あらすじ
たとえ癒しがたい哀しみを抱えていても、傷がそこにあることを認め、受け入れ、傷の周りをそっとなぞること。過去の傷から逃れられないとしても、好奇の目からは隠し、それでも恥じずに、傷とともにその後を生きつづけること――。バリ島の寺院で、ブエノスアイレスの郊外で、冬の金沢で。旅のなかで思索をめぐらせた、トラウマ研究の第一人者による深く沁みとおるエッセイ。解説 天童荒太
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トラウマの研究者も私と変わらない人間であること。(カウンセラーとしてもあるかもしれないけど)1人の人から幸せを祈ってもらうのは温かい気持ちになる。
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心の傷やトラウマは極めて主観的なもので、決して他者のことは理解することはできず、それぞれの地獄がある。そんな地獄をそれぞれが抱えていることを認め、見つめていけるまなざしを持っていたい。
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精神医学者で人文学系の大学で教鞭をとら社会学的な研究もされている先生のエッセイ。難しい専門用語もなく平易な言葉で、日常の生活で感じられたこと、アメリカ留学での同性愛者との交わり、ベトナム戦争のアメリカの後遺症を鎮魂した記念碑の話などを語っている。
日常でのもやもやの捉え方、学者としてこういう切り込み方があるのかといなってしまう。
生きづらい社会がタイパだのコスパなとますます進むだろうけど、悲観せず立ち向かおうとわれわれにエールを送っているさわやかな気持ちと元気をくれる本です。
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優しい文章。トラウマの研究に携わってきたというのは正直本当に辛い部分もあったのだろうなと思う。読んでいてしんどいところもあった。それでも、大なり小なり様々な傷をかかえながら生きていく人生。
そんな傷を愛しながら生きていきたい。
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今を生きてないなあ(後悔とか未来への不安とか)って感じる時に、リセットするために読んでる。そんな内容の本ではないんだけども。
読むとなんか落ち着ける一冊。
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傷がそこにあることを認め、受け入れ、傷の周りをそっとなぞること。
過去の傷から逃れられないとしても、好奇の目からは隠し、それでも恥じずに、傷と共にその後を生き続けること。
トラウマ研究の第一人者による
深い思索が心に沁みとおるエッセイ。
ホスピタリティについて、と、ヴァルネラビリティについての部分が特に沁みた。
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出来事をフレームではなくて自分の意識で捉えていることに自覚的だなとおもった。
世界を澄み、濁った瞳で見ていること、その客観視、それでも自分に、患者への欺瞞を許すこと、人の営みの息遣い、自己と非日常の邂逅が生む眩暈、
今ここにいる人、風の匂いのわかる人の書く文章だった。
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今年読んだ本の中で、一番かもしれない。私は、こんなにも真摯に患者に、そして人生に向き合う人に出会ったことがない。そして、文字から書き手の誠実さやが伝わる文章というものを、読んだことがない。
考え方然り、紡がれる文章然り、心にしんしんと雪が降るように積もっていくやさしさ。でも温かい。触れたところからじわっと温かさが広がっていく、そんな内容だった。会ったこともないのに、私を全肯定してくれるような、そんな気分にさせてもらった。押し付けがましいやさしさではなく、ただただありのままの人間を肯定する。こんなやさしさもあるのかと目から鱗だった。
忘れられない一冊。私は普段エッセイはあまり読まないし、好きではないけれど、この本にら出会えてよかった。
メモ:
私たちは他者と関わることで、お互いに影響し合い、お互いを変えていく。その変化が良いか悪いかは、誰にも分からない。それでも、「人はだれでも、正しかったかどうかだけでなく、自分がそこにいる意味があったのかどうか、自分がかかわることでなにか違いがつくり出せたのかを確認したいと思う。」→でもこれってかなり傲慢なのでは?相手に起こったのは良い変化であって欲しいと願うことは出来ても、それを決めるのは相手なのだから、それを強要することはできない。良いも悪いも、相手に委ねるしかないのだ。それが本当の意味の尊重なのではないか。
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読みやすく、優しいエッセイだった。共感できる内容や、また改めて読み返したいところに、線を引きながら読んだ。
トラウマ研究者といえど、心に傷を抱えた人すべてを救うことはできず、また、職場を離れると一人の母親であり一人の生身の人間であり、苦しんでいる人を差し置いて生活していることへ後ろめたさというか葛藤があることなんか、それはそうだろうなぁと想像しながら共感できた。
みんな傷だらけで生きてるのかなぁと思いながら読んだ
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淡々と文章が沁みてくる。
