あらすじ
激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子を出産する。出所後、息子に会いたいあまり園児連れ去り事件を起こした彼女は息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。
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Posted by ブクログ
激しい雨が降る夜に犯してしまった過ち。
そのせいで産んだばかりの子どもと引き離されたかおりの悲痛はいかばかりであったろうか。
刑務所を出てからの日々もまた、罪の意識を抱え続けたまま、数々の困難にも見舞われ、もうここまでにしてあげてと、読みながら何度願ったことか。
苦難の日々を過ごしながらも、生き別れとなった息子を思いながら、決して届くことのない手紙を書き続ける母としてのかおりの気持ちに触れる度に、何度涙を流したことか。
どの角度で切り取っても、名作中の名作と呼んでも大袈裟な表現ではないだろう。
Posted by ブクログ
たしかに犯した罪は小さくはないが、立ち上がろうとする度に足を引っ張られたり、積み上げてきたものを台無しにされたりするのが居た堪れなくなりました。
息子への出す宛のない手紙としての独白が本当に悲しくもあり、愛を感じさせます。
ドラマチックな出来事は現実では簡単には起こり得ないですが、それでも、深い悲しみの底でも、熟れた柿が自然と落ちるように時機を待ち、上を向こうと思わせてくれる内容でした。
Posted by ブクログ
母親が息子と16年ぶりに再会するまでの葛藤が緻密に描かれている。作者の、当事者なんですか、と疑ってしまうほどのリアリティのある描写が秀逸。息子と再会するシーンでは自然と涙が溢れた。彼女の原動力はいつだって息子の存在だった。300ページにもおよぶページを使って描かれてきた彼女の人生に心から共感したのだと思う。
Posted by ブクログ
なんか、なんかすごい、、
言葉に表せないけど!
なんて可哀想な人なんだとずっとかおりさんを
思っていたけど、
最後の土居さんや拓くんとのやりとりで
よかった泣、、!と思った。
とっても細かく描かれているのに
くどくなく、わかりやすく、
没入できて想像できて読みやすい文章。
まだその時でない。その時が必ず来る。
そう信じて生きていく。
1人の一生を一緒に歩んだ感覚になりました。
じゅくし。読んでよかったです
Posted by ブクログ
「なんで最後の最後に泣かせにくるの」
佐藤正午さん、これはずるいです!
晴子伯母さんの葬儀が終わった。激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子・拓を出産するが…。
真夜中に熟した柿の汁を啜る伯母の話で一気に引き込まれた。27歳で道を踏み外したかおりの人生は、投げ上げられては落ちてくる、まるでジャグリングされる柿を見ているようだと思った。千葉からひとりで居場所を転々としながら、九州の博多にたどり着く。
「わたしは今年で42歳」
我が子のためと生命保険に入り、やみくもに働き続けるかおり。世間の目から身を縮めて生きてきたが、それでも「息子の拓に会いたい!」
呼びかけるように綴られたかおりの日記から、息子に対する母の思いが感じられてせつなくなる。
最後の最後でやっと光が見えた時、思わず泣けた!久住呂さんと娘の咲ちゃんの思いやり、いつまでも待つと言った土居さんの優しさに感情がこみあげてきた。元夫の一言は釈然としないが、母と息子に「熟柿」の時がやってきたと確信できる終わり方はとても良かった。
沢山の方に手に取って頂きたい良書です。
Posted by ブクログ
物事には時間が必要なこともあるよなあ、と改めて感じた小説。
ひき逃げをしてしまった母親が息子と引き離されてしまう。誰にも起こりうるかもしれない。
