【感想・ネタバレ】PRIZEープライズーのレビュー

あらすじ

村山由佳が描く、業界震撼の“作家”小説!

「どうしても直木賞が欲しい……!」

賞(prize)という栄誉を獰猛に追い求める、あるベストセラー作家と彼女を取り巻く人間たちの、破壊的な情熱が迸る衝撃作!

あらすじ

ライトノベルの新人賞でデビューした天羽カインは、3年後には初の一般小説を上梓、その作品で〈本屋大賞〉を受賞。以来、絶え間なくベストセラーを生み出し続け、ドラマ化・映画化作品も多数。誰もが認める大人気作家である。
――しかし彼女には何としてでも手に入れたいものがあった。それは〈直木賞〉という栄誉。
過去に数度、候補作入りするものの、選考委員からは辛口の選評が続いた。別居する夫には軽んじられ、まわりの編集者には「愛」が足りない。私の作品はこんなに素晴らしいのに。いったい何が足りないというの?



『南十字書房』に勤める緒沢千紘は、天羽カインの担当編集者である。学生のころから大ファンで、編集者になってからは必死のアピールのすえカインの担当となった。〈直木賞〉が欲しいとのたまうカインに振り回されつつも、彼女の情熱に応えるべく、自らのすべてを懸けてカインに没頭するようになってゆき――。



一方『文藝春秋』のカイン担当、「オール讀物」編集長の石田三成は当惑していた。文春から出す新作を「絶対に候補作にしろ」とカインに詰め寄られたのだ。そしてその日カインが宿泊するホテルのカードには、手違いで「石田三成」の名前が載っていて……。
果たして天羽カインは直木賞を獲得することができるのか。
あまりのリアリティに業界震撼! 文芸を愛するすべての人に捧げる容赦ない作家小説。

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Posted by ブクログ

人間の怖さが、辛くも理解もできるし多くの人が共感できるのでは、と思った。そんな事ないのかな、逆になんでそこまで、って思うのかな。お仕事に全力を注ぐ系の熱いお話と思いきやそれだけでもなくて、ああそういう終わり?!えー、、、って感じの結末だった。でも意外でもある一方、世の中そんなものかもしれないなと思うところもあって。なんだろう、でもここまで全力で欲しいと思うものがあるって羨ましくもある、かな。

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2025年12月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者名も他の著作名も聞いたことがなかったのですが、装丁に惹かれて手に取りました。
偶然出会えて手に取ってよかった、とても面白い作品でした。

編集者という仕事は、著者に寄り添い、著作をより良くしていくものだと分かったけれど、自分には到底できない仕事だなと感じました・・ここまで、相手に尽くすことができるだろか。

千紘と佳代子が距離を縮めていく様子は、読者としては楽しくもあり、佐藤編集長が言うように危ういと感じるものでもあり、ハラハラしました。

佳代子は、自分の作品=子供と、それを受け取る読者以外へのあたりの厳しさがあまりにひどすぎると感じました。「その欠点に見えるものもまた、その人の大事な個性なのだ。」との台詞があったが、これは個性と呼んで良いのだろうか。
とくにサカキへのあたりの強さは酷いなと思うけれども、このあと関係は良くなっていくのだろうか。

実際に、テセウスの第1章を読む形で、千紘が削除を提案する原稿を体感できる仕組みは素晴らしかったです。
これはなんの波線なんだろ〜と思いながら読んでいたので、驚きでした。

『知らなければよかった、と思うことがある。
後悔先に立たずとはよく言ったものだ。知らなければよかったと思う時、ひとはすでにそれを知ってしまっていて、知らなかった昔には2度と戻れない。』
この文章から始まるクライマックスは、この本の中で一番心が揺さぶられた箇所でした。
千紘の提案に、衝撃を受けて削除した2行。そして、戻すことを提案されても、一度判断したんだから、と削除したままだった1行。
それに気づいてからの、佳代子の心情を直接描写しないところも、ああ、これが読者に無限に想像させるということか、と唸りました。


最後に千紘が受け取ったメッセージ、『あなたを、許さない』
わたしは、佳代子は拒絶するんだ・・と思ったけど、「歓喜が千紘の身体を刺し貫いていった。」「許されなくて、いい。このひとことが永遠に私だけのものであるならば。」と当の本人にとっては最高の言葉だったようで、ああ、本当に、愛というか、執着に近い感情になってしまっているのだなと少し哀れに思ってしまいました。