レジリエンスだなんだと打たれ強さを求められてる気がして肩に力が入っていたんだな、と気づいた。
私はまだまだ傷を愛するどころか、向き合うことすらできずにいるけど、いつか自分の傷を愛おしく撫でることができたらいいなと思う。
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一度ついた傷は消えないし、無かったことにもできない。だから時間が経っても痛いし、いつまで痛いんだろうと嫌になる。
だけどその傷を無かったことにしようとしたり、痛いのに痛くないふりをしていると、本当は痛いのに、痛いままなのに麻痺してきて分からなくなる。醜い痛々しい傷を受け入れることはものすごく大変だから、見えないふりした方がその時は楽かもしれない。だけど痛みが分からなくなる方がずっと大変なんだと思う。
しんどいけれど傷を受け入れて、抱えて生きていく強さを持ち続けたいと思う。
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傷はみじめで、醜い。とあっさり言い切られたのがちょっと衝撃的。ベトナム戦争戦没者慰霊碑が土に埋められていくというイメージも、今の状況では現実にならないとも言い切れないのかなあと思ったり
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温かいエッセイのような、でもとても人生において大切なことが書いてあるような、そんな本だった。
すごい経験をされている著者のわりに、内容や文体はどこか楽しみのある感覚で、読んでいてすーっと心に入っていくような感じだった。
この本にある「傷」って、何だろう。私はまたその答えを何となく見出せていない気がする。
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宮地尚子さん。
失礼ながらこの本を読むまでは存じ上げなかったのですが、精神科医、大学教授、ハーバード大学研究員など、ものすごい肩書きをたくさんお持ちの方のようで、肩書きだけ見たらご本人も文中に書かれているように「この人、なんか偉そう!」と思って本書を手に取ることはなかったかもしれません。
でも読んでみると誠実なお人柄を感じさせる文章で、仕事や人間関係でくたびれたときに読むと優しい言葉に癒され、心にスッと沁みました。
なんというか頭の良い人が私のような並の人間にもわかりやすいように世界観や考えを共有してくれたような一冊でした。
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文庫本です。海と水の透明さを感じさせる紀行文でもあり、グイグイ引き込まれます。著者は「トラウマ研究の第一人者」。赦しを求めて祈る。それで良い。医師ならではの達観と、力の抜き方を感じさせます。
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100分で名著に出演していたことで著者を知り、手に取った作品。静かだけど確かに意思のある文章。
「Ⅲ 記憶の淵から」の章は印象深いエピソードと文章が多かった。
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著者の眼から通した世界が、読者や傷を負った人たちのシンパシーに展開する。著者自身の経験に忠実な表現が知的正直さを表す。挿絵によりチル・ムードも体験できる。
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大変な時期に読んだからか、文章の一つひとつが心の内側まで染み渡った。飾らない、正直な思いが心の奥で受け止めて良いんだ、と納得させてくれる。そして弱者へのまなざしを感じる。この本を読んで救われた気になる人はたくさん居ると思った。息継ぎがうまくできない中でよむにはうってつけのエッセイ集だ。
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手元に置いておきたいと購入。心の支えになったり、前向きになれたりする本。
心に残った文をいくつか↓
【○(エン)=縁なるもの】より
受験生の飛び降りニュースをテレビで見て
「ま、わかるがこんなことみんなも経験することだしな」
加南は心の中でこう答える
「でもパパ、私たち当人にとっては「こんなこと」じゃない。パパは大人で受験よりも苦しいことをけいけんしてるから「こんなこと」になるのかもしれない。あたしが中学の時、死ぬほど嫌だった髪の悩みも、今はもう忘れかけているのと同じ いつだって今の悩みがいちばん。あの幼い日に悩んだ重さは、その内容はちがっても 今、悩んでる重さとほとんど違わないはずなの」
【競走と幸せ】より
ニンジンを目の前にぶら下げられた馬のように生きたくはない と思うけれども、走りたいという本能を持った自分の脳という馬をうまく乗りこなし、疾走していくのは、爽快な気分に違いないし、見ていても気持ちがいい。ただ、周りの凡人をあんまり巻き込まないでほしいよねと思ったりするが。
【女らしさと男らしさ】より
それでもだからこそ、弱さを抱えたままの強さを目指すことは、むしろ男性にとってより意義深いものだと思う。
自分の弱さを認め、「鎧」を外し、肩の力を抜き、自然体でいられる男性の方がむしろ強くて、魅力的だとも言える。
あとは【溺れそうな気持ち】の全文 どう生きるかのヒントになる。
Posted by ブクログ
悩みや死についてどう向き合っていくのかをやさしく教えてくれるエッセイ。
