小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
思わず唸る面白さ。言葉遊びが炸裂して、ページに1回は笑わされる。やはり森見登美彦はすごい。ほかの作家とは一線を画していると思う。
著者の文学や歴史に対する独特な造詣と知識、京都の街を肌で感じてきた経験を下地に、まこと人間臭いタヌキ達の冒険が織り成される。
タヌキと天狗なのに人間臭い主人公と師匠、対して人間なのに神々しい弁天。それぞれが愉快な4兄弟にへっぽこライバル、対して食われ死んでしまう事への切実な恐怖と悲しみ。母の愛に叔父の憎愛。コミカルな語り口の裏にこれでもかと言うくらい色んな要素が詰め込まれ、まさに混沌と言うべき様相を呈している。
そして、この作品の凄いところは、その混沌を読み進む中 -
Posted by ブクログ
私は、この本を読んで、「人生のピークは遅いほうがいい」って思うようになりました。
ノースカロライナの湿地で、たった一人で生きる少女・カイアの話です。家族に見捨てられて、村の人に蔑まれて、でも彼女は息をしている。著者が動物学者だからか、自然描写がほんとに細かくて、読んでいるとそこに身体ごと入り込む感覚があります。
何がいいって、この本は「ミステリー」として読んでも、「成長小説」として読んでも、「自然観察記」として読んでも、全部が成立するんです。複数の見方ができるというか。カイアという人物を、どの角度から見るかで、全然違う物語に見えてくる。
読み終わってから何日間も、このカイアのことを考えてました