最終章、ラストも余韻が素晴らしい。
直木賞を辞退した後の、ある文学賞の受賞の知らせ。受賞を受け入れたのち、目元が和んだサカキを蹴りつけたのはなんでだろう。照れ隠し?
「帰って仕事するんだから」で終わるラストは、これこそ無限に想像できますね。

千紘に連絡を取ったのか?それとも石田に?などなど。

テセウスは歌うの第1章をどう終わらせるか?の話があったおかげでよりそれを感じることができる構成で、よく練られているなと思います。

小説家と編集者の仕事を垣間見ることで、自分の小説の読み方にすこし変化をもたらしてくれるそうな作品に出会えて、よかったです。

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2025年12月01日

Posted by ブクログ

YouTubeで色んな作家さんが紹介していて、
興味を持った作品。
読書は好きだけど、直木賞とか芥川賞にあんまり興味を持てていなかった。本屋大賞と比べると、ちょっと遠い存在。

直木賞の選考の過程とか、作家と編集者それぞれの視点で考えていることが細かく書かれていて、直木賞について、少し理解できた。

主人公の直木賞への執着と、そこからくる沸点の低さには、ドキドキ。
早く賞を取らせてあげて!と思わずにはいれない。

作者の村山さん自身も直木賞を取られていて、
全てがリアル。
村山さんの受賞作も読みたい。

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2025年12月01日

Posted by ブクログ

村山由佳さんの作品を読むのは初めて。
読む前は「直木賞を取りたい!」という単純なエンタメ小説なのかと思っていたけど、予想のつかない展開にどうなるのだろうと引き込まれた。

作家・出版社・書店員が一冊の本を生み出すまでに注ぐ情熱や葛藤、直木賞の選考方法や出版業界の裏側までが、作家自身の視点から描かれていて、それだけでもとても興味深くて面白かった。
村山さん自身が直木賞の受賞者だからこそ、賞の光と影、裏側の空気までもがリアルに伝わってくる。

フィクションでありながら、村山さんの本音や体験が巧みに織り込まれているのでは…と思わせるようなリアルさがある。
どこまでが本音で、どこからがフィクションなのかと想像させる、その曖昧さが絶妙。

作家・天羽カインの横柄で激昂しがちな性格は全く好きになれない。
でも、ちょうど同時期に読んでいた有吉佐和子さんのエッセイにも、「小説創作中につまらない話をされたことで激昂し、人間関係を滅茶苦茶にしてしまったことが何度もある」とか、「一度怒ったら最後、自分でも持て余すほど執念深く復讐心が強い」といった記述があり、その内容を思い出した。
ゼロから物語を生み出す作家の才能の裏側には、想像力が豊かすぎるがゆえの、普通には理解しがたい苦悩や強烈な感情があるのかもしれない。
そう考えるとカインの激しすぎる性格にも、どこか納得できる気がした。

想像以上の奥行きの深さと、先の読めない展開、ブラックなぶっちゃけ感、読者に考えさせる余韻も残っていて、今までにない読み心地で面白かった。
Audibleにて。

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2025年12月01日

Posted by ブクログ

おもしろすぎた。

ゾワゾワっとするというか血の気が引く瞬間たまらなかった

私もサイン会によく行くので天羽カイン先生のサイン会とても気になる、行きたい。

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

作家と編集者の姿がリアルすぎるほど描かれているとの評判を聞き、手に取る。
噂通りのリアリティ、罵倒されているシーンは血の気が引いた。
同じような職業をしているのもあり、あるあると思いながらページをめくった。
冒頭からお仕事小説だと思って読んでいたが、途中からはホラー小説かと思えた。
死人が出ていればもはやサスペンス。
素晴らしい小説だった。感服。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

どうしても、直木賞が欲しい。栄誉を求める作家カインの恐怖の危機迫る受賞までの 道のり。
女王様気質のカインと、自分は頼られていると、カインに陶酔する編集者千紘。
章への執着と、カインへの執着が度を超え、怖いくらいだった。どんなに良い作品を生み出せたとしても、この人が嫌いだ。でも、彼女の執着には、目を見離せない。

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2025年11月04日

Posted by ブクログ

「直木賞」を取りたい作家の話なのですが、読書が好きな人が好きな感じの物語です。「直木賞」のために自分の欲に正直で手にする為にどんな事でもするその情熱や強さが魅力的でした。作家の世界を覗くことができた気がしてワクワクしました。小説書いてみたいという気持ちはありますが、巧い文章を書くのは本当に難しそうです。