悩みの重さはいつだって今の悩みが1番だけど重さはどれも同じだし、そこから抜け出さないと振り返る事はできない。
悩みの真っ只中にいても無理にあがいたり、元気づけたりしなくてもいいんだよと言ってくれている気がした。
ただそばにいるだけで、見ているだけで、癒される事だってあるし癒してあげることができる、そんな何気ない事に気づかせてくれた。
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「傷がそこにあることを認め、受け入れ傷のまわりをそっとなぞること。身体全体をいたわること。ひきつれや瘢痕を抱え、包むこと。さらなる傷を負わないよう、手当てをし、好奇の目からは隠し、それでも恥じないこと。傷とともにその後を生き続けること。
傷を愛せないわたしを、あなたを、愛してみたい。
傷を愛せないあなたを、わたしを、愛してみたい」
とても優しい言葉
♫アルジャーノン - ヨルシカ
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よかった〜〜
内なる海『海を飛ぶ夢』
「生きていてほしい」と家族に思われているからこそ、「死にたい」と心からいえる。「生きていてほしい」と心底思っているからこそ、「死にたい」と願うことの権力性を正面から指摘できる。(p.35)
「他者を愛する」とは、自分とはちがう存在、自分には理解できないもの、自分では受け入れられないものをもっている存在を、まさに自分には理解できないし、受け入れられないからこそ、尊重するということである。けれどもそれは「他者から愛されない」ことを受け入れることであり、相手の選択が死であるときは、他者との「他者としてのつながり」さえも断ち切られることになる。
ロサは、ラモンと同じ内なる海で泳げなくても、潮の流れを交歓できなくても、それを受け入れる。それがラモンにとって内なる海を取り戻す唯一の手段であることをロサは知っている。ロサにはロサの内なる海がきっとそのさきに待っていることを、ラモンもきっと知っている。(p.39)
だれかが自分のために祈ってくれるということ
…それらの喪失を認め、受け入れることは、新たな生活に向かうために必要だが、決してたやすくはない。けれども、幸せを心から祈ってくれる「だれか」がいれば、被害者自身も幸せになりたいと願いつづける勇気、なれるかもしれないという希望を取り戻すことができる。(p.54)
溺れそうな気持ち
…溺れそうな気持ち。必死で手足をばたつかせないと、沈んでいきそうな感覚。息苦しくて、何がなんでも水面上に顔を上げてしまいたくなる気持ち。すくんで縮こまる身体。何かにしがみつきたくなる衝動。上手に泳げるようになったら、忘れてしまうであろうその感じを、できればずっと覚えていたい。(p.187)
張りつく薄い寂しさ
…優秀だからこそ「よい人」でありたいと思う人も多いが、人の痛みへの共感は、自分をも傷つきかねない。頭を使い、心を込め、気を配りつづけることは、脳神経系の「体力」を激しく消耗する。肉体の過労はわかりやすいが、頭や心の過労は見えにくい。肉体は動きを止めれば休養できるが、頭や心は職場を出てもすぐにスイッチを切れない。(p.196)
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トラウマ研究を専門とする精神科医のエッセイ。
(知らなかったけど大学の先輩でした)
「自分はなんでも知っている」感がなく、人間の不完全さや弱さとと向き合ってるところがよかった。
心に傷を作らない強さや、傷ができても気にしなくなる鈍感さを求められるわけではないところがとても優しい。
Posted by ブクログ
トラウマ研究者、精神科医の視点から、トラウマ体験や希死念慮について考察しているが、宮地先生自身の体験や映画などからエピソードを引き出しているので、エッセイとしてとても読みやすいし面白かった。学術本として読むと物足りなく感じるかもしれない。
Posted by ブクログ
傷を愛せるか、というテーマについては後半部に書かれていました。そこに至るまでは、筆者の人柄が分かる日常の記録となっており、個人的にはあまり興味が持てませんでした。とはいえ、精神科医の思考や感覚について知ることなんて普段はできないので、頭の良い人はこんな風に物事を捉えているんだ、と新たな発見になりました。肝心の傷に関する部分ですが、筆者の経験をベースに優しい言葉で書かれており、非常に学びになりました。一冊の中でその部分を更に膨らませて書いてくれれば良いのにと思ったため⭐︎3としましたが、読みやすく、自傷や自殺に関連する領域で働く方にはおすすめできます。
Posted by ブクログ
人の何倍も何十倍もの経験値が形作った人って感じがする。色んな人と出逢っとるのはもちろんすごいけど、ただのビジネスの付き合いじゃなくて、何年越しに連絡が来るような心に残る関わり方をしたりソウルファミリーと呼べるほどの関係を作っとること。すごい、尊敬
しずかにロジカルに、その経験を語る本。よかった
Posted by ブクログ
日常的な出来事や人々について語れているが、時に医者として、時に一人の人間として見る目や語り口が変わることによって物事の新たな一面を提示してくれている。
そんな著者でも常にそれができるとは限らず、時に思い通りにならないこともある、それでも諦めずに前へ進むための方法を探していっている。
人は大なり小なり過去に傷を負っているのだから、日常で人と接する時は著者のようなやり方・考え方が有効だと教えてくれた。