小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
ネタバレ死について、家族について、結婚について考えさせられた作品だった。
人が死ぬのは怖い。
葬儀屋芥子実庵を舞台として、様々な人物の目線で物語が進んでいく。
この本を読んで思ったことは、人が死ぬのはいつか起きてしまうことだけれど、それをどう受け入れていくのか。
死んでしまっても、私たちはその人との思い出話をすることで、その人の生きていた存在を後世へつなげることができる。
きっと、一緒に生きていた人が思い出す限り、その人は生きているのだろう。
人によって生まれる環境も死ぬ環境も、全く異なる。
でも、私は人と比べることではなく、その人がどんな生き方をしたか、どんな人に出会ったか、どうやってその人を大切にしたのか、ということがその人の生きた証なのだと思った。
本を読みながら、自分の今を省みて思った。
結婚についても考えさせられた。
対等を望んでいても、どこか私たちの心には男女差が生じてしまう。
これは、男性であれ女性であれ、ときには傲慢や安心、ときには疑問が生じてしまう。
私は真奈さんのお母さんの言葉に心打たれた。
独身だから、真奈に自分の病気に伴う負担を負わせたくないと。
これは、単に独身を軽視したりしているのではなく、独身だからこそひとりで働き、ときにはひとりで抱えきれないような感情までも抱えなければならない。
一緒に荷物を持ってもらえる人がそばにいるという意味で、結婚が非常に魅力的に見えた。
夫婦で支え合ってるからこそ、子どもはもちろん、親や身内をも助けることができる。
また、その逆で助けてもらうこともあるだろう。
私はそういう意味で、一緒に生活をともにしたいと思える相手にすごく憧れた。
私も支えたい。支えられたい。一緒に頑張りたい。
死に向き合うことは怖い。
けれど、いずれ向き合わなければならない。
私も向き合うことができるのだろうか。
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Posted by ブクログ
書店で装丁に惹かれて手に取った一冊が、なんとも心揺さぶられる作品だった。マーク・トゥエインの「ハックルベリーフィンの冒険」(というか個人的には世界名作劇場のアニメ「トムソーヤの冒険」が馴染み深いお年頃だけど)のいわゆる改変もので、元になった作品のストーリーを途中までトレースしつつ、黒人奴隷の「ジョン=ジェイムズ」を主人公に彼の視点で物事が描かれる。人でありながら「奴隷」として扱われるジョンことジェイムズの視点で見ると、往年の名作はガラリのその様相を変え、奴隷制度のあまりの非道さに読み進めるのがためらわれるほどだ。
訳あって“白人”の元から“逃亡奴隷”となったジェイムズは、残してきた家族を取り戻すべく、たまたま“白人の子”ハックルベリーフィンと一緒に逃避行する身となった。
白人の前では知識のない馬鹿の振りをし続けてきた(白人より下に見せる必要があった)ジェイムズは、“ある行為”で自らの存在を客観視し、自我を手に入れていく。その過程から目が離せなくなってしまった。
なぜいまだに人種問題がアメリカで蔓延っているのか。下手な論評を読むより、この作品を読めば一発で腑に落ちる。大人はもちろん、中高生にこそ読んでほしい一冊だ。 -
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ネタバレとても面白かった。
小説の中で島田が小説を読んでいるという構造。
その小説の中で起こる殺された作家たちが書いた小説を準えた連続殺人。
『迷路館の殺人』の犯人は誰なのか。
そして、『迷路館の殺人』の作者鹿谷門実は誰なのか。
色々な次元が入れ子構造になっていて複雑なように見えるけど、読んでいくとちゃんと明確に謎が解けてきて最後はとても読んでいてすっきりする。
今回は館のからくりをふんだんに使って犯行を行っていて、ミステリーのトリックとしては微妙なのかもしれないけれど、それが今までの館シリーズで中村青司のからくり癖がよく作中に活きていて自分はワクワクした。
しかも、この物語の肝はそこではなく、犯人は宮垣、と思わせての、鮫島という点。
鮫島はずっと男性と思わされていたが実は女性だったという点。