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2025年11月04日

Posted by ブクログ

すごい話だった…
1冊の本がどれだけの熱量を持って作られ、私達の手元に届くのか、その過程は興味深く、作家や編集者の並々ならぬ思いの詰まった大切な1冊である事がよく分かった。
人間のもつ業が交差する後半は常に心がヒリヒリ。
あぁまさか…の展開にため息が漏れました。
余韻が凄いです。

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2025年10月31日

Posted by ブクログ

とても面白かった。もっと読みたかった。作家さんの世界の話、興味深く読みました。FAXのことは意外だった。

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2025年10月28日

購入済み

めちゃくちゃ面白かった

ポッドキャストで社会学者の富永京子さんが紹介されていて、
「作家と編集者が距離を縮めると、まあこうなるよね……」とつぶやかれていたのが
妙に気になって読んでみました。
村山由佳を読むのは中学生の時以来だったので
『天使の卵』とか懐かしいな〜とだいぶ軽くてぬるい気持ちで読み始めたのですが
いやもう、サービス精神のほとばしりぶりがすごい。
実在の出版社や雑誌、
誰がモデルか分かり易すぎる一部の登場人物、
そしてパンチの効きすぎた小説家・天羽カイン。
読者の下世話な気持ちを満たしつつも
書く者の業の深さを濃厚に描き、
意外といえば意外なラストに着地させる。
すごいものを読んだ!という気持ちです。
やることが他にある時に読んじゃダメですよ……。

#ドキドキハラハラ #ドロドロ

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2025年02月27日

ネタバレ 購入済み

おもしろい

この小説を作る過程で、作者と担当編集者さんでどんな会話が生まれたのか…笑
後半はどんな暗い展開になるのかとヒヤヒヤしたものの、最後はスッキリした形で終わったかな。
市之丞が賞取らなくて良かった笑


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2025年02月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

村山由佳さん初読

『出せば売れる、というだけではもう足りないのだった。身体じゅうの全細胞が、正当に評価される栄誉に飢えて餓えている。世間や書店のお墨付きは得た、あとは文壇から、同業者から、作家としての実力を認められたい。いや、認めさせたい。これ以上(天羽カイン)を軽んじることは許さない。夫にも、誰にもだ。』

直木賞が欲しい天羽カインの執念が凄い
その周りで何から何までやってくれる
編集者の千紘ちゃんが好きだった
でも、、、石田三成にした事を知って驚愕した
まさか千紘ちゃんだったとは、、、

「テセウスが歌う」を作りあげていく過程で千紘がしてしまう事に予想が付いてしまった
千紘ちゃんはどこから変わってしまったのだろう

『しょっちゅうあった。
これまでも、これからも、そんな時には自分が勇気を持って正さなくてはならない。あなたはそのままでは裸の王様だ、と叫ばなくてはいけない。
それで嫌われたなら仕方がない、と千紘は思う。
何があろうと自分だけは、作家・天羽カインのためにとことん奉仕すると約束したのだから。』

先が気になって一気読み
他の作品も読んでみたい

『知らなければよかった、と思うことがある。
後悔先に立たずとはよく言ったものだ。知らなければよかったと思う時、ひとはすでにそれを知ってしまっていて、知らなかった昔には二度と戻れない。』

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

はじめての、村山由佳さん。

SNSでオススメされていたのと、今年芥川賞・直木賞で選ばれなかった経緯もあり読んでみようと。

天羽カインの、自分の作品に対しての熱意はクリエイティブの仕事をやってる身として理解も共感もできる。手掛けた作品に思いがあって、世の中に出た瞬間は感想は気になる。ただかなりクセツヨで編集者もついていくのに必死だろうなと、編集者の気持ちを考えると胃が痛くなりそう(笑)

その編集者・千紘。千紘の『度を超える行動』は、ある種の自爆行為であり、カインのクリエイティブの仕事にどっぷり浸かりすぎたのは、余計な行動を起こした引き金だったと思う。
作家と編集者はもちろん二人三脚で物語を紡ぎ出すけど、編集者が自分ごとのようになってしまうと結局作家側の『自分の作品』としての意味がなくなってしまう。それに千紘自身気づくところがあったはずなのに、なにをしてしまったんだろう。

二人の共通項は「(誰かに)認められたい」ことだけど、あまりにも度が過ぎると自爆するってことは理解ができたのではと、最終章の二人で感じたことでした。
天羽カインが世に出た作品、リアルにあったら読んでみたい。

