小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
本を読むことが好きなあなたに、おすすめしたい一冊です。
なぜなら、この物語は「なぜ本を読むのか」という問いについて、考えさせてくれる作品だからです。
働いて、働いて、時間に追い越されそうになりながら働く現代社会。生産性が重視され、他人より優位に立つために、いつしか心が歪んでいく。
勝ち組が賞賛される一方で、負け組と呼ばれる人たちがいる。そんな社会を、生きづらいと感じることがあります。私自身も、知らず知らずのうちに、勝ち負けという物差しで自分や他人を見てしまうことがあるのではないかと思います。
一方、本の世界には、生産性や勝ち負けだけでは測れない価値があります。
物語の登場人物たちは、ときに自分の利益を顧みず、誰かのために行動します。勝つことだけが正解ではなく、損得を超えた生き方にも輝きがある。そんな世界を、本はたくさん見せてくれます。
この物語を読んで、私は本を読むことについて、改めて考えさせられました。
そして、本を読むことは、私たちの歪んだ心を元に戻してくれるのではないか、という思いに至りました。
これまでいろいろな本を読んできましたが、こんなふうに考えたのは初めてです。
これからも、本を読み続けたい。
なぜなら、本は、殺伐とした資本主義社会の中で、いつの間にかささくれてしまった私の心を、軌道修正してくれるものだからです。
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Posted by ブクログ
いきなり21章から始まる。え?と思い、本書にさっと目を通せばよいものを、前作が20章で終わっていたに違いないと勝手に思い込み、前作を引っ張り出して読み返すことから始めた。
もちろん、勘違いではあったけれど、復習してから本書に入り込めたのは、結果としてよかった。結局、本書は21章、20章と時系列を遡っていくタイプだった。しかも、小石大ピンチのセンセーショナルな場面から始まるものだから、「戻らない」って、そういうこと⁈ と衝撃が走る。いったい、なぜこんなことになったのか。時系列が過去に遡るにつれて、その経緯が明らかになっていく。今までとは違ったドキドキ感がある。
読む前は、今回は騙されないぞと意気込んでいた。時系列を遡る構成もあって、意識はWHYに向いている。これなら完璧なはずだった……しかし、完敗だった。気持ちのいい負け。著者の鮮やかな手口に、むしろ清々しい気分になる。楽しかった。
今回は書籍で購入したのだが、紙でよかったと感じた。タイトルを回収する素敵な一文が、ちょうど1ページめくった先にある。その演出も含めて、味わい深い読書体験になった。 -
Posted by ブクログ
国家において人間よりも上の存在である憲法で、働くことが義務とされている。その重さというか、逃げられなさというか。
自分も仕事辞めてから次の仕事に就くまでのあいだニート生活をしていた経験があって、お金の不安とかももちろんあるのだけど、「働いていない」こと自体に罪悪感を感じたのを思い出した。
主人公はそれに加え、幼少期に親からかけられた言葉や期待によって「誰かの役に立たなければ」と強く思いすぎる人格に形成されているらしく、生きにくいだろうなあ、と。
VRの世界ではプログラミングされたことしか起こらないけど、現実世界ではそうはいかない。これは良い意味でも悪い意味でも。
それと、ゾンビ・アラスカは僕だと思った。社会で生きるというか生きさせていただくためには、何かしらで貢献しないといけない(という気がして)、それがつまり労働。それに対して僕は苦手意識があって、怖くもあって、でもやるしかないから挑戦して、失敗してまた怖くなって、クマに相談することも多々。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2026/10/11 読み終わり
何から書こうかすごく悩むけど、まずこの本を紹介してくれた親友に心から感謝したい
ものすごく泣いてしまった。
この本を読みながらいろんなことを考えた。
私にいろんな形の愛を注いでくれる母や、一見無関心なのかな?と思うけどそれでもいろんな形で守ってくれる父、人として完全に好きではないけれど、心のどこかで愛している姉のことを思い出した。家族仲が完全にいいわけではないと思う。
気持ち悪くて大嫌いで、いなくなりたい、いなくなってほしいという気持ちにさせるのも家族で、どうしようもなく愛してるのも家族だなと思う。
読んでいる時この本を紹介してくれた子のことをよく考えていた。その人はとんでもない包容力で私や周りを包み込んで愛してくれるし、この本を読んでいて、その人思想だとか、愛だとか、この本を私に選書してくれたことだとか、いろんなものを受け取れたなと感じた。
その人は私から見てどことなく儚くて、他者に対して深い詮索や介入をしない人で、こっちが自分の話をするのを待っていてくれるというか、受け止めてくれる人で、本の中に出てきたマドンナとその人がどうしても重なってしまい、マドンナが雫や他のホスピスの住人にかける言葉がその人が私にかけてくれる言葉にすごく重なっていて、読んでいてその人の愛に包まれているような読書体験で、泣いてしまった。どこか俯瞰していて優しくて綺麗な世界を持つその人の根っこはこのほんと深く繋がっているのかなと感じた。
