人々の様々な一面。現代社会での生き方を模索するすべての人へ送る真摯な物語。
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
ずっと気になってた作品をやっと読んでみた。
実際、まだ名前も広く知られてないような
女性アイドルグループはたくさんあって
また訳の分からないコンセプトのアイドルが
出てきたなーとかよく思ってしまうけども、
その子たちも、見えぬところでレッスンを重ね
SNSでアレコレ言われたり周りに敵を作ったり
しながらも我慢して、スルーして頑張ってんだな
とリアルに読めた。
自分が推す男性アイドルはもう若手でもないし
結婚もしてしまったけど、発表があってから
暫くはショックだったなぁ。。
若い女性アイドルも恋愛して当たり前とは思うけど
若いファンには裏切られたーって思うだろうな
とか、ヲタク目線で読んでて楽しかった。
正しい選択なんてない、正しかった選択しかない
何かを選んで選び続けて、それを正しかった選択に
していくしかない―――アイドルに限らずそうよな。
結末、選択してたどり着いたのはそこだったのねー
Posted by ブクログ
アイドルグループ「NEXT YOU」のメンバー愛子には幼なじみの大地がいる。グループ内にいつもクールな碧がいる。
この2人が念願の武道館公演の直前、恋愛発覚で脱退する。
アイドル事情に疎く、そうなのか…と、思うような裏事情が満載。グループ内の関係性までは想像できても、ファンの望むアイドルであり続けることは厳しい事がわかる。つんくのあとがきにもなるほどと思うこと多し。
愛子のお母さんのエピソードと、愛子と碧が脱退したのに、記念ライブで現行メンバーと和気あいあいなのは少し消化不良。
でも文章が上手いのでさらさら楽しく読めた。
Posted by ブクログ
村山由佳さんの「星屑」に続いてのアイドルもの
こちらはデビュー後のグループアイドルが成長し、形を変えていく姿を描いている
読みやすくてするする読めるが、ちゃんと大事な言葉が残る感じ
一昔前よりはアイドルの熱愛や結婚に多少は寛容になっているかもしれないが、SNSの普及で話がややこしくなってる現状に対し、彼女らはアイドルだけど一人一人ちゃんと人間であることを肯定するような、味方をするような視線が温かく優しい
Posted by ブクログ
アイドルが「女の子」や「幻想」を売る時代は終わり、確かな技術があるものが売れる時代に変わった。それらは、本人が自ら考えて選択したものでないと本物にはなれなくて、選ぶための信念がある者が残っていく時代でもある。
それがパーフォーマーとして正しい評価のされ方たし、るりかが作中で言っていたように、女の子が表舞台に立つには「女の子」を売るアイドルとしてのシステムが必要だった、という時代に比べると、はるかに正しい。10年前に書かれた未来に今なっているということがとても驚く。
だが、それゆえにまやかしが効かない、本当に技術のあるものが残る時代なんだとも思う。
その技術は歌や踊りでもあるし、もはや「可愛い」ということも技術の一つになっている気がする。
信念を持って道を選び、その道を極めたものだけが売れる時代。それはそれでとても厳しいなと思う。
信念があるから選択ができるし、怒ることができる。だから、信念、これから生きるためにはそれが必要なんだと言われた気がした。
でも今の自分はそれが決められなくて、だから怒ることも主張することもできない。流されて、女が受けられる綿飴のような評価を甘受している。その頬を叩かれた気がした。そんなんじゃダメだ、女ではなく私だからできることを身につけなくてはいけない。
女であることを頼りにしたくない、でもその旨みを捨てたくない、その矛盾の中で仕事をしている。それが辛いんだよな、と改めて思った。
朝井リョウ氏は、いつも正しい、真実をまっすぐ描く。それは誠実で、とても残酷だ。
私の弱いところをまっすぐ突いてくる。
でも、だから読まないといけないんだよな、と思う。多分うーーって言いながらこれからも読み続けると思います。
Posted by ブクログ
最終盤はグッと来るものがあった。
「私、アイドルになりたいの」
そんな夢を幼い頃から持ちながら、血の滲むような努力を積み重ねてきたのに、大人たちが勝手に決めたルールによって、その夢が打ち砕かれてしまう。
彼女たちがいつか、自分の意思で自分の人生を決めることができるような世になりますように。
