【感想・ネタバレ】PRIZEープライズーのレビュー

あらすじ

村山由佳が描く、業界震撼の“作家”小説!

「どうしても直木賞が欲しい……!」

賞(prize)という栄誉を獰猛に追い求める、あるベストセラー作家と彼女を取り巻く人間たちの、破壊的な情熱が迸る衝撃作!

あらすじ

ライトノベルの新人賞でデビューした天羽カインは、3年後には初の一般小説を上梓、その作品で〈本屋大賞〉を受賞。以来、絶え間なくベストセラーを生み出し続け、ドラマ化・映画化作品も多数。誰もが認める大人気作家である。
――しかし彼女には何としてでも手に入れたいものがあった。それは〈直木賞〉という栄誉。
過去に数度、候補作入りするものの、選考委員からは辛口の選評が続いた。別居する夫には軽んじられ、まわりの編集者には「愛」が足りない。私の作品はこんなに素晴らしいのに。いったい何が足りないというの?



『南十字書房』に勤める緒沢千紘は、天羽カインの担当編集者である。学生のころから大ファンで、編集者になってからは必死のアピールのすえカインの担当となった。〈直木賞〉が欲しいとのたまうカインに振り回されつつも、彼女の情熱に応えるべく、自らのすべてを懸けてカインに没頭するようになってゆき――。



一方『文藝春秋』のカイン担当、「オール讀物」編集長の石田三成は当惑していた。文春から出す新作を「絶対に候補作にしろ」とカインに詰め寄られたのだ。そしてその日カインが宿泊するホテルのカードには、手違いで「石田三成」の名前が載っていて……。
果たして天羽カインは直木賞を獲得することができるのか。
あまりのリアリティに業界震撼! 文芸を愛するすべての人に捧げる容赦ない作家小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

著者名も他の著作名も聞いたことがなかったのですが、装丁に惹かれて手に取りました。
偶然出会えて手に取ってよかった、とても面白い作品でした。

編集者という仕事は、著者に寄り添い、著作をより良くしていくものだと分かったけれど、自分には到底できない仕事だなと感じました・・ここまで、相手に尽くすことができるだろか。

千紘と佳代子が距離を縮めていく様子は、読者としては楽しくもあり、佐藤編集長が言うように危ういと感じるものでもあり、ハラハラしました。

佳代子は、自分の作品=子供と、それを受け取る読者以外へのあたりの厳しさがあまりにひどすぎると感じました。「その欠点に見えるものもまた、その人の大事な個性なのだ。」との台詞があったが、これは個性と呼んで良いのだろうか。
とくにサカキへのあたりの強さは酷いなと思うけれども、このあと関係は良くなっていくのだろうか。

実際に、テセウスの第1章を読む形で、千紘が削除を提案する原稿を体感できる仕組みは素晴らしかったです。
これはなんの波線なんだろ〜と思いながら読んでいたので、驚きでした。

『知らなければよかった、と思うことがある。
後悔先に立たずとはよく言ったものだ。知らなければよかったと思う時、ひとはすでにそれを知ってしまっていて、知らなかった昔には2度と戻れない。』
この文章から始まるクライマックスは、この本の中で一番心が揺さぶられた箇所でした。
千紘の提案に、衝撃を受けて削除した2行。そして、戻すことを提案されても、一度判断したんだから、と削除したままだった1行。
それに気づいてからの、佳代子の心情を直接描写しないところも、ああ、これが読者に無限に想像させるということか、と唸りました。


最後に千紘が受け取ったメッセージ、『あなたを、許さない』
わたしは、佳代子は拒絶するんだ・・と思ったけど、「歓喜が千紘の身体を刺し貫いていった。」「許されなくて、いい。このひとことが永遠に私だけのものであるならば。」と当の本人にとっては最高の言葉だったようで、ああ、本当に、愛というか、執着に近い感情になってしまっているのだなと少し哀れに思ってしまいました。

最終章、ラストも余韻が素晴らしい。
直木賞を辞退した後の、ある文学賞の受賞の知らせ。受賞を受け入れたのち、目元が和んだサカキを蹴りつけたのはなんでだろう。照れ隠し?
「帰って仕事するんだから」で終わるラストは、これこそ無限に想像できますね。

千紘に連絡を取ったのか?それとも石田に?などなど。

テセウスは歌うの第1章をどう終わらせるか?の話があったおかげでよりそれを感じることができる構成で、よく練られているなと思います。

小説家と編集者の仕事を垣間見ることで、自分の小説の読み方にすこし変化をもたらしてくれるそうな作品に出会えて、よかったです。

0
2025年12月01日

ネタバレ 購入済み

おもしろい

この小説を作る過程で、作者と担当編集者さんでどんな会話が生まれたのか…笑
後半はどんな暗い展開になるのかとヒヤヒヤしたものの、最後はスッキリした形で終わったかな。
市之丞が賞取らなくて良かった笑


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2025年02月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

村山由佳さん初読

『出せば売れる、というだけではもう足りないのだった。身体じゅうの全細胞が、正当に評価される栄誉に飢えて餓えている。世間や書店のお墨付きは得た、あとは文壇から、同業者から、作家としての実力を認められたい。いや、認めさせたい。これ以上(天羽カイン)を軽んじることは許さない。夫にも、誰にもだ。』

