小説・文芸の高評価レビュー
-
Posted by ブクログ
ネタバレ新聞記者の清武氏の半生を自身が語るノンフィクション。そこで訴えているのは正義の追求への矜持である。昨今、マスゴミという言葉が世の中にあるが、本当の報道とはこのような厳しい世界があって初めて成立するものだ。所謂マスゴミが提供する情報は情報と言うことさえ恥ずかしい、本来は触れてはいけないものだ。本書は新聞記者のあり方を超え、我々が生きるにあたりどのような気持ちを持たなければならないのか、強く訴えてくる。また、還暦を過ぎても揺るがない生き方をする著者の行動は、自分がこれからどう生きるべきなのか考えさせられるきっかけとなる。元気をもらえた。
-
Posted by ブクログ
夏目漱石、前期3部作は『三四郎』『それから』『門』。3作品は、恋愛→結婚→結婚後 という、つながりが感じられます。眼前に現れる景色が違い、訴えてくるものも違うため、3作品の優劣はつけ難いです。
しかし、『門』は派手な部分はないけれど、しっとりした余韻を感じ、私の好みです。ひとつの事実や心理を表現する描写が巧みで、心に奥深くまで刺さります。恐ろしいぐらい、うまい。3作品共通して言えるのは、日本語のゆかしさが感じられ、文章に落ち着きと骨力があるということ。現代の小説よりも漢語が多く使われているため、漢語から伝わるイメージが作品世界を作っていました。漢籍の教養が下地にあるということは、すごいことで -
Posted by ブクログ
ネタバレこの物語に私に伝えるメッセージはなんだろう、と考え始めたのは、中年の専門講師の「物語には必ず著者のメッセージがあって、それを言語化できなければならない」という言葉を聞いた時からだった。
その言葉を聞いた時私は、否定も肯定もできなかった。肯定すれば今後の物語との出会いに何か制限を課せられたような気がしたからだ。否定できなかったのは、反論する程の論理を立てられなかったからだ。
そして今日私は、その専門講師の言葉が崩れていくのを感じた。なぜか、私は、この本で田中幸乃の人生を見たからだ。それは、こういう風に生きろとか説法を唱える文章ではなかった。田中幸乃という人生が伝える一言では済まされな -
Posted by ブクログ
6篇のSF短編集。
色々考えされるお話ばかりだった。斜線堂先生のSFは初めて読んだけどとても面白かったです。天才。
『回樹』『回祭』では、何を持って真実の愛とするのか、が描かれていて人間の関係・感情って複雑だなぁと思った。『回祭』の終わり方が切なすぎる。
人間の死体が腐らなくなりやり場に困り始める世界のお話『不滅』も、大切な人の遺体をどう扱うかは人によって違うし倫理を取るか未来を取るかで考え方は分かれるし難しい問題ではある。自分が当事者だったらどういう気持ちになるだろうと考えさせられた。
白人と黒人と宇宙人の人種差別を超えた友情が育まれていく『奈辺』はハートフル?で好きだった。 -