『PRIZE』の内容は非常に濃かった。面白かったです。

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2025年12月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

直木賞を欲する、小説家の話。小説家が苦悩し、努力し、作品を作り上げていく様や、伴走する編集者の思いや苦労が描かれる。
「苦しい思いを色々としたけれど、報われて直木賞とれました!めでたし!」という終わりにはならないだろう、どう終わるんだろう…と思いつつ読み進めた。
そうきましたか…。という結末だった。
ここからが楽しみですねという感じで、良かったと思う。読み応えはあるけど重苦しすぎず、面白かった。

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2025年12月01日

Posted by ブクログ

天羽カインのような気性の激しい作家だと担当編集者も大変そう。機嫌を損ねないよう気を揉んだり、関係性や距離感も親密になりすぎても良くないって事だよね。
出版業界の事は全くの無知だったけど、リアリティがあって面白かった。

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2025年11月25日

Posted by ブクログ

「直木賞受賞」に取り憑かれた売れっ子作家、天羽カイン。激し過ぎる気性にこちらの胃もキューっとなった。ただ気性は荒いだけでなく、貪欲により良い作品をつくろうとする気迫は凄い!それに寄り添う編集者も大変なお仕事だなと感じた。今の社会ならパワハラとなって追放される行為も作品のためと呑み下す。公私がよくわからない事にも付き合う。到底できそうにない。
そして、直木賞の方が芥川賞よりも親しみやすくて好きだけど、名前の由来は知らなかった。菊池寛についても名前だけは知っていたが、今の文学界の土台をつくったとも言える貢献をした人だったとは。本は好きだけど、意外と知らない文学界、編集の世界を覗けて興味深かった。
各方面で話題になって手に取った一冊。心理描写がリアルでとても面白かったけど、個人的に再読したいとまでは思わなかった。

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

天羽さんの熱量がすごかった。

編集者さん(女子)はそっちに傾いちゃいましたか...
ちょっと分かります。

私もちょっと他人と自分の境目が危うかったことあったから…

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2025年11月19日

Posted by ブクログ

途中から、危ない、それ以上踏み込んだら、、と。沼に入っていく人は周りが見えず聞こえずこんな勢いで吸い込まれるんだと臨場感たっぷり。ハラハラした。
本が一冊世に出されるのに、これほど出版社が関わっているとは知らなかった。作家さんだけの力ではないんだと裏側を知れた。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

★★★★☆星4面白かった!
天羽カイン先生が徹頭徹尾【傲慢】で、無茶な要求、威圧的な態度、暴言、暴力等パワハラ全開で一緒に仕事したくない人ナンバーワンでした。安易に新人の市之丞さんと新さんコンビが何か大きなことをしでかすのかと予想しましたが違いました。
天羽先生から唯一信頼を得た編集者の千紘も次第に距離感がわからなくなり、タブーを犯してしまった。とにかく、天羽カインの沸点が低すぎていつキレるのか、なんて言うのかが気になってしかたなかったです。

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2025年11月15日

Posted by ブクログ

今年の直木賞シーズン真っ只中に話題になっていたので、読んでみました。
いや〜、とにかく主人公・天羽カインのキャラが強烈!

ここまで自分の欲をストレートに口にする人、なかなかいないと思う。
「あたしゃ直木賞が欲しいんだよ! 欲しいったら欲しいの!! なんであたしが評価されないのよ!!」
この感情が四六時中ビシビシ伝わってくるんです(笑)。

おそらくモデルは実在すると思うのですが、一人ではない気がします。
強烈な性格の作家を2〜3人ほどブレンドして、その濃い部分を一人に集約したのが天羽カイン、という印象(完全に私の想像です)。
あそこまで感情的な人、リアルではなかなかいないですよね。
遠くから見ている分には面白いけど、仕事では関わりたくないタイプ。
一緒に仕事したら、胃薬、ロキソニンが手放せないと思います。

物語の根幹は「直木賞が喉から手が出るほど欲しい!」というカインの執念なのですが、それだけで終わらないのが村山先生のすごいところ。
出版社、書店、編集者、作家、読者――それぞれの立場が交錯する“業界相関図”のような構成で、ある意味「出版業界の暴露本」と言ってもいいかもしれません。
出版社同士のせめぎ合い、書店との関係、作家と編集者の駆け引き、直木賞選考の裏側……。
ここまで赤裸々に描いてしまっていいの?!とドキドキものでした。