直木賞が欲しい天羽カインの執念が凄い
その周りで何から何までやってくれる
編集者の千紘ちゃんが好きだった
でも、、、石田三成にした事を知って驚愕した
まさか千紘ちゃんだったとは、、、

「テセウスが歌う」を作りあげていく過程で千紘がしてしまう事に予想が付いてしまった
千紘ちゃんはどこから変わってしまったのだろう

『しょっちゅうあった。
これまでも、これからも、そんな時には自分が勇気を持って正さなくてはならない。あなたはそのままでは裸の王様だ、と叫ばなくてはいけない。
それで嫌われたなら仕方がない、と千紘は思う。
何があろうと自分だけは、作家・天羽カインのためにとことん奉仕すると約束したのだから。』

先が気になって一気読み
他の作品も読んでみたい

『知らなければよかった、と思うことがある。
後悔先に立たずとはよく言ったものだ。知らなければよかったと思う時、ひとはすでにそれを知ってしまっていて、知らなかった昔には二度と戻れない。』

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

直木賞を欲する、小説家の話。小説家が苦悩し、努力し、作品を作り上げていく様や、伴走する編集者の思いや苦労が描かれる。
「苦しい思いを色々としたけれど、報われて直木賞とれました!めでたし!」という終わりにはならないだろう、どう終わるんだろう…と思いつつ読み進めた。
そうきましたか…。という結末だった。
ここからが楽しみですねという感じで、良かったと思う。読み応えはあるけど重苦しすぎず、面白かった。

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2025年12月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

★★★★☆星4面白かった!
天羽カイン先生が徹頭徹尾【傲慢】で、無茶な要求、威圧的な態度、暴言、暴力等パワハラ全開で一緒に仕事したくない人ナンバーワンでした。安易に新人の市之丞さんと新さんコンビが何か大きなことをしでかすのかと予想しましたが違いました。
天羽先生から唯一信頼を得た編集者の千紘も次第に距離感がわからなくなり、タブーを犯してしまった。とにかく、天羽カインの沸点が低すぎていつキレるのか、なんて言うのかが気になってしかたなかったです。

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2025年11月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

作家と編集者の深いつながりが濃く描かれている。

途中から千紘が危うくなってきた。でもまさか最後に天羽カインが削除した1文を残したとは。

全能感に浸った千紘と天羽カインの楽しそうな関係が破綻しそうな雰囲気を醸し出していてヒヤッとして怖い。

「あなたを、許さない」最後に天羽カインはなぜ千紘にこの言葉を送ったのだろう?

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2025年11月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「喉から手が出るほどほしい」
よく使われるこの表現。
私自身は、こんな気持ちになったことがないから、主人公の一人である天羽カインが、これだけ「直木賞」に固執していることに興味を持った。
何が彼女をそんなに駆り立てているのか。何故、「直木賞が欲しい」という気持ちを高濃度に維持していけるのか。

物語を読むうちに、天羽カインがどれだけの努力と熱意を込めて、作品を書き上げているか、自分の本を我が子のように大事に思っているかを知る。
そして、過去の編集者たちと交わしたやりとりも。

本書は、天羽カインと、担当編集者・緒沢千紘、石田三成の3者の視点で描かれる。
作家のプライドも、編集者の努力も、直木賞に関わる人たちの苦悩も、色んな人たちの大変さが伝わってくる構成で、いつしか「天羽カインが直木賞を獲れますように!」と応援している自分に気づく。

作家と担当編集の近すぎる信頼関係にハラハラする場面もあり、恐れていたことが現実になってしまう恐怖もあり、だからこそ、最後の最後は思わずガッツポーズをしてしまう高揚感を得られる。

これを、直木賞作家の村山由佳さんが書いたということが、ある意味恐ろしく、心が震えてしまう。

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2025年11月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

売れっ子作家の天羽カインは、ラノベ新人賞と本屋大賞をいちどとったきり無冠の帝王である。なかでも直木賞がいい。どうしてもほしくて審査員に便宜を図るように圧力をかけたりする。とにかく短気でプライドが高く、価値観も古いし、自分が間違っているのにそれを認めることもできない。書店や読者には優しいけど、少しでも気にらないことがあると八つ当たり、パワハラ三昧。なにひとつ感情移入できるところがない主人公だ。
そんなカインを冷めた目で見ながらも、甲斐甲斐しく世話をしてくれる担当編集の千紘。はじめはなんて天使なんだろうと思っていたが、じつはとんでもないモンスターだった。最後まで読んで、石田さんのまともさに救われた気持ちになりました。

実際にあるかもしれないと思わせるようなリアリティが本当にすごい。作家の目線から語られる良い作品や売れる作品、直木賞の選定基準など、普段は知ることのできない裏側もくわしく描かれており、とても勉強になりました。自分のいる業界のことって主観が入ってしまって書きにくいと思うんですけど、それをこんなに客観視できているところがすごい。もしかして実際にこういう作家さんがいたとか!?

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2025年11月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あやうい。
常にそう思いながらあっというまに読み進めた。
これはもしかして闇に入るのか?それとも光につながるのか?
と。

文学というものは、私にはわからない世界だよなと思い知らされながらも、直木賞作品が読みたくなった。

最後、報われた気がして良かった。

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2025年11月17日

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