Posted by ブクログ
思春期の微妙な気持ちの移り変わりや雰囲気を、当事者でもないのに、どうしてこんなに鮮明に描けるんだろうか。朝井リョウ先生すごい。
アイドルになるっていっても、色々な理由が目指すものがあって、ただ歌とダンスが好きなだけだったり、注目を集めたいたまけだったり、誰かを元気にしたいだけだったり。
最後の終わり方もすごくよくて、別世界だったアイドルとおっかけの世界も、ちょっとだけ身近に感じられる気がする。
Posted by ブクログ
当たり前だけど画面の中のアイドルアイドルである前に一人の普通の女の子なんだな、と思わされた。
正解の道なんてなく、選んだ方を正解にしていくしかない、というメッセージが1番響いた。
Posted by ブクログ
ファンの期待に一生懸命に応え自分の理想とするアイドル像を再現するるりかちゃんと、今まで過ごしてきた 自分 と アイドルの自分 との違いに悩み自分を突き通す選択をした愛子ちゃん。2人ともファンを大切に思いアイドルという職業を楽しんでいたように感じたが2人はどこが違ったのか。るりかちゃんも歳を重ねて恋をしたら 自分 と アイドルの自分 どちらを選ぶのか(その頃にはアイドルと恋愛が両立できるようになっているかもしれない…!)。
みんな選択をしながら生きている。作中では選択に正解があるかないか話していたが、人生の中で二択があったとして、どちらか一方の選択の答えしか私たちは知ることができないのだから、選択先が正解か不正解かという問はは愚問だと思った。その選択が行き着く先は死ぬまでない。選択に正誤を求めるから苦しくなる。選択をした先で幸せになるか不幸になるかは全て自分次第だと思う。
今を切り取る
朝井リョウ先生の作品は「今」を切り取るのがとてもうまいと感じます。
この作品の中で特に共感したのが、「自分の中にいる複数の自分」です。
アイドルとしての自分、1人の女としての自分。どちらも同じ自分なのに、それが共立することを世間は認めてくれない。
価値観が多様化する現代、自分でさえ1つにまとまってくれない「今」の若者が描かれているのではと感じました。
朝井リョウ先生の作品が好きなのは、その今のところ答えが出ていない「今の問題」に答えの例を提示しているところ。
それが綺麗事でも理想論でも予定調和でもなくて、1人の人間の決断であること。
生きにくい現実を生きるヒントを与えてくれます。
Posted by ブクログ
7年前は新鮮だったろうアイドルのあれこれ。
今読むと既視感が否めない。
逆にそれくらいアイドル文化が世に浸透したともとれる。
そんな中でも群像劇タッチで描かれるアイドルそれぞれの話はさすが朝井さんでおもしろかったです。
Posted by ブクログ
自分がアイドルオタクということもあって、読中色々考えさせられた。
あと朝井リョウは女性視点が本当に上手い。なんでこんなに解像度高く書けるんだろ。
Posted by ブクログ
『イン・ザ・メガチャーチ』とは異なった、アイドル側に注目した作品だったと思います。
個人的にファンは推しを「選ぶ」ことができ、推しはファンを「選べない」と考えていましたが、それは主観的な視点でしかないと気づかせてくれました。
現在、アイドルでも結婚している方は割といたり、活動を続けているので時代が少し変化したのかなとも思ったり...
Posted by ブクログ
ほんとのことを言うときは、口元を隠したくなる。
この表現がずっと頭に残っている。
そういった、無意識下の言動を不意に意識する瞬間は、日常の中で時たま顔を出してくる。例えば、誰かに何かを伝える最中に、繰り返し同じ言い回しをしてしまう。そのことを意識してしまって空回りする。小さな自己嫌悪に陥りすぐ復活する。私にはたまにそんなことが訪れる。
時代感やトレンドと言われるものによって、その時に正しいとされる価値観や倫理観が左右される。かつて正しかったものは、今はどれだけ疑わずに済むのだろう。かつて面白かったものは、今はどれだけ笑えるのだろう。そしてそれは今と未来に置き換えても同じことが言える。
時代が変わっても、自らが選んだ正しさに対して胸を張って正しいと言えるだろうか。選んだ理由がトレンドなのであれば、それはすぐに折れてしまうだろう。
そんな、折れない選択が重んじられる信念の時代が訪れてもいいような気がする。
Posted by ブクログ
3.8くらい!