それは我が子をひと目見ることすらかなわないほどの罪だったのだろうか……とも思うのだけれど、そこが佐藤正午さんの描き方のすごいところで。
事故を起こしてからの母親はなんだか危うく感じられるのだけど、少しずつ思考がしっかりしていくように見える。
もしかしたらすぐに息子と会えて幸せな世界線もあったかも分からない。
だけど最後まで読むと、本人にも周りにも、これだけの時間が必要だったのだなと思えた。
Posted by ブクログ
木綿のような質感のシンプルな文章で語られる、主人公の半生。
根無草のようにしか生きられない事情を抱える人の中には、もっと悲惨な状況にある人も少なくないのではと思う。
だからこそ、主人公に出会ってくれた人たち、久住呂親子や土居さんはもちろん、パチンコ屋の店長さんやそのお姉さんや、いろんな人たちに主人公に代わってお礼を言いたくなった。
世の中こんな風にうまくはいかないと言う人もいるかもしれないけど、こんな風に報われることもあると信じたい。
映画化してほしいな。
Posted by ブクログ
〜あらすじ〜
主人公かおりは妊娠中に起こしたひき逃げ事件により獄中出産をし、その後夫と息子とは離ればなれに。かおりは職を転々としながらも堅実な生活を送る。子供の成長を見れなかった悔しさから加入を決めた生命保険では、相続人を息子にする。
またひき逃げ事件で犠牲になった老婆に償うように、介護福祉士への道を志すように…
〜印象的なシーン〜
久住呂さんがかおりの息子拓に対して
(かおりが)「いままで一人でどれだけ苦労してきたか、誰のために、どれだけ一生懸命働いてきたか想像できる?」
と言い放つ場面
〜印象的なフレーズ〜
『熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に時機が来るのを待つこと』
柿の実が季節になれば熟すように、物事の成就には適した時期があるというか、そのときが自然に訪れるのを気長に待つというか、百崎さんなんかに言わせると単に消極的なのかもしれないけど、でもそういう、無理強いしない、待ちの時間が必要なときもあるんじゃないかと……
Posted by ブクログ
かおりは雨の夜、轢き逃げ事件を起こす。
服役中に息子・拓を出産。
会いたい一心で息子を連れ去ることを思いつく。
その後、面会を禁じられ
我が子を思う気持ちを抱いたまま追われるように西へ。
佐藤正午さんの本は全て読んでいるが
毎回、感想を書くとなると苦労する。
強く訴えかける訳でもないのに
心の奥深く、しんと静まり返った場所に着地する。
そして、本作も含め全ての作品に言えるのだが
タイトルがいい。
信頼できる作家のひとり。
次はどんな作品を届けてくれるだろうか。
Posted by ブクログ
子どもを身ごもっている中、雨の中での運転中に老婆をひき逃げし、殺してしまった一章から始まり、その後どうなったのかわからない中、二章目を読み進める。その中で、殺人犯となったかおりの後悔やその後の人生が丁寧に、とても重くえがかれており、先が気になって仕方がなかった。
かおりがこのままどうなってしまうのか…平穏な日常を手に入れたかと思えば、頭をもたげる罪悪感、希望に見えた息子への思いもどこか自分勝手な妄想になっていき、落とし穴に落ちていく。
「熟柿」の意味である『気長に時機が来るのを待つこと』はてっきり息子に会うタイミングのことだと思っていたけれど、読み終わった後にはかおりが希望を胸に前に進めることなのかなと思えた。
最後にかおりの幸せがこの先に訪れそうな予感で終えられたことが救いになった。
いつも読むジャンルではないけれど、心に沁みる良い本に出会えだと思う。
Posted by ブクログ
どーんときた
蓑虫のように、というのは自身の姿を客観的にそう見なしたわけではなく、毛布の折り込み方とか工夫して積極的に自分を蓑虫に寄せてみた
なんで??