最初に鹿谷門実から送られてきた本を読み始めた"島田"は島田潔ではなく、その兄島田勉だったという点。
そして、鹿谷門実は島田潔だったという点。
もう全てが予想外で本当に綺麗に騙された。
本当に綺麗な叙述トリックだったなと思う。
キャラはそこまですごく魅力的かと言われたら十角館ほどは魅力的でなかったけれど、宇多山という編集者視点固定で語られるのはとてもわかりやすくて良かった。
犯人の意外性、そして冒頭にあとがきがあるという物語の構造のワクワク感、実際に事件が起こる時系列で物語が進んでいく臨場感がとてもよかった。
十角館よりも満足感が高かったので5をつけた。 -
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星森FCのコーチである巽を、光汰郎のクラスメイトの速斗と一樹は追っかけて、廃校になった小学校にたどり着いた。そこで巽が、サッカークラブの少年たちにイタズラをしていることを知る。巽に見つかり、必死に逃げる速斗と一樹は廃校の小学校に逃げ込む。そこにいたのは、行方不明になっていた戌井光汰郎だった。そこから事件は動きだす…
あっという間に読み終わった。すごく良かった。終わっているはずの事件は終わってなくて、物語の展開にも最後までハラハラさせられたが、この物語が伝えたいことが、分かりやすく伝わったところが良かった。事件は起きた。しかしその後の事実とかけ離れた噂は、誰が言っていたのか。事件が解決して、ひどい噂だったと反省しない。事件に対して当事者意識が全くない。それは責任から逃げたわけではなく、みんなが「わすれている」という事実。事件に関わった人々はずっと苦しんでいるのに、苦しめた意識すらない。これはとても恐ろしいことだと思った。これは現代のSNSにも当てはまるし、教室内のいじめにも当てはまる。時代は変わっているが本質的なことは何も変わってない。人は噂が好きだし、これは娯楽だという残酷な事実。でもこの本をよんで、自分の軽率な発言が誰かをずっと苦しめるきっかけになり得ると分かれば、きっと自分を正すことができるはず。本当に気をつけようと思った。読めてよかった、とても大事なことに気付けたと思う。 -
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誰もが「あの人こそスターだ」と認める存在がスターだった時代から、誰しもがスターになれる時代へ。本書はそんな今を生きる二人の若者を描いている。
主人公の尚吾は、細部へのこだわりを大切にし、長い時間をかけて作品を仕上げ、対価を払った人にだけ届ける映画の世界へ。一方の紘は、生産から消費までのサイクルが速く、瞬く間に拡散されていくYouTubeやネット配信の世界へ。それぞれの道を進みながらも、互いを羨み、もがき、葛藤し、自分が本当に成し遂げたいことを模索していく二人の姿に、深く心を動かされた。
主人公以外の人物の言葉にも、まるで今の自分に向けられているかのような、はっとさせられるものがあった。30代を目前にした今、自分の生き方を見つめ直すきっかけになった。
また、夜空の星が実際には星型をしていないように、現代のスターのあり方も、誰もが思い描く形とは限らない。星を用いたこの表現も秀逸だと感じた。
何を大事にするのか。誰の姿を思って行動するのか。それを考えながら、自分が何を成し遂げたいのかを見つけていきたいと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本当に面白かった。
ミカの口調があまりにも大人びていて3歳の発言とは到底思えないので、死んでいるんだろうなと思っていた。ただ、それを受け入れられない母親のことを思って、ミチオも妹を存在しているかのように振舞ってあげているんだなと思っていたが、まさかミチオが誰よりも狂っていたとは…(登場人物全員狂っているけど群を抜いてミチオがやばい)
どんでん返しが1回で終わらなかったのも面白かった。色んな人の視点で物語が進んでいくので、語り手の主観が入り、辻褄が合わない部分が出てくるところで一気に話に引き込まれたし、登場人物たちの言動に完全に騙されてしまったのが悔しいし痛快だった。
道尾秀介大好きになりました。
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