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たとえ癒しがたい哀しみを抱えていても、傷がそこにあることを認め、受け入れ、傷の周りをそっとなぞること。過去の傷から逃れられないとしても、好奇の目からは隠し、それでも恥じずに、傷とともにその後を生きつづけること――。バリ島の寺院で、ブエノスアイレスの郊外で、冬の金沢で。旅のなかで思索をめぐらせた、トラウマ研究の第一人者による深く沁みとおるエッセイ。解説 天童荒太
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Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて購入したけどとても良かった。
本棚に閉まって疲れたときにそっと開きたいと思える本だった。
誰もが傷を抱えて生きてるもの。傷ついた心を癒す薬はない。だからこそ強がる必要もなくて、傷を受け入れて心に閉まって生きていけるのが魅力的な人。
痛みをそっとなぞって受け入れて、恥じずに労わることがどれほど難しいことか。特に男性は難しいらしいから全てを受け止められる包容力がほしい。
誰も関心をしないけど自分が不思議と思ったら突き詰めるって言葉も沁みたなあ。
最後の「傷を愛せないわたしを、あなたを、愛してみたい。傷を愛せないあなたを、わたしを、愛してみたい」って文章には涙が出てきた。
Posted by ブクログ
トラウマ研究の第一人者である著者が綴る日常エッセイ集である。著者の人となりが垣間見えるとても静謐で実直な文体が、読者を追い詰めることなく優しく認めてくれる感覚を味合える。
トラウマ臨床の研究者で医師という肩書きからは、トラウマに関する事象全てを掌握しているプロフェッショナルという姿が想起される。そこには、一切の失敗や妥協を許されない姿勢が求められるプレッシャーがあるだろう。切羽詰まっている患者からすれば、簡単に改善してくれるだろうと縋るのも当然と想像に難くない。
しかし、著者は当事者としてプロフェッショナルにも当然あるはずである人間性を吐露する。一発で症状を改善させるようなことはできないし、常日頃心に傷を負った患者と接することで精神がすり減っている現実があるのだ。
ではプロフェッショナル、ひいては他人としての私たちは傷を負った人々に対して無力なのだろうか。著者は、傷ついた人に寄り添うこと、何もできないがただ見ていることの重要性を示す。傷を傷のままに認め受容しながらその上で人生を続けていくこと。このような態度で自他ともに接することが大切なのだろう。
著者の日常の些細な出来事からより抽象的なテーマへと話題を転換させる思考の独自性が、おもしろい。様々なテーマの根底には、読者の経験する日常の歯がゆさや無力さを優しく包み込んでくれる、そのような優しさがある。
Posted by ブクログ
2026/10/11
世界の様々な場所で思いを巡らせる、精神科医によるエッセイ。
比較的易しい言葉で、わかりやすく書かれていてとても読みやすかった。
完璧な人なんていない、という当たり前のことをつくづく思い知る。
自殺を防ごうと、死なないでほしいと言う時、それがごまかしであり、患者が人生を諦めることになることに嫌気がさす筆者。
精神科医であっても、悩み、葛藤している。
とても人間らしいし、誠実でやさしい人だと思った。
今の自分をそっと受け入れ、寄り添ってくれる。そんな素敵なエッセー。
辛いことがあった時、また繰り返し読みたい作品だった。
Posted by ブクログ
誰もが言葉にできない傷を抱えて生きる現代。傷に打ち勝つ強さや、気にしない振りをする鈍感力が必要なのだと思っていた。私にはそのどちらもなく、傷をそのまま受け止めては当時の記憶を呼び起こし、打ち勝つこともスルーすることもできずに、生きづらさに消えてしまいたいという衝動に駆られることばかりだった。
だからこそ、傷を傷として受け止めてもいいと知った時、張り詰めていた心がすっと軽くなった気がする。無理に強がらなくていいと思えたことで、自分をいたわることに専念できそうな気がしている。
本書に記されたエッセイは、著者である精神科医の知見に裏打ちされながらも、纏う空気はどこまでも優しく、誰もが持つ悩みに寄り添っていると思う。すべてに白黒つけず、曖昧なままそっと考えを託してくれるような雰囲気もある。それが、私にはとても心地よかった。
Posted by ブクログ
トラウマ治療に関する第一人者が書かれた本で、『心に沁みた…』的な感想をSNSで読み手に取りました。
たしかにその通りで涙がポロッと溢れる箇所もあるんだけど、全体的な印象としては、おもしれ〜〜!!だった。
右脳左脳の使い方で魔術的思考をするかどうかが変わるとか、ヴァルネラビリティ(脆弱性、攻撃誘発性)についての知見、ベトナム戦争記念碑を通じて見る負の歴史の扱い方などなど。
知的好奇心をくすぐられるトピックスや、なるほどそういう視点があったのねという気づきが多かった。
著者に関しては、なんだか掴みどころの無い方だなと思った。
幼少期のことや家族のこと、もちろん著者が何を考えているかを書いているエッセイなんだけども、職業柄世界をかなり俯瞰して見ているからなのか?
あまりにもニュートラルな性格の方だなぁという印象。
本筋のテーマであるトラウマ、PTSDに関しては、
【屈辱】や【みじめである】といった言葉に自分が強く反応したのが気付きだった。
私は喪失感や不安よりも、屈辱感に苦しめられてるんだなぁ。なるほど。
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