こういうところが好きです
Posted by ブクログ
かおりは親戚の葬儀の雨の夜、老婆を撥ね、逃げてしまった。その時、妊娠していて、刑務所で息子を産む。
罪を償い出所した際、離婚され、息子と会うことも認められなかった。その後の母としての葛藤と、生きていくため働かなくてはいけない苦労が延々と続く。
普通の人だったのに、雨のせいで、たった今かかってきた電話のせいで、人生が変わってしまった。かおりは“せいで”は言わない。私ならずっと、何かにつけて、“せいで”と考えてしまうだろう。息子に会いたいため、とった行動もわからなくはないが、違うと思う。思うけど、腐らず生きているかおりの次を知りたくて、急いで読んでしまった。
Posted by ブクログ
自分も母になったからこそ、もし自分の身に起こってしまったら、と重ねて考えてしまう。胸が締め付けられるほどつらいし、精神的におかしくなってしまうだろうし、誰も信じられなくなるかもしれない。
でも、息子のためにと真っ当に生きようとする主人公を応援したくなったし、やっぱり見ていてくれる人もいると救われる気持ちにもなった。もちろん、なんでこんな...と思うこともある。それでも何度も立ち上がる主人公。熟柿の意味。そのときがくるまで、ひたむきに生きることが、大事なんだ。その強さを、私も持ちたい。
Posted by ブクログ
かおりさんは過ちを犯して刑務所に入り罪を償った。晴子伯母さんが熟柿を啜る音は気持ち悪かったし、お金を持ち逃げした斉藤さんには腹が立った。なぜ警察に行かなかったのだろう。刑務所を出てからの彼女のつましい生活がとてもリアルに感じた。『熟した柿の実がが自然に落ちるのを待つように、気長に時機がくるのを待つこと』熟柿の言葉の意味が刺さりました。こちらも時機を気長に待てばまた一生懸命になれることがあるだろうか。安全運転を心がけます。
Posted by ブクログ
轢き逃げ事件を起こしたせいで子供と引き離され、独りで生きることになったかおり。生まれてから一度も子供と会うことができず、なんとか会おうとするたびに警察沙汰になってしまう。ひたすらに働き日々を淡々と過ごす彼女に訪れた転機とは。
犯罪者になってしまったとはいえ、彼女のしたことにはさほど悪質性が感じられず、だからこそ気の毒に思ってしまう面が多いです。子供の顔すら見せてもらえず、真面目に働いていても前科が知れたことで職を追われる。彼女をよく知らない人間からすれば「前科者」というレーベルだけで判断されてしまうのだろうけど、これがもうつらくてつらくて。彼女の子供に対する思いもまた、目に見えて熱烈なものではないのが余計胸に迫ります。あくまでも淡々と距離を置くようにしながらも、しかし毎日のように子供に語り掛ける彼女の姿があまりに切なくて仕方がありませんでした。
それでも支えてくれる人たちがいるのが救いです。そして彼女の生き方もまた、堅実で好感が持てるものでした。「熟柿」というタイトルの意味が、ラストに程よく残ります。
Posted by ブクログ
かおりの人生にそっと想いを馳せる。どうしたって現実は続いて、奇跡みたいなことは大抵起こらず、過去も現在も変わらないものは変わらない。それでも、差し伸べられている手を掴もうとしていけば生きていける。1人の女性の人生を垣間見た。
Posted by ブクログ
轢き逃げで狂ってしまったかおりの人生。
淡々と進んでいくのが逆にリアルすぎて辛かった…。やっぱり車の運転には気をつけないと、と思わされた(違う?)
読みやすい文章でほぼ一気読み。
最後の拓との再会もリアルだった。
よくあるお涙頂戴の展開ではなく、お互い黙ってしまうところや話すことが定まってない感じ。
そしてそこで終わるんだ…っていう。
タイトルの『熟柿』がしっくり来るラストでした。
自分は心配症なので未来のことを心配しすぎたり、焦ったりしてしまうことがよくあるけど、時機が来るのをじっくり待つのも時には必要なのかなと思った。
表紙やオレンジの見返し、しおりも素敵。
佐藤正午さんの他の作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
大伯母晴子の葬儀の帰り、大雨の中の不運な死亡事故で懲役刑となったかおり。
服役中に男児を出産するが、警察官の夫に離婚され親権も奪われた挙句、実母は死んだことにするとまで言われる。
