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エッセイ・紀行 16位
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たとえ癒しがたい哀しみを抱えていても、傷がそこにあることを認め、受け入れ、傷の周りをそっとなぞること。過去の傷から逃れられないとしても、好奇の目からは隠し、それでも恥じずに、傷とともにその後を生きつづけること――。バリ島の寺院で、ブエノスアイレスの郊外で、冬の金沢で。旅のなかで思索をめぐらせた、トラウマ研究の第一人者による深く沁みとおるエッセイ。解説 天童荒太
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Posted by ブクログ
トラウマ研究の第一人者である著者が綴る日常エッセイ集である。著者の人となりが垣間見えるとても静謐で実直な文体が、読者を追い詰めることなく優しく認めてくれる感覚を味合える。 トラウマ臨床の研究者で医師という肩書きからは、トラウマに関する事象全てを掌握しているプロフェッショナルという姿が想起される。...続きを読むそこには、一切の失敗や妥協を許されない姿勢が求められるプレッシャーがあるだろう。切羽詰まっている患者からすれば、簡単に改善してくれるだろうと縋るのも当然と想像に難くない。 しかし、著者は当事者としてプロフェッショナルにも当然あるはずである人間性を吐露する。一発で症状を改善させるようなことはできないし、常日頃心に傷を負った患者と接することで精神がすり減っている現実があるのだ。 ではプロフェッショナル、ひいては他人としての私たちは傷を負った人々に対して無力なのだろうか。著者は、傷ついた人に寄り添うこと、何もできないがただ見ていることの重要性を示す。傷を傷のままに認め受容しながらその上で人生を続けていくこと。このような態度で自他ともに接することが大切なのだろう。 著者の日常の些細な出来事からより抽象的なテーマへと話題を転換させる思考の独自性が、おもしろい。様々なテーマの根底には、読者の経験する日常の歯がゆさや無力さを優しく包み込んでくれる、そのような優しさがある。
やばい、かなり好きかも。 ものすごく正直な言葉で、だからこそすっと奥まで入ってくる。 そしてもの静かで温もりがあって安心できるような余韻がある。 何かに似てると思えば、教会みたいな感じだ。祈りと慈愛と、時間をかけて醸成されるあの独特の空気。 本を読んでこんな感覚を覚えたのは初めてかも。なんでだろ...続きを読むう。恣意がなく、自然で、少し濁ってるような。
学生時代に『環状島』モデルで知ったことを思い出しながら購入。ノウハウではなくあくまでエッセイという形で、傷に真摯に向き合う筆者のスタンスが通底している文章だった。 あまり本筋とは関係がないが、怒りが他者に対する羨望でもあるという記述が興味深かった。
傷を愛せるか。 文庫本の背表紙を読んだ時ちょっと泣いた。 過去の失敗をいつまでも引きずったり、人と比べて落ち込んで自己嫌悪になったりと感情に振り回されやすい自分を肯定してもらった気分。 傷ついた心やトラウマの乗り越え方が書いてある訳ではないけれど作者自身の嫌だと思ったことトラウマを深く考えていくこ...続きを読むとで私自身も解れていく。 正しさや完璧さ強さに憧れて不安に押しつぶされそうになるときに弱いままで何もできない自分を受け入れ愛してあげたい。 弱いまま強く生きていきたい。
筆者の心の奥底の正直な部分が書かれており、とても深みがある。「記憶の淵から」の章は特に心の奥底に染み渡り、表題の「傷を愛せるか」は深い愛に触れる感じがする。長く手元に置いておきたい一冊