そして直木賞とは、読者の「面白かった」「よかった」だけでは決まらないという現実。
出版社の思惑、選考委員の考え、運――すべてが絡み合って、最終的に選ばれるのはほんの1~2冊。
時には“出来レース”と呼ばれることも。
作品の良し悪しだけで取れる賞ではないのだと痛感しました。

正直、作家一人の力では難しい。
直木賞を研究し尽くした編集者とタッグを組み、戦略的に作品を作り上げないと厳しいのだと思います。(なんかのメディアでそんなことを聞いた)
作家の力量と同じくらい、編集者の力も大きい。
この本を読んで改めてそう感じました。

登場する編集者の中では、南十字書房の緒沢千紘が印象的。
天羽カインとの距離の縮め方が、もうソワソワものでした。
女同士の関係って、近づきすぎるとろくなことがないんですよね……。
カインに贔屓されるほど千紘は追い詰められ、思い込みが激しくなっていく。
“神”であるカイン、“巫女”である千紘。
巫女が神の領域に踏み込むのはご法度――それを犯してしまった瞬間、すべてが崩れていく。
立場が弱い人間が暴走してしまう、その切なさが胸に刺さりました。

また、この作品には“時代の変化”を感じました。
20〜30年前は作家が読者よりも上の立場にいたけれど、今はむしろ逆転。
読者が本を買ってくれなければ作家生命が危うい。
作家・出版社・書店が一丸となって読者に届ける努力をしている。
“読者が本を買うことで作家を救う”――そんなメッセージを感じました。

そして忘れてはならないのが、編集長・石田三成。
彼の仕事ぶりが本当に素晴らしい。
作家との距離感が絶妙で、説得の言葉選びが的確。
「この人、編集者の鏡では?」と思いました。
石田三成に一票!

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2025年11月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

作家と編集者の深いつながりが濃く描かれている。

途中から千紘が危うくなってきた。でもまさか最後に天羽カインが削除した1文を残したとは。

全能感に浸った千紘と天羽カインの楽しそうな関係が破綻しそうな雰囲気を醸し出していてヒヤッとして怖い。

「あなたを、許さない」最後に天羽カインはなぜ千紘にこの言葉を送ったのだろう?

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2025年11月03日

Posted by ブクログ

村山由佳さん初めて読んだ。
小説家って編集者に対してこんなに乱暴なんだろうか。
こんな人ばかりではないだろうが、リアルっぽいから、こんな人もいるんだろうな。
そして、こんな編集者もいるんだろうな。勘違いしてしまう人。
「直木賞」って重いんだろうな。確かに、初めて読む小説家がどんな履歴かどんな賞を取ったかは参考にしてしまう。それが全てではないけど。

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2025年11月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「喉から手が出るほどほしい」
よく使われるこの表現。
私自身は、こんな気持ちになったことがないから、主人公の一人である天羽カインが、これだけ「直木賞」に固執していることに興味を持った。
何が彼女をそんなに駆り立てているのか。何故、「直木賞が欲しい」という気持ちを高濃度に維持していけるのか。

物語を読むうちに、天羽カインがどれだけの努力と熱意を込めて、作品を書き上げているか、自分の本を我が子のように大事に思っているかを知る。
そして、過去の編集者たちと交わしたやりとりも。

本書は、天羽カインと、担当編集者・緒沢千紘、石田三成の3者の視点で描かれる。
作家のプライドも、編集者の努力も、直木賞に関わる人たちの苦悩も、色んな人たちの大変さが伝わってくる構成で、いつしか「天羽カインが直木賞を獲れますように!」と応援している自分に気づく。

作家と担当編集の近すぎる信頼関係にハラハラする場面もあり、恐れていたことが現実になってしまう恐怖もあり、だからこそ、最後の最後は思わずガッツポーズをしてしまう高揚感を得られる。

これを、直木賞作家の村山由佳さんが書いたということが、ある意味恐ろしく、心が震えてしまう。

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2025年11月02日

Posted by ブクログ

日常的に本を読む人には、刺さるストーリーでした。この作家と編集者の熱量には、途中から危うさを感じていたが、やはり、納得の最後になった。天羽カインは今後作家として活躍するであろうことなく間違いないが、千紘はどうなっていくのだろう?