交通事故とはいえ人を殺した前科を持つかおりに世間の目は冷たく、服役後職を転々としながら、幼稚園や小学校(の入学式)に息子拓の姿を見に行こうとするが、どちらの場合も警察官が駆け付ける騒ぎとなってしまう。
その後仲居として住み込んだ山梨の旅館では事故前の隣人に見とがめられ、パチンコ店員をしていた大阪では同室の女性に預金すべてを盗まれるという災難に遭う。
ここに至り、晴子伯母さんの呪いの恐ろしさに怖気たつ。
発端となった事故も、大雨の田舎道の運転中、友人鶴子からの一方的な悩みの電話を取ろうとする際、死んだはずの晴子伯母さんと見紛う老婆が目の前に突然現れたもので、現実の出来事ではないかのような印象を読者も受ける。
身勝手な鶴子との関係は服役後も続くが、鶴子に責任転嫁するでもなく、鶴子の愚痴に付き合うかおりの我慢強さにはむしろ感心してしまう。
対照的なのは咲と百合の久住呂母娘。
拓を見に行った幼稚園で咲が見せる、すべてを承知しているかのような振る舞いや幼稚園児とは思えない言葉遣い。
小学校でかおりを咎めてきた職員を押し留め、弁護士を手配し、ショックに打ちひしがれるかおりに寄り添った、咲の母百合。生命保険会社に勤めるバランスの取れた常識人で、その存在はかおりの人生において大きな救いとなる。
かおりが意を決して出した手紙に予想外に届いた咲からのはがきには、かおりの世界を未来に向けて開く力があった。
本書の重要な転機に打ち込まれる1行か2行の短い文。
左右に取られた余白がその意味を際立たせる。
事故の裏に隠された事実は、それまで感じていた元夫への引け目を怒りに変える。
成長し高校生となった拓と再会するかおり。
ここでも咲は大きな役割を果たす。
「母もほんとは市木さんに会いたいんです。でも今日はいないほうがいいんです」
かおりとの会話から咲が期待通りに成長していることを知り、うれしくなる。
初めて会う息子から投げつけられる言葉を受け止めるかおり。
鶴子に「強い」と言われるたびに否定したかおりだが、拓に対面したときのかおりは確かに強くなっていた。
自らかおりとの機が熟すのを辛抱強く待ち続けた土居が語る「熟柿」は、そのままかおりの人生だった。
Posted by ブクログ
この作品が面白くないという人がいるなら人の人生なんて他人から見たらそんなもんだということだと思った。普通に生きていたら出会えない人の人生を覗けるんだから小説は面白い
Posted by ブクログ
けんごさんが2025年ダントツ1位と語ってたので
これは読まねばと思ってたやつです
佐藤正午さん、初読み
なんかずっと重くて、
楽しい場面なんかがひとつもなかった
つらすぎ〜と思いながら読んだ
自分が産んだ子供と引き離され、
ひと目見たいだけなのに叶わず、しかも警察沙汰
生きる希望は息子のためにお金を貯めることだけなのにそれもあんなことになっちゃうし
前科持ちって、ずっとその事が付きまとうんだなと
こわくなった
とにかく運転だけは気をつけなきゃと読む度に思った
正直、佐藤正午さんの文体に中々慣れず
半分以上 気が逸れる事が多めで世の中の評価程入り込む事ができなかった
後味としては
【光のとこにいてね】を思い出した
うわ、そこで終わるのー!
もう少し読みたい!
おしえて!
という感じだった
語らずとも分かるよね?という終わりなんだと追う
でも幸せで終わるのが読みたい〜!
Posted by ブクログ
かおりは晴子大伯母の葬儀の帰り、ひき逃げをしてしまう。被害者は死亡、しかも車庫入れで破損した車を修理に出したことが悪質と判断され、警察官の夫も職を追われる状態となり、離婚を要求される。出所後は刑務所で産んだ息子とは会えないまま生活をしていたが、思い詰めて2回接触を試み、果たせず、また、職場の方も少し働くと過去がバレて転職を余儀なくされるような日々を送る。2008年に事故を起こしてから2025年までが語られる。柿は熟すのか。どう熟すのか。
渋柿はドロドロになるまで実らせたままにしておくととすごく甘くなるんだよな〜と思い出したタイトル。まあ、ほぼ全般読むのが辛いです。最後はタイトルを裏切らない結果が読めるので、読後感最悪じゃなくて良かったなと思いました。でもね、私はやっぱりどんな立場の人だったか問わず、かおりから、轢き殺した人への悔いる思いが伝わってこなくて、まずそれじゃない?と思います。自分も運転する時に、もし事故を起こして取り返しのつかない傷を負わせたら、一生が暗転するよなと思って気をつけるようにしています。それでも運転はリスクあるんだよね…。