どうしようもなく泣いてしまった。
友達のことも考えた。
自分は知り合いはたくさんいるけれど、心からこの人は私の友達で、本当に大好きだ。と呼べる人は少ない。友達になって深く好きになった時、沢山愛を注いでその愛を返してもらった時のことを考えて泣いた。
自分は一人じゃないし自分次第で別世界になれるんだよということを深く教えてくれる本だなと思った。
深く感動したシーンが二つあって、
一つはタヒチ君と海辺でキスをする場面。どうしようもなく美しくて切なくて、本を読んでこんなに誰かを恋しく思って泣いてしまう自分に驚いた。
他の感想を見ると瀬戸内の海が見たいという声がよく見られたが、私も心からそう思った。
二つ目は、雫の死後二日目、マドンナの回想編。
情の深い、美しい言葉。きっとあなたの人生そのものが、おいしかったのでしょう。本当に、見事なしめくくり、大往生でしたね。
この文章がどうしようもなく心に刺さった。
これほどまでに相手を思った愛があるのかと思った。
雫の人生や、マドンナ、ホスピスでの暮らしを私も体験することができて本当に本当に幸せだった。
改めて、この本に出会わせてくれて本当にありがとう。
また会ったときに感想話し合おうね。
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Posted by ブクログ
7つのストーリーがそれぞれにいい味を出していて、絶妙な切り口のストーリーになっていておもしろい。
私の口にあった3作を選ぶなら、
原田ひ香さん「最後に、何を食べたの?」
井上荒野さん「本当の話」
寺地はるなさん「小曾根幸子の送別会」。
今(私的に)話題の原田さんのストーリーは、はじめは、頭が?の状態から、少しずつ、ヤバいことしようとしてる展開が理解できてきて、なるほど、という結末で落ち着くけど、きっと、もっともっと濃く長くしたら、すごく面白い一冊の本になるような気がする。読みたい。なんとなく、「PRIZE」に近しい心情になる気がする。ド素人的な感想です。 -
Posted by ブクログ
津村記久子さんの『やりなおし世界文学』で知った本。
作家さんでさえ、どう説明していいか、と戸惑う本。
なのに、救済感、美しさが感じられる。
それは読んでみなくては、と思い手にする。
たしかに、何と言っていいかが難しい作品だった。
でも、最初の一ページから引き込まれてしまう。
スコットランドの小島にある、ラムジー家の別荘の、夏のある一日が描かれる。
ラムジー家の幼い息子、ジェイムズが「影や光の射す一瞬」を結晶化していつまでもとっておけるように、その一日が克明に描かれる。
最初透明な語り手が状況を語り始めた…と思った次の瞬間に、ラムジー夫人の内言となり、その直後には彼女が注意を向けた人物、例えば夫、ダンズリー、バンクス、そしてリリー・ブリスコウといった人物の内面に移っていく。
これで読者として混乱しないのかといえば、意外としない(というか、たいして事件が起こるわけでないのであまり困らないのかもしれない)。
それよりも、次第に浮かび上がってくるラムジー夫人、ラムジー、ブリスコウらの人柄、人生に興味が掻き立てられる。
特に魅力的だと思ったのがリリー。
画家として生涯独身を貫き、自らの表現を追究しようとしている。
大変な美女ではあるが、一世代前の価値観で一直線に行動するラムジー夫人とは相いれなさそうなのに、なぜかリリーは夫人を慕い続ける。
自分が持っていないものを持っているからなのか。
十年の後、夫人も世を去り、夫妻の八人の子のうちの二人が早世してしまった後の大きな喪失感を味わいながら、人がそこにたしかにいることで、世界がどれだけ充足していたかを見出だしていく。
そのリリーの姿は、せつなくて美しかった。 -
Posted by ブクログ
高まるソ連の脅威に対抗するために、モンゴルに第二の満州国を作ろうとする動きは結局うまくいかず。
徐々に高まる国民党政府との緊張。頻発する関東軍と国民党軍及び抗日ゲリラ達との衝突。犬猿の中だった共産党軍と国民党は合流。
昭和12年には通州事件が発生。多くの日本人が凄惨に惨殺される。
国民党政府(1912年成立の中華民国)の首都である南京への進軍には兵站は伴わなかった。兵士による現地調達すなわち掠奪と強姦を取締る憲兵は少人数しか配置されず。
そして南京陥落後の虐殺に多くのページを割いている。現代の中国が主張する20万人という数字はアンリアルであるために、虐殺自体がなかったことと主張する意見も存在するが、この本は日本兵による国民軍兵士たちへの処刑の様子を詳述。20万人という現代中国の発表よりは大幅に少ないが、それでも夥しい殺人が行われたことを記録。おそらく多くの関係者への取材を経ていると推測。
関東軍による阿片生産の取り組みや、三井物産による阿片輸入についても触れている。これは多くの公文書により記録が残る闇歴史。
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