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2025年10月28日

読んでいてどうしても
村山由佳さんご本人を
イメージしてしまう

作家が主役
出版社名や
登場人物の作家もなんとなく
想像できてしまうから
つい現実と勘違いしてしまう
そこが狙いだろうけど
まんまとハマった

作家名の天羽カインと
本名の天野佳代子を使い分けることで、
作家活動とプライベートを
描き分けてるのかな?とは思うが、
佳代子の時もカインなので
まさしく表裏一体という感じ

一読者としては
賞の受賞うんぬんよりも
ストーリーありきであると思う
面白そうと思えば
知らない作家の本も選ぶし
いつも読む作家が毎回当たりとは
限らないことも知ってる

だから狭い世界でキリキリと
している登場人物が痛々しくも感じた
読者のためと言いながら
読者が見えていない気がした

けれどラストの顛末を読んで、
他人から認められたいという
承認欲求だけではなく
自分の仕事に誇りを持って向き合う、
覚悟を持ってやり遂げる、
プライドのようなものを
描きたかったのかなと思った

カインにしろ千紘にしろ
いろんな思惑や人間関係に翻弄されても、
確固としてある自我みたいなものを
貫き通す姿勢に
読後はホッとした

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2025年05月10日

Posted by ブクログ

天羽カインの執念が怖かったけど、ただ賞がほしいというだけでなく一本筋が通っているところがやはり素晴らしい作家だなと。

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

直木賞をどうしてもとりたい作家の話。
コミカルにもできただろうが、あくまでも真剣な作家の姿がよりリアルに感じた。

作家と編集者との関係が興味深かった。
仕事でもプライベートでも他者との距離の取り方が大事ですね。

しかし、編集者って読むスピードが早いのだろうな。コツがあるのだろうか。
作品の下書きにペンを入れるなら速読ではダメだろうし、細部までじっくり読まなくてはならないだろうから、私ならとても時間がかかって仕事にならないかも、といらぬことを考えました。


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2025年12月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

売れっ子作家の天羽カインは、ラノベ新人賞と本屋大賞をいちどとったきり無冠の帝王である。なかでも直木賞がいい。どうしてもほしくて審査員に便宜を図るように圧力をかけたりする。とにかく短気でプライドが高く、価値観も古いし、自分が間違っているのにそれを認めることもできない。書店や読者には優しいけど、少しでも気にらないことがあると八つ当たり、パワハラ三昧。なにひとつ感情移入できるところがない主人公だ。
そんなカインを冷めた目で見ながらも、甲斐甲斐しく世話をしてくれる担当編集の千紘。はじめはなんて天使なんだろうと思っていたが、じつはとんでもないモンスターだった。最後まで読んで、石田さんのまともさに救われた気持ちになりました。

実際にあるかもしれないと思わせるようなリアリティが本当にすごい。作家の目線から語られる良い作品や売れる作品、直木賞の選定基準など、普段は知ることのできない裏側もくわしく描かれており、とても勉強になりました。自分のいる業界のことって主観が入ってしまって書きにくいと思うんですけど、それをこんなに客観視できているところがすごい。もしかして実際にこういう作家さんがいたとか!?

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2025年11月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あやうい。
常にそう思いながらあっというまに読み進めた。
これはもしかして闇に入るのか?それとも光につながるのか?
と。

文学というものは、私にはわからない世界だよなと思い知らされながらも、直木賞作品が読みたくなった。

最後、報われた気がして良かった。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

本の受賞作品の裏側の話。
自立と依存は永遠のテーマに感じる。
にしても千紘の独占欲の異常たるや
ホテルの領収書を夫さんの見えるところに置いたのも千紘だったり…?
書かれていない描写が想像力を掻き立てる…←


編集者の描写が著書の理想だったりするのかな、
賞のうらがわ、

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2025年11月15日

Posted by ブクログ

なんとなく読後感がよくないなぁ…
作品を生み出す方の情熱や執念みたいなものを感じることはできました。編集者が執筆者とどんなふうに関わっていくのかも理解できました。ここは、とても面白かったのですが、ラスト、ここに着地するのかぁ…という感じでした。

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2025年10月31日

Posted by ブクログ

小説家 日記とかコラムぐらいの文章量なら何とか書けますが、小説は書こうと思っても書けないです。才能というものをまざまざと感じさせる物です。そんな小説を書ける小説家が直木賞に執着している姿を、赤裸々に書き綴った小説でした。

ラストの展開は好きでした。前半はもたついた感がありました。直木賞受賞作家だからこそ書ける作品で、取ってない人が書いてたらそれはそれで面白いだろうなと思いました。

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2025年12月03日

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