浮気癖のある友人が登場するので中学校以上。基本は高校くらいから。
Posted by ブクログ
物語は刑務所で出産し償いをしていく、罪を犯し償った者に尊厳 願いはどれほどあるのだろうかと、受け止める側の最悪の展開を慮る ラストは…タイトルの熟柿の意味は…
どこか八日目の蝉のようなそんな世界線があったかもしれないと過ぎった。自分の子と会うことがこんなにも難しく答えのない、ただ相手からの歩みだけが望みなものなのかと
失っていった大切な時間とそれまでの軌跡が物語を通して想像しかできないのだけど、時はその時は来るのだと信じれるそんな内容だった
ネタバレになるけど困ってる人をほっとけない意思を受け継いでる咲ちゃんがあまりにあまりにも主人公すぎて、そしてかおり氏の心の文に気持ちが入った
好きなフレーズ引用
産みの母親としての思慮の足りなさを指摘するために
十代の少年に 計り知れない衝撃を
どう押さえつけても浮上する良心の呵責にたえかね
お登勢は眼を伏せて 爪先を縮めた
平気 一緒に歩きたいなら歩く きみのしたいようにして
Posted by ブクログ
重い。ほんとに一瞬の出来事がその後の人生を大きく狂わせていく。住まいも仕事も変えながら、それでも生きていく主人公の姿は息苦しくなるけど逞しい。ただただ日々を重ねることが思いもよらぬ救いにつながることがあると、読後少し光が見えた。
Posted by ブクログ
熟柿。最後そこに繋がるんだ。
熟柿が嫌な印象から良い印象に。
待つ時間も大事というか、物事をそう捉えることが大事というか。
柿色の本の内側が素敵。
Posted by ブクログ
人身事故をきっかけに産まれたばかりの息子と離れ離れになってしまった女性の生涯。長く険しい道のりで事故の贖罪をもちながら懸命に息子の為に生きる姿がとても感動しました。本当に先が見えない中で生きていく指針もないまま日常が過ぎていくのは過酷なことだと思うが、熟柿のように時が来るのじっと待つ。人生において大切な事をこの作品から学びました。
Posted by ブクログ
晴子伯母さんの葬儀の帰り道、かおりはおばあさんを車で轢き死亡させてしまう。車には酔っぱらって寝ていた旦那、お腹には子どもがいた。すぐに通報しなかったことで、ひき逃げ犯となり刑務所に入り子どもを産む。そこからは転落人生、子どもに会いたいだけなのに…。かおりは幸せになれるのか?
Posted by ブクログ
出だしから何か未来に待ち受ける不幸を暗示するような不穏な空気感があり、不幸そのものよりも不幸が起こるまでのヒリヒリした感じが一番胸に堪える私にとっては、なかなかにドキドキする滑り出しだった。
事故に関しては明らかに本人に原因があるため同情はできないものの、本人視点で読む小説であるため、悲しみと後悔に寄り添う気持ちが沸いてくる。
出所後、西へ西へと流れていく様子は少し八日目の蝉を思い出させた。
作中コロナが出てきて、普段現代小説をあまり読まない私にとってはとても新鮮な感じがした。
“自粛”や“三密回避”によって多くの人の人生が狂わされたことも小説の題材として書かれるようになってきているらしい。
作中では約17年の時が流れているが、“熟柿”という言葉の根底には“時を堪える”という考え方がある。
何事においてもタイパ、コスパが優先されがちな現代においては、特に必要な考え方だと思う。
ただ闇雲に努力すれば良いというわけではないけれど、平凡な繰り返しの中で淡々と努力し続けて初めて至ることが出来る心境というものはあるのだ。
全体的に面白く読むことができたが、結局晴子叔母さんの呪いとは何だったのだろう?序盤では晴子叔母さんの影が見え隠れするようなシーンが多かったが、最終的には尻すぼみというか、出てこなくなったので、そこは残念だった。
この小説の一番の教訓は、『嘘をつかないこと』だと思う。登場人物たちは様々な場面で簡単に嘘をつくけれど、その嘘こそが後に不幸の種になっているのだ。
この教訓を胸に、その瞬間だけの耳障りの良い自己保身の嘘ではなく、どんな場面でも真実語のみを語れる自分であるように努力していきたい。