感動させられているのは分かるけどこういう怒涛の体言止め朝井リョウ節が好きで最後らへんはあやうく涙でるところだった
共感はそこまでないけど、こういうのがすき
また生殖記系とは異なる良さがある
一人一人の持つ感情の器に何かが堆積していくこと、そして容量を超えると感情が外側に溢れ出すこと
これが自然現象としてあるべき人間の姿だよねと若干押し付けがましい態度に過干渉すら感じはした
コンポストみたいな容器の人もいるよ、とりあえず全部詰め込んで蓋をして分解されるのを待つのでも許してほしい、それを何かが壊れていると形容するのは乱暴な気がする。そういう人が何かを失ってしまっている温かみのない人間と言われるの納得いかない。
確かに中で蛆虫が湧く可能性もあるが、堆肥となる可能性だってあるしね
私はただ土っぽい何かになってくれればそれでいいんだけど。
整理を急ぎすぎたくない、何をそんなに急いでいるの
無料で取捨選択を自由にできることが、1番の消失につながるっていうのもあまりしっくりこない
無料で手に入れられることで一定の距離が自ずと生まれるかもしれないが、近づきたい人だけ近付けばいいじゃん、本当に人が好きなんだな朝井リョウは
効率性合理性糾弾のような。
少し遠回りしても何かが無駄になったり犠牲になったりしても、その身の削られ方すらも自分の個性を形成しているものとして大切にしよう、むしろそういう不足や犠牲こそが自分を自分たらしめてるものなんだ、みたいな。
古き良きを大切にしよう、の古き良きが刷新されて、どんどん無機質になっていると現在感じられるものすら未来には体温を得ているかもしれないし。
常に世界は過渡期で、そこでごちゃごちゃ何かに拘泥するのに違和感がある。私はこれが好きなんだ、これに怒りを感じるんだと自分の器の形状を明らかにする作業をしないと自分の存在に安心できないなんて、どこか依存的な感じがする
ブーメランだけど、アイデンティティ追求の熱量に終始目眩が止まらない
自分なんてさまざまな外的影響の集合体という側面が大きいのに、変化を及ぼした影響が分かりやすく世間を揺るがせている何かだったり、その変化がひっそりと進行しているものではなく顕在化しているものだったりすると、どんどん自己が均一化し匿名化されていくような恐怖と寂しさが出てくるのってあほらしい。
ただその時々の流行に乗ってるだけで、みんなルーズソックスはいてるじゃん笑みたいな笑えることかもしれないのに、過度にセンチメンタル。AIの利用とか、生身の人付き合いの希薄化とかもただの流行というか変化でしかないというか。それを基盤にしてまた新たな流行ができて、今度はそちらにみんな頭を悩ませ自分のぶれぶれの価値観がさらに揺れるから過去のものが安定していたように錯覚させられるというだけ。
大地との恋の部分よかっったなー
初めてお互いに触れたシーンめっっちゃよかっった
Posted by ブクログ
言われてみれば、「アイドルをアイドルたらしめるものってなんなんだろう」って考えさせられる本だった。嵐が活動終了を発表しても、キムタクが結婚して子供を産んでも、アイドルとしていられるのならば、なぜ大人は彼らに恋愛を禁止する、もしくはタブーとして教育するのだろうか、という朝井さんの主張が伝わった。
中高に比べてアイドルのことはもう全然追ってないけど、確かに恋愛のスキャンダルってあんまりない。それだけみんな抑えて生きているのかなあ。と思ったら大変な世界だなあ、、
最後は愛子も碧も自分たちが正しいと思った選択をし、グループを脱退する。正しい選択はきっと誰かの「◯◯すべき」に従った先じゃなくて、「ちょっと考えればわかること」と揶揄されるような常識を自分の頭で疑うことでわかるのだと思う。