小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
久しぶりのマハさんワールドを堪能した。
本当に惹き寄せられる。ハラハラする場面と心からホッとする場面のバランスが絶妙。今回も丸弧や紫紋の携帯の復活と同じようにブルッブルと心を震わされた。
完全に打ちのめされた紫紋が『尽果』で人生を逆転させていく。紫紋が女将さんとの約束を守り抜こうと葛藤する場面が何度も訪れる。「自分なら抑えられるわけない」と思いながら、一種の尊敬の眼差しで読み進める。紫紋とマリアの心の距離感が物語を深くしているように見える。将来、絶対一緒になっていてほしい。
食を彩るシーンは、人間の生きる素を見た。
尽果に行き着いた紫紋がまぐだら屋から漂う出汁の香りと和食から生気を取り戻していく訳だが、そのシーンだけでなく食べ物の描写が本当に心を温めてくれる。
最後はみんなが待ってる人がいる場所に戻って行った。終わり方までよかった。すべての伏線を回収した。それも穏やかな形で。こんなに完璧な終わり方あって良いのかと思うくらいだった。 -
Posted by ブクログ
自然の恵みを享受しつつ、下手に抗うことなく人生を全うする設計事務所の所員、クライアントの人たちの姿がとても印象に残った。
浅間山の麓にある夏の家の姿をずっと頭に浮かべながら読んでいた。読んだ人はどんな建物の姿を想像するのだろうかとも。
住むことによって家は劣化するけど、住まないと建物自体の生命を失うというのを感じた。そして夏の家に着いて、真っ先にすることは窓を開ける。それによって建物に息吹を与えている。建物が息を吹き返す描写がとても好きだ。
人間模様では、雪子と結婚して夏の家に戻っていた。
『あぁ、よかった』と胸を撫で下ろした。雪子の主人公への思いが所々で垣間見えていて、何とか叶ってほしいと思っていた。夏の家に戻るというのが、また良い。
想像力を掻き立てながら、押し付けてこない。
建物や、自然のイメージをするだけで心が穏やかになる1冊だった。読み進めるごとに染み渡ってきた。 -
Posted by ブクログ
要介護とまでは行かずとも、少しずつできることが少なくなっていく高齢のお父さん。
毎日のラジオで日々忙しくされているジェーン・スーさんが試行錯誤しながら お父さんに快適に余生をすごしてもらうプロジェクトを遂行していくエッセイ。
「介護はロックフェス」と称し、課題解決に向け、汚部屋となったお父さんの部屋を業者さんと片付けていく姿は本当に頼もしく、介護だけでなく、日々の課題と向き合う上でも紙に書いてロジックツリーで組み立てる、、というのは参考にしたいと思いました。
ただ、終盤どんどん弱っていくお父さんの姿がなんともつらく、現在もまだご存命とはいえ。
そして、遠くに暮らす自分の両親が同じ状況になったら、自分がお父さんの立場なら、、と思うといたたまれない気持ちになりました。行政サービスなど充実してほしいです。 -
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広島に原爆が投下されてから数年後のこと、矢須子という女性が原爆病にかかっているという流言から結婚の話に破談が続く。それを払拭すべく、矢須子の叔父・重松が原爆投下から終戦までの10日間の被爆日記に書き留めていく。
しかし、10日間の間で黒い雨に打たれたり、原爆投下直後の広島の街中を息も絶え絶えに歩く中で怪我もする。しばらくそのことについては横に置かれたまま話が続いていくが、日記の清書中に矢須子に原爆病に罹患していることが分かる。その瞬間は「ゔっ…」と思わず唸ってしまった。
「それにしてもピカドンが落ちる前に降伏することは出来なかったのか。」
80年経った今を生きる自分もそう思う。こういうことを言うのは結果論であると分かっていても言いたくなる。判断が早ければ…と考えてしまう。
物語は矢須子の生死を完全に伝えずに終わる。
矢須子、生きていてくれ。 -
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ネタバレ下巻の方が動きがあって飽きずに読める。不穏なタイトルから結末は壮絶な破局が描かれると思っていたけど、ポールとプリュダンスの愛が肯定的に描かれていて意外だった。
老いによる性的な魅力の減衰、病気といった年齢を重ねることの肉体的なネガティブな面と価値観の多様化や急速な変化、インターネットテクノロジーの隆盛によって齎された精神的な満たされなさ、孤独、年齢を重ねることの空虚さといった現代社会を生きる壮年の人のリアルを描いている。
ウエルベックの人間や世界に対する露悪的だったり、皮肉的な眼差しだけじゃなく、オカルト的だけどウィッカの輪廻転生を信じるプリュダンスのように滅びることの別の可能性みたいなものを示唆することが一味違ったウエルベック作品だと思った。
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読書が好きな自分としてはグサグサ刺さる辛い言葉が多かった。終章では書籍への希望が見えた気がしてホッとする。そして、あとがきにある筆者の心中の描写には心打たれた。
動画メディアは『読みたいけど読めない人たち』が知識を得られる場を開いた。その事実を受け止めつつ、簡単に得られる分0か100の極端な議論になりがちかなと感じる。
本を読まない人たちの考え方も共感できる。
書籍・書店を巡る現実は本を読む派の自分にとっては辛い。ましてや、生成AIの登場で文章そのものの価値も下がっている現実は苦しい。
本の現実を突き付けられたが、読んでよかった。
心に留めておきたいことが山ほどあった。同時に書店が近くにあるありがたさを改めて感じた。 -
Posted by ブクログ
表題の『町長選挙』は本当に夢中になって読んだ。自分は登場する千寿島の人たちほど地元愛なんてない。間を取り持つ良平の良心も、真面目さもとても好感が持てる人だなあと感じた。もちろん選挙の投票先を棒倒しで決めるのはどうかとも思うが、最後は島民みんなが一致していくところを絵で思い浮かべると感慨深いものがある。いい物語でした。
他の物語も、贅沢な悩みなんてないんだなと。
カリスマ・大金持ちはそれはそれで大なり小なり悩みがあって生きている。『どうせ金持ちなクセに…』なんて斜に構えたことを言わないような心の広さを持ちたい。いくら恵まれていても、それぞれの立場で悩みがあるという共感は大切にしたいと思う。
ふふふっと笑える感じもなお良かった。面白い。 -
Posted by ブクログ
主人公、キナコの現在から話が始まるが、この第一章で出会う得体のしれない52(愛)を「中学生くらいの女の子と推察される」との表現や、アンさん、アンさんって言ってるけど何者だよ?と想像させる記述が後に布線としてきいてくる。
キナコの幼いころ受けた虐待や家庭環境の話が進むにつれて、現在の話と過去の話が入り乱れながら、核心に迫っていくストーリーが読んでいて、次の章も早く読みたい!と思わせる素晴らしい本であった。
親友の美晴の職場先の同僚アンさんがキナコと出会いキナコを救い出し、最果ての地で出会う村中を巻き込みながら、ジェンダー問題や幼児虐待問題をテーマに第一章を裏切るストーリーが展開する。
テレビドラマをみているかのような、次週が気になる〜って思わせる、一気に読み進められる本当に面白い本でした。
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