小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
「呪術」をテーマにした物語
呪術の仕組みとは?それを踏まえた上で、本当に呪術は存在するのか?
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アフリカにおける呪術医の研究でみごとな業績を示す民族学学者・大生部多一郎はテレビの人気タレント教授。彼の著書「呪術パワー・念で殺す」は超能力ブームにのってベストセラーになった。8年前に調査地の東アフリカで長女の志織が気球から落ちて死んで以来、大生部はアル中に。妻の逸美は神経を病み、奇跡が売りの新興宗教にのめり込む。大生部は奇術師のミラクルと共に逸美の奪還を企てるが…。超能力・占い・宗教。現代の闇を抉る物語。まじりけなしの大エンターテイメント。日本推理作家協会賞受賞 -
Posted by ブクログ
高校時代の友人に勧められた本。
普通ならこうするとか、こうであるべきみたいな常識が、本当に自他にとって利なのか、あるべき姿なのか、考えさせられるお話。
特に、戦争で普通はやってはいけない究極のこと=殺人を大人が行っているなか、周りにあふれているなかで、普通はこうであるべきみたいな上っ面なことは説得力を失う。常識に縛られていないまっさらな子供がそういう状況で、冷静に物事を考えた時の正義や対応はそうなるんだなというのがすっと納得できた。特に手榴弾のお話では、非常識に思える行動も、二人の人間性への真摯な愛や情熱が感じられると思った。
常識やマナー、道徳を何でもかんでも守れば良い、守れないのは悪という -
Posted by ブクログ
大好きな作家柚月あさこの本、今回もとてもよかった。全てのエピソードで伝えたいこと、それは、連帯することは人を奮い立たせ、人を救い、人に生きる希望を与えるということ。
あくまで個人的な感想だけれど、柚木作品にはいつも分断への抵抗として「連帯」が描かれている。読後はいつも身近な人への感謝、そして世界への希望的観測が生まれる。
今回の小説でも全てのエピソードに「連帯」が登場する。年齢も職業も性別も異なる他人同士が繋がり、協働し、心を通わせ、誰かのために自分のために前へ進む。1番好きなエピソードはBAKERSHOP MIREYS。詳細はネタバレなので省くけれど、甘いお菓子の香りを通じて、不器用だけど -
Posted by ブクログ
白く澄んだ素晴らしい作品だった。
不穏な空気が漂うと明らかに靄がかかったような雰囲気になるのが、凄い。
最初は刑事系のパキッとした文で感覚を掴んでいたのに、誘拐事件に関する記述が早々に終わったのでこれから先の展開がどうなるのか不安に思いながら読み進めていた。
しかし、進んでいくにつれて、こう進むべきだったと思えてくる素敵な物語構成だった。
特に印象的だったのは、同じ事柄を語る時に微妙に表現を変えてくるところ。
大体の小説は、違う人物が同じ展開や人物、物体に出くわした時、それが共通のものであることを認識させるためにほとんど言い回しを変えていないように感じる。
ただ今作は、それぞれの人物がそれぞれ