優秀だからこそ「よい人」でありたいと思う人も多いが、 人の痛みへの共感は自分をも傷つけかねない。 頭を使い、心を込め、気を配り続ける事は、 脳神経系の「体力」を激しく消耗する。 肉体の過労はわかりやすいが、 頭や心の過労は見えにくい。 肉体は動きを止めれば休養できるが、 頭や心は職場を出てもす...続きを読むぐにスイッチを切れない。 『傷を愛せるか』 / 宮地尚子 --- トラウマ研究の第一人者、宮地尚子さんのエッセイ。 恋人が記念日にプレゼントしてくれた大切な本。 傷の大きさはそれぞれだけど、みんな心に傷を負って生きてる。 いつか血が止まり、かさぶたになって、痛みはなくなっても、 傷あとはずっと残り続ける。 心の傷は完全には癒えないし、脆く壊れやすくもなる。 ただ、その弱さを受け入れる強さも身につけていきたい。 #宮地尚子 さん #傷を愛せるか #読書記録 #読書感想文
エッセイ自体が元々読むのは苦手で、一度かなり間を空けて読まなくなってしまい、二度目で休み休み読んで完読できました。 なんだか実家の母と他愛もない話をしている時のような幸福感を感じる章と、難しくて中々読み進められない章とありました。 心や対人関係について「きっと良くなる方法があるはずだ」と思い込んで対...続きを読む策を考えたり調べてみることはよくありますが、一向に良くならずそれでもなんとかならないかとジタバタしてしまい、逆に辛さが増すようなこともありますが、どうにもならないことを認めてもいいんだ、となんだか心と頭が軽くなりました。
「人生の軌跡」が特に印象的。 人生の分岐は二元論ではなく、常に幾つものY字路を進んでいく感覚が、自分の中にもある。 Y字路を選び続けると、自分がどの方向に進んでいるのか、堂々巡りのように回り続けているのか、周りから大きく外れてしまっているのか、そうした方向感覚がわからなくなる。 それでも選び続けてい...続きを読むく。戻りたい、とは思わないから、常に望んだ道を選択しているのだろうとは思う。 ただ、その先がどこに続いているかはわからない。 どこへ進んでいるのか分からないのに、心の中にコンパスは確かにある。私が私たる為の、いや、私である理由そのものとして、価値観というコンパスがある。 コンパスは進むべき方向をおおよそには示してくれるが、どこへ辿り着くかは示してくれない。 それが人生であり、生きていくということなのかもしれない。 子どもの頃に想像していたよりも人生は細かく、不明瞭で、見えない単位で絡まり続けている。 だからこそ、生きている、私がここにいる、とも思える。真っ直ぐで分かりやすい人生は、どこか作り物めいていて他人事である。 私は自分の傷を俯瞰してしか見られないタチである。肯定や否定という評価とは少し違い、ただただ事実としてそこにあることを自覚する形で、少し離れたところから見ている。 たまに疼くと戸惑う。俯瞰的な自分よりも情動的な自分が優勢になると怖くなる。 おそらくその感覚に対する恐怖心が、自分に距離を置きながら観察してしまう癖を生んでいるのだろう。 ただ、傷によって私の価値観が構築され、日々選択をし、今ここにいる。 そのこと自体は懸命に生きてきた証として愛おしく思う。 自分の傷を愛するという行為は感情として理解しきれていないが、私は私を大切にしている。傷が私の価値観を形作っているのは、他の誰よりも私が実感しているからだ。それが人生のコンパスとなっていく。 感情を少し遠くに置きながら、そんな自分の目線も含めて、複雑に絡まりながら私は私を愛する。 どこに向かうか分からないまま、だけど確かに自分の傷を価値観に変えて進んでいく。そうやって傷を愛しているのだろうか。
まずそもそも帯の文章が優勝。 期待大で読んでいくと、随所に書き留めておきたい文章が散らばっていて、読み進めている最中から「再読必須だ」と思っていました。 精神科医の先生のエッセイということで、難しい文章かなと身構えましたが、自分の経験にも意訳すれば当てはめられ、共感しやすい文書でした。んー、これはI...続きを読むNFJさん好きそう。
素直な文章ですっと入ってくる。 他者を、自分を、他者の傷を、自分の傷を愛せるか。 著者の様々な経験を通じた発見や考察を通じて、考えることができた。
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